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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/01/11 14:25

経営

ダイナミックケイパビリティとは何か?企業が注目する理由や必要な要素など詳しく解説

読了まで約4分

ダイナミックケイパビリティは、カルフォルニア大学教授、ディヴィット・J・ティース氏が提唱したもので、日本語では、企業変革力とも訳されます。
元々は社会情勢や新型コロナウイルス感染拡大など不安要素の多いなかで、製造業が生き残っていくための戦略経営論として注目されました。

本記事では、新たな技術と既存資源の融合により、社会変化に柔軟な対応をする力を備えるべく、ダイナミックケイパビリティについてお伝えします。
企業変革を模索している経営者の方はぜひ、参考にしてください。

ダイナミックケイパビリティとは

元々は製造業向けに提唱されたダイナミックケイパビリティですが、将来の見通しが不透明な時代においては、あらゆる業種で時代の変化に柔軟な対応が欠かせません。

ここでは、改めてダイナミックケイパビリティの概要、オーディナリーケイパビリティとの違いについて解説します。

ダイナミックケイパビリティの意味

ダイナミックケイパビリティが注目を集めたのは、経済産業省と文部科学省、厚生労働省が共同で発表した、「製造基盤白書(ものづくり白書)」に端を発します。

「不確実性の高まる世界の現状と競争力激化」と題し、そのなかで、企業変革力(ダイナミックケイパビリティ)の強化が取り上げられました。

ダイナミックケイパビリティとは経営戦略論の一つで、目まぐるしく変化する環境や情勢のなか、企業がいかに対応していけるか、その自己変革能力を指すものです。

オーディナリーケイパビリティとの違い

ダイナミックケイパビリティの対義語として、オーディナリーケイパビリティという言葉があります。
オーディナリーケイパビリティは、世の中の変化に柔軟に対応していく能力ではなく、企業が既に持つ経営資源を効率的に活かし、利益を最大化しようとする能力です。

元々オーディナリーとは、普通、普遍的といった意味を持っています。
オーディナリーケイパビリティは、いわゆる老舗の利を生かし、変わらないことを価値として提供するものです。

一般的に消費者からの認知が高い老舗企業や大企業は、ダイナミックケイパビリティに比べ、オーディナリーケイパビリティを重視する傾向にあると言われています。

ただし、IT技術の進化や海外企業の日本進出など、企業規模や認知度に関わらず既存の戦略だけでは生き残ることが難しくなっているのも確かです。
そのため、既存の経営資源を活かしつつも、多くの企業でダイナミックケイパビリティに意識が向くようになっています。

 

企業がダイナミックケイパビリティに注目する理由

ダイナミックケイパビリティを紹介した、「ものづくり白書」が公開されたのは2020年です。
それが、今さらに大きな注目を集めている主な理由として考えられるのは次のような点が挙げられます。

新型コロナウイルスの流行

新型コロナウイルスの世界的な大流行は、単純にテレワークの定着を実現させただけではありません。
出張からWeb会議、対面式のセミナーからウェビナーなどビジネスの形自体も大きく変革させました。

また、コロナ禍に入り、オフィスの在り方も大きく変化しています。
オフィスワークとテレワークを併せたハイブリッドワークの導入により、多様な働き方が拡大しているのも、ダイナミックケイパビリティが注目される理由の一つです。

多様な技術の進化

インターネットの普及やIT技術の進化は、ビジネスにも大きな変化をもたらしています。
近年では、AIやIoTなど先端IT技術も進み、従来のやり方だけでは最新の技術を効率的に活用している企業に対抗するのが非常に困難です。

また、2019年に経済産業省が公開した、「DXレポート」において、既存システムの老朽化を放置することで多大な経済損失が生まれるとしたことも大きな影響を及ぼしています。

その後のレポートでほとんどの企業が思ったようにDXを実現できていないという現実も、ダイナミックケイパビリティが求められる理由といえるでしょう。

日本企業におけるグローバル化の推進

海外から多くの企業が日本に進出しているのと同時に、日本企業の海外進出も進んでいます。
しかし、日本国内であれば通用していた戦略が海外では通用しないケースも少なくありません。

その国の文化や商習慣に合わせるには、新たな人材の採用や技術の投入、既存業務プロセスの改革も必須です。
グローバル化を進めていくうえで、ダイナミックケイパビリティへの対応するのはもはや必然といえるでしょう。

 

ダイナミックケイパビリティを構成する理論

ダイナミックケイパビリティを深く理解するためには、競争戦略論と資源ベース論、2つの理論の理解が欠かせません。
ここではそれぞれの理論について解説します。

競争戦略論

1980年当時、ハーバード大学教授であったマイケル・ポーター氏が提唱したのが、競争戦略論です。
業界内のポジショニングを重視する理論で、自社の商品に対して新規参入、代替品などの有無、競合のポジションなど、主に外部要因に注目した戦略を指します。

ただし、同じ業界で同じポジションであっても異なる戦略で成功することもあれば、同じ戦略でも成功・失敗に分かれるケースも少なくありません。
外部要因だけでの戦略には限界もあるため、競争戦略論に対し批判的な声も存在します。

