更新日:2024/01/09 11:09
経営
事業開発がうまくいかない理由とは?事業開発の役割や仕事内容も解説
読了まで約4分
企業が継続的に利益を上げ成長していくためには事業開発の取り組みが欠かせません。
事業開発は、新たな市場の開拓による事業の創出や、既存事業の拡大によるお客様の獲得に効果的であり、多くの企業が専門の部門を設置して事業開発を行っています。
本記事では、事業開発の概要、経営企画やマーケティングとの違い、仕事内容や事業開発に向いている人材要件を解説します。
事業開発の部署を社内に設置し、本格的な取り組みを検討されている経営者の方はぜひ参考にしてください。
目次
事業開発とは
事業開発とは、企業の継続的な成長や発展を目指して行う、新規事業の創出や既存事業の拡大などを指すものです。
近年では、事業開発を意味する「Business Development」の略で「BizDev(ビズデブ)」とも呼ばれています。
具体的な仕事内容としては、新規事業創出や既存事業拡大の実現に向けた市場調査や分析、異業種との連携を行う際の調整業務が挙げられます。
また、事業開発に伴う予算の策定・管理、法的な対応なども事業開発の仕事に含まれる場合もあります。
ただ、事業開発という言葉に明確な定義がなく、企業によって捉え方や実施される施策、仕事内容ははさまざまです。
事業企画・経営企画との違い
事業開発と混同しがちな言葉として、事業企画や経営企画が挙げられます。
事業企画とは、すでにある事業に対し、課題点の抽出や解決策の検討などにより、事業計画の策定・推進を行うものです。
具体的には、事業部の売上目標/予算を決め、達成計画を立てて、課題を整理しながら事業方針を明らかにしていく職務となります。
また、経営企画とは、ヒト・モノ・カネ・情報の経営資産をどのような配分で活用するのか戦略を立てる部門です。
一方、事業開発は、「0→1」で事業を作り出しながら、一つの事業に特化して開発を進めるポジションです。
新たな事業を生み出すことに比重を置きながら企業全体の拡大を目標とする点で異なります。
マーケティングとの違い
マーケティングの主な目的は、商品やサービスを購入してもらう仕組みをつくることです。
目的は異なるものの、事業開発もマーケティング業務と同じく市場調査やお客様の分析を行う場面も多いです。
事業開発が市場調査や分析を行う目的は、主に新規事業の創出や既存事業の拡大です。
マーケティングはお客様に対するアプローチが主となりますが、事業開発は主に取引先や協業先に対するアプローチが主となるのです。
どちらも企業を成長させるための業務ではあるものの、目的や達成手段に大きな違いがあるといえるでしょう。
事業開発の仕事内容
事業開発の仕事内容は業種や企業規模によって異なります。実際の求人情報をもとに、事業開発の仕事内容例を紹介します。
例1「新規事業開発のプロジェクト立案から開発、進行」
具体的には…
・新規事業立案、事業設計、協力機関との推進業務などプロジェクト進行
・既存プロジェクトに参画しながら業界構造を理解し、他部署連携をしながら新たなプロジェクト立案に臨む
例2「デジタル技術を活用し、既存サービスの価値向上」
具体的には…
・より事業を成長させる事業企画を策定し、ステークホルダーに提案
・事業企画が策定できた後、具体的な事業計画に落とし込む
・商品開発部やステークホルダーと連携をとりながらプロジェクト進行をする
・新たなお客様獲得も行う
例3「新規事業開発の全般を担う」
具体的には…
・新規事業立案、戦略立案
・他企業とのアライアンス
・投資検討
・組織の構成、人材育成
・親会社のリソースを生かした事業の検討
このように、事業開発といってもかかわる相手や扱うサービス、市場によって仕事内容や難易度が変わるといえます。
事業開発に必要なスキル
事業開発を実現させるためにはさまざまなスキルが求められます。
そのなかでも欠かせないのは、「調査・課題分析力」「コミュニケーション力」「プレゼンテーション力」「論理的思考力」の4つです。
本章では、4つのスキルについて掘り下げて解説します。
調査・課題分析力
事業開発の仕事に取り組むには、調査・課題分析力が必須です。
事業開発を行う際、必ずマーケットの調査や、ターゲットとなり得るユーザー調査などリサーチ業務を行います。
また、市場動向やお客様ニーズ、社会情勢にまつわる情報を、さまざまな角度から分析し、自社の強みや弱み、課題の抽出を行います。
市場やお客様の調査、膨大なデータから課題分析を行うことで、仮説が生まれ、骨太の事業を生み出すことにつながります。
地道で根気強さも求められる作業ですが、調査・課題分析スキルのある人材は、事業開発で重宝されるでしょう。
コミュニケーション力
コミュニケーション力も事業開発に欠かせないスキルの一つです。
事業開発をする際、社内の営業担当や商品企画、マーケティングなど部署の垣根を超えてリサーチ・ヒアリングを行う場合があります。
また、社外の投資家や協力会社、ユーザーとのコミュニケーションも発生しやすい部門であるため、対人能力は必要不可欠です。
単に「聞き上手」のコミュニケーションができれば良いわけではなく、ビジネス実現に向けて相手と「交渉」型のコミュニケーションをとる場合もあるでしょう。
そのため、事業開発では社会人経験の豊富な年代やコンサル業出身者など、高いコミュニケーション力が備わっている人材が配置される傾向にあります。
プレゼンテーション力
事業開発の実現には多くのステークホルダーの協力が必要です。
