更新日:2022/10/25 15:00
経営
CSM(カスタマーサクセスマネージャー)とは?注目の理由や役割・業務内容を紹介
読了まで約3分
近年CSM(カスタマーサポートマネージャー)が注目されています。
しかし「自社にとって必要かどうか分からない」という企業経営者も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、CSMの役割や業務、注目されている理由、カスタマーサポートとの違いなどをわかりやすく解説していきます。
この記事を読むことで、自社におけるCSMの必要性が分かるでしょう。
目次
CSM(カスタマーサクセスマネージャー)とは?
そもそも「カスタマーサクセス」とは、自社のサービスや製品を顧客に販売するだけでなく、利用してもらいながら顧客を成長や成功へ導くための概念です。
カスタマーサクセスは直訳すると「顧客の成功」のことであり、顧客の成功に向けて動く部門といえます。
受け身ではなく能動的に顧客に働きかけるという特徴があります。
顧客が商品やサービスを利用して期待どおりの成果を得られたり、達成したいゴールに到達できたりする状態を「顧客の成功」と定義しています。
「顧客の成功」のために継続的な関係を築きながら、積極的にサポートしていく役割がカスタマーサクセスといえるでしょう。
CSMはカスタマーサクセスマネージャー(customer success manager)の略で、企業内でカスタマーサクセスを実践する責任者です。
カスタマーサクセス部門の責任者である「カスタマーサクセスマネージャー(CSM)」は、どのような役割を担い、具体的にどのような業務を行うのでしょうか。
CSMが最近注目されている理由や混同されやすいカスタマーサポートとの違い、CSMに必要なスキルなどについて解説していきます。
CSM(カスタマーサクセスマネージャー)が注目されている理由
CSMはSaaSなどサブスクリプション型のビジネスモデルの広がりと共に注目を集めるようになりました。
SaaSとはクラウドコンピューティングに含まれる概念で、インターネットで利用できるソフトウェアのことです。
サブスクリプション型ビジネスの短期的な売上は小さいものの、顧客が継続契約することで持続的な収入に繋がります。
他にも、市場の成熟による競合企業との差別化やCRM(顧客管理ツール)の浸透によってCSMの重要性は高くなっており、顧客を成功に導きながら企業の利益を増やす職務として注目されています。
カスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、顧客の課題を解決する姿勢が大きく異なります。
カスタマーサポートの主な役割は「顧客のクレーム処理や不満の解決」です。
顧客が商品やサービスを利用後、自社にコンタクトを寄せてきた際に、その課題が提示されたタイミングで受動的に応答するのがカスタマーサポートです。
一方、カスタマーサクセスの主な役割は「顧客の成功体験の実現」です。
顧客が商品やサービスに申し込んだ後、自社にコンタクトが寄せられる前に顧客の課題を先回りして予測し、能動的に解決を図ります。
このようにカスタマーサポートとカスタマーサクセスには、受動と能動という大きな違いがあるのです。
CSM(カスタマーサクセスマネージャー)に求められる役割
CSMにはカスタマーサクセスのKPIやKGIをマネジメントして、企業の利益増大を目指す役割があります。
ここでは一例として、成果指標(KPI)をもとにCSMの具体的な役割を解説します。
チャーン率(解約率)を減らす
チャーン率とは解約率を意味するワードでCSMが重視しなければならない指標です。
たとえばit企業に多いサブスクリプションモデルでは、初月無料などの販促キャンペーンを実施することがあります。
その場合に売上を確保するには、2ヶ月目以降の継続課金がポイントです。
初月無料期間のチャーン率が高ければ、売上よりも広告費が高くなるリスクがあるでしょう。
CSMがカスタマーサクセスを主導してチャーン率を減らすことができれば、必然的に利益を確保できます。
このようにサブスクリプションモデルでは、新規獲得だけでなく既存顧客の継続も重要です。
オンボーディング施策を早期に進める
オンボーディングには「船や飛行機などの乗組員がサポートを受けて慣れる」という意味があります。
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングとは商品・サービスの顧客満足度を高めることで継続的な利用を促す仕組みを指します。
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングの定義例は、サービスの使用方法に慣れ、使えていること・初期設定が完了し早期にチュートリアルが終了していること・サービスのメリットを理解し必要だと感じていること、などがあげられます。
つまり、使える状態(定着)となったうえで必要性を感じている(役に立つ)状態がオンボーディングといえます。
顧客が商品・サービスに申し込んだ後、早期にオンボーディングの状態に至ればチャーン率を低くおさえられるでしょう。
ただし「早期」の具体的な時期は、商品やサービスによって異なります。
1ヶ月ごとの継続課金ビジネスであれば1ヶ月以内が早期と考えられますし、3ヶ月ごとの継続課金であれば、3ヶ月以内が早期といえるでしょう。
アップセル率を向上させる
アップセル率とは顧客単価のアップを意味する言葉です。
