更新日:2024/04/10 15:27
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事業立ち上げとは?新規事業の手順やおすすめのフレームワークを解説
読了まで約4分
「新規事業を立ち上げる方法やコツを知りたい」「事業立ち上げの流れや役立つ情報を収集したい」と考えている経営者や事業開発担当も多いのではないでしょうか。
新規事業をスムーズに立ち上げるには、具体的な手順やフレームワークを理解する必要があります。
そこで本記事では、新規事業に取り組む重要性、事業立ち上げの流れとポイント、フレームワーク、役立つ補助金・助成金について解説するので参考にして下さい。
目次
会社が新規事業に取り組む重要性
一般的に事業の立ち上げとは、多角化や事業転換のような企業内の新事業を指します。業績悪化の回避、余った資源の有効活用や事業継承など、さまざまな目的で実施されるものです。個人で起業する行為も事業の立ち上げに含みます。
企業にとって新規事業は、競争力の維持や向上に不可欠です。現代はトレンドの影響を受けやすいため、いつまでも同じ商品・サービスのままでは売り上げが減少します。従って事業を立ち上げ、変化に対応しながら未来を切り開くことが重要です。
このように新規事業は、ビジネス機会の創出や、継続的な競争力の維持などに効果的です。
事業立ち上げの流れ
未経験から事業を立ち上げたい人や、新規事業に慣れていない人のために具体的なプロセスを紹介します。あくまでも一例であり、アプローチ方法は多岐にわたりますが、事業を立ち上げるイメージとして参考にして下さい。
事業アイデアを集める/事業ドメインを検討する
新規事業を立ち上げる際は、最初に事業ドメインを考えます。事業ドメインとは、事業を展開する分野や領域のことです。市場よりも広い視野で「どのような商品・サービスを誰に提供するか」を検討して事業ドメインを定めましょう。
次に新規事業の具体的なアイデアを考えます。その際は、身の回りのモノ、コト、ヒトから着想を得ると効果的です。他にも「特定のビジネス課題を解決するために、どのようなアイデアが必要なのか?」という視点も重視して下さい。
ただし事業アイデアよりも先に「企業理念」や「事業を通した社会貢献」など、ミッションやビジョンを固める場合もあります。
ミッション・ビジョンなど思いを決める
決定した事業アイデアを基に「成し遂げたいこと」「価値を提供したいもの」「社会への思い」「事業に込めた考え」といったミッション・ビジョンを言語化します。
ミッションとは、企業が追求する目標や使命、経営理念のことです。またビジョンとは、ミッションを具体化したイメージや数値目標のことであり、中長期的な到達目標を意味しています。ミッション・ビジョンの設定は事業アイデアの深化につながるでしょう。
前述したように、事業アイデアとミッション・ビジョンは順不同です。
なお、ミッション ビジョンの詳細に関しては、以下の記事でご確認下さい。
ミッション ビジョン バリューとは?企業に必要な理由や作り方について解説
市場調査・分析を行う
決定した事業アイデアの市場調査を行うステップです。参入予定の市場の将来性や規模感、購入につながるターゲット層などを分析します。
市場調査の具体的な手法として、SWOT分析やPEST分析(後述します)、お客様インタビュー、インターネットを活用した情報収集などがあります。
市場調査を行った後、「事業アイデアがビジネスとして成立する」と仮説を立てて事業構想を練りましょう。その際は収益予測だけでなく、お客様との良好な関係性の構築なども考慮することが大切です。
ビジネスプラン(事業計画・戦略)を立てる
事業の構想を練った後、具体的な事業計画・戦略(ビジネスプラン)を立てます。事業計画・戦略とは、アイデアや構想を具体的な形にしたものです。ビジネスを軌道に乗せる指針として役立ちます。
実際に事業計画・戦略を立てる際は、事業計画書の作成がおすすめです。事業計画書とは、事業内容や収益予測、必要な資金、企業の戦略などを内外に説明するための書類です。
事業計画書は一貫性・整合性を維持しつつ、具体的に作成する必要があります。他社の事業計画書も参考にしながら進めて下さい。
事業計画の詳細に関しては、以下の記事で解説しています。
事業計画とは?経営目標達成の指標となる効果的な事業計画の立て方や内容
製品・サービス開発
実際に商品やサービスを開発するステップです。事業アイデアや調査データ、仮説を基に具体的な開発を進めます。その際はプロトタイプの制作や小規模なテストを検討して下さい。商品の場合は最小限の機能を持つモデルを製作したり、サービスの場合は模擬的な環境でお客様対応を試したりと、開発と共に小規模な実験を継続します。
また、資金調達を行ってから開発を進めることもあります。自己資本を活用する場合もあれば、金融機関から調達するケースもあるでしょう。いずれの場合も、事業部や財務部といった部門間の調整が大切です。
マーケティング・営業手法の検討
開発した商品・サービスを本格的に市場に投入する前に、「どのようなマーケティング戦略を選択するのか」や「どの販路で販売を行うのか」を検討します。市場調査で想定したターゲット層にアプローチし、効果的に販路を広げるために重要なステップです。
具体的なマーケティング方法として、マスマーケティング、ダイレクトマーケティング、インバウンドマーケティングなどがあります。営業手法は電話営業、メール営業、レター(手紙)営業などです。
マーケティング・営業手法を選択した後、実際に商品やサービスの提供を開始します。
