更新日:2024/03/04 12:40
経営
ガバナンスとは?言葉の使い方や例文・強化するメリットや方法を詳しく解説
読了まで約4分
2024年1月19日、東京商工リサーチが発表した「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故調査」によると、2023年に漏えいした個人情報は4,90万8,718人で前年(2022年)の約7倍で過去最多です。この結果から、企業には健全な経営を実現するための取り組みであるガバナンスの強化が欠かせないことが分かります。
本記事では、改めてガバナンスを正しく理解し、強化するための方法についてお伝えします。ガバナンスを強化する取り組みの参考にして下さい。
※参考:東京商工リサーチ「2023年「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故調査」」
目次
ガバナンスとは
ガバナンスの強化を実現させるには、ガバナンスの意味を正しく理解していなければなりません。ここではガバナンスの意味や会話での使い方を解説します。
ガバナンスの意味
統治や管理、支配などと訳されるガバナンス(Governance)は、ビジネスの場においてコーポレートガバナンスと呼ばれ、健全な企業経営の実現に向けた管理体制の構築を意味します。
ビジネスの場でガバナンスが注目されるようになった理由の一つは、2000年代以降に増加した大企業による不正や不祥事です。
経営層による独善的な行動や社員による不正を防ぐため、ガバナンスを強化し、内部統制やリスクマネジメントの向上があらゆる企業で求められるようになっています。
「ガバナンス」会話での使い方と例文
会話の中でガバナンスは以下のように使われます。
- 弊社はコーポレートガバナンスの強化を通じて、ステークホルダーからの信頼を高め、持続的な成長を目指しています
- サステナビリティ経営を推進するためには、ESG(環境・社会・ガバナンス)の要素を重視した経営を行うことが求められています
- 弊社は海外事業展開に伴い、海外におけるガバナンスの重要性を認識し、海外拠点のガバナンスの強化に取り組んでいます
「ガバナンス」言葉の使い方
ビジネスにおいてガバナンスにかかわる主な言葉として挙げられるのは次の3つです。
- ガバナンスコード
- ガバナンス強化
- ガバナンス効果
ここでは、それぞれの意味や使い方について解説します。
ガバナンスコード
ガバナンスコードとは、2015年3月に金融庁と東京証券取引所が共同で公表した「コーポレートガバナンス・コード原案」を基に改正を行い、同年6月に正式版を全上場企業に適用したものです。
具体的には、上場企業が企業統治を行う際に参照する原則や指針をまとめたガイドラインで、2018年と2021年にも改定が行われ現在に至っています。そしてコーポレートガバナンスコードを構成する基本原則は次の5つです。
- 株主の権利・平等性の確保
- 株主以外のステークホルダーとの適切な協議
- 適切な情報開示と透明性の確保
- 取締役会等の責務
- 株主との対話
※参考:金融庁「コーポレートガバナンス・コード」(参照2024-01-23)
具体的な使い方としては、次のようなものが挙げられます。
- ガバナンスコードの遵守により、企業の透明性と健全性向上が期待できる
- ガバナンスコードは企業と投資家双方の利益を守るために欠かせない
- ガバナンスコードの改定により、企業は経営環境の変化に対応することが可能
ガバナンス強化
ガバナンスにかかわる言葉でガバナンス強化は頻繁に使われる言葉です。具体的には組織の管理体制や内部統制を強化することを指します。
ガバナンスを強化する主な目的は、お客様や株主などステークホルダーとのエンゲージメントを高め、企業価値を向上させることです。
管理体制の構築や内部統制の徹底により、ステークホルダーからの信頼を獲得できれば、安定した経営が実現するようになり、結果として企業価値の向上につながります。
具体的な使い方としては次のようなものが挙げられます。
- ガバナンス強化に向け、社外取締役の任命を行った
- 内部統制を進めることでガバナンス強化が実現した
- ガバナンス強化を実現させるため、コンプライアンス対策を実行した
