更新日:2023/05/13 09:30
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評価制度
ハロー効果とは?意味や特徴・人事評価エラーを防ぐ方法をわかりやすく解説
読了まで約4分
ハロー効果について理解を深め、人事評価制度を確立したいと思っている企業経営者の方もいるのではないでしょうか。
ハロー効果は主に心理学で用いられる用語ですが、ビジネスシーンで利用されることもあります。
本記事では、ハロー効果の意味や特徴、ビジネスシーンで起こり得る例、ハロー効果やその他の人事評価エラーを防ぐ方法などについて紹介します。
目次
ハロー効果とは
まずはハロー効果の意味と由来について説明した後、ハロー効果と混同されやすい用語としてピグマリオン効果との違いを解説します。
ハロー効果の意味
ハロー効果は1920年に心理学者のエドワード・ソーンダイク氏が提唱した社会心理学用語で、対象者を評価する際、外見や功績のような顕著な特徴に引きずられ、他の特徴の評価まで歪められる現象を指します。
社会心理学においては、過去の経験や先入観によって偏った判断に至る認知バイアス(偏り)に該当すると考えられています。
例えば中途採用の面接において、志願者の前職が有名企業だったり、難解な国家資格を取得していたりする場合、人格まで優れているはずと誤認するケースがあります。
このような現象がハロー効果です。
ハロー効果の由来
ハロー効果のハロー(halo)には「後光」「光輪」「光背」「人物やものを取り巻く光輝」「栄光」などの意味があり「聖人の頭上に描かれる光の輪」に由来する言葉です。
日本語では、主に「後光効果」「光背効果」と訳されます。
つまり、対象物の際立った特徴を後光になぞらえた表現が由来と考えられています。
ピグマリオン効果との違い
ハロー効果と間違われやすい用語にピグマリオン効果があります。
ピグマリオン効果とは、アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって提唱された教育心理学の用語で、他者から期待をかけられることにより、仕事や勉強などの結果が向上する現象を指します。
期待をかける側ではなく、期待をかけられる側の変化です。
一方のハロー効果は、ある人を評価する際の偏り(認知バイアス)であるため、評価される側ではなく、評価する側の心理現象を指します。
なお、ビジネスシーンにおけるピグマリオン効果は、主に人材の育成で使う手法であり、ハロー効果は人事評価の見方に変化が起きやすい現象といえます。
ハロー効果の種類と特徴
ハロー効果の種類にはポジティブ・ハロー効果とネガティブ・ハロー効果があります。
それぞれの意味と特徴について解説します。
ポジティブ・ハロー効果
ポジティブ・ハロー効果とは、対象となる人物の優れた印象によって、他の部分まで高く評価する心理現象です。
いわゆるポジティブ(積極的)なハロー効果です。
具体例として、世間的に好印象なタレントを起用したコマーシャルが挙げられます。
コマーシャル内の製品とは無関係にもかかわらず、好感度が高いタレントが出演している場合、ポジティブ・ハロー効果が起こる可能性があります。
つまり「あの芸能人が出ているCMだから素晴らしい商品に違いない」と大衆が思うことにより、ポジティブなハロー効果が発生するのです。
ネガティブ・ハロー効果
ネガティブ・ハロー効果とは、対象となる人物の劣った印象によって、他の部分まで低く評価する心理現象です。
いわゆるネガティブ(消極的)なハロー効果です。
具体例として、声が小さい店員がいる店舗が挙げられます。
商品を買おうと店に入っても、店員の「いらっしゃいませ」の声が小さくて活気がなければ、製品の質まで悪く感じてしまうといったケースがあります。
このように部分的によくない印象に引きずられ、全体的に悪影響となる現象がネガティブ・ハロー効果です。
なお、ネガティブ・ハロー効果はホーン現象やホーン効果と呼ばれることもあります。
ハロー効果がビジネスの場面で起こり得る代表的な例
ハロー効果がビジネスシーンで起こり得る代表的な例として、人事評価、面接、マーケティングの3つがあります。
それぞれの内容について具体例を交えて解説します。
人事評価
従業員を評価する場面では、主に過去の経験や業績、スキルや資格などから総合的に判断する傾向があります。
