更新日:2024/01/30 13:00
評価制度
業績評価とは?導入手順や目標設定の方法、書き方の例をご紹介
読了まで約3分
公平性の高い人事評価の手法として多くの企業が導入している業績評価。
運用においては、目標管理制度を併用して取り入れ、従業員が主体的に取り組める体制作りが肝心です。
この記事では、業績評価の基礎知識や具体的な導入手順、目標の立て方、運用における注意点などを解説します。
目次
業績評価とは
業績評価とは、会社の売上や利益に対して従業員がどれだけ貢献したかを評価する人事評価のひとつです。
一定期間における従業員の成績に対し、客観的な基準を用いて評価を行います。
基本的には、成績を定量的に判定しやすい営業系職種などで取り入れられることが多い評価手法ですが、近年では評価基準や判定方法などを工夫して、事務系や技術系など多様な職種で導入されるようになっています。
人事評価の3基準
一般的な人事評価制度では、「業績」のほかにも「能力」「情意」の3つの基準が用いられます。それぞれの概要を解説します。
業績(成果)
先ほども触れた通り、業績評価とは一定期間における業務の成果や組織目標への貢献度をもとに評価する手法で、「成果評価」とも呼ばれます。
具体的な評価項目としては、以下の例があげられます。
・設定した目標の達成度
・達成するまでのプロセス、スピード
・対応した案件数、商談数
・チームへの貢献度
・プロジェクトへの貢献度
業績評価では、達成度や対応案件数など数値化しやすい項目の評価は容易に判断できるのに対し、達成までの過程やチームへの貢献度といった定性的な項目の評価が難しいという特徴があります。
上司一人が独断で評価するのではなく、チームのリーダーや同僚、取引先の担当者などの意見を参考にして評価の公平性を保つことが大切です。
能力
能力評価とは、職務を遂行するために必要な能力を身に付けているかどうかを評価する手法です。
各職種の職能要件に基づいて評価を行います。具体的な評価項目は、次の通りです。
・専門スキル、知識の有無
・顧客折衝力の有無
・リーダーシップの有無
・企画力、提案力の有無
・緊急時・突発時の対応方法、結果
能力評価は、業績評価で見落とされやすい個人の努力や技量、成長などを正しく評価できるのが利点です。
ただし、客観的で公平な評価を行うためには、各ポジションごとに求められる職能を明確に規定しておく必要があります。
情意
情意評価では、従業員の職務態度や意欲、会社の理念やビジョンに沿った行動をとれているかなどを評価します。
行動評価や執務態度評価とも呼ばれる手法です。具体的な評価項目は、以下の通りです。
・職務を遂行する際の行動・態度
・職場の規定に関する規律性、積極性
・責任感や思いやりの有無
・欠席や遅刻、早退などの勤怠状況
・チーム内での協調性
・地域貢献活動への姿勢
能力評価と同様に、業績評価で見落とされがちな個人の行動や態度、人柄などを公正に評価できるのがメリットです。
一方、評価に主観が入りやすい点に注意しなければなりません。
上司だけでなく、普段から一緒に業務を遂行している同僚やチームメンバーの意見を取り入れ、多角的な視点で評価を下す体制が求められます。
業績評価の目的
業績評価は、客観的で明確な評価基準を取り入れて、納得感のある人事評価制度を実現するために用いられます。
人事評価の結果は、人員配置や昇格、給与設定といったあらゆる人事活動の根拠として用いられるものです。
そのため、人事評価のプロセスが明確かつ客観的でないと、従業員の不満や不信の原因になりかねません。
業績評価は主観的要素が少なく、評価基準が明確な手法ですので、公平性の高い人事評価につながるのです。
また、評価の納得感が高いと従業員のモチベーションが高まり、生産性を向上させる効果が期待できます。
業績評価の結果によって、従業員は自分に足りない能力や行動が理解でき、より良い評価を目指して業務改善を図ることができます。
業績評価を導入する流れ
企業が業績評価を導入するには、具体的にどのような流れで実施すればいいのでしょうか。3つのステップに分けて解説します。
目標設定
業績を適正に評価するためには、前提となる目標設定が重要です。
そこで、多くの企業では目標管理制度を併用して運用しています。
