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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/05/13 09:50

経営

働き方

ダイバーシティ経営とは?必要とされる理由や企業の取り組み事例を紹介

読了まで約4分

ダイバーシティは、多様性という意味を持ちます。
転じて国籍や人種、性別などの他、宗教、言語、価値観など多様な人材や働き方を受け入れて活かしていく取り組みがダイバーシティ経営です。

ダイバーシティ経営のポイントは多様性を受け入れるだけではなく、それぞれの違いを認め合いビジネスに活かしていく点にあります。
それぞれの能力、適正を十分に発揮できる環境整備ができて初めてダイバーシティ経営が可能になるといえるでしょう。

本記事では、ダイバーシティ経営の概要、求められる理由、インクルージョンとの違いや活用のメリット・デメリットなどを解説します。
企業の取り組み事例も紹介するので、多様な人材の活用を実現するための参考にしてください。

ダイバーシティ経営とは?

経済産業省ではダイバーシティ経営の推進を目指し、次のように定義した上で、さまざまな取り組みをおこなっています。

ダイバーシティ経営の定義

経済産業省が定義するダイバーシティ経営とは、「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」です。

ここでいう多様な人材とは、性別、年齢、人種、国籍、障がいの有無、宗教・信条、価値観に加え、キャリアや経験、働き方などが挙げられます。

組織マネジメントという観点で眺めると、大きく3つの枠組みに分類できます。

①属性
人種・国籍・宗教・ジェンダー(性別)・年齢(世代)の違い

②働き方
雇用形態・働く場所・働く時間の違い

③関わり方
キャリアパスの描き方・モチベーションの違いなど

また、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営とは、組織内の個々の人材がその特性を活かし、生き生きと働ける環境が整備されていることです。
その上で、自由な発想が生まれ、生産性向上、自社の競争力強化につながる一連の流れを生み出し得る経営を指します。
出典:経済産業省「ダイバーシティ経営の定義

経済産業省による取り組み内容

ダイバーシティ経営を推進するうえで経済産業省がおこなっている取り組みは、『新・ダイバーシティ経営企業100選』と『なでしこ銘柄』の2つです。

新・ダイバーシティ経営企業100選とは、ダイバーシティの推進を経営成果として表している企業を経済産業大臣が表彰する制度です。
また、なでしこ銘柄とは、女性活躍推進に優れた上場企業を、中長期の企業価値向上を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介する制度です。

なお、新・ダイバーシティ経営企業100選に選出された企業の具体的な取り組みは後述します。

 

ダイバーシティの種類とインクルージョンとの違い

ダイバーシティに近い言葉としてよく使われるのがインクルージョンです。
まずダイバーシティの種類を見たうえでインクルージョンとの違いについて解説します。

ダイバーシティの種類

ダイバーシティは、表層的ダイバーシティと深層的ダイバーシティの大きく2つに分けられます。
それぞれの概要は次のとおりです。

表層的ダイバーシティ

主に外見で判断できる多様性を指すものです。
具体的には、性別、年齢、人種、国籍、障がいの有無など自分の意志で変えることの難しいものが該当します。

深層的ダイバーシティ

主に外見で判断するのが難しい多様性を指すものです。
宗教・信条、価値観、キャリア、経験、働き方など個々のパーソナリティに関わるものが該当します。

インクルージョンとの違い

ダイバーシティに近い言葉としてよく使われるのが、『受容』『包括』などと訳されるインクルージョンです。

ダイバーシティは多様な個性や特性を持った人材が揃っている状態を示すのに対し、インクルージョンは、多様な個性や特性を互いに認め合い、活かしながら働いている状態を示します。

日本経済団体連合会では、『ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて』という提言で、双方が一緒になって企業活動の活力向上を図れると指摘しています。
ダイバーシティとインクルージョン、双方の推進によってダイバーシティ経営が成り立つのです。
出典:一般社団法人日本経済団体連合会「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて【概要】

 

ダイバーシティ経営が必要とされる理由と背景

ダイバーシティ経営は多くの企業から注目を集めています。
そこで、ダイバーシティ経営が必要とされる理由や背景について解説します。

少子高齢化の進行

日本では世界に類を見ないほどのスピードで少子高齢化が進んでいます。
内閣府が発表した令和3年版高齢者白書によると、令和2年10月時点の日本の人口は、1億2,571人。
そのなかで、65歳以上の人口は3,619万人(高齢化率28.8%)です。

このまま高齢化が進むと令和18年(2036年)には、3人に1人、令和47年(2065年)には2.6人に1人が65歳以上になり、令和47年(2067年)には約3.9人に1人が75歳以上になると推定されています。

