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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/12/14 14:13

経営

アンゾフの成長マトリクスとは?4つの成長戦略や多角化戦略の方向性・活用ポイントを解説

読了まで約1分

多くの企業がビジネスを成長させるために経営戦略を練っています。
既存の商品・サービスだけでは、いずれ顧客が離れる可能性が高いからです。

時にターゲットとする市場自体を変えなければ事業が停滞するかもしれません。そのような際に役立つ考え方がアンゾフの成長マトリクスです。

そこで本記事では、最初にアンゾフの成長マトリクス概要を説明した後、4つの成長戦略と使い方、多角化戦略の方向性、活用ポイントについて解説していきます。

アンゾフの成長マトリクスとは

アンゾフの成長マトリクスの概要を理解することで、後述する4つの成長戦略や、そのうちの1つである多角化戦略の方向性を把握しやすくなります。
ここでは、最初にアンゾフの成長マトリクスの意味を説明した後、必要な企業について解説していきます。

アンゾフの成長マトリクスは成長戦略のためのフレームワーク

アンゾフの成長マトリクスは、経営学者のイゴール・アンゾフ氏が提唱した成長戦略(経営戦略)のフレームワークです。
アンゾフ氏は経営戦略の父と呼ばれており、「戦略は組織に従う」という言葉を残しています。

アンゾフの成長マトリクスとは、縦軸を市場、横軸を商品・サービスで区切り、さらにそれぞれを既存と新規に分類したものです。
イメージとしては、正方形を縦横4つに区切った図(マトリクス図)です。

アンゾフの成長マトリクスを活用することで自社の商品・サービスや市場への理解が深くなるため、収益向上の方向性を具体化できるでしょう。

アンゾフの成長マトリクスが必要な企業とは

「事業を拡大したいが最適な方法がわからない」「新しい市場にチャンスを見いだすべきだろうか」と悩んでいる企業にはアンゾフの成長マトリクスが必要です。
状況の変化に合わせて方向性を練りやすい戦略といえるためです。

また、「顧客ニーズを理解していても売上につながらない」という企業にも効果的といえます。
アンゾフの成長マトリクスを活用することで、自社の商品・サービスが顧客にとって適切かどうかを判断しやすくなるからです。

 

アンゾフの成長マトリクスの4つの成長戦略と使い方

アンゾフの成長マトリクスは以下の順序で成長戦略を考えます。

  1. 市場浸透戦略
  2. 新製品開発戦略
  3. 新市場開拓戦略
  4. 多角化戦略

それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。

1. 市場浸透戦略

市場浸透戦略はマトリクス図の左上、既存市場と既存製品を掛け合わせた戦略です。
今までの市場に既存の商品・サービスを投入し、売上や市場シェアの拡大を図ります。製品の認知度アップや、顧客の購買意欲の向上などが主な目的です。

競合企業がそこまで多くない、市場が飽和していない、新製品の知名度が低い場合などに効果的です。
後述する他の3つの戦略(新製品開発戦略・新市場開拓戦略・多角化戦略)よりも基本的に費用がかからないため、気軽に取り組めるというメリットがあります。

なお、既存市場と既存製品の掛け合わせではありますが、単に現状維持を図るだけの戦略ではありません。
継続的なマーケティング活動が必要な点は、他の戦略と共通しています。

2. 新製品開発戦略

新製品開発戦略はマトリクス図の右上、既存市場と新規製品を掛け合わせた戦略です。
既存市場に新規開発した商品・サービスを投入し、売上や市場シェアの拡大を図ります。顧客のリピート購買が主な目的です。

新製品開発戦略は、既存製品ですでに一定の市場シェアを獲得していたり、競合他社が増えて市場が飽和していたりというケースで効果的です。
既存市場のユーザーニーズを捉えた新しい製品の開発を行うことで他社との差別化につなげられます。

開発方法の幅を広げることにより、自社の強みやオリジナリティを活かした新製品の開発につなげられます。

3. 新市場開拓戦略

新市場開拓戦略はマトリクス図の左下、新規市場と既存製品を掛け合わせた戦略です。
新たな市場に既存の商品・サービスを投入し、売上や市場シェアの拡大を図ります。
競合他社が多い市場であれば、数多くの商品・サービスの中から自社を選んでもらう必要があるため、商品力とともに販売力がポイントになります。

既存市場で一定のシェアを築いたサービスや、販売数に陰りが見えてきた商品を新規市場に投入することにより、新たなニーズを捉えられる可能性があります。

新市場開拓戦略には、新しい地理の市場と顧客の幅という2種類の広げ方があります。
前者は海外進出、後者は女性向け製品の男性市場への展開、といった考え方です。

4. 多角化戦略

多角化戦略はマトリクス図の右下、新規市場と新規製品を掛け合わせた戦略です。
新規市場に新たな商品・サービスを投入し、売上や市場シェアの拡大を図ります。

未経験の市場に実績のない新製品を投入するため、4つの戦略の中で最もハードルが高いといえます。
その分、先行者利益やブルーオーシャンによって大幅な売上増につながる可能性があります。
ブルーオーシャンとは、競争相手が存在しない未開拓の市場のことです。

新製品開発のコストだけでなく、マーケティングや販売費用も発生するため、財務に余裕がある企業が取り組みやすい戦略です。

 

アンゾフの成長マトリクス多角化戦略の方向性

これからの企業戦略は多角化戦略が中心になると考えられています。
事業環境の変化の早さにより、既存製品もしくは既存市場の売り上げが著しく低下する懸念があるからです。

