更新日:2024/04/10 13:04
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働きがいとは?働きやすさとの違いや向上させる方法を解説
読了まで約3分
働き方改革が進む昨今、自社の「働きがい」向上に取り組む企業が増えています。優秀な人材を定着させるためにも、働きがいのある環境が整っていることは重要です。他方で具体的にどのような対策が必要なのか分からず、迷っている経営者も多いのではないでしょうか。
今回は、働きがいの意味や類語との違い、働きがいを構成する要素、働きがいを向上させる方法などを詳しく解説します。
目次
働きがい(働き甲斐)の意味
働きがいとは、働くことによって得られる喜びや成果、感じられる価値などを指す言葉です。従業員がその会社で働くことに満足し、前向きな気持ちで仕事に臨めている状態を「働きがいがある会社」「従業員が働きがいを持って仕事をしている」のように表現します。
働きがいは、仕事のやりがいや達成感によって生まれるだけでなく、部署内の人間関係や正当な評価、成果の社会的価値、働きやすい職場環境、自身の成長などさまざまな要素から生まれます。
ただし、何に対して働きがいを感じるかは人によって異なるため、明確な定義づけは難しいといえるでしょう。
類似・混同しやすい言葉との違い
働きがいとよく似た言葉に「働きやすさ」「やりがい」「従業員エンゲージメント」が挙げられます。それぞれ、働きがいとの違いを解説します。
働きやすさ
働きやすさとは、従業員が自分の希望に合わせて働けている状態です。
例えば、労働時間や休日日数、部署の人間関係や雰囲気、給与、人事評価、福利厚生といった職場の環境的要素が働きやすさに関連します。「家庭の都合にあわせて働ける」「希望するスキルが身につく研修が受けられる」などの職場は、働きやすいといえるでしょう。
働きがいは内的要素によって得られる心の満足や価値を指すのでその点が異なります。ただし、働きやすい職場環境の整備が働きがいの向上にも寄与するため、両者は関連性があるといえます。
やりがい
やりがいとは、物事に取り組む際の手応えや心の充足感、気持ちの張り合いなどを指します。
例えば、従業員の持つスキルや経験に対して難易度の低い仕事を与えてしまうと、やりがいを感じられない人が出てくるでしょう。反対に、難易度の高過ぎる仕事を与えると重荷に感じられてしまい、やりがいがなくなる人もいます。
このように仕事内容が自分の能力と釣り合っていて、自分の力を100%発揮できる状況において、人はやりがいを感じやすいです。
仕事にやりがいを感じるとやる気やモチベーションが高まり、働きがいの向上につながります。つまり、働きがいの中にやりがいが含まれていると解釈できます。
従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、従業員が会社の理念やビジョンに共感し、「会社に貢献したい」と思う意欲を指します。従業員の会社に対する信頼の度合いや、つながりの強さとも言い換えられます。ただし、明確な定義がない言葉であり、企業がそれぞれ独自の指標でエンゲージメントを測っているのが実情です。
このように、従業員エンゲージメントは会社と従業員の関係性を表す用語です。会社と従業員の信頼関係が強固になり、従業員エンゲージメントが向上した結果として、働きがいが生まれます。
つまり、従業員エンゲージメントの維持や強化は、働きがいを向上させる手段のひとつといえるでしょう。
SDGs「働きがいも経済成長も」とは?
SDGsの8つ目の目標に「働きがいも経済成長も」というゴールが掲げられています。SDGs(Sustainable Development Goals)とは「持続可能な開発目標」と訳され、人類が安定した暮らしを維持し続けるために、さまざまな世界問題の解決を目指して設定された国際目標です。
17のゴール・169のターゲットから構成されており、先進国・発展途上国の垣根なく世界が取り組む目標として、日本でも積極的な取り組みが進められています。
SDGsの「働きがいも経済成長も」では、経済的な利益のみを追い求めるのではありません。全ての人が安定した環境のもと、仕事の働きがいを実現しなければ、豊かな世界にはならないという考えが背景にあります。
昨今、SDGsへの社会的な注目が高まっていることから、働きがい向上に取り組む企業が増えているといえます。
働きがいのある会社研究所による「働きがいを構成する5要素」
働きがいのある会社研究所(GPTW:Great Place to Work)とは、世界50ヶ国以上で「働きがい」に関する調査・分析を行う専門機関です。グローバルな調査基準をもとに、働きがい認定企業や「働きがいのある会社」ランキングなどを発表しています。
GPTWでは、会社における働きがいを「信用」「尊敬」「公正」「誇り」「連帯感」の5つの要素に分類しています。それぞれ、詳しく解説していきましょう。
信用
GPTWでは、従業員から見た働きがいには会社と従業員との間に「信頼関係」が必要不可欠であり、その信頼関係は「信用」「尊敬」「公正」の3つの要素で構成されると定義しています。
