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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/10/25 14:08

経営

キャズム理論とは?発生する原因や超えるためのポイント・事例を解説

読了まで約4分

多くの場合、新製品・サービスの開発には多額のコストや手間が発生します。
そのため、思ったように売上が伸びなければ大きな損失につながってしまうおそれも少なくありません。
新製品・サービスが市場で普及するかどうかの重要なポイントとなるのがキャズム理論です。

本記事では、キャズム理論を知るうえで欠かせないイノベーター理論の概要、キャズムが発生する原因や溝を超えるためのポイントなどをお伝えします。
自社の製品・サービスの売上に課題を抱えている経営者の方や代表者の方はぜひ参考にしてください。

キャズム理論とは

キャズム理論とは、企業が新たに発売した製品・サービスが市場に普及するために超えなければならない溝について説いた理論です。
ここでは、まずキャズムという言葉の意味、キャズム理論の概要のほか、キャズム理論を理解するうえで知っておくべきイノベーター理論について解説します。

キャズムという用語の意味

キャズムとは、「深い溝」や「隔たり」といった意味を持つ言葉です。
ビジネスにおいては、お客様に新製品・サービスを認知してもらい、浸透させる際に発生する大きな障害や乗り超えなくてはならない溝などを指します。

このキャズムを理論としてビジネスの世界に持ち込んだのは、米国の著名経営コンサルタントでマーケティングの世界的権威者として知られるジェフリー・ムーア氏です。
1991年に自著「キャズム」のなかで主にハイテク市場のマーケティング戦略として提唱しました。

なお、キャズム理論のもとになったイノベーター理論は、1962年にアメリカ・スタンフォード大学の社会学者 エベレット・M・ロジャース教授が提唱したものです。
具体的な内容は次で詳しく解説します。

イノベーター理論とは

イノベーター理論とは、新製品・サービスが市場に出た際の普及率を表すマーケティング理論です。
普及率は新製品・サービスを購入する順番を早いものから5つの層に分けています。

具体的には、初期市場に属する「イノベーター(革新者)」「アーリーアダプター(初期採用者)」。
そしてメインストリーム市場に属する「アーリーマジョリティ(前期追随者)」「レイトマジョリティ(後期追随者)」「ラガード」です。
それぞれの特徴や詳細については次で解説します。

イノベーター(革新者)

イノベーターは、情報感度が高い層ですが全体に占める割合はわずか2.5%です。
自身が興味関心を持つジャンルの新製品・サービスが発売されると同時に購入・利用します。

価格や一般的なメリットよりも自身の価値観に合うかどうかを重視し、合えば積極的に利用するタイプです。

そのため、絶対数が少ないこともありますが、イノベーターが購入・利用したことで即一般層にも普及するというわけではありません。

 アーリーアダプター(初期採用者)

アーリーアダプターが全体に占める割合は13.5%で、イノベーターとは異なり製品・サービスの価格やメリットを重視するタイプです。

そのため、アーリーアダプターが購入・利用する製品・サービスは一般層にも普及する可能性が高いといえます。

情報感度はイノベーターに続く層ではありますが、一般層に普及させる影響力はもっとも高く、インフルエンサー的存在といえるでしょう。

アーリーマジョリティ(前期追随者)

アーリーマジョリティは、アーリーアダプターに強い影響を受ける層です。
全体に占める割合も34%と5つの層のなかでも次のレイトマジョリティに並びもっとも多いタイプです。

最大の特徴は、インフルエンサーであるアーリーアダプターが購入・利用する製品・サービスにいち早く反応する点が挙げられます。

アーリーマジョリティが購入・利用すれば、その製品やサービスは普及段階に入ったと考えてもよいでしょう。
新製品やサービスが市場全体で認知されるうえで重要な役割を担っているともいえます。

レイトマジョリティ(後期追随者)

レイトマジョリティも全体に占める割合が34%で、アーリーマジョリティと合わせて68%となるため、この2つの層にまで製品・サービスが認知されれば、ほぼ普及したといえるでしょう。

レイトマジョリティは、流行りにすぐ飛びつくタイプではないものの、流行っていることが購入・利用の重要な要素の一つです。

普及が進んだことで購入・利用の検討をすることから「フォロワーズ」と呼ばれています。
流行っている製品・サービスが自身のニーズに合っているかどうかが主な判断基準です。

ラガード

ラガードは5つの層のなかでもっとも保守的な層であり、新しい製品・サービスを受け入れるのに時間を要します。

古くからあるもの、使い慣れたものを優先するため、自身の生活様式を変えてまで新しいものを購入・利用しようとはせず、場合によってはそのまま購入・利用をしないケースも少なくありません。

ラガードが全体に占める割合は16%と決して少ない数字ではありませんが、ラガード以外の84%が認知し、購入・利用していれば十分普及したといえます。
そのため、ラガードの購入・利用が製品・サービスに与える影響は大きくはありません。

 

