更新日:2022/09/05 11:09
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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?企業に導入する際の進め方を解説
読了まで約3分
多くの日本企業が抱える課題の一つに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れが挙げられます。
DXの推進は、企業として生き残っていく上でも重要な施策であり、その必要性は感じつつも思ったように進まない理由はどこにあるのでしょうか。
本記事では、改めてDXの概要、必要とされる理由を確認し、実際に導入するためのポイントを解説します。
DXが思うように進まない企業の担当者の方や経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
DXとは?
DXの導入を進めていくためには、まずDXの概要を知り、目的をしっかりと把握することが欠かせません。
ここでは、DXの定義や目的について解説します。
デジタルトランスフォーメーションがDXと省略されるのはなぜ?
DXの概念を初めて提唱したのは、スウェーデン、ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授です。
同教授は、2004年に「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義しています。
デジタルトランスフォーメーションを英語にすると、Digital Transformationです。
通常であれば、省略形はDXではなくDTとなりますが、なぜ、DXと省略されるかについては諸説あります。
そのなかでもよく用いられるのは、英語圏においてTrans-は「交差点」を意味するXに置き換えられるという説です。
そこから、DTではなくDXと省略されるようになったと言われています。
経済産業省によるDXの定義とは
エリック・ストルターマン教授が初めてDXの定義をしてから14年後の2018年、経済産業省が日本におけるDXのガイドラインを取りまとめました。
その後、2019年に「DX推進指標」の中で、DXを次のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
DXのポイントは「AIやIoT、ビッグデータなど高度IT技術を活用すること」と「これまでにない製品開発、新規事業によって新たな価値の創出を行うこと」の2点です。
DXの目的
前項でも説明したように、DXとは高度IT技術の活用によって、私たちの生活やビジネススタイルに新たな価値を生み出すものです。
そして、既存ビジネスの枠組みを超え新たな価値の創出によって、人々の生活をより豊かに快適にすることがDXを実行する目的になります。
DXと類似した用語との違い
自社でDX導入を検討する際、気をつけなければならないのが、IT化やデジタイゼーションなどDXと類似した用語との違いです。
それぞれ、何が違うのかについて解説します。
IT化
IT化とは、その言葉が示すとおり、業務にIT技術を導入することです。
これまで手作業で行ってきた業務にIT技術を導入することで、効率化や生産性向上を実現させることを目的としています。
IT技術を活用する点においては、DXもIT化と変わりません。
しかし、DXは業務の効率化や生産性向上を目的とするものではなく、IT技術の活用により、新製品の開発、新規事業の創出など新たな価値を生み出すことを目的とする点です。
IT化はあくまでも手段であり、IT化自体がDXの実現につながるわけではありません。
デジタイゼーション
デジタイゼーションとはデジタル化を意味するもので、たとえば紙の資料や帳簿類を電子化する。
これまでアナログで行ってきた業務をデジタル化するなどが挙げられます。
具体的には、領収書をスキャンして電子データとして保管・管理を行う。
取引先との対面会議をWeb会議に変更し、コストや手間を軽減させるなどです。
デジタイゼーションもIT化同様、これまでアナログで行ってきた業務をデジタル化させることで効率化を実現させることを目的としています。
DXは効率化を果たし、そのうえで新たな価値の創出を行うという点で、デジタイゼーションとは異なる目的を持った施策です。
デジタライゼーション
デジタライゼーションとは、デジタイゼーションを一歩進めたものです。
デジタル化によって業務プロセスや提供するサービスをもデジタル化させ、新たなビジネスモデルの実現を目的としています。
例えば、領収書をスキャン保存してデジタル化すれば、その後の精算業務もデジタル化が可能です。
これにより経理担当者の業務プロセスは大幅に変革されます。
また、音楽や動画をデジタル化させ管理することで、これまではCDやDVDなどで販売していたものを、サブスクリプションとして共有するサービスの提供が可能になります。
ここまで来るとDXとほぼ変わらないように思われるかもしれません。
しかし、DXはデジタライゼーションをさらに一歩進めたものです。
デジタル化により、業務プロセスや提供するサービスだけではなく、企業風土や文化、組織などあらゆるものの変革を実現させ、競合との差別化を図るものになります。
DXがなぜ注目されているのか
IT化自体は多くの企業でDX登場以前より進められています。
ではなぜDXが注目を集めているのでしょう。
その主な理由は次の4点です。
経済産業省による2025年の壁
日本でDXが大きく注目されるようになったきっかけは、2018年に経済産業省が公開した「DXレポート」です。