目標管理制度では、上司との面談を通して個人の目標を設定し、達成に向けて組織的にフォローしますので、目標の達成度合いや成果を視覚的に管理でき、業績評価と組み合わせて運用しやすいためです。
目標を設定する際は、まず企業や部署全体の目標を定めて、そこから細分化して個人の目標に落とし込みます。
すぐに達成できる容易な目標だけでなく、一定の努力が必要な少し難易度の高い目標を組み合わせて設定することが理想です。
評価制度とは?目的や種類・事例や作り方のポイント
業務遂行と目標の見直し
明確な目標を設定したら、達成に向けてそれぞれ日々の業務に取り組みます。
あわせて、定期的に振り返りの機会を作り、目標の達成度合いを評価します。
また、企業目標の変更や個人の達成度合いに合わせて、目標の見直しも必要です。
個人の目標は組織全体の目標を踏まえて設定されますので、経営方針や戦略に変更があれば個人目標もあわせて修正しなければなりません。
ほかにも、設定した目標の難易度が高すぎる・低すぎるケースもあるでしょう。
達成度合いや本人の意向を踏まえて、柔軟に調整する姿勢が求められます。
評価実施・フィードバック
評価期間が満了したら、設定した目標の達成度合いを評価します。
基本的には目標管理制度のもとに自己評価を行い、その結果を踏まえて上司と面談を実施してフィードバックを行います。
自己評価と上司の評価にかい離がある場合、チームリーダーや同僚など複数の評価者の意見を取り入れるといいでしょう。
上司の評価は重要ですが、従業員自身の納得感が得られなければ、仕事に対するモチベーションの低下を招く恐れがあります。
上司の主観によって評価を下さず、明確な基準による評価を目指しましょう。
業績評価の目標設定方法
業績評価では、評価の前提となる目標設定が欠かせません。
まずは従業員が主体的に目標を設定し、面談を通して上司と内容や難易度を調整する方法が一般的です。
また、達成すべき具体的な数値や達成までの期間も組み込むといいでしょう。
従業員が自己申告することで目標に対する主体性が生まれ、達成に向けたモチベーションが向上します。
上司は従業員が立てた目標の実現可能性を考慮し、目標の難易度を調整します。
従業員の意向を尊重しながら、2者が合意できる内容の最終目標を決定しましょう。
業種や部署ごとの目標設定事例
前述の通り、具体的な数値や行動を盛り込んだ目標を設定すると、業績評価をしやすくなります。
営業職のように目標を数値化しやすい職種と違い、バックオフィスなどの管理部門は公平な評価をつけることが難しいかと思います。
目標の数値化が難しい部門でも、従業員に向けて具体的な目標設定を提示する必要があります。
書き方の例は、以下を参考にしてください。
営業の目標設定
まずはいちばん数値設定がしやすい営業部門の目標例をご紹介します。
数値目標が立てやすい一方、根拠のない数値を設定してしまうこともありますので、日々の数値結果を分析し、現実的なプランを立てましょう。
「〇月までに売上前年比120%達成」「商談のアポイントを毎月30件獲得」「ヒアリング結果やアフターケアの内容を社内で共有」などの目標例があげられます。
その目標を達成するために、「今月の成約率を40%から50%にあげる」「訪問件数を一日2件から3件に増やす」など、より詳細な行動目標まで落とし込めると良いでしょう。
総務の目標設定
総務などの成果を数値化しづらい管理部門は、無理な目標や大がかりな改善提案を求めてしまうと、かえって業務の非効率化に繋がる恐れもあります。
そのため、日々の業務の効率化やミスの削減などを目標とすることが一般的で、数値としてわかりやすいのは「経費の削減率」です。
その他に「マニュアル作成による問い合わせ件数の減少」「業務を効率化し残業時間を減らす」などの目標例が挙げられます。
経理の目標設定
社内の入出金管理を担い、正確さが求められる経理部門においては、コストカットやミス防止につながる取り組みを目標にするのがよいでしょう。
「消耗品の購入先を見直し備品費用を削減させる」「請求書発行のダブルチェックやリスト作成によりミスを減らす」「経理業務のDX化を推進し業務効率化を図る」など、具体的な目標に落とし込みます。
人事・労務の目標設定
人事・労務では、採用や人材育成、労働環境などの状況を表す数値を洗い出したうえで目標設定することがポイントです。
