更新日:2024/04/10 14:56
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フリーキャッシュフローとは?意味や求め方をわかりやすく解説
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フリーキャッシュフローとは、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いた値で、企業が自由に運用できる資金です。企業の経営状況を判断する指標であることから、近年その重要性が注目を集めています。ただし、フリーキャッシュフローは数値の大小だけでなく、その内訳を詳しく分析することが大切です。
この記事では、フリーキャッシュフローの定義や計算方法、分析におけるケーススタディなどを分かりやすく解説します。
目次
フリーキャッシュフローの定義
フリーキャッシュフローとは、事業で得た資金のうち、会社が自由に使えるキャッシュのことです。略して「FCF」ともいわれます。会社が日々の事業活動で得たキャッシュから、経営活動や投資活動などにかかるお金を差し引き、残った金額がフリーキャッシュフローに当たります。
フリーキャッシュフローが多ければ、事業拡大に必要な設備への追加投資や株主への配当、借入金の返済など、自由な資金運用が可能になります。そのため、フリーキャッシュフローが豊富な会社は経営状況が良好と判断でき、企業の経営状況を測る指標として活用されています。
フリーキャッシュフローの計算式
フリーキャッシュフローは、次の計算式で求められます。
投資キャッシュフローは基本的にマイナスとなるため、「営業活動のキャッシュフローから投資活動のキャッシュフローを差し引く」といってもいいでしょう。営業活動により得られたキャッシュが投資活動によるマイナス分を上回っていれば、自由な運用に使えるフリーキャッシュフローが増えるということであり、経営状況が良好といえるのです。
フリーキャッシュフローの具体例
それでは、実際に計算式を用いてフリーキャッシュフローを計算してみましょう。
例として、以下のケースを考えます。
・営業キャッシュフロー
製品売り上げによる収益:1,000万円
仕入れ費用:250万円
経費:100万円
・投資キャッシュフロー
設備維持費:300万円
計算式に当てはめると、以下の通りです。
(1,000万円 – 250万円 – 100万円)- 300万円 = 650万円 – 300万円 = 350万円
営業キャッシュフローの合計が650万円であり、そこから投資キャッシュフロー300万円を差し引いて、350万円がこの月のフリーキャッシュフローとなります。
3つのキャッシュフロー計算書
キャッシュフローの計算書は「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つに分けて表示されます。それぞれの内容を詳しく解説します。
営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローとは、製品の仕入れ・販売、人件費の支払いといった経費など、本業によって得られたキャッシュの量を示した値です。日々の事業活動によってどのくらいの利益を生み出せているかを示す値ですので、基本的にはプラスであることが望ましいとされています。反対にマイナスである場合には事業活動に問題がある可能性が高いと考えられます。
ただし、起業したばかりで成長過程にある場合など、一時的に営業キャッシュフローがマイナスになっているケースもあります。単純な数値だけで判断せず、キャッシュフローがマイナスになっている原因をよく見極めることが重要です。
投資キャッシュフロー
投資キャッシュフローは、設備投資や維持、土地の取得・売却、企業買収など、将来に向けた投資活動によるキャッシュの流動量です。また、余剰資金の運用とそれによる回収も投資キャッシュフローに記載されます。
設備や不動産などの固定資産を取得した時にはキャッシュを支払うためマイナス、売却した時にはキャッシュを獲得するためプラスとなります。
企業の投資活動は固定資産の運用や企業買収が必須のため、投資キャッシュフローはマイナスになることが多いです。固定資産の獲得が集中する年があると、営業活動が順調であってもフリーキャッシュフローがマイナスになるケースもあります。
財務キャッシュフロー
財務キャッシュフローは、資金調達や返済によるキャッシュの増減を示す値です。金融機関からの借入や返済、株式発行による資金増加など、企業がどのような手段で資金調達したかが分かります。
金融機関から調達した資金はいずれ返済しなければならないため、財務キャッシュフローはプラスであればいいというわけではありません。とはいえ、適切なタイミングで事業成長を図るには、負債を負う決断が必要な時もあるでしょう。
財務キャッシュフローは単純な値の大小ではなく、どのように増減しているか、企業の返済能力を超えていないかを細かくチェックすることが大切です。
フリーキャッシュフローのケーススタディ