過大評価しやすい具体例は以下です。
- 大手企業で働いていた経験がある
- 過去に営業成績トップを取ったことがある
- TOEIC800点以上と英語スキルが高い
- 国家資格を取得している
一方、過小評価しやすい具体例は以下です。
- 転職前にアルバイトの期間が長い
- 過去にリストラされた経験がある
- 上司に反対意見を述べたことがある
- 目立ったスキルがなく、資格もない
このように部分的なポジティブ、ネガティブの印象が、人事評価全体に及ぶことがあります。
面接
面接のシーンにおいて、面接官は短時間で採用の有無や2次面接・3次面接の候補に残すかどうかを決めなければなりません。
時間が限られている中で評価を下す必要があるため、志願者の見た目に左右される傾向が強く、ハロー効果の影響を受けやすい場面といえます。
面接で過大評価しやすい具体例は以下です。
- 偏差値の高い有名大学を卒業している
- 面接官と出身地が同じである
- 容姿端麗で声の印象が良い
一方、過小評価しやすい具体例は以下です。
- 目立った学歴がない
- 面接官との接点がない
- 表情と声の印象が暗い
このように面接官の表面的な印象が、面接の結果に影響することがあります。
マーケティング
企業広告のようなマーケティングの場面においてもハロー効果が及ぶことがあります。
特に広告デザインなどはハロー効果が表れやすく、企業イメージを作り出す大きな要因の一つといえます。
過大評価しやすい具体例は以下です。
- 笑顔の夫婦が映されている広告デザイン
- 赤ちゃんや動物を使ったテレビコマーシャル
- 人気アイドルや有名スポーツ選手が宣伝する製品
このようにマーケティング戦略の一環として、ハロー効果がビジネスに活用されることがあります。
ハロー効果以外の主な人事評価エラーとは?
ハロー効果以外の主な人事評価エラーとしていくつか種類がありますので、それぞれの意味や特徴について具体例を交えて解説します。
逆算化傾向
逆算化傾向とは、最初から決定済みの評価にするため、終わりから逆算して調整する傾向をいいます。
例えば、特定の部署に所属する従業員10名の評価を「5段階評価で3にしたい」という思惑により、最初から全員を3にしたり、平均が3になるように高い評価と低い評価を組み合わせたりする現象です。
「チーム全体を底上げしたい」など、評価者の打算的な感情から生じることが多い心理作用です。
逆算化傾向を防止する施策としては、評価基準を明確にすることや、関連部署の上司など複数の上司が評価に関わることなどが挙げられます。
中央化傾向
中央化傾向とは、評価が中央に偏る傾向をいいます。
逆算化傾向と似ていますが、逆算化傾向が最初から決めている評価に意図的に調整する一方、中央化傾向は無意識に中央値に寄せていく傾向といえます。
例えば、大半の部下の評価を5段階中の3に集中させるといった現象です。
「部下からの批判を回避したい」という消極的な感情から発生する心理作用です。
分散化傾向/二極化傾向
分散化傾向は、小さな差や些細な問題を拡大解釈して評価してしまう傾向をいい、二極化傾向、極端化傾向ともいいます。
中央化傾向とは正反対の評価傾向であり、人事評価時に注意が必要です。
部下のことをきちんと把握していると思い込んでいる上司や、部下の評価に大きな差をつけることで部下のモチベーションを高めたいと考えている上司が陥りやすいようです。
しかし、評価の良し悪しが極端に表れるため、評価にばらつきが生じます。
また、事実を反映した適正な評価とはいえない側面があるため、評価者が留意しなければならない事項として認識すべきです。
寛大化傾向
寛大化傾向とは、評価が全体的に甘くなる傾向をいいます。
例えば、上司として複数の部下を評価するときに、本来のパフォーマンス的には5段階評価で2以下の部下が多いにもかかわらず、4や5に傾いてしまう現象です。
「部下に嫌われたくない」「良い上司と思われたい」などの消極的な感情から起こる心理作用ですが、実態とかけ離れた高評価は部下にとってマイナスになります。
酷評化傾向
酷評化傾向とは、部下の評価を酷評する傾向をいい、厳格化傾向とも呼ばれています。
自分に自信を持っている人・能力の高い人が陥りやすい傾向です。
特定のジャンルで頂点を極めた人物が、部下を指導する際に陥る心理的傾向であるともいわれています。