「信用」は、従業員が会社やマネジメント層をどの程度信頼しているかを指します。GPTWの調査においては、経営層やマネジメント層の言動や習慣、能力やコミュニケーションを従業員がどう評価しているかをヒアリングし、数値化します。
尊敬
「尊敬」は、従業員が「会社は自分たちを尊重している」と感じているかどうかを測ります。具体的には、会社が従業員の働きやすさのために用意しているサポートや配慮、協力体制などです。
例えば、従業員が「育児と両立して働ける制度が整っている」「年次有給休暇が取得しやすくプライベートを大事にできる」と従業員が感じている会社は、尊敬の水準が高いといえるでしょう。
公正
「公正」は、従業員から見て「自分が会社から公正に扱われている」と感じているかどうかです。従業員が職場で感じる公平や中立、正義についてヒアリングします。
例えば、「どの従業員も公平に昇進の機会が得られるか」「同一水準のスキルを持った従業員に同一の給与を与えているか」などが公正の要素に該当します。
誇り
「誇り」は、自分が行っている仕事に対して誇りを感じているかどうかです。
GPTWの調査では、自分自身の仕事に対するプライドの他、自社商品に対する自信や商品の価値が社会に貢献しているという実感、会社や組織が掲げているビジョンや理念への共感などを測ります。
連帯感
「連帯感」は、部署やチーム内で一緒に働くメンバーに対する仲間意識や、組織への帰属意識のことです。メンバーが一体となって「同じ目標に向かって頑張っている」という実感が持てると、働きがいが向上します。
調査では、職場内の親密さや関係性、協力体制などをヒアリングします。
働きがいを向上する方法とは?
それでは、どうすれば自社の働きがいを向上させられるのでしょうか。組織の働きがいを高める代表的な方法を紹介します。
経営理念を共有する
従業員が経営層の考えに共感しており、自身の仕事内容や商品の社会的価値に誇りを持って働いている会社は、働きがいが高い傾向があります。何のために仕事をしているのかを再確認し、モチベーションを高めるためにも、経営理念やビジョン、事業戦略などを共有する機会を定期的に設けるといいでしょう。
また、採用時に経営理念やビジョンについてすり合わせることも大切です。理念やビジョンの実現に向けて従業員にどのような役割が求められるのか、入社前に理解が深まっていると、ミスマッチによる働きがいの低下を防止できます。
社内コミュニケーションを活性化する
従業員が働きがいを感じるためには、部署やチーム内で信頼関係が構築されていることも必要不可欠です。仲間を信用して仕事を任せられたり、自分の意見をはっきりと言える環境がなければ、従業員は安心感を持って仕事に臨めません。
職場での良好な人間関係を構築するには、社内でのコミュニケーションを活性化する仕組みづくりが必要です。従業員同士の交流イベントを実施する、フリーアドレス制度を導入して部署をまたいだ交流を促すなど、コミュニケーションを取りやすい環境づくりを意識しましょう。
適切な目標管理と評価制度を整備する
適切な目標管理と公正な評価制度を整備することは、従業員が仕事に対するやる気を維持する上で重要な要素です。自身が何を目標に働いているのかを常に確認し、成果や成長に対して適切な評価やフィードバックを受けることが、達成感や意欲につながります。
単に目標を立てさせるだけでなく、目標達成に向けた支援や定期的な面談、明確な評価基準などを制度化すると、より自己実現しやすくなるでしょう。
働きがい向上に取り組みをした企業事例
GPTWが発表する「働きがいのある企業ランキング」に7年連続でランクインしているIT関連企業では、従業員の本音を引き出すため、四半期に1度、独自のサーベイを実施しています。元々は他社製のサーベイを利用していましたが、「誰が、何に、どのような課題を抱いているか」といった解決の糸口までは掴めなかったため、独自のサーベイを開発したそうです。
また、サーベイの集計方法にもこだわりを持っています。チームの雰囲気や構成員によってスコアの意味合いは異なるため、数値を鵜呑みにせずに背景にあるストーリーを考え、現場マネージャーや事業責任者に共有することを重視しています。
その結果、人事評価に対する従業員の理解や納得感が高まり、働きがいの向上につながりました。
自社ならではの働きがいを定義して向上に努めよう
SDGsが世界的な注目を集めている背景から、国内でも多くの企業が働きがいの向上を目指す取り組みを強化しています。自社の働きがいを向上させるためには、経営理念やビジョンを共有する機会を設け、従業員の共感を引き出すことが重要です。
自社の事業や仕事内容に誇りを持ってもらい、意欲を維持してもらうためにも、まずは自社の理念や事業戦略を明文化するところから始めましょう。
従業員が働きがいを感じる環境づくりとしては、武蔵野の環境整備も役立ちます。環境整備は単なる社内の整理整頓ではなく、業務の見える化やルールの習慣化を促進し、社内コミュニケーションを活性化させる仕組みのひとつです。無料でお試しできますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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