更新日:2023/07/15 09:20
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営業利益率の目安は?算出方法や数値が悪いときの対処法
読了まで約4分
営業利益率とは、経営における利益効率を示す数値です。
経営の効率性や安定性を判断したり、経営状況の見直しに活用したりできるため、経営者にとって自社の利益率を把握することは欠かせない指標といえます。
しかし、中には思ったように営業利益率が伸びず、課題を感じている方もいるかもしれません。
営業利益率は単に数値を高めればよいわけではなく、適正水準にあることが重要です。
本記事では、営業利益率の意味や計算方法、数値をもとに経営状況を判断する方法、経営の見直し方について解説します。
経営に関する無料の相談サービスについても紹介していますので、ぜひ最後までご覧になってください。
目次
営業利益とは
そもそも営業利益とは、企業が行っている営業活動から得られた利益のことであり、具体的には、売上高から仕入費や販売費、人件費などの経営コストを差し引き、手元に残った利益の金額を指します。
営業利益は、企業が効率的に営業活動を行っているか、業績が安定しているかなど、企業の経営状況を判断する上で非常に重要な指標のひとつです。
営業利益率とは
営業利益率とは、売上高に対する営業利益の割合を示す指標のことです。
営業利益率の計算方法
営業利益率は、以下の式で算出することができます。
売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100
営業利益=売上高-売上原価-販売費および一般管理費
営業利益率は、売上高のうち利益がどのくらい残るかを示す指標ですので、その値が大きいほどたくさんの利益を出せているという意味になります。
一概に高ければよいわけでもありませんが、数値が高い企業ほど事業運用が安定している状態といえます。
数値がマイナスを示している場合は、赤字を出している状態です。人件費
そのままでは経営を維持できなくなってしまうため、早急な体制の見直しが必要になります。
営業利益率は利益体質をはかる重要指標
営業利益は、売上高から経営コストを引いて残る金額です。
つまり、売上高に占める営業利益の割合が高いということは、単に製品やサービスの売上が大きいということだけではなく、コストをコントロールできている状態といえます。
ここでのコストとは、人件費やオフィス費、交通費、通信費、広告費など事業運営に必要なコストが含まれます。
営業利益率が高い企業は適正な出資をしつつ、無駄なコストを省いて取捨選択ができているため経営の安定性が高いと判断できるのです。
また、営業利益率は課題を把握して経営分析に活用もできます。
営業利益率が低い場合は、売上が低いかコストが高すぎるかのどちらかです。数値を参考にボトルネックを究明して、業務プロセスを改善に役立てることができます。
4つの営業利益率
前章では「売上高営業利益率」について紹介しましたが、財務諸表には他にも意味合いの異なる利益率が登場します。
そのうち代表的な4つの利益率を紹介します。
売上高総利益率(粗利)
売上高総利益とは、売上から売上原価を差し引いた金額で「粗利」とも呼ばれています。
売上高総利益率の計算式は、以下の通りです。
売上高総利益率を求めることで、製品やサービスそのものの利益率を把握することができます。
売上高総利益率が高いほど原価に対して収益性が高く、自社にとって有益な製品と考えられるのです。
逆に、低い場合は製品の競争力に問題があったり、原価が高くなりすぎたりしている可能性があります。
また、売上高総利益率は業種によって適正値が大きく異なる指標です。
基本的には、競争が激しく競合が多い業種ほど利益率が大きくなります。
例えば、代替商品の多い小売業では数値が小さくなり、反対に卸売業では大きくなります。
経常利益率
経常利益とは会社における営業収益(本業で得た収益・費用)に、営業外収益(本業以外で得た収益・費用)を加えた利益です。
営業外収益とは、例えば保有する不動産や資産運用によって得られた収益などが該当します。
経常利益率を算出すると、売上高における収益と費用の割合を知ることができます。
計算式は以下の通りです。
経常利益率が高いということは単純に売上高が伸びたか、コスト削減をして経営の効率化が進んだかのどちらかということです。
つまり、経常利益率によって営業活動全般の効率を知ることができます。
ただし、本業以外の収益が高すぎるときは、一過性の成績である可能性があります。
基本的には本業の収益が高い水準にあり、そこに本業以外の収益が乗るのが理想的な経営状況です。
収益全体がどのような割合で構成されているのか分析することが重要といえます。
総資本利益率(ROA)
総資本利益率または総資産利益率とは、自己資本だけでなく投資された資本や負債を含めた総資本に対する利益の割合です。
英語では「Return on Asset」といい、頭文字をとって「ROA」と呼ばれています。
総資本利益率を計算するとき「なにを利益にするか」については売上総利益、営業理系、経常利益などいくつか種類があります。
目的に応じて利用する項目は使い分けられますが、事業の効率性や収益性を把握したいときは「当期純利益」を使用することが一般的です。
その場合の計算式は以下になります。
当期純利益は経費や税金を差し引いた企業の純粋な利益ですので、その利益を出すためにどのくらい資本を利用したのかがわかります。
企業における資本は設備投資や投資活動、営業活動の拡充など経営成長のために使われるものです。
総資本利益率の値によって、資本が事業のために投下されているのか、適正に活用できているのかを知ることができます。
自己資本利益率(ROE)
総資本利益率とよく比較されるのが、自己資本利益率です。
英語では「Return On Equity」といい、頭文字をとって「ROE」とも呼ばれます。
総資本利益率が資本全体を対象とするのに比べ、自己資本利益率は総資本のうち自己資本のみを対象とします。
計算式は、以下の通りです。
自己資本とは、金融機関から融資を受けた他人資本ではなく、企業自らが出資を募り、株主が投資した資本のことです。
計算では、資本金、資本準備金、利益準備金などの合計金額が用いられます。
つまり、投資に対してどれだけの利益をあげることができているのか、投資に値する企業なのかが把握できる指標です。
投資家から最も重要視される指標といえます。
営業利益率の適正水準とは?