多角化戦略は以下の4つに分類されます。

  1. 水平型多角化
  2. 垂直型多角化
  3. 集中型多角化
  4. 集成型多角化

それぞれ解説するので内容を押さえてください。

1. 水平型多角化

水平型多角化とは、既存の技術や知識を活かして新製品・新サービスを開発し、既存市場に類似した業界で事業を拡大する成長戦略です。
既存の技術を活用できるので成果を得やすいでしょう。

具体例として以下が挙げられます。

  • 自家用車メーカーがトラックを製造する
  • 居酒屋チェーンが焼肉屋を展開する
  • スーツ販売メーカーがTシャツを販売する

多角化戦略の中でも水平型多角化はコストを抑えやすい戦略です。
従来の技術や設備を活用しやすいうえに、マーケティングや販売費用を最小限にとどめられるからです。
さらに商品・サービス同士のシナジー効果を見込める手法といえます。

2. 垂直型多角化

垂直型多角化とは、製造から販売のプロセスにおいて、上流もしくは下流へと事業を広げる縦方向の戦略です。
商品・サービスに必要な部品製造は上流、流通・販売などは下流に該当します。

具体例として以下が挙げられます。

  • 他社からパーツを仕入れていた機械メーカーが、パーツ販売の事業を始める
  • 販売に特化していた家電量販店が生産と流通を手がける
  • アパレルメーカーが材料となるボタンやチャックのような部品の製造を行う

垂直型多角化は今まで培ってきたマーケティングデータや経験などを活用しやすいものの、ノウハウや既存技術の流用が難しいため、水平型多角化よりも実施するハードルは高いといえます。

3. 集中型多角化

集中型多角化とは、自社の主要技術やメイン顧客と関連性が深い多角化戦略です。
自社の技術を応用し、新分野への進出を狙います。

具体例として以下が挙げられます。

  • デジタルカメラ用のレンズを医療機器に応用する
  • 離乳食の製造技術を他の食品向けに転用する
  • はた織り機の製造技術を自動車用の繊維製品に応用する

集中型多角化は自社の技術と経験を活用できるため開発コストを抑えられるものの、新たなマーケティング施策と販売領域の拡大が必要になるため、水平型多角化よりも実施するハードルとコストは高くなります。

4. 集成型多角化

集成型多角化とは、既存製品・市場と関連性が薄い分野へ進出する戦略です。コングロマリット型多角化と呼ばれることもあります。

具体例として以下が挙げられます。

  • コンビニエンスストアが銀行業務に進出する
  • 電気メーカーがゲームや音楽などのエンタメ系事業を進める
  • サービス業がモバイル業界へ参入する

既存ビジネスとの結びつきが弱いため、4つの多角化戦略の中でもハードルが高く、コストもかかります。
その分、成功時のリターンも大きいという特徴があります。

 

アンゾフの成長マトリクスを活用するポイント

アンゾフの成長マトリクスを活用するポイントは下記です。

  • ターゲット層を意識する
  • 市場変化を意識する
  • 必要なコストを確認する
  • 新規事業だけでなく既存事業の見直しも行う

それぞれ解説していきます。

ターゲット層を意識する

アンゾフの成長マトリクスはターゲット層によって施策や手法が変わります。
そのため、「どのような顧客をターゲットにするのか」という意識が大切です。

例えば、仕事熱心なサラリーマンを対象にする場合、開発する商品はビジネス系資格の通信教材や、時間管理に役立つアプリケーションになるかもしれません。
その際のマーケティング方法としては、ビジネス層の利用が多いFacebookの広告や、セミナー集客などが考えられるでしょう。

市場変化を意識する

市場の変化を意識することにより、時代のニーズを捉えた成長戦略が実現する可能性があります。
商品やサービスの開発に限らず、流通、販売、アフターサービスなど、バリューチェーンのあらゆる段階で同様のことがいえます。

特にIT技術の進化により、AIやIoTの活用シーンが広がっている現代において重要な考え方です。

必要なコストを確認する

アンゾフの成長マトリクスを実施するには、時間および費用というコストがかかります。
どれほど優れた戦略でも必要以上にコストがかかれば利益の確保は難しくなります。
そのため、適切なコストを慎重に検討したうえで、戦略を実施する必要があるでしょう。

特に人件費、設備費、材料費や、製品開発にかかる時間の見極めが重要といえます。

新規事業だけでなく既存事業の見直しも行う

アンゾフの成長マトリクスは自社の事業領域を整理しつつ、成長戦略を検討するためのフレームワークです。
そのため、新規事業とともに既存事業の見直しが不可欠といえます。

既存事業の競争優位性や、ターゲットの需要への適合性など詳細な分析が重要です。その結果、既存事業の成長機会を見いだせるかもしれません。

特に長期的に展開している既存事業は競合企業の参入や顧客に飽きられるなどの理由により、商品・サービスが陳腐化しやすいので注意が必要です。

 

アンゾフの成長マトリクスの活用を事業戦略につなげよう

アンゾフの成長マトリクスとは、市場・製品・既存・新規の4象限のフレームワークをさします。
「事業拡大の方法がわからない」「今後の事業展開に迷っている」「顧客ニーズを理解していても売上につながらない」という企業に効果的です。

まずは市場浸透戦略を検討し、その後に新製品開発戦略・新市場開拓戦略・多角化戦略の順に考えます。
さらに多角化戦略は、水平型多角化・垂直型多角化・集中型多角化・集成型多角化の4つに分類できます。

アンゾフの成長マトリクスを活用するには、ターゲット層と市場変化を意識し、必要なコストを確認したうえで、新規事業と既存事業を見直すことがポイントです。

アンゾフの成長マトリクスを具体的な事業戦略に結びつけるには、会社の数値を明確にするツールの導入が効果的です。
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