ガバナンス効果
ガバナンス効果とは、ガバナンスを強化することで得られた効果を指すものです。具体的には次のようなものが挙げられます。
- 組織の管理体制を構築することで適切な情報開示と透明性確保が実現され、企業内不正の防止につながる
- 株主との対話を重視することで、新規事業創出や新商品開発の理解が得られるようになり、企業、株主双方の利益につながる
ガバナンス強化により企業価値が向上し、金融機関からの融資が受けやすくなるのもガバナンス効果の一つです。
言葉の使い方としては以下のようなものが挙げられます。
- ガバナンス効果により、企業の不祥事を未然に防ぐことができた
- ガバナンス効果で労働環境が改善され、従業員のモチベーションアップにつながった
- ガバナンス効果により、金融機関から新事業創出にかかる資金を調達できた
ガバナンスと類似した言葉との違い・使い方
コンプライアンスやガバメントなどガバナンスと類似した用語についても正しく理解していなければ、適切なガバナンスの実行ができません。ここでは、ガバナンスと類似した言葉との違い、使い方について解説します。
コンプライアンス(compliance)
ビジネスの場におけるコンプライアンスとは、法令だけではなく、企業倫理や社内規範についても遵守することを意味するものです。具体的には資金の不正利用、企業が保有する個人情報の窃取や漏えいなどを防ぐための取り組みを指します。
コンプライアンスを遵守するには、ガバナンスも重要な要素といえます。コンプライアンス違反を防止することにより、ガバナンスの強化につながります。コンプライアンスの主な使い方は次の通りです。
- コンプライアンス違反をなくすため、社内規程の整備や教育・研修の実施に取り組んでいます
- 弊社ではコンプライアンス違反に関する相談窓口を設置し、お客様が安心して取引を行える環境を整備しています
ガバメント(government)
ガバメントとは、政府や行政機関を指す言葉です。政治権力や封建力による強制的な支配といった意味もあり、「統治・支配」するという意味を持つ部分はガバナンスと同じです。
ただしガバメントは「国」が主体であり、ガバナンスは「組織」が主体であるため、基本的にビジネスの場でガバメントが使われることはありません。主な使い方としては次のようなものがあります。
- 国際社会のガバメント強化が求められており、国連改革が議論されている
- 国際協力のガバメントを強化し、国際社会の平和と発展に貢献する
リスクマネジメント
リスクマネジメントとは、社内不正やサイバー攻撃、競合の台頭など企業をとりまくさまざまな危険要因を事前に把握し、対応するための管理手法を指すものです。
自社の経営をおびやかす危険要因を事前に想定し、対応策を用意しておくことは健全な企業経営を実現させる手段の一つであり、ガバナンス強化にも欠かせないものといえます。具体的な使い方は次の通りです。
- 企業はリスクマネジメントの体制を整備し、危険要因の予防・対応・回復を効果的に行う必要がある
- 企業はリスクマネジメントの成果を定期的に評価し、継続的に改善することが重要である
内部監査
内部監査とは、財務や業務について調査・評価を行い、勧告や助言を行う企業内に設置された内部組織です。内部監査を徹底して行うことで、企業のガバナンスやコンプライアンスが適切に機能しているかの確認やその後の調整、サポートなどが可能になります。
内部監査には、内部部門ではありつつも独立性を保ち、ガバナンスやコンプライアンスが適切に機能しているかを客観的に監視し、評価や調整を行う役割があります。
ガバナンスを徹底している企業のメリット
ガバナンスを徹底することで企業はさまざまなメリットを得られます。主なメリットとして挙げられるのは次の通りです。
不祥事や不正防止につながる
ガバナンスの徹底により社内での管理体制が構築されれば、組織内部の不祥事や不正防止が可能です。具体的には経営者の独善的行動の防止、個人情報の窃取や漏えい、不正会計などが挙げられます。
これらの不祥事や不正を防止できるようになれば、健全な経営の実現につながるため、企業としての損失を防げるだけではなく、社会的な信用の失墜も防止可能です。
企業価値が向上する
