更新日:2022/10/28 17:31
経営
【事例あり】5F分析とは?意味や目的・実践方法やメリットなど詳しく解説
読了まで約4分
5F分析とは、自社を取り巻く競争要因の分析やマーケティング施策の立案に役立つフレームワークです。
5F分析を活用できるようになると、現状の分析だけでなく、自社や市場に影響を与える脅威をいち早く察知できるようになります。
経営者やマーケティング担当者は、ぜひ押さえておきたい知識です。
本記事では、5F分析の概要や実施するメリット、実際の実践手順や事例について解説します。
目次
5F(ファイブフォース)分析とは
まずは、5F分析の概要について解説していきます。
5F分析の意味
5F(ファイブフォース)分析とは、企業を取り巻く5つの競争要因(※下記参照)を軸にして自社や市場の現状を分析するマーケティング手法です。
外部環境と内部環境を分けて分析することで、市場における自社の優位性を明らかにします。
マーケティング戦略を立案する際は、まず環境分析を行い、次に戦略を立案し、最後に施策を立案するといった手順で進めることが一般的です。
5F分析はこのうちの「環境分析」を深めるために行います。
【5つの競争要因】
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 競合他社の脅威
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
なお、各要素の内容については詳しく後述します。
5F分析の目的
5F分析は、自社が事業を展開する市場の状況を把握するために実施します。
業界内の力関係を明らかにし、自社が勝ち残るために必要な戦略や目指すべきポジション、本当に参入すべきか、または撤退すべきかどうかの指標になるのです。
市場の状況や自社の優位性が明確になるため、より効果のあるマーケティング戦略の立案が可能になります。
5F分析の提唱者
5F分析は、アメリカの経済学者であるマイケル・ポーターの著書『競争の戦略』の中で提唱されました。
ポーター教授は、35歳の時に史上最年少でハーバード大学正教授となった人物であり、5F分析以外にも「バリュー・チェーン」や「コストリーダーシップ」など、多くの競争戦略を提唱しています。
著書の中で、ポーター教授は競争の重要性について強調しており、5F分析によって業界の収益性や魅力度を測ることができるとしています。
5F分析は経営に不可欠なフレームワークであり、企業戦略や競争戦略の策定にも活用できると述べています。
5F分析における5つの競争要因
前述した5F分析における「5つの競争要因」について、それぞれ詳しく解説していきます。
1.新規参入の脅威
新規参入の脅威とは、市場に新しい競合企業が参入してくることです。
競争力のある競合が参入してくると、シェアを奪われて売上が減少する可能性が考えられます。
新規参入のハードルが高い業界ほど、この驚異の影響は低くなります。
例えば、電力会社などのインフラ事業は、膨大な設備投資が必要なため参入ハードルも高く、新規参入する企業はめったにありません。
反対に、初期投資が少ないWeb業界などは、常に多くの企業が参入しています。
製品やサービスの質を高めたり、適正な価格設定を見直したり、自社の競争力を高める施策が必要です。
2.代替品の脅威
この脅威は、自社製品と同等の価値を持つ代替品の登場により、これまで自社の製品が満たしてきた市場のニーズが奪われてしまうことです。
具体的には、携帯電話の登場による固定電話のシェアの大幅縮小、スマートフォンの機能向上による音楽プレイヤーの使用頻度の低下などがあげられます。
強力な代替品の登場は、自社だけでなく市場全体にインパクトを与えます。市場そのものの規模が縮小することもあり、収益性の確保が課題となります。
代替品には満たせないニーズを汲み取れないか、費用面や機能性で差別化できないかを検討しましょう。
3.既存の競合他社の脅威
市場に元から参入している競合他社との直接的な競争を指します。
当然ながら、市場に参入している企業数が多いほど競争率は高まります。
また、市場そのものの大きさや、各企業の事業規模によっても競争率は異なってきます。
そのため、製品の良し悪しだけでなく、自社と競合の資金力やブランド力、市場の規模や成長可能性なども分析しなくてはなりません。
競争力を高めるためには、自社の製品力強化や適正な価格設定などが必要です。
また、市場そのものの成長性も考慮して、自社が取るべき施策を決定します。
4.買い手(顧客)交渉力の脅威
製品の顧客が法人の場合には、顧客の交渉力の強さによって収益性が下がることがあります。
例えば、大手メーカーに部品提供をしている場合に「もっと価格を下げないと取引を停止する」と圧力をかけられたら、要求を飲まざるを得ません。
取引を1社に頼っていると、利益が大幅に下がるケースがあるのです。
この脅威は、自社製品から他社製品に乗り換える際に発生する費用や手間といったスイッチングコストを高めることでコントロールできます。
スイッチングコストが高いと簡単に他社製品へ乗り換えられなくなるため、顧客と対等な関係性を保てます。
5.売り手(サプライヤー)交渉力の脅威
反対に、原料や部品を提供するサプライヤーの交渉力も脅威となります。
製品製造に必要な材料を「この会社からしか仕入れられない」という状況にあると、サプライヤーの影響力が強くなります。
仕入れ価格が高騰する可能性が高まり、利益を圧迫するかもしれません。
仕入れを1社に頼らず、分散するとリスクを低減できます。
ほかにも、サプライヤーに頼らずに材料開発を内製化しても、自社の立ち位置を維持できるでしょう。
5F分析の主なメリット
5F分析をマーケティングで活用すると、次のようなメリットを得られます。
自社を取り巻く現状を把握できる
5F分析は、自社や参入市場を取り巻く環境を整理し、正確に把握するために行います。
