更新日:2022/11/30 17:14
経営
CSV経営とは?CSRとの違いや定義、目的、導入メリット・デメリットを解説
読了まで約3分
世界的に環境や社会問題に対する意識が高まっている背景から、新たな経営手法である「CSV経営」に注目が集まっています。
CSV経営の概念を正しく理解し、自社の経営に活かすことで、社会貢献だけでなく自社の製品力やブランド力強化につながるかもしれません。
本記事では、CSV経営の基礎知識や会社が取り入れるメリット・デメリット、実際の企業事例などをわかりやすく解説します。
目次
CSV経営の意味
CSVとは「Creating Shared Value」の頭文字をとった言葉で、直訳すると「共通価値の創造」となります。
2011年にマイケル・E・ポーター教授とマーク・R・クラマー氏が『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌において提唱し、社会に広く認識されました。
CSV経営は、自社の事業活動によって社会課題の解決を図り、自社事業の意義を社会にアピールする経営手法です。
つまり、CSVは単なる社会貢献活動ではなく、マーケティング活動の一環であり、企業が経済成長するための新たな手法といえます。
これまで、環境保護などの社会奉仕活動と、企業による利益追及は相反するものと捉えられてきました。
しかし、CSVでは社会奉仕と事業活動のベクトルを一致させ、両者を両立させる点に意義があります。
地球温暖化をはじめとする世界規模の環境問題が露呈していることから、日本だけでなく全世界で社会的課題への関心が高まっています。
この流れから、企業にもSDGsやサステナブル経営など環境や地域社会に配慮した経営が求められるようになり、中小企業でのCSV経営導入が進みました。
CSRとの違い
CSRは「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとった言葉で、「企業の社会的責任」と訳されます。
地域社会や社会が抱えている課題、ステークホルダーに対して、企業が果たすべき役割や責任を指す言葉です。
具体的には、植林などの環境保護活動、地域の住民と行うボランティア活動、法令の遵守やコンプライアンスなどがCSRに含まれます。
CSRは直接、企業利益に結びつかないものの、企業が果たすべき責任のことを指しています。
一方、CSVは社会課題の解決を果たしながらも利益追求を行うことが目的という点で異なります。
CSV経営のメリット
CSV経営への取り組みは社会貢献だけでなく、企業には次のようなメリットをもたらします。
社会課題の解決
最大のメリットは、自社のサービスや商品によって社会課題を解決できる点です。
CSV経営では、会社は利益を生み出すために存在しているのではなく、消費者ニーズに応え、社会が抱える課題を解決することを目指して事業を始めると捉えます。
利益をまったく追求しないという考えではなく、社会課題の解決ありきで経営を行うため、世の中に良い影響を与えられるのが最大のメリットといえます。
また、環境への意識が高まる昨今では、大企業だけでなく中小企業にも社会課題への取り組みが求められています。
社会課題に積極的に取り組むことで、サプライチェーンへの参加権が認められたり、同じ目的を持った企業との関係性が強化されたりなど、経営にもプラスの効果が期待できます。
企業価値の向上
一般消費者の間でも環境意識が高まっている昨今では、CSV経営への取り組み表明が企業のイメージアップにつながります。
例えば、「この商品は環境に配慮して作られている」「このサービスによって地域サポートに貢献できる」ということが消費者に伝われば、市場において自社の優位性が高まり、消費者から自社製品を選んでもらいやすくなるでしょう。
企業イメージがアップすると、競合企業との差別化になるだけでなく、採用活動においても好影響が期待できます。
CSV経営のデメリット
多くのメリットがあるCSV経営ですが、社会課題の規模が大きいと取り組みのハードルが高くなってしまう懸念があります。
地球温暖化や貧困など現代において顕在化している社会課題は、原因が複雑に絡みあっており、世界規模での取り組みが必要とされるものばかりです。
そのため、自社の経営活動だけで解決を目指すのは難しいでしょう。
自社の事業と結び付けようとしても、中小企業には取り組み難いのが現実です。
取引企業や同じ目標を持つ企業と連携し、組織的な施策を考える必要があります。
CSV経営の進め方
CSV経営の提唱者であるポーター教授は、CSVを取り入れる手段として3つの手法を提唱しています。
1.製品と市場の見直し
まずは、自社の持つ強みや技術を社会課題の解決にどのように役立てればいいのか再検討します。
競合と比べて自社製品の優位性はどこにあるのか、どのような点が消費者に評価されているのかなど、製品の特徴の洗い出しを行いましょう。
分析には、SWOT分析や3C分析といったフレームワークを使うのがおすすめです。
また、市場の分析を行い、自社が満たすべき社会的ニーズを明確にすることも重要です。