リスクマネジメントや内部統制を行い、ガバナンスが強化されれば、法令や倫理、規範を遵守する企業として認知されるようになり、社会的信用を獲得できます。
その結果、企業評価が高まり、金融機関からの融資や優秀な人材の獲得をしやすくなるため、企業価値の向上につながるでしょう。
財務強化につながる
金融機関は融資を行う際、リターンを得られるかどうかを見る審査の一つとして企業に対して適切な情報提供を求めます。そのため、ガバナンスに沿った透明性の高い情報開示を行うことで企業の信用性が向上し、融資を受けられる可能性も高まるでしょう。
多くの場合、契約をするかどうかの判断は取引先の情報を参考に決めるため、透明性の高い情報開示はお客様からの信頼獲得にもつながります。結果として、さらなる財務強化が可能です。
企業の持続的な成長力や競争力の向上が期待できる
ガバナンスを強化し、不祥事や不正の防止、企業価値の向上、財務強化が実現すれば、中長期的な成長につながるため、新規事業への投資や優秀な人材の獲得が可能になります。
その結果、安定した雇用や労働環境の改善が社員のモチベーション向上、生産性向上につながり、企業の持続的な成長力や競争力の向上が期待できるようになるでしょう。
企業がガバナンスを強化する方法
企業がガバナンスを強化するにはさまざまな施策が必要です。ここではその中でも欠かせない3つの方法を解説します。
内部統制の構築と整備を実施する
企業がガバナンスを強化するにはまず、内部統制の構築と整備が欠かせません。健全な経営を実現させるために必要なルールや仕組みを整備することで、社内外に対する透明性の高い情報開示が可能になり、社内での不祥事や不正の防止につながります。
内部統制を構築するには、取締役会や内部監査組織が果たすべき役割を決めることが重要です。その上で社内でのルールを明確にし、そのルールを遵守できるよう、指導・監視を行える体制を整備します。
第三者的視点での監視体制を整える
社内での不祥事や不正を防ぐには、できる限り第三者的視点での監視体制が求められます。温情やしがらみから同僚や上司、部下の不正を告発するのは難しく、適切な判断や監視ができない可能性も少なくありません。
そのため、内部監査組織を設置する際には、全ての部署と関連のない独立性を確保させることが必須です。具体的には、内部監査専用の人材を雇用するもしくは外部から監査役を招き入れる必要があります。
内部からは気付きにくい社内の問題点も第三者の視点からは見つけられるケースが多く、ガバナンス強化にも効果を発揮するでしょう。
企業の方針や方向性を社内に浸透させる
ガバナンスの強化は全社で取り組むことが求められます。一部の社員だけが意識しても不祥事や不正を防止することはできません。
社会的信用の獲得や企業価値向上には社外に向けたアピールが重要です。そして同時に企業の方針や方向性を社内に浸透させることも怠ってはなりません。
企業方針や方向性を社内に浸透させるには、定期的な研修の実施や経営計画書の共有など常に意識して行動する環境を構築することが必要です。
企業のガバナンスを強化し健全な経営を目指そう
ガバナンスとは、統治や管理、支配といった意味です。ビジネスの場においてはコーポレートガバナンスと呼ばれ、健全な企業経営の実現に向けた管理体制の構築を指します。2000年以降、大企業による不祥事が増加したことで、法令はもちろん、社内での倫理や規範を遵守することがあらゆる企業に求められるようになりました。
ガバナンス強化の実現は、経営者が率先して動くことが重要です。そして組織全体として意識的に取り組むことも欠かせません。そのためには企業の経営方針や方向性を全社で共有し、健全な経営を目指すことを常に意識できる環境構築が重要となります。そこでおすすめしたいのが経営計画書の作成です。
企業理念や経営方針を記した経営計画書を常に携帯することで、全社員が意識的にガバナンス強化に取り組むことが可能になります。株式会社武蔵野では携帯しやすい手帳サイズの経営計画書の活用方法を無料で提供していますので、ガバナンス強化を検討している際はぜひ、お気軽にお試し下さい。
執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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