更新日:2023/03/16 13:10
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限界利益率とは?その改善・計算方法を解説【経営/売上】
読了まで約3分
安定した会社経営には、まず自社の状態を正しく判断をするための経営分析が必要です。
ただやみくもに売上のアップだけを考えていても、ビジネスが順調にいくとは限りません。
経営分析の手法にはさまざまなものがありますが、そのなかでも重要なものの一つは「限界収益率」を分析することです。
限界利益率を正しく理解し、分析することで、経営改善にもつながります。
限界利益率とは
限界利益率の説明をする前に、まず押さえておかなければいけないのが固定費と変動費です。
企業の経済活動における費用(経費)は、大きく固定費と変動費にわけられます。
事業を行う場所を確保して設備を整え、人を雇っていれば、例え売上がなくても一定の費用が発生します。
そのように売上が上がる・上がらないにかかわらず、必ず発生する費用が固定費です。固定費には水道光熱費や人件費、家賃、減価償却費などがあります。
一方で、変動費は売上の増減に比例して上がったり下がったりする費用です。
例えば、仕入原価や原材料費、商品の容器や梱包資材などがあります。
商品の運搬にかかる費用や販売にかかる手数料なども売上によって増減するため変動費として扱われます。
ただし、固定費と変動費は厳密に分類されているわけではありません。
例えば、通常は固定費に分類されることが多い人件費も、派遣スタッフの場合は売上に比例する費用とみなされ、変動費として扱われることがあります。
限界利益率にかかわってくるのは変動費のほうです。
売上から変動費を差し引いて残った利益が限界利益で、売上に占める限界利益の割合が限界利益率です。
この限界利益には、まだ固定費が含まれています。もし、限界利益で固定費を支払うことができなければ赤字になります。
逆に限界利益がプラスならば、固定費を回収して営業利益を出すことができます。
限界利益と営業利益の違い
限界利益と混同しやすいのが営業利益です。限界利益と営業利益の違いは、利益額から固定費を引いているかどうかです。
限界利益から営業利益を求める場合には、限界利益の計算結果から固定費を引く必要があります。
一般的に「赤字」というと、営業利益がマイナスの状態を指しますが、固定費は受注の増減の影響を受けないので、
限界利益が黒字であれば「販売する商品の数を増やすか、固定費を削減するか」によって営業利益も黒字に転じる可能性が十分にあります。
事業の継続や商品の販売方法、経費を見直す際には、営業利益以上に限界利益に注目することが大切です。
限界利益率の計算方法
限界利益率を計算するためには、まず変動費率を計算する必要があります。
変動費率は売上高のうち変動費が何割占めているか示すもので、「(変動費÷売上高)×100」が計算式です。
そして、100%から変動率を引くことで、限界利益率を算出することができます。
売上高120万円、変動費30万円の企業で具体例をみてみると以下のようになります。
・変動費率:30万円÷120万円×100=25%
・限界利益率:100―25=75%
限界利益率は売上に占める限界利益の割合ですから、「限界利益(売上高-変動費)÷売上高×100」の計算式でも算出することができます。
・限界利益率:(120万円―30万円)÷120万円×100=75%
部門ごとの限界利益と限界利益率を計算すれば、収益性の高い部門と低い部門の見極めが可能です。
現状を把握することでどの部門に収益アップのテコ入れが必要なのか、撤退を考えた方がよいのかなどの問題点を見つけることができるでしょう。
逆に限界利益率を理解していなければ、事業を展開するほど赤字がかさむという事態も招きかねません。
ちなみに、限界利益が固定費と同額になるポイントは損益分岐点と呼ばれ、ちょうど売上から変動費も固定費も回収できて利益も損失も出ない差し引きゼロの状態です。
限界利益率を使うと、固定費÷限界利益率、または固定費÷(1-変動費率)の計算式で損益分岐点売上高を出すことができます。
限界利益率を改善する3つの方法
販売数量を増やす
既存の顧客に対して購入頻度が多くなるように促す、顧客1人あたりの購入数を増やすなどが、まず販売数量をアップさせる方法です。
ただし、もともと一度に大量を必要としない商品や頻繁に購入する必要のない商品の場合は難しいこともあります。
それ以外では、新しい顧客を開拓するのが販売数量を増やせる方法として有効です。例えすぐに販売数を増やすのが難しくても、集客活動はすぐにでもはじめられます。
具体的には紙媒体のチラシやWeb広告、SNSなどを利用して知名度を上げる、キャンペーンやお試しできるサービスの提供、
看板商品の開発で購入につながるきっかけとなることがあります。
単価を上げる
顧客数や販売量を変えずに限界利益率を上げようとする場合、手っ取り早いのは単価を上げる方法です。
ただし、単価を上げれば同時に売上もアップするのは当然ですが、ただ単価を上げるだけだと顧客離れにつながりかねません。
価格が上がったことに見合うだけの価値があり、顧客が納得してくれなければ、結局売上は上がらないでしょう。
具体的に顧客に受け入れられる単価アップの方法としては、品質やサービスの向上、顧客のニーズにマッチする商品の開発、
既存商品はそのままで単価の高い新商品を提供するなどがあります。
変動費を下げる
限界利益は売上から変動費を差し引いたものなので、変動費の割合を下げることができれば売上を増やさなくても限界収益率を改善することができます。
ただし、変動費はそもそも売上に応じて必要になる費用です。
売上をそのまま維持しながら同時に変動費を削減することは難しいものの、見直すべきポイントはあります。
例えば、仕入価格や原材料費を下げるための価格交渉や取引先の変更検討、配送や包装・梱包段階でムダを省くなどです。
限界利益を経営に活かす方法
限界利益率がわかると、商品の価格決定に役立てることができます。
販売量を増やした際にどれくらい利益が出るか、黒字化するには何個以上販売すればいいかを知ることが出来ます。
商品・サービスの価格は、市場における「優位性」を左右する重要な要素の為、
少しでも安く提供しようと考える方も多いと思いますが、そもそも利益が出なければ意味がありません。
安易に割引してしまうと限界利益率は一気に下落するので、注意が必要です。
「限界利益率」や「損益分岐点」を駆使することで、「利益も確保しつつ優位性を持てる最適な価格」を導き出しましょう。
予算を作成する際にも役立ちます。
目標の売上がある場合、「その売上目標に対していくら費用が必要になるのか」を把握しておく必要があります。
原則「固定費は変わらない」と考えると、売上目標に対する「変動費」を予め把握しておけば良いので、「今後必要となる変動費」を算出して予算を決定します。
また損益分岐点を計算すれば、営業利益を黒字にするための売上高も算出できます。
固定費を抑えても限界利益率が低い場合には、必要な利益を得るために大きな売上高が必要となります。
限界利益率の向上のために大幅に固定費が増加してしまっては、意味がありません。
利益を最大化するために、売上高、変動費、固定費のどの部分を改善すればいいのか、
限界利益や損益分岐点、単位毎の貢献利益などを分析して、経営判断をしていくことが重要となります。
限界利益率を味方につけて業績向上へ
限界利益率を出すことで、部門ごとの収益性を把握し、さまざまな手立てを考えることができるようになります。
利益を出して会社の経営を維持し続けるためには、売上を上げるだけではなく、限界利益率を改善することが重要です。
しっかり限界利益率を理解していなければ、売上を上げれば上げるほど赤字になってしまうこともあります。
限界利益率を正しく落とし込んで現状を把握し、経営を安定させる方策を考えるようにしましょう。
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