市場の現状を明らかにし、その中で自社の強みとなる部分や競合との差別化ポイントを割り出せるため、マーケティング戦略の立案に活用できるのです。
例えば、かつて日本を代表する大企業であった家電メーカーは、海外企業の参入やスマートフォンの普及で家電メーカーとしての強みが失われ、苦境に立たされたことがありました。
そこで、自社が市場で発揮できる強みを改めて分析し、映画や音楽、ゲームといったデジタルコンテンツ配信に舵を切った結果、V字回復を研げています。
このように、5F分析によって自社の置かれた状況を客観的に分析することで、ビジネスチャンスを見出せるのです。
参入や撤退など経営判断しやすい
新規参入や事業拡張だけでなく、撤退の判断にも5F分析を活用できます。
5F分析では、自社の要素以外にも市場全体の規模感や成長性の把握が可能です。
例えば、スマートフォンの登場によって固定電話やデジタルカメラ、音楽プレイヤーなど多くの製品ニーズが衰退しました。
このような市場における脅威にもいち早く気付けるため、的確なタイミングで撤退の判断が下せます。
5F分析の実践方法
5F分析を実践するには、各要素の情報を洗い出し、整理するところからスタートします。
具体的なやり方を解説しましょう。
1.各要因に関する情報の整理
まずは、5つの要素に関する情報を洗い出し、整理していきます。
具体的には、次のような情報を抽出してください。
- 原材料や部品の仕入れ価格
- 製品の販売価格
- 新規参入企業の特徴
- 既存の競合企業や競合製品の特徴
- 代替品となりうる製品の洗い出し、それぞれの特徴
情報精度の高さは、分析結果の精度向上に直結します。
そのため、客観的なデータを収集するよう心がけてください。
2.各要因に対するアプローチ方法
洗い出した情報は各要素にプロットし、それぞれアプローチ方法を検討します。
例えば以下の要素が挙げられます。
- 最も脅威となる要素はどれか
- 事業への影響度が高いのはどの要素か
上記の要素に優先順位を付けた上で、それぞれの弱みに対して効果的な施策を考えていきます。
5F分析を行う際の注意点
5F分析を実施するときは、次の点に注意してください。
分析に主観を取り入れすぎない
自社や競合の状況を整理する際は、客観的な視点で情報を収集しましょう。
自社の強みや弱み、市場内での立ち位置などを情報化するときは、どうしても希望的観測が強くなりがちです。
洗い出した要素と実情にズレがあると、正確な分析結果を導きだすことができません。
主観的な分析を防ぐためには、1人ではなく複数人で要素の洗い出しを行うと良いでしょう。
ほかにも、データに基づいた情報収集を意識すると、より公平な目線で分析を進められます。
適切な分析範囲を設定する
分析を行う範囲を明確にしてから取り組むことも重要です。
例えば、家電メーカーが5F分析を行う際の範囲としては、次のような検討事項があります。
- 対象範囲:国内メーカー限定か海外も含めるか、スマートフォンは競合となるか
- 分析期間:1~3年の短期、5~10年の中長期
5つの要素の中でも、新規参入企業や代替品は設定する分析範囲によって大きく差が出てきます。
分析を行う目的に合わせて適切な範囲設定を行いましょう。
定期的に実施する
市場は常に変化を続けており、5F分析で得られた結果はどんどん古くなってしまいます。
そのため、5F分析は定期的に実施して、現在の市場に合った施策提案を繰り返す必要があります。
特に、競合他社の動向や消費者のニーズは移り変わりやすいため、恒常的な情報収集が不可欠です。
また、予想しないような代替品や新規参入企業の登場により、市場のバランスが大きく変動することもあります。
あらゆる可能性に素早く対応するため、5F分析を繰り返し実施して、新たな戦略を打ち出しましょう。
5F分析の事例
最後に、5F分析をマーケティング戦略に活用した事例を業種別に紹介します。
航空業界の事例
航空業界における競争環境を5F分析すると、次のようになります。
- 新規参入の脅威:LCCの撤退や大手傘下入りが続き、当面の新規参入は少ない
- 代替品の脅威:コロナ禍で「Web会議」が普及し、出張の機会が激減
- 競合他社の脅威:低価格サービスを提供するLCCが台頭
- 買い手の交渉力:より価格の安いLCCや新幹線が選択肢に入る
- 売り手の交渉力:航空機材や燃料は海外からの仕入れが必須
航空業界は新規参入の難しい業界ですが、LCCの参入やWeb会議の普及により、大手航空会社であってもシェア獲得が難しい状況が続いています。
燃料の仕入れ元を分散してコスト面のリスクヘッジを図ったり、飛行機ならではの新たな旅行プランを提案するなどの施策が必要です。
コンビニエンスストアの事例
大手コンビニチェーンを例に、5F分析をしてみましょう。
- 新規参入の脅威:新規参入は難しい
- 代替品の脅威:スーパーやドラックストアなどが惣菜も扱い、値引き品も多い
- 競合他社の脅威:競合はあるものの、確固たる地位を獲得している
- 買い手の交渉力:国内シェアは高いものの、競合も積極的な店舗拡大を図っている
- 売り手の交渉力:仕入れ先は幅広く分散できており、交渉力は均衡している
コンビニエンスストアは大手3社が確実な地位を固めており、新規参入が難しい業界です。
地域によっては顧客の奪い合いが激しいものの、大きなシェアを獲得できており、今後も安定した売上を維持できることが見込まれます。
5F分析をマーケティング戦略に役立てよう
5F分析を活用することで、市場の現状を正確に捉え、自社が発揮できる優位性や改善すべき弱みを洗い出せます。
それによって、より効果的なマーケティング施策の立案が可能になるのです。
5つの要素に関する情報を収集する際は、できるだけバイアスを排除し、冷静に自社の状況を整理することが重要です。
客観性を保つために、複数人での分析やデータでの裏付けを心がけるようにしてください。
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