この中で、多くの企業がこのまま既存システムを使い続ければ2025年以降、最大1年で12兆円(2018年時点の約3倍)の経済損失が生じる可能性があると言及しました。
さらに2020年にはDXレポート2として中間とりまとめを公開しました。
DXレポート公開から2年が経過したにも関わらず、ほとんどの企業がDXに取り組めていないという調査結果からさらなる危機感を伝えています。
そして、2022年となり2025年を3年後に控えた今、DXへの取り組みが多くの企業にとって喫緊の課題として、改めて注目を集めているのです。
出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」
レガシーシステム問題
そもそも、経済産業省が企業に既存システムの刷新を求めたのは、インターネット普及以前に構築したレガシーシステムを現在も稼働させている企業が多いためです。
2025年という期限を切ったのには大きく分けて2つの理由があります。
1つ目は、2015年時点でIT人材が17万人不足だったのが、2025年には約43万人まで増加する点です。
2つ目は、レガシーシステムに使われている多くのシステムが2025年までにサポートを終了してしまう点です。
IT人材の減少には、先端IT人材不足と、古いプログラミング言語を知る人材不足の2つがあります。
特にレガシーシステムにおいては、後者の人材不足により、ブラックボックス化し、データ活用ができなくなるリスクが懸念されています。
また、多くのシステムでサポート終了してしまう影響も少なくありません。
SAP、ERPは2025年から2027年にサポート期間を延長しましたが、それでもシステムの刷新が遅れれば企業は大きな経済損失を生み出してしまうでしょう。
レガシーシステム問題解消の施策としても、DXの導入が求められているのです。
日本企業におけるIT化の遅れ
「IT化=DX」ではありませんが、DXを進めるうえでIT化は欠かせません。
しかし、IT人材や予算不足などにより、多くの企業ではアナログで業務を行う文化が色濃く残っていることもあり、思ったようにIT化が進んでいないのが現状です。
実際、2021年10月に情報処理推進機構(IPA)が発刊した「DX白書2021」によると、DXに全社もしくは一部でも取り組んでいると回答した企業は、日本で55.8%、米国で79.2%です。(※)
この結果からも、日本企業でIT化が遅れているのは顕著であり、今後、グローバル環境で生き残っていくためには、否が応でもDXへ取り組まざるを得ない状況といえます。
※出典:独立行政法人情報処理推進機構
コロナ禍と働き方改革
新型コロナウイルス感染拡大防止策として、多くの企業がテレワークの導入を進めたこともDXが注目を集めるようになった要因の一つです。
テレワークを実施するには、ペーパーレス化やWeb会議、ビジネスチャットの導入などデジタル化と同時に、これまでの働き方を見直す必要があります。
決して積極的な理由とはいえませんが、新型コロナウイルスの感染拡大は、企業にとってDXの必要性、重要性を気づかせてくれる大きな要因となったといえるでしょう。
DXを企業に導入する際に必要な対策
やみくもにデジタル化を進めるだけでは、DX導入の成功は期待できません。
DXを適切に導入し、企業として変革を実現させるには、目標設定や人材確保、情報共有が大切です。
それぞれについて解説します。
目標・目的を設定する
DXの導入を成功させるには、全従業員の意識を高める必要があります。
そのために欠かせないのが目標・目的の設定です。
DXの最終的な目的は、ITの活用で新たな価値の創出を行い、組織、プロセス、企業文化・風土を変革すること。
それによって企業として競合に優位性を保つことです。
全従業員で目的の共有ができれば、DXに対し真摯に取り組めるようになり、成功につながる可能性も高まります。
自社に必要な技術や人材などを確保する
DXの成功には全従業員の意識統一が欠かせませんが、導入時点からいきなり全社で取り組むのは困難です。
まずは成果を上げやすい部署、チームから始め、成功体験を重ねていくことが求められます。
また、小さくスタートすれば、自社でDXを実現させるために必要なツール、人材などが明確になるため、導入を拡大していく際に失敗するリスク軽減が可能です。
DXといってもすべてをデジタル化するのではなく、既存のツールで対応できるものは上手く活用してください。
人材も同様で、DXにどうしても必要な人材が社内にいなければ、外部から雇用を進めていく方法があります。
企業になぜDXが必要なのか説明し納得を得る
従業員にはITリテラシーに差がある場合もあり、ITツールの活用に積極的なものとそうでないものとの間に温度差が生まれるケースも少なくありません。
しかし、DXは最終的には全従業員が協力しながら進めていかないと失敗してしまう可能性が高まります。
DXを成功させるには、なぜ、DXの導入を進めていくのか、そのためには何が必要で何をやるべきなのかをしっかりと説明しなくてはなりません。
ITリテラシーの低い従業員に対しては、勉強会を開催する、より活躍できる場の提供をするなど、さまざまな手段で納得してもらい、進めていくことが重要です。
DX推進には経営層による目的の策定が重要
企業として生き残っていくためにもDXの導入・推進は欠かせない施策の一つです。
しかし、なぜ、DXが必要なのか、自社のとって適切な導入方法はどのようなものかを明確にしないまま進めれば成功するのは難しいでしょう。
DXを推進するには、経営層が先頭に立って目的の策定を行い、従業員が納得いく説明をする必要があります。
また、そのためには、従業員が積極的に働ける環境の整備やDX導入を含めた経営計画の策定が欠かせません。
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