更新日:2024/03/04 09:45
人材育成
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DX時代の人材育成とは?改めておさえたい人材育成の基本と具体例
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人材獲得競争が激化する昨今では、人材育成に注力する企業が増えています。一口に人材育成といってもさまざまな手法があり、社員に身につけて欲しいスキルや経験に合わせて、適切な手法を選択することが大切です。
今回は、人材育成の基礎知識に始まり、代表的な人材育成方法や育成計画の立て方、よくある課題などについて解説します。
目次
人材育成とは
人材育成とは、企業が業績の向上や経営目標の達成を目指して、自社の人材に必要な知識やスキルを習得させることです。具体的には、仕事において「どのように考えるべきか」「どう行動すべきか」を教えて、判断や行動の変化を促し、経営戦略に寄与できる人材を育成します。
人材育成は、経営目標や経営戦略を具現化するために行うものであるため、どのような人材を育成するかは企業の経営ビジョンから導き出します。例えば、数年後に新規分野への事業拡大を目指している場合、その分野に精通した人材を輩出するため、業界動向やマーケティングに関する研修を継続的に実施し、少しずつ実戦経験の蓄積を図ります。
人材教育や人材開発との違い
人材育成と似た言葉として「人材教育」と「人材開発」があげられます。同義語として使われる場面が多いものの、両者の違いを説明します。
人材教育とは、人材に知識やスキルを教えることを指します。人材育成は、先述の通り企業目標や戦略に沿って人材を成長させることを指し、その手段にはOJTなど実際に経験を積ませる手法も含まれます。つまり、人材教育は人材育成における手段の1つといえるでしょう。
また、人材開発とは人材を経営資源の1つとして捉え、それぞれが持つ能力を十分に発揮できるよう活用していくことです。人材育成は社員の成長を目指すのに対し、人材開発では経営資源の有効活用に重きを置く点が異なります。
リスキリングとの違い
経済産業省の定義によると、リスキリングとは「新しい職業に就くため、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するため、新たにスキルを獲得する/させること」を指します。近年では、ビジネス環境のデジタル化に伴い、仕事の進め方が大幅に変化する中で必要なスキル習得を意味しています。
つまり、リスキリングは企業が必要としているスキルを社員に習得させることを指し、人材育成のアプローチの1つと解釈できるでしょう。
人材育成が重要視される背景
昨今ではリスキリングという言葉が広く使われるようになり、社員のスキル習得を支援するさまざまな研修サービスやオンライン学習サービスが登場しています。人材育成が重要視される背景を説明します。
人材不足
総務省のデータによれば、日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少へと転じており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)まで減少すると推測されています。
今後も慢性的な人材不足が続く見込みで、人材獲得競争はさらに激化を極めるでしょう。新しい人材を獲得することが困難である以上、事業構造を根本的に改革するか、既存人材のレベルアップを図るアプローチが必要になります。このため、人材育成に注力する企業が増えていると解釈できます。
産業のデジタル化
デジタル技術の急速な発展により、さまざまな分野において産業構造が大きく変化しました。「DX」という言葉が一般化したように、労働環境のデジタル化も急速に進んでいます。
デジタル化に伴い、新しい職種が誕生しただけでなく、既存の仕事の進め方も大幅に変化しています。そのため、経営戦略やそこに紐づく人材戦略も変化させる必要性が高まったことから、社員の能力やスキルの再開発が重視されているのです。
代表的な人材育成方法
企業が人材育成を実施する場合、どのような方法があるのでしょうか。代表的な4つの人材育成方法を解説します。
OJT
OJTとは「On the Job Training」の略語で、実務経験を通して社員のスキル習得を目指す手法です。厚生労働省の「令和4年度能力開発基本調査」によれば、正社員に対して計画的なOJTを実施している企業は60.2%、正社員以外に実施している企業は23.9%となっており、人材育成において最も主流な教育方法といえるでしょう。
OJTは、実践を通して知識やスキルの習得ができ、業務を遂行する上で発生する疑問や懸念点をその場で解決できるメリットがあります。一方、体系的な知識習得が難しいというデメリットがあるので、座学と並行して行うことが大切です。
OFF-JT
OFF-JTとは「Off the Job Training」の略語で、実際の業務とは離れた場所で行う育成方法です。例えば、研修やセミナーの受講、書籍やeラーニングを用いた学習などが該当します。
前述で紹介した調査によれば、OFF-JTを受講した労働者の割合は33.3%であり、OJTに続くメジャーな人材育成方法といえます。
OFF-JTは、業務に必要な内容を体系的に学習できるため、専門的な知識や技能を教える場合に向いています。一方で、時間やコストがかかる方法のため、どのような内容でOFF-JTを用いるのかよく吟味する必要があります。
eラーニング
