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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2022/11/30 17:13

経営

ジョブローテーションとは?概要や目的、メリット・デメリットなどを解説

読了まで約4分

社員育成や能力開発手段の一つであるジョブローテーションは、定期的に社員が働く部署や職務を変更させる人事制度です。
多くの企業が少子高齢化の影響により人材不足が慢性化するなか、限られた人材の能力を最大限に活用する方法として導入するケースが少なくありません。

本記事では、ジョブローテーション制度の概要や目的、導入による企業側と社員側それぞれのメリット・デメリットをお伝えします。
ジョブローテーション制度導入を検討されている経営者、人事部門の方はぜひ、参考にしてください。

 

ジョブローテーション制度の概要

ジョブローテーションとは、一定のサイクルで部署やチーム、職務の異動を行う人事制度の一つです。
部署を越えた異動もあれば、同じ部署内で職務内容が変わる場合もあります。
異動の期間は、企業や目的によって異なりますが、3ヶ月から半年のケースもあれば、3~5年の長期になるケースも少なくありません。

2017年10月に労働政策研究所・研修機構が発表した、「企業の転勤の実態に関する調査」では、ジョブローテーションを導入する会社は、53.1%という結果となっています。

参照:労働政策研究所・研修機構「企業の転勤の実態に関する調査」

ジョブローテーションは、近年になって広まった人事制度ではありません。
むしろ、終身雇用が当たり前であった時代は、大手会社を中心に多くの企業が導入していました。
ただ、終身雇用が減少した現在においても半数以上の会社が導入している結果を見る限り、今後も有効的な人事制度の一つとして活用されていくと予測できます。

 

ジョブローテーションの目的

ジョブローテーションを導入する目的は企業によってさまざまですが、主なものとして挙げられるのは次の3点です。

1.社員の能力開発

ジョブローテーションを行う大きな目的の一つが社員の能力開発です。
社員側の希望で行う公募制の異動や欠員補充ではなく、企業側主導での異動により、社員自身も気づかなかった隠された能力を開発できる可能性が高まります。

また、企業が成長していくうえで、中長期的かつ戦略的な人事育成が行えるのもジョブローテーションの目的の一つです。

2.企業全体を理解する

社員が企業のなかで最大限の効果を発揮させるには、企業全体の理解も欠かせません。
さまざまな部署を経験することで、それぞれの部署のつながりや連携を把握でき、業務上何かしらのトラブルが発生した際でも迅速に他部署に協力を仰げるようになります。

また、会社内部だけではなく、ビジネスの上流から下流の流れ、関連会社や部署ごとの取引先との関係性に至るまで、多角的な視点を持てるようにすることも重要な目的です。

3.幹部候補やゼネラリストの育成

幹部候補生やゼネラリスト育成を目的にジョブローテーションを導入する企業も少なくありません。
企業経営を行うには、ビジネスを俯瞰で把握する能力が求められます。

ジョブローテーションによってさまざまな部署を現場で体験すれば、幅広い知識やバランス感覚などが得られるようになるでしょう。

また、ゼネラリストを多く育成すれば、一つの部署で人員が足りなくなった際、繁忙期で休みが取りにくくなった際なども柔軟な人員配置が可能になります。
休日の確保や残業時間削減など働き方対策にも対応した社内環境構築もしやすくなるでしょう。

 

ジョブローテーションの期間や頻度

ジョブローテーションの期間や頻度は、企業によって異なる場合もありますが、一般的には、ジョブローテーションを導入する目的によって異なります。

たとえば、新入社員に早い段階で企業の雰囲気や仕事の流れを知ってもらうことや、適材適所を判断することを目的とする場合、一か所を3~6か月のスパンで異動します。

これに対し、3~5年の長期スパンでローテーションするのは、中堅社員を対象に幹部候補生育成を目的とする場合です。
1つの部署、職務を覚えるだけではなく、経営者の視点でマネジメントスキルを養うには短期間では難しく、長期的なスパンでしっかりと育成します。

 

社内公募や人事異動との違い

人事制度には、ジョブローテーション以外にも社内公募や人事異動があります。
それぞれの違いは次のとおりです。

社内公募とジョブローテーションの違い

社内公募とは、企業側が人を必要としている部署やポストを公開し、社内から配置転換を希望する社員を公募する制度で、社員主体の人事制度といえます。
多くは社員のキャリア形成サポートが目的です。

これに対し、ジョブローテーションは、基本的に企業側が主体となり、社員の育成や能力開発を目的として行われます。

人事異動とジョブローテーションの違い

人事異動もジョブローテーションも企業主体で社員の配置転換をする点では同じものです。
異なるのは異動させる目的で、人事異動は経営戦略の一環もしくは欠員補充などを目的として行います。

これに対し、ジョブローテーションは人材戦略の一環として行われるもので、人材育成や能力開発が目的です。

 

ジョブローテーションを導入する企業のメリット

ジョブローテーションを導入することで企業にはさまざまなメリットが生まれます。

1.属人化を防ぎ業務効率化を推進

特定の業務に精通したスペシャリストを育成することは、企業が成長していくうえで重要な要素の一つです。
スペシャリストがいなくなれば誰もその業務を引き継ぐことができず、業務の属人化が生まれてしまうリスクがあります。

ジョブローテーションを導入すれば、多くのゼネラリスト育成が可能です。
その結果、業務の属人化が起こりにくくなり、誰かがいなくてもほかの社員が対応でき、業務効率化につながるでしょう。

2.適材適所を判断できる

ジョブローテーションを導入し、さまざまな部署を社員に体験させることで、社員それぞれの適材適所が判断できるようになります。

特に新入社員の何が得意で、何ができるのかを把握するのは困難です。
ジョブローテーションで実際にさまざまな部署、職務内容を体験させることで、判断材料を増やすとともに、社員の隠れた能力を見つけ出せるようになるのは大きなメリットといえます。

