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武蔵野コラム

更新日:2023/10/25 14:10

経営

資金繰り

CAGR(年平均成長率)とは?意味やエクセルでの計算方法を解説

読了まで約5分

投資や経営判断における重要な指標のひとつが「CAGR(年平均成長率)」です。
ビジネスの場でよく耳にする言葉ですが、計算式が複雑なこともあり、詳しい定義や活用方法を理解できていない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、CAGRの意味や計算方法、活用方法や算出するメリットなどを解説します。

CAGRの意味・読み方

CAGRは「年平均成長率」を意味する言葉で、企業の過去数年のデータをもとに、1年あたりの平均成長率を算出したものです。
「Compound Annual Growth Rate」の頭文字をとっており、読み方は「シー・エー・ジー・アール」といいます。

CAGRは、ビジネスの場において企業の本質的な経営力を見るための指標として活用されます。
例えば、売上規模の違う2つの企業の成長率を比較したり、将来的な売上の期待値を予測したりすることが可能です。

 

複利計算とは

CAGRは「複利計算」をもとに算出します。
複利計算とは、元本についた利子にさらに利子がつく仕組みです。
例えば、元本1,000万円に対して利子が3%つく場合を考えてみましょう。

このように、利益が元本に加算されて元本の額が毎年大きくなっていくため、利子が一定でも増加額が大きくなっていきます。この考え方が、複利計算です。

反対に、増加額を元本に組み入れず、一定の元本だけを対象に増加額を計算する方法を「単利計算」といいます。

 

CAGRの計算式

CAGRは、一定期間内の成長率に対し、平均すると1年あたり何%ずつ成長したのかを数値化したものです。
つまり「N年間で売上をX万円からY万円に増加させるには、利子が何%であればいいのか」を考える計算式になります。

上記の複利計算をもとにすると、CAGRの計算式は次の通りです。

CAGR = ( N年度の数値 / 初年の数値 ) ^ { 1 / ( N – 1)} – 1

計算式の「^」という記号は「べき乗」を表すものです。

例として、1年目の売上が100万円、3年目の売上が130万円だった場合のCAGRを求めてみましょう。

( 130 / 100 ) ^ { 1 / ( 3 – 1) } – 1 = 14.02%

つまり、この場合には3年間で1年あたり平均14.02%ずつ成長したことがわかります。

 

ExcelでCAGRを計算する方法

CAGRの計算にはべき乗が含まれることもあり、自力で計算するのは非常に複雑です。その場合には、Excelを利用するといいでしょう。ここでは、Excelを使ってCAGRを計算する方法を2つ紹介します。

数式を利用する

1つ目は、上記で紹介した計算式を利用する方法です。

以下の画像のように、年度ごとの売上を入力し、次の行には計算式「( N年度の数値 / 初年の数値 ) ^ { 1 / ( N – 1)} – 1」を入力します。
「N年度の数値」「初年の数値」「N」の部分は、セルや数値に置き換えてください。
ここでは「=(F2/B2)^(1/(5-1))-1」と入力します。

エンターを押して算出された数値に、100をかけた数値がCAGRです。
ここでは「=B3*100」と入力して、エンターを押します。

この企業の5年間のCAGRは、約8.78%と算出されました。

また、B3セルで表示された数値の書式設定を「パーセント スタイル」に切り替えても、CAGRを表示させることができます。

POWER関数を利用する

もう1つは、数字のべき乗を求められる「POWER関数」を使う方法です。
この場合には、以下の計算式をセルに打ち込みます。

=POWER(N年度の数値/初年度の数値,1/(N-1))-1

先ほどと同様に、「N年度の数値」「初年度の数値」「N」の部分は、セルや数値に置き換えます。
ここでは「=(F2/B2)^(1/(5-1))-1」と入力します。

エンターを押して表示された数値を、パーセントに換算した数値がCAGRです。
先ほどのように100を掛けるか、書式設定で「パーセント スタイル」を選択してください。

 

CAGRを計算するメリット

CAGRを算出すると、以下のような情報を把握でき、分析や予測に活かすことができます。

成長率が比較できる

CAGRを算出すると、同じ期間・同じ指標において企業を比較できるようになります。
そのため、ひとつの企業を分析するだけでなく、売上規模や業界の異なる複数企業の将来性や期待値を比較する際にも活用できます。

特に、売上データの計測期間が揃っていない時にCAGRの算出は役立ちます。
例えば、A会社では過去10年分の売上データが揃っているものの、起業したばかりのB会社では3年分のデータしか取れていない場合、データそのものを比較してもどちらの成長率が高いのか明確になりません。