既存の市場でも、改めてニーズを分析することでリポジショニングや自社製品の優位性発見につながるかもしれません。
新たなニーズの発掘が、新事業や新製品の開発につながる可能性もあります。
自社製品の価値と満たすべき社会的ニーズを明らかにし、経営戦略に活かしましょう。
SWOT分析については、次の記事で詳しく解説しています。
SWOT分析とは?分析例・意味や方法・活用目的などを紹介
3C分析については、次の記事を参考にしてください。
3C分析とは?意味や必要性・やり方・事業戦略に活用するコツを解説
2.バリューチェーンの再分析
バリューチェーンとは、CSVと同じくポーター教授が提唱した考え方で、原材料の調達にはじまり製品の製造・出荷・販売・提供といった、連鎖する価値創出のことを指します。
バリューチェーンの各セクションは社会課題に影響を及ぼすため、改善することで新たな価値創造のチャンスが生まれるとポーター教授は提唱しています。
例えば、原材料の調達元を見直し、再エネ電力の活用をしたり、現地社員の労働環境改善に積極的な取引先に切り替えるだけでも、社会課題の解決に一歩近づきます。
3.産業クラスターを生み出す
産業クラスターとは、企業や研究機関、自治体などが相互に連携・競争することで、新たな付加価値を創出する取り組みです。
代表例としては、カリフォルニア州のシリコンバレーがあげられます。
シリコンバレーは自発的なクラスターですが、多くの地方自治体が地方圏への企業誘致や、地域に根ざす研究機関と中小・ベンチャー企業の交流促進などを行い、産業クラスターの創出を目指しています。
前述の通り、複雑に原因が絡み合う世界的な社会課題は、1社の力で解決することが困難です。
しかし、産業クラスターが創出されれば、中小企業でもより大きな課題に取り組めます。
さらに、企業と地域の結びつきが強化されれば、インフラ整備や新たな雇用創出といった効果も見込めるでしょう。
CSV経営の企業事例
実際にCSV経営に取り組んでいる企業の事例を3つ紹介します。
味の素
味の素では、2014~2016年の中期経営計画において「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)」を掲げ、CSV経営への取り組みを表明しました。
味の素は、もともと社会貢献や新しい価値創出などを盛り込んだ「味の素グループWay」という企業理念を掲げています。
その理念とCSVに共通点が多いことから、CSV経営は自然に導入できたといいます。
具体的には、味の素が注力国として挙げているタイ、ブラジル、インドネシア、ベトナム、フィリピンで、同社製の調味料による肉・野菜の摂取量の2020年度目標を、肉が年間860万トン、野菜が年間550万トンと設定しました。
これにより、タンパク質と野菜をバランス良く摂取でき、「食を通じた健康づくり」という同社のミッション達成につながっています。
ユニリーバ
ユニリーバでは、2010年に「事業成長、コスト削減、リスク低減、信頼強化」の4つの軸を経営戦略の基礎とする「サステナブル・リビング・プラン」を発表しました。
また「すこやかな暮らし、環境負荷の削減、経済発展」の3つの分野で50あまりの数値目標と達成期限を設け、すでに80%以上を達成しています。
さらに、サステナブル・リビング・プランに基づき、社会的な意義を持つ「サステナブル・リビング・ブランド」を構築。
このブランドによって、ユニリーバ全体の成長の60%をもたらしたといいます。
「目標→戦略(サステナブル・リビング・プラン)→活動(ブランド)」という戦略的なCSV活動が、確実な成果に結びついている事例といえるでしょう。
ユニクロ
ユニクロを運営するファーストリテイリングでは、サステナビリティ活動において「服のビジネスを通して、社会の持続的な発展に寄与できるよう、新たな基準をつくり、不断の努力をもって進めていく」という理念を掲げています。
具体的なアクションとしては、ユニクロの全商品をリサイクル・リユースする取り組み「RE.UNIQLO」が話題となりました。
その第一弾として、ユニクロのダウン製品を回収し、ダウンを再利用して製造した「リサイクルダウンジャケット」の発売がすでに開始されています。
他にも、ペットボトル資源から服を作る取り組みや難民キャンプへの衣料支援など、服を通した社会活動を積極的に進めています。
CSV経営の導入相談は武蔵野へ
CSV経営は、従来相反する関係と考えられていた企業の利益追求と社会貢献を両立させる新しい経営手法です。
CSV経営に企業が取り組むことによって、社会や地域が恩恵を受けるだけでなく、新規事業の創出や企業イメージの向上など、企業も様々なメリットを得られます。
複雑な社会課題の解決に挑むには、地域や関係企業との連携が不可欠です。
ステークホルダーとの繋がりの中で自社がどのような価値提供をすべきなのか、強みや優位性を分析しながら経営戦略を検討するといいでしょう。
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