なぜキャズムが発生するのか

新製品・サービスの普及において、なぜキャズムが発生するのでしょうか。
それはイノベーター理論における初期市場とメインストリーム市場の間に大きな溝があるからです。

初期市場である「イノベーター」と「アーリーアダプター」は製品・サービスを購入・利用する際の判断基準として先進性や新規性を重視しています。
特にイノベーターは、価格やベネフィット以上に新しさが重要な判断基準です。

これに対し、「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」のメインストリーム市場では、新しいというだけで無条件に受け入れることはありません。
どの程度の人が認知しているのか、流行っているのか、信頼して大丈夫なのかなど、新規性よりも多くの人が使っているという安心感を重視する傾向があります。

そのため、アーリーアダプターからアーリーマジョリティへ続く箇所に大きな溝が生まれ、キャズムが発生してしまうのです。

 

キャズムを超える3つのポイント

キャズムを超え、新製品・サービスを普及させるためにはいくつかのポイントがあります。
そのなかでも欠かせない3つのポイントを解説します。

1. アーリーマジョリティにアプローチする

キャズムを超える1つめのポイントはアーリーマジョリティへのアプローチです。
メインストリーム市場の第一段階であるアーリーマジョリティに普及すれば、キャズムを超える可能性は大幅に向上します。

アーリーマジョリティにアプローチする手段としては、人気ブロガーやSNS上のインフルエンサーに働きかけるのが効果的です。
アーリーマジョリティは、インフルエンサーであるアーリーアダプターの口コミやレビューに大きな影響を受ける傾向があります。

そこで、ブログや動画、SNSなどでアーリーアダプターにPRを依頼すれば、成果につながる可能性が高まるでしょう。
なお、アプローチをする際は、数字や実績など信頼性を高める点を強調するとさらに成功確率が向上します。

2. ユーザビリティを高めていく

メインストリーム市場では、ユーザビリティを高めていくことが重要です。
メインストリーム市場のユーザーにとって使いやすさやは安心感につながる重要なポイントであり、使いにくい、説明が少ないなどの理由で購入を止めるケースは少なくありません。

そのため、キャズムを超えるにはお試し版を提供し、アンケートやインタビューによる改善点の把握、見直しを実施していくことが必要になります。

3. 狭い市場をターゲティングし確実なシェアを獲得する

キャズムを超えるには、ユーザビリティの改善やユーザーの課題解決につながる製品・サービスの開発と同時に、戦略的なマーケティングも重要です。

大きな市場で普及させるのは難しいため、まずは狭い市場で確実にシェアを獲得し認知度を高め、次の狭い市場を狙っていくとよいでしょう。

たとえば、最初は特定の地域のみで販売し、シェアを獲得したら次は隣の地域で販売します。
狭い市場のシェアをひとつずつ獲得していくことで、キャズムを乗り越えて売上向上につながります。

 

キャズムを超えた成功事例

ここで、キャズムを超えた成功事例として「メルカリ」と「ネスカフェアンバサダー」の事例を紹介します。

成功事例1.メルカリ

メルカリがキャズムを超えた最大のポイントはメディアの活用です。
初期市場の段階でサービスの改善を繰り返し、一定の質を担保し、アプリのダウンロード数が200万を超え、2014年5月から一気にテレビやネット広告で露出を増やしました。

その結果、メインストリーム市場のユーザーからも認知を得て、9カ月後の2015年2月には1,000万ダウンロードを達成。
さらに2017年12月には全世界で1億ダウンロードを達成する人気アプリとなっています。

参照:フリマアプリ「メルカリ」が世界1億ダウンロードを突破 〜今後グローバル展開をさらに加速すべく、ネイマール選手がグローバルブランドアンバサダーに就任〜

成功事例2.ネスカフェアンバサダー

ネスカフェアンバサダーは、外で美味しいコーヒーを飲める場所が少ないといったお客様の課題解決手段として生まれたサービスです。
オフィスにコーヒーマシンを無料で提供し、コーヒーの専用カートリッジを販売しています。

キャズムを超えたポイントは、職場にいる一人にアンバサダーという資格を付与した点でしょう。
アンバサダーが初期市場のユーザーとなり、メインストリーム市場の社員に対し、美味しいコーヒーの体験を促すことで利用者が拡大し、2019年8月には46万人を突破しています。

参照:ネスレ日本「プレスリリース

 

キャズム理論を応用し新サービスの展開を成功させよう

キャズム理論とは、新製品・サービスが市場に普及するために超えなければならない溝について説いた理論です。

先進性や新規性を求めるお客様から安心感を求めるお客様へ製品・サービスをつなげるには、ユーザビリティの改善や狭い市場でのシェア獲得を繰り返していくことが欠かせません。
狭い市場のシェアを獲得していくうちにキャズムを乗り越えて売上の向上につながるでしょう。
キャズムを乗り越える施策の一つとして武蔵野の「経営計画書」がおすすめです。

武蔵野の「経営計画書」は会社の数字や方針をまとめた手帳型のルールブックです。
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執筆者情報

執筆者の写真

佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役

1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。

経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。

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