SaaSモデルの場合、たとえば低額のスタータープランから標準価格のスタンダードプランへの移行、さらにスタンダードプランから高額のプレミアムプランへの移行と、上位機能への契約率を指します。
上位価格のプラン変更によってアップセル率を高めるには、顧客が最初に申し込んだプランの満足度が大切なのでCSMの役割は重要です。
クロスセル率を向上させる
クロスセル率とは、関連した商品やプランの契約率を意味する言葉です。
ファーストフード店の「ポテトはいかがですか?」が分かりやすい例ですが、SaaSモデルの場合はオプション価格で機能を追加したり、関連製品とのセット販売をしたりすることが考えられます。
クロスセルの目的は、顧客ひとり当たりの売上単価の向上です。
クロスセル率は顧客数を保ったまま総売上額を増やせるため、新規顧客を獲得するよりも低コストで展開できます。
CSM(カスタマーサクセスマネージャー)の主な業務内容
CSMの具体的な業務内容を紹介します。
ただし企業や職種によって詳細は異なるため、一般的な具体例として参考にしてください。
顧客対応・効果測定
前述したようにカスタマーサクセスを実現するには、まずオンボーディングという目的があります。
カスタマーサクセス部門における顧客との接触方法は次の3つです。
- ハイタッチ:専属カスタマーによる電話・対面による個別サポート
- ロータッチ:適切なタイミングでの電話・対面による個別サポート
- テックタッチ:一斉送信メッセージ・セミナーなどによるサポート
全ての顧客に対してハイタッチによる接触が理想的ですが、企業リソースの問題により、テックタッチが活用される例も少なくありません。
なお、オンボーディング完了後は効果測定を行いましょう。
効果測定を行わなくても、オンボーディング自体が無効になることはありませんが、効果測定によって改善点を把握できます。
LTV(顧客生涯価値)の最大化
LTVはLife Time Value(ライフ・タイム・バリュー)の略です。
顧客が特定企業の商品やサービスを購入し続ける期間(顧客ライフサイクル)の売上貢献率を図る指標として利用されています。
顧客のリピート率を高めてLTVが向上すれば、新規顧客を獲得するコストを軽減できますし、新商品やサービスを市場にリリース(launch)した際も一定の購買数を見込めるでしょう。
LTVに関連した業務としてMA(マーケティングオートメーション)を用いることが多く、CSMが主要な役割を担います。
プロダクト改善を行う
プロダクト改善とは顧客へのアンケートやインタビューなどによる情報抽出です。
自社の商品やサービスを効率的に改良するにはフィードバックが重要です。
特に企画開発部やマーケティング部にフィードバックすることで、今後の製品開発やプロモーションに有効活用できるでしょう。
そのようなプロダクト改善にもCSMは深く関わります。
アップセル・クロスセルを判断し展開する
前述したアップセル・クロスセルの展開もCSMの仕事のひとつです。
どの顧客に対してアップセルやクロスセルを提案するのかをCSMは判断します。
ただし顧客の状況によっては、ダウンセルが必要になるかもしれません。
ダウンセルとアップセルは逆の概念です。
たとえばSaaSモデルなら、最高級のプレミアムプランから一般的なスタンダードプランへの変更などが該当します。
ダウンセルによって短期的な売上は下がるかもしれませんが、顧客からの信頼性がアップすることにより、LTVの向上が期待できるでしょう。
7csのような共生マーケティングにも繋がる概念ではないでしょうか。
CSM(カスタマーサクセスマネージャー)に必要なスキル
CSMにはコミュニケーションスキルと統計力が必要です。それぞれ解説します。
コミュニケーションスキル
前述したCSMの業務を行うにあたって、顧客との円滑なコミュニケーションは必須です。
顧客の性格や状況を理解したうえでヒアリングする機会もあれば、その情報を社内で共有する機会もあるでしょう。
また、目標に向かってチームで取り組む場合もコミュニケーションスキルは重要です。
統計力
CSMには数値をロジカルに読み解くスキル(統計力)も必須です。
目標達成の中間指標であるKPIや最終目標のKGIなどの指標を用いながら、収集した数値を考察する必要があるでしょう。
顧客に対して適切な提案を行うためにも、統計力はCSMにとって重要なスキルです。
マネジメント力・コミットメント力
CSMはプロジェクトマネジメント力が必要です。
マネージャーというポジションなので、必然的に組織内でマネジメントを担うことになるでしょう。
ただ、カスタマーサクセスは日本における歴史が浅く、ゼロから仕組みを作り上げる場合も多くなっています。
また、カスタマーサクセスは早期に結果が出ないケースが多いため、社内や顧客から冷たい反応を受けることがあります。
その際も辛抱強く業務に取り組む必要があるため、コミットメント力が大切です。
CSM(カスタマーサクセスマネージャー)は自社の利益をサポートする重要な役職
CSMは企業内でカスタマーサクセスを実践する責任者です。
カスタマーサクセスは自社の継続的な利益に繋がるため、競合企業との差別化のためにもCSMを検討してみてはどうでしょうか。
特にサブスクリプションモデルを手掛けている企業にとって、CSMの重要性は高いといえます。
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