更新日:2023/06/22 15:02
経営
ブランドエクイティとは?構成要素や測定方法・企業の成功事例などわかりやすく解説
読了まで約5分
企業にとって自社ブランドの価値向上は、継続的に利益を上げるために欠かせない要素の一つといえます。
ブランドエクイティとは、自社ブランドの価値を資産ととらえ、適切な投資により育成していくことが結果として自社の経営にも大きく影響するといった考え方です。
本記事では、自社ブランドの成長を実現させる考え方の一つ、ブランドエクイティについてその概要や構成する要素、高めるためのポイントなど事例を交えて解説します。
目次
ブランドエクイティとは
ブランドエクイティを理解するうえで、まずは概要とブランドエクイティが高いことで企業はどのようなメリットが得られるかについて解説します。
ブランドエクイティの意味
「エクイティ」とは金融用語で株式資産や自己資産を意味し、ブランドエクイティとは、ブランドが持つ資産価値を指すものです。
ブランドを資産として評価し、不動産や有価証券のような有形資産同様、適切な投資や育成により資産価値の向上を目指そうという思想、考え方を示します。
ブランドエクイティを最初に提唱したのは、カリフォルニア大学バークレー校ハースビジネススクールの研究者であったデイビッド・アレン・アーカー氏です。
資産は将来的に利益を生み出すことが一般的ですが、状況によっては負債になってしまう場合があります。
ブランドエクイティも資産と同様に利益につながるものだけでないため、価値が下がってしまうケースも含めた資産として向上を目指していこうというものです。
ブランドエクイティが高いことで得られるメリット
ブランドエクイティの向上は、企業や商品・サービスの認知につながります。
その結果、新規顧客の獲得や既存顧客の維持が実現し、売上向上が期待できるようになるでしょう。
また、ブランドエクイティの向上により、顧客が自社ブランドのファンになり、家族や友だちに勧めてくれるようになれば、さらなる新規顧客獲得の可能性が高まります。
企業が属する業界において確固たるブランド構築が実現し、価格競争からの脱却や安定したビジネスが可能になるでしょう。
ブランドエクイティの構成要素
ブランドエクイティの構成要素は、アーカーモデルとケラーモデルの2種類です。
ここではそれぞれの詳細について解説します。
アーカーモデルには5つの要素がある
アーカーモデルの提唱者はデイビッド・アレン・アーカー氏であり、下記の要素から構成されたモデルです。
ここでは、それぞれの概要について解説します。
- ブランドロイヤルティ(Brand Loyalty)
- ブランド認知(Brand Awareness)
- ブランド連想(Brand Associations)
- 知覚品質(Perceived Quality)
- その他のブランド資産(Brand Assets)
1.ブランドロイヤルティ(Brand Loyalty)
ブランドロイヤルティとは、顧客のブランドに対する忠誠心や愛着を示すものです。
ブランドロイヤルティの高い顧客は、競合が価格の安い商品を発売しても離脱することなく、自社商品を継続的に利用してくれます。
ブランドロイヤリティが高い顧客は、周囲の友人や家族に自社商品を推奨してくれる可能性があるため、次に紹介するブランド認知を高めるうえで良い影響を及ぼします。
2.ブランド認知(Brand Awareness)
ブランド認知とは、自社のブランドがどれだけの人に知られているかを示すものです。
多くの人は同価格、同品質の商品が2つあった場合、安心感から知っているブランドの商品を選択します。
つまりブランド認知があれば消費者に選択してもらえる可能性が高く、その分、資産価値も高いといえるのです。
ここで重要なポイントは、ただ知っているだけではなく、ブランドの歴史や文化などへの理解があるかどうかです。
より理解が深まるほど、継続的利用の可能性も高まります。
3.ブランド連想(Brand Associations)
ブランド連想とは、顧客がブランド名を見聞きした際に連想するものです。
たとえば「トヨタ」と聞くと、クラウンやカローラ、プリウスなどの車名が挙げられるでしょう。