完璧主義を貫く人・対象者を追い詰める人・小さなことにまでこだわってしまう人も、酷評化傾向が表れやすいといえます。
酷評化傾向がある人の評価は適正な評価とは言えず、部下のモチベーションに大きく悪影響を及ぼすため、モチベーションの観点から考えても注意が必要です。
対比誤差
対比誤差とは、評価の対象者を別の人物と比較する傾向をいいます。
例えば、上司が部下を評価する際に「他の部下よりも劣っている部分があるから、全てにおいて劣っている」と判断したり、「自分の若い頃よりも向上心がない」という理由で過小評価を下したりするといった現象です。
比較者と対象者の傾向が同じ、もしくは正反対の傾向がある場合は特に注意が必要です。
論理誤差
論理誤差とは、事実に基づいた論理的な評価ではなく、推測によって評価する傾向をいいます。
例えば「事務職は女性が向いているに違いない」「営業成績が良い人材は会話が上手く、顧客に好印象を与えられるだろう」「難関国家資格の合格者なら仕事もすぐに覚えるだろう」などの予測に基づく認識です。
「自分の基準が絶対的に正しい」と信じる上司に多い心理作用ですが、正当な評価とはいえません。
期末誤差
期末誤差とは、期末にだけインパクトのある提案や発言をする傾向をいいます。
期末に強いインパクトを相手に与えることで、評価者が直近の評価を重要視してしまう傾向から起こる現象です。
会議の最後に挙手して発言をしたり、期末に大きな仕事を取ってきたりした場合、評価期間中はパッとしない活動状況だったとしても、最後の活動でプラスの評価を得ることができます。これが、期末誤差の象徴例です。
一方、期末に大きく売り上げを落とした場合、今までの頑張りが薄れ、直近の悪い印象がマイナス評価となって大きく悪影響を及ぼすこともあります。
ハロー効果や人事評価エラーを防ぐ方法
最後にハロー効果や人事評価エラーを防止する方法を説明します。
具体的には、評価基準の明確化、評価者訓練の実施、評価フィードバックという3つの対策があります。
評価基準を明確にする
誰が評価しても正当な評価ができるように、評価項目と基準を明確にする必要があります。
そのために評価項目と基準を明文化して社内で共有することが大切です。
明確な評価基準が明文化されていれば、評価者の個人的な感情や主観に作用されず、一定の評価が可能になり、部下が疑問を抱いた際も理由を説明しやすくなります。
ハロー効果や心理的な傾向を軽減するためには、評価項目と基準を設定してマニュアル化し、社内で完備することが大切です。
評価者訓練を実施する
評価者訓練とは、評価者に人事評価制度の内容や基準を理解してもらうことで、人為的な評価エラーを防ぐためのトレーニングをいいます。
評価者訓練の実施によって、人事評価制度に対する部下の不満を軽減する効果が期待できます。
人事評価が人対人である以上、評価エラーや誤差をゼロにすることはできませんが、よくあるエラーや誤差を事前に把握していれば防ぎやすくなります。
そのためにも評価者訓練の実施が大切です。
評価フィードバックを十分に行う
人事評価に関する部下の不満要因として、評価フィードバックが十分でなかったり、自己評価よりも低い評価で納得できなかったりということが挙げられます。
そのため、評価理由をわかりやすくフィードバックし、対象者の不満を減らす努力が大切です。
他にも、人事評価制度の内容を理解してもらうために被評価者訓練(評価される側の訓練)を行う必要があるかもしれません。
自社の人事評価の項目と基準を社内に浸透させることで、透明性の高い評価制度の構築につながります。
ハロー効果を防ぎ人事評価制度の確立を目指そう
本記事で、ハロー効果について詳しくご紹介してきましたがいかがでしょうか。
ハロー効果とは、対象者の顕著な特徴によって評価が歪められる現象を指し、ポジティブ・ハロー効果とネガティブ・ハロー効果という2つの種類があります。
ビジネスの場面でハロー効果が起きやすいのは人事評価、面接、マーケティングです。
ハロー効果以外の人事評価エラーには逆算化傾向、寛大化傾向、中央化傾向、酷評化傾向、論理誤差、対比誤差、期末誤差、分散化傾向/二極化傾向があります。
人事評価エラーやハロー効果を防ぎ、評価制度を確立するには、基準の明確化、評価者訓練の実施、評価フィードバックを行うことが大切です。
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