資源ベース論

資源ベース論は1980年代に、当時マサチューセッツ工科大学教授であった、B・ワーナーフェルト氏が提唱した理論です。
戦略的には、外部要因に注目する競争戦略論とは逆に、内部要因に着目しています。

企業が保有している資源が業績を左右するという理論ですが、どれだけの資源を保有していたとしてもその時の状況や競合により成果を上げられるかはわかりません。

そこで、外部要因を主とする競争戦略論と内部要因に着目する資源ベース論を上手く掛け合わせたのが、ダイナミックケイパビリティです。

 

ダイナミックケイパビリティに必要な3つの要素

ダイナミックケイパビリティを構成する要素は、「感知」「捕捉」「変革」の3点です。
ここでは、それぞれについて概要を解説します。

1.感知(Sensing)

感知とは、消費者のニーズ、時代の流れ、競合の戦略などを素早く収集・分析する能力を指すものです。
ダイナミックケイパビリティを向上させるには、柔軟な変化が必須ですが、どのように変化するかは外部要因が重要な意味を持ちます。

消費者ニーズの変化に気づけない状態では、変化しようにも変化の方向性が見えません。
さまざまな外部要因を収集し、脅威や機会を的確につかめないと、ダイナミックケイパビリティの向上も難しいでしょう。

2.捕捉(Seizing)

捕捉とは、外部要因を収集・分析したうえで、自社の機会を見つけ出し、成果を上げるために既存資産や技術を活かして競争力を獲得する能力です。

捕捉を実現させるには、さまざまな状況のなかで、自社の機会を迅速にも見つける力が必要です。
そして、その機会を好機に代えるために自社の資源をどう活用すべきかを判断する力も求められます。

3.変革(Transforming)

変革は、補足で得た機会と既存資源の活用方法を実践し、社内に浸透させる能力です。
企業は継続的に成長していくことが求められます。
そのためには、一つの成功を持続的なものとしなければなりません。

変革は、補足で得た好機を持続させるため、これまでのやり方や組織の在り方を刷新し、変化をしていくことであり、それを組織全体に浸透させるものです。

この3つの要素を適切に実践することが、ダイナミックケイパビリティの向上につながります。

 

ダイナミックケイパビリティ向上に対する課題

多くの企業に求められるダイナミックケイパビリティ向上ですが、実施にはいくつかの課題があります。
なかでも主なものとして挙げられるのは次の4点です。

経営層の能力に左右される

そもそも経営戦略は、経営層が行うものです。
戦略立案に必要なデータや資料収集・分析は行わずとも、それを基に自社が何をするのか、どこへ向かうのかの最終決定は経営層がジャッジを握っています。

そのため、ダイナミックケイパビリティが向上するかどうかも経営層の能力が重要であり、判断を間違えてしまえば、当然ながらダイナミックケイパビリティの向上は果たせません。

限られた資源の中で向上させる必要がある

機会を捉え、外部要因の分析ができたとしても必ずダイナミックケイパビリティが向上するとは限りません。
重要なのは、自社が持つ限られた資源のなかで向上させなければならない点です。

既存資源を新たに再構築するのは簡単なことではありません。
さらに既存資源が不足していれば、向上の成功確率はさらに下がってしまいます。

さまざまなアイデアや工夫により、限られた資源のなかでダイナミックケイパビリティの向上を実現させるのは、多くの企業が抱える課題といえるでしょう。

対応できる人材の確保が必要

ダイナミックケイパビリティを向上させるには、外部要因の適切な把握、分析能力、既存資源を効果的に再活用するアイデアを持った人材が欠かせません。

最終判断は経営層だとしても、現場での作業は社員が行うため、特に感知・捕捉に関わる部分に対応できる人材確保は必須です。

もし、社内に人材がいない場合、新たな雇用が必要になりますが、少子高齢化の影響もあり適切な人材の雇用を行うのが困難な点も大きな課題といえます。

時代の流れを把握しにくい

現在、コロナ禍であるうえ、戦争や円安などさまざまな要因が重なり、いままで以上に先行き不透明な時代です。
1年先がどうなっているかの判断も難しい状況において、長期的な視点で消費者ニーズの変化や市場動向を正しく把握するのは簡単ではないでしょう。

しかし、そのなかでしっかりと時代の流れを把握し、自社の脅威や機会を見つけ、既存資源の再構築ができなければ、ダイナミックケイパビリティの向上も果たせません。

先行き不透明な時代は今後も続くと考えられているため、困難ななかでも答えを見つけ出さなければならないのは大きな課題です。

 

ダイナミックケイパビリティの向上を目指そう

ダイナミックケイパビリティとは、目まぐるしく変化する環境や情勢に対応する自己変革能力を指すものです。

ダイナミックケイパビリティを向上させるには、さまざまな課題があります。
なかでも重要なのは、経営層が先行き不透明は時代の先を読み、確かな経営判断を行わなければならない点です。
そのためには、芯となる経営計画の立案が欠かせません。

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