eラーニングは、パソコンやスマホなどを用いてオンライン上でセミナーなどを受講し、学習する育成手法です。HR総研が行った調査によると、eラーニングシステムを導入している企業は全体で25%であり、社員規模が301~1000人の中堅企業では21%、300人以下の中小企業では16%と、企業規模の小さい会社ほど導入率が低くなっています。
eラーニングはインターネットにつながる環境があれば、場所や時間を選ばず社員が自由に学習でき、教育担当者の負担削減につながる点が最大のメリットです。ただし、社員の自主性にゆだねられるため、モチベーション維持につながる施策が必要になります。
自己啓発(SD/Self Development)
自己啓発は、「Self Development」を略して「SD」と呼ばれる手法で、社員が自主的に行う学習を指します。厚生労働省の調査によれば、自己啓発を実施している労働者は34.7%となっています。
自己啓発は、基本的に業務時間外に行うためスキル習得のスピードが早いのが特徴です。ただし、社員のコスト負担が大きく不満につながる可能性があるため、就業時間の調整や手当支給など、支援策を整備するといいでしょう。
人材育成施策の計画方法
人材育成計画を作成する流れは、以下の4ステップです。それぞれのステップを詳しく解説します。
現状把握を行う
まずは、現場社員へのヒアリングを実施し、組織が抱えている課題を洗い出します。管理者や役職者だけでなく、ベテランから若手社員まで幅広くヒアリングし、各部署にどの階層の社員が何人いて、どのような業務を行っているのかを把握しましょう。併せて、生産性の高い部署・低い部署の分析も行います。
現状を把握することで、自社の抱える課題が明らかになります。その課題を、どのような教育で解消できるか、別の方法を実施するべきかも検討しましょう。
理想の目標を描く
組織の現状が明らかになったら、理想とする人員構成を描きましょう。3年後・5年後・10年後などに区切って、経営目標や事業目標を達成するためにどのような構成になっているべきか検討して下さい。例えば、「○○事業の目標を達成するためには、部長クラスの管理スキルを持った人材が、あと10人は必要になる」のように、目標を設定していきます。
目標設定においては、経営者や管理者へのヒアリングも必要です。直近でどのような事業をスタートさせるか、そのためにどのようなスキルや経験を持った人材が必要かヒアリングし、目標へと落とし込みましょう。
スキルマップを作成する
スキルマップとは、勤続年数や役職ごとに身に着けるべきスキルや知識を明文化し、一覧表にまとめた資料です。スキルマップを作成すると、社員が受けるべき教育を時系列で整理でき、教育体制の整備に役立ちます。
スキルアップを作成する際は、現場社員や管理者を巻き込むことが大切です。経営者や人事担当者だけでスキルを洗い出すと実態と乖離する可能性がありますので、現場社員も自由に意見を述べられる環境をつくり、マップに反映させる姿勢を心がけましょう。
育成手法を決定する
人材育成を通じて身に着けるスキルが決定したら、具体的な育成手法を選定します。前述で触れた通り、育成手法にはそれぞれ得意分野やメリット・デメリットがありますので、最も効果的な手法を選定することが重要です。
また、育成にかかるコストや現場の負担も考慮する必要があります。例えば、OJTを実施する場合には新人と一緒に業務を進める教育担当者が必要ですが、担当者は普段の業務と教育を兼任しなければならず、業務過多になってしまうケースも珍しくありません。他の教育手法も併用しながら、組織全体で負担を分散するよう配慮しましょう。
人材育成のよくある課題
多くの企業が注力する人材育成ですが、実現には課題が付き物です。企業が人材育成を実施する上でよくある課題を2つ紹介します。
社員不足で人材育成ができない
一つ目の課題として、人材育成を行いたいものの、育成を担当できる社員がいないというものがあげられます。育成に関するノウハウが蓄積していない企業では、人材育成を行おうにもどのように実施すればいいか分からないというケースも多いでしょう。社員自身も体系的な教育を受けた経験がなく、教え方が分からない場合も多いものです。
また、人材育成を自分事として捉えておらず、全体的に意欲不足というケースもあります。育成は自分の業務ではないと考えている社員がいると全体的にモチベーションが下がるため、意欲的に育成に臨める体制づくりが必要です。
人材育成する時間がない
社員が既に多くの業務を抱えており、育成にかける時間がないという課題もあります。人手不足が慢性化している現代では、複数の業務を抱える社員が多く、教育に時間を割ける社員が少ないのです。
育成を専任で行う社員がいない場合、教育担当者の負担を軽減し、部署やチーム全体でフォローする体制構築が求められます。
自社の人材育成課題を見直そう
労働人口が減少の一途をたどる現代では、人材育成の重要性が高まっています。既存社員のスキル向上を目指せば、組織の生産性向上が期待できるのです。
人材育成の必要性は感じているものの、なかなか実施できていない企業も多いでしょう。育成ノウハウが社内にない、社員が忙しく育成に時間をかけられないなど、お困りの企業も多いはずです。
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執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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