少子高齢化は企業活動にもさまざまな影響を及ぼしますが、そのなかでも深刻なのが人材不足です。
女性雇用の促進や海外からの労働者受け入れも積極的におこなうダイバーシティ経営は、人材不足問題解消対策の一つとしても大きな注目を集めています。
出典:内閣府「令和3年版高齢社会白書

グローバル化の進行

インターネットの普及により、世界中の製品を気軽に購入できるようになっています。
以前であれば、国内企業の生産活動は国内消費によって支えられていましたが、グローバル化が進み、顧客にとって国内と国外の壁はなくなりつつあるのが現状です。

さらに、リアルの場においても海外企業の日本進出が増え、国内企業の競争はこれまで以上に激化しています。
海外企業に対抗するには、多くの国内企業が持つ結束力は高いものの、排他性も高く自由な発想が生まれにくい特徴からの脱却が欠かせません。

しかし、従来のままでは大きな変革の実現は難しいでしょう。
その打開策として革新的な発明やイノベーションを生み出せる可能性が高まるダイバーシティ経営が求められているのです。

働き方の多様性の推進

以前からテレワークの導入を進める企業もありましたが、決定的となったのは新型コロナウイルス感染拡大です。
従来の社員全員が決まった時間にオフィスに出社する働き方は大きく変化をしようとしています。

2021年10月1日に株式会社DYMが発表した、『就活生を対象にした主食活動に関するアンケート調査』のなかで、入社する時に重視する項目の3位に「テレワークやリモートワークなど場所に縛られない働き方(24%)」が選ばれています。

また、2位は「男女に関わらず育児や介護と両立できる業務制度の推進(26%)」です。
多様性を重視し、柔軟に働ける企業が求められていることがわかります。

社員個々の事情や希望によって自由に働き方を選べる多様性の実現もまた、ダイバーシティ経営が求められる理由の一つでしょう。
出典:株式会社DYM「就活生対象 最新アンケート報告

消費生活の多様性

インターネットの普及により、これまで企業側からの情報を受け取るしかなかった状態から、自分でさまざまな情報を積極的に入手することが可能になりました。

人々はSNSや商品比較サイトなど企業側の情報以外に商品を購入した消費者同士でコミュニケーションが取れるようになるなど、消費行動も大きく変化を遂げています。
また、多くの業種で市場が成熟化し、人々は物質的な豊かさから心の豊かさ、ゆとりある生活を目指してモノ消費からコト消費へと変化しているのも現在の特徴といえるでしょう。

人々の消費行動の変化に企業が対応するには、多様なニーズに応えられる柔軟な発想であり、それを可能にするのが多様な人材を効果的に活用できるダイバーシティ経営です。

 

ダイバーシティ経営のメリット

ダイバーシティ経営の主なメリットは、『人材獲得力強化』『イノベーションの創出』 『企業価値向上』の3つです。
それぞれについて簡単に解説します。

人材獲得力の強化

外国人や障がい者、地方に住む人など、ダイバーシティの推進により人材採用時の母集団拡大が可能です。

また、日本生産性本部がおこなった『2018年度 新入社員 春の意識調査』で、上司が外国人であった場合についてとの質問によると、49.6%とほぼ半数が「上司は外国人でも日本人でも構わない」と回答しています。
1981年~1995年頃に生まれたミレニアル世代と呼ばれる世代は、社会課題への関心が高く、企業の多様性や方針を重要視する傾向があります。

若い世代の多くが多様性を受容していることから、ダイバーシティ経営の導入は若手人材のアプローチにもつながるといえます。
出典:日本生産性本部「2018年度 新入社員 春の意識調査

イノベーションが生まれる

多様化する消費者のニーズに対応するには新しいアイデアが欠かせません。
ダイバーシティ経営の導入は国籍や性別など表層的な多様化に加え、価値観や思考など深層的な多様化も実現するため、これまでにない新たなイノベーションが生まれる可能性も高まります。

なお、内閣府がおこなった『令和元年度 年次経済財政報告』では、各企業が置かれた環境や状況にもよるものの、社員の多様化と企業業績の間には相関関係があるというデータがあります。
出典:内閣府「令和元年度 年次経済財政報告

企業価値が上がる

ダイバーシティ経営への取り組みは、就活者、顧客、資本市場などから高い評価の獲得により、信頼性の向上が期待できます。
資本市場から高い評価を獲得できる理由としては、近年、投資家が女性や外国人など役員の多様性を重視している点です。
『環境(Environment)』『社会(Social)』 『ガバナンス(Governance)』の側面を重視する、ESG投資が主流になっている点が挙げられます。

 