効果検証・改善
商品・サービスを市場に投入した後、「仮説に基づいて成果が出たかどうか」や「どのような課題があるのか」といった効果検証を実施します。定期的に事業の成果を確認し、ビジネスプランを改善するステップです。
具体的な効果検証の方法にPDCAサイクルがあります。PDCAサイクルとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字をとったフレームワークです。各項目を繰り返すことで継続的な検証が可能になります。
特に「Check(評価)」の段階では、お客様からのフィードバック、マーケティングの成果、競合他社との比較、財務パフォーマンスなどを重視して下さい。
事業立ち上げのポイント
事業立ち上げのポイントには以下の3つがあります。
・事業撤退ラインを見極める
・自社と相性のいい事業ドメインを選ぶ
・経営資源を理解し活用する
事業撤退ラインを見極める
事業が伸び切らないにもかかわらず、引き際が悪ければ負債がふくらみます。全ての事業が必ずしも成功するとは限りません。最終的に成功する企業は試行錯誤を重ねつつ、方向転換を繰り返す傾向があります。
そのため、事前に事業撤退ラインを定めておくことが大切です。具体的には、事業計画の達成率や財務状況、市場や競合他社の動向などを基に判断しましょう。
自社と相性のいい事業ドメインを選ぶ
事業を立ち上げる際は、自社に適した事業ドメインの選択が重要です。事業の将来性や事業責任者の関心の濃淡だけで決めるのではなく、自社の既存事業や人員との相性も考慮しましょう。
事業ドメインの見極め方として、定期的な情報収集と分析が大切です。そのためには習慣的な市場調査と効率的なフロー体制の構築がポイントになります。
経営資源を理解し活用する
事業の立ち上げでは、4つの経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)の理解と活用が不可欠です。事業運営上、経営資源のどれが欠けてもうまくいきません。
例えば、店舗に陳列した商品(モノ)の内容が素晴らしくても、販売担当者(ヒト)がいなければ成立しないでしょう。自社に革新的な技術があるにもかかわらず、資金調達が間に合わなければ事業の拡大は困難です。
このように新規事業を立ち上げる際は、経営資源の理解と活用がポイントになります。
事業立ち上げで活用したいフレームワーク
事業立ち上げの市場分析や調査、アイデア集めに役立つフレームワークには以下があります。
・SWOT分析
・3C分析
・PEST分析
・4P分析
SWOT分析と3C分析は、内部環境と外部環境を分析するフレームワークです。PEST分析は自社を取り巻くマクロ環境の分析。4P分析は製品、価格、流通、販促を分析できるフレームワークです。
また、フレームワークではないものの、アイデアソンも効果的です。アイデアソンとは、特定のテーマに基づき、限られた時間内でアイデアを出して競い合うワークです。新規事業のアイデアを創出する手段として注目されています。
アイデアソンの詳細は以下で確認して下さい。
アイデアソンのやり方とは?新規事業を推進するイベント
事業立ち上げに役立つ補助金・助成金
新規事業の立ち上げでは補助金・助成金が役立つ可能性があります。
主に経済産業省が管轄しているのが補助金です。新規事業・サービスの支援、地域振興、公益事業の促進などを支援しています。一方、主に厚生労働省が管轄しているのが助成金です。雇用の維持や増加、従業員のスキル向上、労働環境改善などの取り組みを支援しています。
補助金と助成金には「確実性」と「支援額」という違いがあります。 補助金は予算の関係で必ず受給できるとは限りませんが、助成金は要件を満たすことで受給可能です。また、補助金の方が助成金よりも高額といえます。
新規事業に直接的にかかわる補助金や助成金はないものの、事業立ち上げ時の人材確保や、ITシステム導入の補助といった目的で活用できるかもしれません。例えば、次のような助成金・補助金があります。
・人材開発支援助成金
・キャリアアップ助成金
・事業再構築補助金
・IT導入補助金
・ものづくり補助金
ただし助成金・補助金の内容は変更される可能性があるため、最新情報を調べた後に申請手続きを進めましょう。
さらなる成長を目指して事業立ち上げに挑戦しよう
事業の立ち上げはビジネス機会の創出や競争力の維持に効果的です。
一般的な流れとして、まずは事業アイデア・事業ドメインの検討、もしくはミッション・ビジョンの決定からスタートします。その後に市場調査・分析、ビジネスプランの決定、製品・サービス開発、マーケティング・営業手法の検討、効果検証・改善と進めると良いでしょう。
事業立ち上げのポイントは「事業撤退ラインの見極め」「相性のいい事業ドメインの選択」「経営資源の理解と活用」の3つです。フレームワークの活用や、補助金・助成金についても検討して下さい。
実際に事業を立ち上げる際は、経営計画書の作成が必要です。経営計画書とは、経営方針や事業計画などをまとめられる手帳型のルールブックです。企業の目指す方向性や目標を明文化することで、目指すべき方向性を定めて組織力を強化するための道具として活用できます。
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執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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