3.社内コミュニケーションを活性化する

社内コミュニケーションの活性化もジョブローテーションを導入するメリットの一つです。
多くの社員が複数の部署を体験することで、一つの部署にいるだけでは出会えない多くの出会いを経て活発な交流を行えるようになります。

特に従業員が1,000人を超えるような大企業の場合、部署を変えるだけで転職したように、まったく異なる社風となるケースもあります。
ジョブローテーションの導入は、部署を越えたコミュニケーションを可能にし、新たなイノベーションの創出も期待できるでしょう。

 

ジョブローテーションを導入する企業のデメリット

ジョブローテーションの導入には、企業側にとって少なからずデメリットも存在します。
主なものとして挙げられるのは次の3点です。

1.社員の退職要因となる可能性も

ジョブローテーションを導入することで発生するデメリットの一つは、社員の退職要因となってしまう可能性がある点です。

ジョブローテーションを導入するには明確な目的が必要ですが、その目的が社員に伝わっていないと、自身の意向に反して強制的に異動させられたと社員がネガティブに感じるリスクがあります。
自身の意向が反映されていないと思えば不満が溜まり、退職要因となってしまう可能性があるため、導入時はしっかりとした説明が欠かせません。

2.一時的に生産性が下がる

ジョブローテーションによって異動を繰り返すと、業務によっては慣れるまでに時間がかかり、一時的に生産性が下がってしまう可能性があります。

新入社員向けのジョブローテーションであればそれほど大きな問題はないでしょう。
しかし、中堅以上の社員向けのジョブローテーションの場合、一気に全員を異動させるのではなく半分ずつにする、引継ぎ用のマニュアルを完備するなどの工夫が必要です。

3.教育コストがかかる

異動のたびにゼロから引き継ぎや教育が必要になるため、どうしても教育コストがかかってしまう傾向があります。
特に新入社員向けのジョブローテーションの場合、短期間で一気に教育しなければならないため、その分、コストも高まってしまうでしょう。

教育コストを抑える手段としては前述したマニュアルの作成も効果的ですが、外部に依頼する方法もあります。

自社の社員が教育係になると、さらに生産性が下がり教育コストと二重にマイナスになるため、外部に依頼したほうがコスト低減につながる可能性もあるためです。

 

社員のメリット

ジョブローテーションを導入することで社員が得られるメリットには次のようなものがあります。

  • 一つの部署で仕事が行き詰ってしまった際の気分転換になる
  • さまざまな職種を経験することで幅広い視野を持てるようになる
  • 普段交流のなかった社員とも交流が図れ、社内コミュニケーションが活性化する
  • 自分では気づけなかった隠れた能力に気づける可能性が高まる

 

社員のデメリット

ジョブローテーションの導入で生じてしまう可能性があるデメリットは次のとおりです。

  • ゼネラリスト育成には向いているがスペシャリストを育成するのには向いていないため、専門性が身につけられない
  • 業務で得たスキルや経験が異動によりゼロから始め、またスキルを得たら異動の繰り返しでストレスが溜まる可能性がある
  • 異動のために同じ部署やチームとの人間関係を構築しなければならず仕事以外でもストレス過多になる

何事もメリットとデメリットは表裏一体です。
各社員で、メリットとデメリットの受け止め方も異なるため、丁寧な説明とフォローを心がけて導入を進めてください。

 

ジョブローテ―ション導入の流れ

簡単にジョブローテーション導入の流れを紹介します。

  1. ジョブローテーションを行う対象となる社員の選定
    新入社員、幹部候補生など目的により対象者を選定します
  2. 対象者の配属先選定
    対象者のこれまでの経歴やスキルなどを基に配属先を選定します。
  3. 異動期間と目標設定
    異動先で業務を行う期間と、その業務によって達成すべき目標設定を行います。
  4. 実際に異動する社員への連絡
    異動する社員に対し、ジョブローテーションを行う目的、移動先での目標を明確に伝えます。
  5. 異動先での業務開始
    業務を開始したら異動先の上司と連携を取りながら目標への進捗状況を確認します。
  6. 業務のまとめを行い次の部署へ異動
    目標の達成度を鑑みながら次の部署へ異動をします。

 

ジョブローテーションを導入した企業事例

実際にジョブローテーションを導入している企業の事例を紹介します。

  • 株式会社弘新機工
    新潟県で自動車整備や修理などを行っている株式会社弘新機工(以下同社)。
    同社では、業務の属人化により、残業時間増加や休暇取得が困難になるなどの課題がありました。
    そこで、鉄工や塗装など技能が異なる業務すべてに対応できる社員育成を目的にジョブローテーションを導入しました。
    また、同時に社員が月の見込み残業時間を設定し、月次決算で黒字であれば、見込み時間よりも少ない場合でも見込み時間分の残業代を支払う制度を導入しました。
    その結果、月100時間に及んでいた残業時間が月平均で17時間まで減少を実現。
    社員が自ら利益の出る働き方や休み方を考えるようになるなど、自主性の育成にも成功しています。

 

自社にあった人事制度を取り入れよう

ジョブローテーションは、一定のサイクルで社内の部署や職務を異動する人事制度の一つで、社員育成や能力開発などを目的に実施します。

ジョブローテーションを成功させるためのポイントは、明確な目的を設定し、社員に理解してもらえるように説明を尽くすこと。
そして、異動先でスムーズに業務を進められるよう、受け入れ態勢を万全に準備することです。

株式会社武蔵野では、ジョブローテーションの効果を高めるために欠かせない職場の環境整備に役立つ資料を無料で配布しています。
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