営業利益率は高いほど収益性が良いと判断できますが、一概に高ければよいというわけでもありません。
また、業界によっても適正値には差があります。営業利益率の適正水準について、目安となる数値を紹介します。
0%【危険】
営業利益率が0%以下というのは、経営が赤字になっていることを指しています。
このままでは事業活動を維持できない可能性が高いため、早急な経営の見直しが必要です。
0~5%【標準】
営業利益率が5%以下という数値は、一見低く感じるかもしれませんが平均的な値です。
2021年に経済産業省が行なった「企業活動基本調査 」では、主要産業における売上高営業利益率の平均値は3.2%であることがわかっています。
また、各主要産業を見てみると、製造業の平均が3.4%、卸売業が2.0%、小売業が2.8%でした。
平均的な値であるとはいえ、経営を見直すことで利益率をさらに向上できる可能性はあります。
業務プロセスの効率化やコストカットなどを進め、数値向上に努めましょう。
5~10%【優良】
営業利益率が10%を超える企業はそう多くなく、優秀な経営状況であるといえます。
財務状況も安定していると考えられるため、投資家からも好評価を得られるでしょう。
業界的には、情報通信業が8.6%、情報処理・提供サービス業が9%などIT関連分野の平均値がこの水準です。
ただし、リーマンショックのような経済打撃があると利益率が急落する可能性もありますので、油断は禁物です。
売上を拡大するだけでなく、コストカットができる部分がないか見直すなどして、より収益性を高めましょう。
10~15%【とても優良】
10%以上の数値が出ている企業は、とても収益性が高いといえます。
業界では、出版業の平均値が11.6%、インターネット付随サービス業が14%となっています。
出版業やネットサービスは、売上単価の大きい「厚利少売」のビジネスモデルです。
この水準にある企業は、単に売上が高いだけでなく、利益を生み出すビジネスモデルが出来上がっているといえます。
15%以上【要注意】
15%と高水準であれば経営は安泰なように思えますが、高すぎても注意が必要です。
利益追求しすぎて社員に負担を強いていたり、顧客サポートが行き届いていなかったりする可能性も考えられます。
収益性が高いのは評価できることですが、本当に問題がないのか、今一度体制の見直しをはかることがおすすめです。
営業利益率を上げる方法
営業利益率は高いほど収益性が良いと判断されるとご紹介しました。
では、営業利益率を高めるにはどのような対策が考えられるでしょうか。
営業利益率を高めるための施策について紹介します。
売上を増やす
営業利益率を上げるには、売上を増加させることが基本です。
原価や販管費を増やさず販売数量そのものを増やせば売上が上がり、それに伴い営業利益も増えます。
マーケティング戦略を行い認知度を上げることも有効な手段です。
また、販売単価を下げて販売数量が大幅に増加した場合にも、売上が増え、営業利益率は上がります。
原価を下げる
大量に仕入れることで仕入原価を下げたり、価格が安い材料に変えたりと、仕入れにかかるコストを削減することで営業利益率を上げることができます。
自社で製造している場合には、人件費や設備費用、電気代なども原価に含まれるため、こうした製造にかかる費用の削減も検討対象となります。
営業利益率を見直すなら武蔵野へ
営業利益率は、経営の効率性を把握するのに参考になる数値です。
数値が低い場合は、商品の競争力強化やコストカットなど経営の見直しをはかる必要がありますが、一概に高ければ良いわけでもありません。
大切なのは、自社にとっての適正値を知り、あくまでも経営の一部を示す指標として、経営状況の全体を把握することです。
自社の業種やビジネスモデルにおける平均水準と比較し、自社がどのような状況にあるのか、ボトルネックはどこにあるのかを分析してみるといいでしょう。
自社の営業利益率が基準と比べて低すぎるなど、経営に不安を感じた場合はプロに相談することもおすすめです。
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