同じ部署、チーム、他部署、経営層のほか、取引先やアライアンス企業などを巻き込んで、調整しながら物事を進めなくてはなりません。
複数の関係者の利害関係を調整し、事業を形作っていく中で、論理的かつ説得力のあるプレゼンテーション力が求められます。
市場調査や分析結果を基に立案した計画がどれだけ良いものであったとしても、それを理解してもらうのは簡単ではありません。
相手に理解して納得を得るためのプレゼンテーション力は必須のスキルといえるでしょう。
論理的思考力
新たな事業を作る際に、「なんとなく売れそうなサービス」「過去に成功した事業に似せたビジネスモデル」といった、直感や過去の成功体験に依存した取り組みは危険です。
事業が成功すると判断した根拠をデータで示し、筋道を立てて説明する論理的思考力が必須となります。
論理的思考力は、複雑に絡み合った情報・コトを分類して体系的に整理を行う力と言い換えることができます。
このスキルは、相手の話を聞き出して適切な情報を伝えるコミュニケーション力や、相手が納得してくれる筋の通った主張を行うプレゼン力のベースになるものです。
論理的思考力は、さまざまな立場の人とコミュニケーションをとり、調整・交渉をしていく事業開発の場面で必ず生きるスキルといえます。
事業開発に向いている人
事業開発の仕事で求められるスキルを確認したうえで、事業開発に向いている人材要件について解説します
コンサルタントや営業経験者
複雑で専門的知識を求められる現場で情報収集・分析を行い、お客様に適切な助言を行うコンサルタントや、お客様の課題を見極めてコミュニケーションをとりサービスを販売する営業経験者は、事業開発に向いています。
コンサルタントは、答えのはっきりしていない分野に対して仮説を立てながら物事を進めていきます。
新規事業開発は、まさに答えのない未知の分野を開拓する仕事となるため、コンサルタントの素養と共通する部分があるでしょう。
また、営業は常にお客様に向けて行動をし続け、売上・粗利などのコストを意識しながら最前線でサービスを販売する仕事です。
日々、お客様と接しながら課題や市場ニーズをつかんでいる点や、売上や行動KPIといったさまざまな数値、コストを意識している経験は、必ず事業開発に生かせるでしょう。
ほかにも、コンサルタントや営業職は、お客様や協業先、社内の上長や他部署など幅広いステークホルダーを巻き込み仕事を進める特徴がある点でも、事業開発と親和性が高いといえます。
アイデアが豊富な人
アイデアが豊富な人材も事業開発を進めるうえで重要な人材です。
新規事業創出や既存事業拡大は、企業にとって多くの施策立案や実行が求められます。
その際、従来の考えに囚われてしまう人材ばかりでは新しいことにチャレンジできず業務も滞ってしまうでしょう。
アイデアが豊富な人材をサブリーダー的な役割に据えれば、新たな視点や斬新な切り口での意見を次々に出すことで事業開発部門の活性化が実現します。
従来からある事業の焼き回しに終わらない新たなチャレンジが可能になり、これまでは対象外であったターゲットの獲得も期待できるでしょう。
ビジネスのアイデアを見つけるための方法について詳しくは「ビジネスアイデアの考え方とは?起業・新規事業のヒント」をご覧ください。
ステークホルダーを巻き込むリーダーシップがある人
事業開発は一つの部署、チームだけで完結するものではありません。
多くの部署やチーム、さらには社外のステークホルダーも巻き込めるようでないと実現は困難です。
そのため、リーダーシップを持ち、全体をまとめる統率力のある人材は必須といえます。
また、事業開発の仕事は正解のない抽象的な物事に向き合い続け、事業成功に向けて地道に取り組む特徴があります。
すぐに成果が出ずモチベーションが下がったり、適切な仮説が立てられず困難にぶつかったりした際に、強いリーダーシップをもって周囲を牽引できる力が求められます。
人をまとめるだけでなく、難易度の高い事柄にチームで取り組むために人々を引っ張りあげるようなリーダーシップがある人も、事業開発に向いているといえるでしょう。
事業開発がうまくいかない理由
事業開発を実施したにも関わらず、うまくいかない主な理由としては次のような点が挙げられます。
- 目的が明確ではない
新規事業の創出なのか、既存事業の拡大なのかなど目的が明確になっていないと失敗する可能性が高まります。
- 適切な人選ができていない
事業開発を進めていくうえで、これまで解説したような事業開発に向いた社員の人選や適材適所の役割分担ができていないと成功は難しいでしょう。
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事業開発(Business Development)とは、BizDev(ビズデブ)とも呼ばれ、企業の継続的な成長や発展を目指して行う、新規事業創出や既存事業拡大を図る事業です。
企業が継続的に成長していくには、常に新たな価値を生み出す姿勢をもち、積極的に事業開発に取り組む必要があるでしょう。
事業開発を成功させるためには、目的を明確化し、事業開発の遂行に適した人材を選出・配置しなければなりません。
不確実性の高い事業と向き合うために、論理的思考力やコミュニケーション力に加えて、チャレンジ精神や熱量の大きさなども重要といえます。
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執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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