CAGRを算出すれば、1年あたりの平均成長率を割り出せるため、データの期間が揃っていなかったり、データが抜けていたりする場合でも比較が可能です。

来期の売上予測ができる

将来的な売上予測ができるため、CAGRは投資先の選定や銀行の融資、M&Aの際などにも利用できます。

例えば、過去10年間のCAGRが5%の企業を分析する場合、今年度の売上が500万円だったら、来期には525万円、その次には551万円の売上が期待できます。
このように、簡易的な成長予測ができることから、金融機関や投資家に対して、自社の経営の安定性や貸し倒れの危険性の低さをアピールできるのです。

ただし、CAGRを用いた予測はあくまでも簡易的なものであり、急激な売上増加を遂げた企業についてはあまり参考になりません。
参考のひとつとして、他の指標とも組み合わせながら総合的に判断する視点が大切です。

長期目線での安定性を確認できる

短期間におけるCAGRと、長期間でのCAGRを比較すれば、その企業が長期的に安定して成長しているかどうかがわかります。

例えば、直近3年間のCAGRが高水準を示していても、過去10年間のデータではそこまで高い値ではない場合、何らかの原因で突発的に業績が伸びたものと推測できます。
急激な売上の伸びを長期的に維持できるとは限らないため、必ずしも経営が安定しているとはいえないでしょう。
反対に、直近のCAGRが低迷していても、長期的には成長率が高いのであれば、業績の回復が見込めるかもしれません。

このように、短期・長期のCAGRを比較することで、より確実な企業分析につながります。

イレギュラーな成長率の調査

前述のように、特定の期間だけCAGRが極端に上昇した・低迷したことを発見できれば、その原因を詳しく調査するためのきっかけとなります。

CAGRが極端に大きい数値を示している期間がある場合、その原因が一時的なこともあれば、継続的な成長が期待できるケースもあります。
例えば「その企業の商品がSNSで話題になった」という理由であれば、その影響は一時的なものと考えられるでしょう。
「新製品が従来と異なる層のファンを掴み、新市場開拓に成功した」といった理由であれば、継続的な売上維持が期待できます。

CAGRのみで成長の背景を読み取ることはできませんが、数値の上下を見落とさなければ、より詳しい分析につなげることが可能です。

 

CAGRと一緒に使いたい指標

CAGRは参考指標のひとつとして、他の指標と組み合わせて企業分析に活用することが重要です。
ここでは、CAGRと関連性の高い指標を2つ紹介します。

PER(株価収益率)

PERは「Price Earnings Ratio」の頭文字を取った言葉です。
1株あたり企業の利益水準の何倍の値段がついているのかを示しており、現在の株価が割高か・割安かを判断できます。

PERの計算式は、次の通りです。

PER=現在の株価÷1株当たりの収益

算出された数値の高い方が株価が割高、低い方が割安と判断できます。

例えば、次の2つの数値を比べてみましょう

・株価300円で、1株あたりの利益が30円ならPERは10倍
・株価600円で、1株あたりの利益が30円ならPERは20倍

この場合、利益が同じであってもPER10倍の方が割安であるとわかります。

とはいえ、成長が期待されている企業ほどPERは高くなるため、割安であればよいわけでもありません。
長期間のCAGRと合わせて、PERの推移や同業他社とも比較して判断することが大切です。

PBR(株価純資産倍率)

PBRは「Price Book-value Ratio」の略で、1株当たり純資産の何倍の値段がついているかを確認できます。
PERと同様に、現在の株価が割高か・割安かと判断できる指標です。

PBRは、以下の計算式で算出します。

PBR=現在の株価÷1株当たりの純資産

例として、以下の2つの指標を比べてみましょう。

・株価1000円で、1株あたりの純資産が500円ならPBRは2倍
・株価500円で、1株あたりの純資産が500円ならPBRは1倍

算出された値が低い方が割安と判断できますので、株価が500円でも下の例の方が割安といえます。

ただし、PBRが1倍を切っていると、業績悪化による割安の可能性が考えられます。
CAGRと組みわせて、長期的な成長性に問題がないか慎重な判断が求められます。

 

CAGRの特徴を理解して活用してみよう

CAGRは、企業の将来的な成長性を判断するために活用できる指標です。
CAGRを用いれば、短期間・長期間の数値を分析してイレギュラーな売上増加の原因を特定したり、売上規模の異なる複数会社の業績を比較したりできます。

算出が難しいように感じられるかもしれませんが、その場合にはExcelを利用する方法がおすすめです。
簡単な表作成で算出できますので、経営判断の参考指標として活用してみましょう。

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執筆者情報

執筆者の写真

佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役

1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。

経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。

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