フリーキャッシュフローは企業が自由な事業活動に使える資金であり、企業の経営状況を判断する指標でもあります。一方、単純にプラスなら経営が順調でマイナスなら不調という訳ではなく、各区分のキャッシュフローの状況から総合的に判断することが大切です。
ここでは、複数のケースに分けてフリーキャッシュフローの分析例を解説します。
営業・財務キャッシュフローがプラス
営業キャッシュフローと財務キャッシュフローがプラスである場合は、本業で十分な利益を得られており、さらに金融機関からも必要な融資を受けられている状態です。投資キャッシュフローがマイナスであっても、将来に向けた投資を行っているものと考えられますので、経営状況は良好と判断できるでしょう。
営業・財務キャッシュフローがマイナス
反対に、営業キャッシュフローと財務キャッシュフローがマイナスで、投資キャッシュフローがプラスの場合には注意が必要です。本業で十分な利益を得られておらず、借入によって赤字を埋めていたり、保有している設備や不動産を売却してマイナス分を相殺したりしている可能性があります。
新製品のリリースなど今後の大幅な収入増が見込まれる状況でない限り、経営状況の見通しは不透明といえるでしょう。
このように、フリーキャッシュフローがプラスであれば、必ずしも経営状況が順調というではありません。フリーキャッシュフローがなぜプラスになっているのか、その内訳を精査し、財務状況が本当に健全であるのか冷静に見極める姿勢が重要です。
投資キャッシュフローが大きくマイナス
投資キャッシュフローは基本的にマイナスになる指標ではあるものの、営業キャッシュフローを超えて大きくマイナスになっている場合は注意が必要です。企業の経営状況にそぐわない大幅な投資活動をしている可能性があります。
ただし、企業成長を目指す上で一定の投資は必要不可欠であり、「投資キャッシュフローが大幅にマイナス=経営状況が悪い」とも判断できません。事業拡大や新事業の開拓を行っている場合には、一時的に投資キャッシュフローが大きくマイナスになることがあります。
特に、起業間もないスタートアップやベンチャー起業などでは、先行投資によりマイナスになるケースが多いです。その場合は、財務キャッシュフローを見てみるといいでしょう。財務キャッシュフローが大きくプラスになっていれば、今後の事業に対して大規模な投資が必要になり、大きな融資を受けたものと考えられます。
フリーキャッシュフローはプラスで財務キャッシュフローがマイナス
フリーキャッシュフローがプラスであっても、財務キャッシュフローがマイナスになっている場合は注意すべき状況です。本業ではプラスを出せているものの、過去の投資や資金調達でつくった莫大な借入があり、その返済に追われている可能性があります。
しかし、財務キャッシュフローがマイナスだからといって一概に経営状況が悪いともいえません。本業で得た利益で順調に返済を進められており、新たな資金調達ができているため財務キャッシュフローがマイナスになっている可能性が考えられます。その場合には大きな問題はないといえるでしょう。
一方で、金融機関から追加の融資を受けられないため財務キャッシュフローがマイナスになっているケースもあります。営業キャッシュフローや投資キャッシュフローとのバランスを見て、資金調達の状況を判断することが大切です。
フリーキャッシュフローがプラスの場合の使い道
全体のフリーキャッシュフローがプラスであれば、設備への追加投資や借入金の返済が可能です。使い道は企業の判断によりますが、新市場への参入や既存事業の拡大など、さらなる企業成長が期待できます。
また、事業に必要な資金を留保し、余剰が出た場合には配当金の原資にするケースが多いです。株主に適切なリターンをして関係性を強固にすることは経営における重要事項ですので、フリーキャッシュフローの効果的な使い方といえるでしょう。
フリーキャッシュフローは中長期スパンで確認しよう
フリーキャッシュフローは企業の経営状況を判断するための重要な指標です。ただし、単純な数値の大小ではなく、キャッシュフローのバランスを見て総合的に判断する必要があります。
また、先行投資により一時的にフリーキャッシュフローがマイナスになるケースもあるため、3~5年程度の中期的なスパンで分析することも大切です。各区分がプラス・マイナスになっている理由を把握し、将来的な可能性を考えながら分析を行いましょう。
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執筆者情報
小山 昇 / 株式会社武蔵野 代表取締役社長
1948年、山梨県に生まれ、東京経済大学卒業。
1977年、株式会社ベリーを設立し社長に就任。
1989年、現職に就任。
1990年、株式会社ダスキンの顧問に就任。
1992年、顧問を退任し現在に至る。
全国の経営者でつくる「経営研究会」主催。
株式会社武蔵野は2000年日本経営品質賞、2010年国内初日本経営品質賞2度目の受賞。
現在パートナー会員750社以上の会員企業をアドバイス。
日本経営品質賞受賞の軌跡、中小企業のIT戦略、実践経営塾、実践幹部塾と、全国で年間1900回以上のセミナーを行っており、訪問社数も年間約120社を超える。
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