「研修回数を増やし従業員からの相談件数を〇件以下に減らす」「来年度の新卒採用エントリー数を5%増やす」「有給休暇取得率を80%を目指す」「定期健康診断に加え、二次健康診断の活用を促す」などがあります。
広報・企画の目標設定
広報も、数値目標を設定しやすい部門の一つです。
「商品のリピート率〇%増加させる」「SNSのフォロワーを〇人増やす」「ウェブサイトの更新頻度を上げて問い合わせ件数を増加させる」「メールマガジンの登録者数を2倍に増やす」など、効果測定値を目標として設定することが一般的です。
SE(システムエンジニア)の目標設定
技術職であるSEは、自身がどのようなSEになりたいのか、目標達成のためにどのような行動を取る必要があるのかを明確に示します。
数値化できる項目があれば数値化し、数値化が難しければ具体的な期日や業務内容を盛り込みましょう。
例えば、「インフラエンジニアとして最前線に立つ」「将来的にフリーランスとして独立する」「新しい技術を身に付けて実装を一から経験する」などです。
専門知識の獲得は長期的な取り組みが必要ですので、3年5年10年先を見据えて、いつまでにどの程度の状態にもっていくかなど具体的に記入します。
目標設定のポイント
それでは、目標を設定する際には具体的にどのようなポイントに注意すればいいのでしょうか。目標設定のコツを紹介します。
行動目標を必ずセットで設定する
目標は、最終的な成果だけでなくそこに至るまでのプロセスもあわせて設定することが大切です。
例えば「月間売上100万円を達成する」という目標を立てても、その目標を達成するためにどのような行動が必要なのか明確になっていなければ、成果を実現することはできません。
「100万円を達成するためには、○万円以上の見込客が●社必要→毎月アポイントを▲件入れる→テレアポは△件」というように、成果から逆算して行動目標を立てましょう。
成果までのプロセスが明らかになっていると、振り返った時にどこに問題があったのかも把握しやすくなります。
大きな目標からブレイクダウンして設定する
従業員個人の目標は、会社や組織全体の目標をもとに設定すべきです。
全社目標を各部門ごとに割り振り、さらに細かい部署、チームの目標を設定します。
または、1年で達成すべき目標を分解して、半期、四半期、1ヶ月といった単位で目標を割り振ってもいいでしょう。
大きな目標を分解してチームや個人の目標を設定することで、経営戦略やビジョンと食い違いのない目標を設定できるようになります。
業績評価の注意点
業績評価を取り入れて運用する際には、次の2つの点に注意しましょう。
成果だけでなく行動目標の振返りも行う
振り返りを行う際は、最終的な成果だけでなく、そこに至るまでのプロセスや行動目標の実行度合いもあわせて確認しましょう。
行動目標を達成しているのに最終的な成果が出ていない場合、市場など外的要因の影響や目標の難易度設定が甘かったことなどが原因かもしれません。
達成できなかった原因がどこにあったのか具体的に掘り下げると、次の目標のブラッシュアップにつながります。
昇進制度とは切り分けて運用する
業績評価は、昇進や昇給に直接反映させず、切り分けて運用するのがおすすめです。
業績は景気や市場トレンドといった外部要因に左右されやすく、本人が適正に努力しても達成できない可能性があります。
公平性にかける指標で昇進・昇給を決定すると、従業員のモチベーション低下を招きかねません。
業績評価の結果は、特別賞与などの指標として用いるといいでしょう。
社員の成長を後押しする業績評価を設定しよう
業績評価は、公平な人事評価を実現するための指標として用いられます。
従業員が自分自身で目標を設定し、成果を自分事として捉えることで、業務に対するモチベーションアップが期待できます。
運用の際は、成果に至るまでの行動やプロセスもあわせて評価するよう心がけ、客観的な評価を目指しましょう。
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執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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