ダイバーシティ経営のデメリット

ダイバーシティ経営の主なデメリットは、従業員のストレス増加リスク、従業員のパフォーマンス低下リスクです。
それぞれについて簡単に解説します。

従業員のストレスが増える可能性がある

多くの企業にとってダイバーシティ経営は、これまでの経営のあり方と変化の差が大きいため、すぐには適応できない従業員も少なくありません。
そのため、一時的にストレス過多になってしまう可能性があるのです。

経営者としてできる対策は事前の説明をしっかりとおこない、納得してもらった上で施策を進めていくことです。
急激に変化させようとすれば拒否反応を起こしストレスとなってしまうため、従業員への理解の徹底が欠かせません。

従業員のパフォーマンスが低下する可能性がある

多様性のある組織は新しいアイデアが生まれるメリットがある半面、考え方や価値観の相違で業務が滞り、全体のパフォーマンスが落ちてしまうリスクがあります。

経営者としては、コミュニケーションの場を増やし、従業員の話をしっかりと聞くことが大切です。
そのうえで、誠実な受け答えをし、互いの信頼関係を構築していくようにする必要があります。

 

ダイバーシティ経営に取り組む際のポイント

 ダイバーシティ経営を実際に導入し実施する際、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
いくつかポイントをご紹介します。

リーダーシップのコミットメント

ダイバーシティ経営を実施するには、トップリーダーのコミットメントが必要です。
リーダー自身がダイバーシティに対しての理解を深め、その重要性を認識し、組織内でのダイバーシティを推進するための方針や目標を策定する必要があります。

多様な人材の採用と育成

ダイバーシティ経営を実施するためには、多様な人材の採用と育成、組織内で多様性を受け入れる文化を確立することが大切です。
採用の際には、性別や人種、年齢などに関係なく、能力や適性を重視した採用を行い、異なる文化的背景を持つ人々のスキルや知識を活かすためのトレーニングや研修プログラムを実施することが重要です。
また、組織内の人々が、異なるバックグラウンドや文化的背景を持つ人々と共に働くことを積極的に受け入れ、その多様性を活かすことができるように、社員教育や勉強会を導入することが必要です。

意見交換やフィードバックの機会の提供

組織内での意見交換やフィードバックの機会を提供することで、多様な意見を尊重し、より良い意思決定を行うことができます。
ダイバーシティ経営を実施するためには、異なる文化やバックグラウンドを持つ人々の声を聴くことが不可欠です。
社員が自由に意見を出し合える環境を作ることで、新たなアイデアやビジネスチャンスを生み出すことができます。

 

令和2年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」受賞企業の事例

前述した、新・ダイバーシティ経営企業100選の受賞企業のなかから、株式会社四国銀行とエーザイ株式会社の事例を紹介します。

株式会社四国銀行

株式会社四国銀行では、預貸ビジネスだけのビジネスモデル脱却と女性社員の活躍機会拡大という、経営戦略と人材戦略の一体的促進を実行しました。

具体的には、経営戦略として事業継承の需要が高いことから、商社、不動産販売、保険会社、税理士などのキャリア採用を実施し、既存の従業員に教育の場をつくり、専門人材の育成を実現しています。

また、女性社員の活躍機会拡大に向け、時短勤務制度の拡大、積立休暇制度の要件緩和をおこないました。
さらに男性社員の育児セミナーや男性社員の育児休暇取得推進など、退職せずに働ける環境を整備し、女性役職者比率は2015年の11.5%から2019年には18.5%まで向上しています。
出典:四国銀行「経済産業省による令和 2 年度「新・ダイバーシティ経営企業 100 選」の受賞について」 

エーザイ株式会社

エーザイ株式会社では、多様性がもたらす知のスパイラルの実現、多様な個の活躍と社会の関わりを増やす働き方改革、多様な人財の共存・共生企業の実現を目指し、さまざまな施策を実行しました。

具体的には、働く時間・場所の裁量拡大、職場のコミュニケーション改革、多様な研修制度によるキャリア形成支援、リーダーシップ開発などを実施。結果として、女性管理職比率が10年で3%から10.4%に拡大しました。
グローバル人材の育成により、海外拠点の新規事業立ち上げなどを実現したのです。
出典:エーザイ株式会社「新・ダイバーシティ経営企業100選」を受賞

 

ダイバーシティ経営は今後の企業に必要な取り組み

少子高齢化は今後さらに拡大していきます。
そのため、これまでの経営を継続しながら企業として生き残っていくのは困難だといえるでしょう。

ダイバーシティ経営への取り組みは、これからの企業経営に欠かせないものの一つです。
人材不足の解消、多様な消費ニーズへの対応、企業価値の向上などさまざまなメリットを活かすためにも、ダイバーシティ経営への取り組みを始めることが大切です。

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