更新日:2022/11/30 17:14
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従業員満足度(ES)とは?構成要素や取り組み事例を紹介
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優秀な人材の獲得がますます困難を極めている状況から、従業員満足度(ES)の向上に取り組む企業が増えています。
従業員満足度の重要性は理解しているものの、具体的に何をすればいいのかわからず、対策ができていない企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、従業員満足度の基本的な知識や改善するポイント、具体的な調査方法などを紹介します。
目次
従業員満足度とは
従業員満足度とは、会社で働いている従業員の満足度を数値化した指標のことです。
「Employee Satisfaction」の頭文字をとって「ES」とも呼ばれます。
具体的には、会社の福利厚生や業務に対するやりがい、職場環境や働きやすさといった項目についてアンケート調査を行い、社員の満足度を数値化します。
自社の労働環境の改善に役立てるために、従業員満足度を調査する起業は多いです。
従業員満足度が高いと、社員が定着しやすくなり、業務生産性の向上も期待できます。
労働力人口が減少し、優秀な人材の獲得が難しくなる現代の労働市場において、従業員満足度の向上に取り組む企業が増えているのです。
エンゲージメント
エンゲージメント(engagement)とは「従事、没頭している」といった意味を持つ英単語です。
ビジネスシーンでは従業員エンゲージメントとも呼ばれます。
従業員エンゲージメントが高い状態とは、従業員が自社に対して愛着や愛社精神を持ち、会社への貢献意欲が高まっている状態を指します。
一方、従業員満足度は、単に従業員がどのくらい満足しているかを示す指標です。
エンゲージメントのように貢献意欲は問わない点が異なります。
「労働環境に満足しているけど、積極的に貢献しようと思わない」など、満足度とエンゲージメントの高さが必ずしも比例するとは限りません。
モチベーション
モチベーション(motivation)は、「動機付け、やる気」などと訳される言葉で、一定の目標や方向性に向かって行動し、それを維持する意欲を指します。
従業員満足度は、前述の通り「従業員が労働環境に満足しているか」を示す指標ですので、従業員満足度の高さがモチベーションに影響を及ぼすことはあるでしょう。
また、モチベーションは「評価をあげたい」「スキルを高めたい」など、自社への貢献以外の意欲も対象とする点が、エンゲージメントと異なります。
従業員満足度を向上させるメリット
組織の従業員満足度が高まると、やりがいを感じながら業務にあたる社員が増えるため、組織全体のパフォーマンスが向上すると考えられます。
そのほかにも、次のようなメリットが期待できます。
- 人材の定着率向上にともない、離職率が低下する
- 人材定着率の高さが企業のイメージアップにつながり、採用活動にも好影響を与える
- 組織全体の生産性アップし、業績の向上が見込める
- 生産性向上によりサービスや製品の品質も改善し、顧客満足度が高まる
- 満足して働いている社員が増えることで、チーム内の人間関係が円滑になる
従業員満足度の調査項目
ここでは、従業員満足度を調査する際の具体的な調査項目を紹介します。
各項目においてどのような課題が潜んでいるのか把握できるよう、質問を作り込むことが大切です。
質問例も交えて紹介します。
1.企業理念(MVV)
企業理念や企業のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)、行動指針など、経営陣が掲げる価値観に共感できてるかどうかは、満足度の大きな影響を与える項目です。
理念に共感できていれば、日常業務にもやりがいを見出せ、充実感を持って業務を推進できます。
質問では、自社に対して信頼感や安心感を持てているかどうかを聞き出しましょう。
<質問例>
- 自社の理念やMVVに共感できているか
- 理念や経営目標の達成に貢献したいと感じるか
- 普段の業務において、行動指針やチーム目標を元に意思決定しているか
2.仕事内容
仕事内容そのものに対して満足度や成長を感じられているか、業務量が多すぎないか、難易度は適切かどうかなどを調査します。
そのほか、上司や同僚などチームメンバーへの満足度も同時にヒアリングするといいでしょう。
<質問例>
- 自分の能力に見合った仕事内容になっているか
- 業務量が多すぎて残業が常態化してしないか、逆に過少すぎて暇な時間が発生していないか
- 仕事を通して自身の成長を感じられているか
- 仕事に行き詰った時に、相談できる上司や環境があるか
- 新しい仕事や難易度の高い仕事にチャレンジする機会があるか
3.職場環境
主に職場やチーム内の人間関係についての課題を洗い出します。
人間関係が円滑で、チーム内の意見交換が活発だと、業務改善や新しいアイディアにつながりやすくなります。
上司や同僚に対する不満はないか、自分の意見を口にしやすい環境があるかなどを確認し、課題を正確に洗い出しましょう。
<質問例>
- コミュニケーションを取りづらいと感じている人はいないか
- チーム内で情報共有や意思疎通が図れているか
- 困ったときに、お互いに手助けする環境があるか
- 職位や立場に関係なく、どのメンバーも意見を口にできる風土があるか
- メンバーの業績や成果を認めたり、賞賛する文化が根付いているか