「速そう」「かっこいい」などのイメージや「運転しやすい」「乗り心地がいい」などは実際の感想です。
連想するものがポジティブかつ多いほど競合との差別化につながり、自社を選択してもらえる可能性が高いといえるでしょう。
4.知覚品質(Perceived Quality)
知覚品質とは、顧客によるブランドの品質評価を指すものです。
知覚品質は価格や品質などの客観的な評価に加え、商品やサービスのイメージや好みといった顧客の主観が大きく影響します。
そのため知覚品質を向上させるには、声高に価格や品質をアピールするよりも、なぜその商品を伝えたいのか、どのような想いで商品をつくったのかのアピールが重要です。
また、企業としてのビジョンを掲げ、それを守り続ける姿勢も大切でしょう。
顧客からの信頼を裏切らないことが顧客の主観に大きく影響し、知覚品質向上にもつながります。
5.その他のブランド資産(Brand Assets)
アーカーモデルにおけるその他のブランド資産とは、ブランドに関する特許や著作権といった知的財産権、独自の技術やノウハウ、顧客との関係性といった無形の資産です。
無形の資産にしっかりと投資を行っていくことで他社から模倣されるリスクの削減が実現し、差別化が果たされ、ブランドエクイティも大きく向上していきます。
ケラーモデル4つの要素はピラミッド型で表現される
ケラーモデルとは、ダートマス大学の教授ケビン・レーン・ケラー氏が提唱したものです。
アーカーモデルが比較的企業の側に立った要素であるのに対し、ケラーモデルは顧客視点による要素を4つに分類しています。
具体的には、4つのレベルを設定し、ピラミッド型のブランドをマネジメントするプロセスでレベルが上がるほどブランドエクイティが高くなっていきます。
ここでは、それぞれの要素について解説します。
レベル1.ブランドの認知(Brand Identity)
ブランドの認知とは、アーカーモデルで紹介した「ブランド認知」と基本的には同じで、自社のブランドがどれだけの人に知られているかを見るものです。
アーカーモデル同様、ブランドの歴史や文化も含めた深い理解を進めることによる競合との差別化が欠かせません。
また、ケラーモデルにおいてブランドの認知はブランドエクイティを向上させるための土台になる部分です。
まずはブランドの認知を高めることで、一段上へと進んでいけるようになります。
レベル2.ブランドの意味づけ(Brand Meaning)
ブランドの意味づけとは、次の2つの観点から自社ブランドの現状を把握するものです。
- 自社ブランドが持つ個性や特徴、価値が顧客にどのような理解、評価を得ているのか
- 自社ブランドは顧客にどのようなイメージ、印象を与えているのか
ブランドの認知は得られても、ブランド価値が意図したものと異なる伝わり方をしていると次の段階へ進む前に離脱されてしまうリスクがあります。
そうした意味でもブランドの認知の段階で単純に名前だけでなく、歴史や文化など深いレベルで浸透させていくことが重要です。
レベル3.ブランドに対する反応(Brand Response)
ブランドに対する反応とは、実際に商品・サービスの購入や利用によって顧客がどのような評価をしたかを見るものです。
具体的には、品質や機能の使い勝手や便利さといった理性的な部分と「楽しい」「面白い」「役に立った」など感情的な部分の2つに分けて評価します。
どちらか一方だけの評価が高く、もう一方は低い評価になると競合で魅力的な商品が出た際に離脱されるリスクが高まるため、どちらも重視したブランディングが必要です。
レベル4.共感や同調(Resonance)
共感や同調とは、アーカーモデルにおけるブランドロイヤルティに該当するものです。
理性的にも感情的にも高い評価を得られ、顧客との特別な関係性が強化された状態を示します。
顧客は企業のファンとして自身はもちろん、友人や家族にも勧めてくれるようになり、ブランドエクイティ向上にも積極的に関与してくれる存在となるでしょう。
ブランドエクイティを高めるポイント
ブランドエクイティを高めるには次の3つのポイントを理解し、進めていくことが求められます。
1.組織内で意識を共有する