4.処遇・人事制度
処遇には、給与や労働時間、それらを決定する人事制度や労務制度などが含まれます。
特に、給与や残業の有無、年次有給休暇の取りやすさは、満足度の数値に直結する重要項目です。
ボトルネックが把握できたら早急に改善活動に取り組みましょう。
<質問例>
- 業務の内容や量、責任に対して、給与額が見合っているか
- 年金制度や退職金制度に満足しているか
- 残業時間が多すぎないか、また適正な残業代が支給されているか
- 必要な教育が受けられているか
- ライフスタイルに合わせた働き方が選択できているか
5.上司
直属の上司に対する不満や疑問は、従業員満足度の数値に大きく影響します。
上司のマネジメントスキルに問題があると判明した場合は、上司に対する研修や講習も検討するといいでしょう。
<質問例>
- 上司の評価が本人の主観になっていないか
- 上司の指導方法や育成に対する考え方に賛同できているか
- 高圧的な態度になっていないか、対等なコミュニケーションをとれているか
- 特定のメンバーに肩入れせず、公平な評価をしているか
6.組織風土
この項目では、会社全体の雰囲気や価値観、明文化されていない行動様式などについて調査します。
チームメンバーの内面を洗い出す必要があり、言語化することが難しい項目でもありますので、できるだけ応えやすい質問を用意しましょう。
<質問例>
- 組織のコンプライアンス意識に問題を感じるような出来事はあったか
- ハラスメントと感じるような出来事が発生していないか
- 経営層の考えや方針に共感できているか
- 業務を進める上で欠かせないインフラは整備されているか
- 職場の風通しは良いと感じるか
7.メンタルヘルス
従業員のメンタルバランスが安定していなければ、前向きな気持ちで業務にあたることはできません。
業務上の出来事に限定せず、私生活も含めて従業員のメンタルヘルスを調査するといいでしょう。
バランスを崩している従業員がいれば、社内外の相談先や休職制度を案内するなど、早急な対策を心がけることが大切です。
<質問例>
- 仕事で困ったとき、相談できる相手がいるか
- 業務内容や量を負担に感じたり、ストレスを感じたりしていないか
- 仕事と私生活のバランスはとれているか
- 私生活で何か困ったことが起こっていないか
8.マネジメント・評価
上長と適切な関係性を築けており、業務命令や評価に納得できていれば、自然と満足度も高くなります。
さらに、マネジメントがうまくいっているチームは、リーダーを主軸としてチームワークが形成されており、業務においても高い成果をあげられる傾向があります。
マネジメントや評価に対する不満を早急に把握できれば、チーム替えを行って離職を防止するといった対策も可能になります。
具体的なヒアリングで問題点を把握しましょう。
<質問例>
- 上長やリーダーとの関係性は良好か
- 評価が公平だと感じるか
- 上長は現場の状況を理解しており、指示命令が適切と感じるか
- チームが連携して業務やミッションをこなしているか
従業員満足度を高める方法
従業員満足度を高めるためには、満足度を構成する「動機付け要因」と「衛生的要因」について理解するべきです。
これは、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグによって提唱された「二要因理論」と呼ばれるモチベーション理論です。
ハーズバーグは、2つの要因を両方満たすことで仕事へのモチベーションが保たれ、満足度が向上すると主張しています。
それでは、それぞれの要因について詳しく解説します。
動機付け要因
動機付け要因とは、仕事の満足度に関わる要因です。
具体的には、次のような例があげられます。
- 達成すること
- 承認されること
- 業務内容
- 昇進・昇格
- 責任の大きさ
このように、動機付け要因は本人の努力次第で向上させられる要素です。
そのため、動機付けを満たすためには、仕事の難易度を本人の能力に合わせて適切に調整したり、レベルの高い仕事にチャレンジする機会を設けたりするなど、きっかけ作りを心がけるといいでしょう。
衛生的要因
衛生的要因は、仕事の不満に関わる要因で、具体的には次のようなものが該当します。
- 会社の理念
- 労働環境や福利厚生
- 給与や労働時間
- 人間関係
- 人事評価
衛生的要因は動機付け要因と異なり、本人の努力では変えづらい要素です。
そのため、企業側が積極的にこれらの要素を整える必要があります。
とはいえ、衛生的要因を全て整備したからといって、従業員満足度の向上にはつながりません。
衛生的要因を満たせば不満を解消できますが、仕事そのものに対する充足感は得られないためです。
動機付け要因と衛生的要因はどちらか一方を解消すれば良いわけではなく、2つを同時に満たすことでモチベーションが高まります。
自社の従業員満足度を見直そう
従業員満足度の向上に取り組むと、早期離職の防止になるだけでなく、生産性が向上して業績アップにつながるといったメリットが期待できます。
採用難が続き、人材確保がますます難しくなる現代においては、従業員満足度に関する取り組みは企業にとって急務といえるでしょう。
施策を検討する際は、従業員満足度を構成する「動機付け要因」と「衛生的要因」を理解することが大切です。
どちらか一方を優先するのではなく、同時に満たすことを意識して、社内改善に取り組んでください。
また、社内リソースだけで対応するのが難しい場合は、外部サービスを利用するのも一手です。
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