まずは自社の全社員がブランドのコンセプトやポジショニングを把握することが重要です。
社員がブランドを理解していないと社外へのアピールもバラバラになり一貫性が保てません。
2.認知度を高めてブランドの人気を獲得する
ブランドイメージに合わせた宣伝手法で認知度を高めていきます。
具体的には、オンラインでの広告、SNS、コンテンツの活用、オフラインでの広告、キャンペーンなどです。
BtoBの場合はセミナーや展示会なども効果的でしょう。
3.施策は継続的に実施する
ブランドエクイティを高める施策は継続的に実施しなければなりません。
基本的に顧客との関係性強化が重要なポイントであり、施策を止めると、ブランドエクイティも低下してしまいます。
既存顧客とのコミュニケーションを欠かさず行いつつ、新規顧客の獲得施策を継続していくことでブランドエクイティの向上が実現するでしょう。
ブランドエクイティの測定方法
ブランドエクイティを可視化させるには、定量的な測定が必要です。
ここでは、主なブランドエクイティの測定方法を解説します。
財務情報を用いる
財務情報をブランドエクイティの測定方法に使う場合、超過収益力(潜在的な企業価値)を利用します。
具体的には、優秀な人材、独自技術、ノウハウなど目に見えない資産で現状の無形資産を再生産する際のコストを算出する「コストアプローチ」のほか、いくつかの算出方法があります。
どのような算出方法を使うかは企業の形態や業種によっても異なるため、専門家の意見を参考に算出すると良いでしょう。
ブランドリプレイス費用から概算する
ブランドリプレイス費用とは、自社ブランドが知られていない土地で新たにブランド認知を得るためにかかる費用の総額です。
このブランドリプレイス費用がいくらかかるかで、ブランドエクイティの概算が算出できます。
具体的には、専門店の出店費用、認知獲得にかかる費用、獲得した顧客を維持するための費用などです。
架空の費用計算となるため、正確性よりも目安として参考にするとよいでしょう。
ネットプロモータースコア(NPS)を用いる
ネットプロモータースコアとは顧客ロイヤルティを図るための指標です。
既存顧客に対して、自社を友だちや家族に勧めたいかを0〜10の11段階で評価してもらい、9や10を付けた人の割合から0〜6を付けた人の割合を引いて算出します。
顧客アンケートによって具体的な数値を得られるため、現状のブランドエクイティを測定するのに最も適した方法といえるでしょう。
ブランドエクイティ戦略の成功事例
ブランドエクイティ戦略の実施によって成果を上げた企業はいくつもありますが、ここでは主な成功事例として「スターバックス」と「無印良品」を紹介します。
スターバックス
スターバックスは、店舗を自宅や職場に次ぐ3つめの場所「サードプレイス」として、落ち着いて寛げる空間の提供をコンセプトに顧客のロイヤルティ向上を実現しています。
チェーン展開をしているものの、全店舗を直営にすることでスタッフの質を向上させ、どこの店舗でも最高の味と空間を楽しめる場所としてブランドエクイティ向上に成功しました。
無印良品
無印良品は派手な演出や華美なデザインに走ることなく、シンプルかつ質の高い商品の提供をコンセプトに多くの顧客を獲得し、ブランドエクイティ向上を実現しています。
単純にシンプルなだけではすぐに模倣されて競合との差別化も果たせませんが、無印良品はすべての商品の質にもこだわることで顧客の共感を得ることに成功しました。
ブランドエクイティを高める第一歩として経営計画書を活用しよう
ブランドエクイティとは、企業のブランド価値を資産ととらえ、適切に投資をしていくことで価値向上を実現させようという考え方です。
ブランドは不動産や有価証券などのように有形ではないため、常に意識をしていないと見失いかねません。
ブランド価値を維持向上させていくには、企業としての土台を整備し、全社員が自社の方向性や大切にしていることの共有をしていく必要があります。
そこで重要になるのが経営戦略の明確化です。
自社のビジョンや方向性を明確にし、全社員で共有することでブランドエクイティの向上につながります。
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