更新日:2024/03/04 12:37
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価格弾力性とは?活用場面や具体例・価格設定のポイントを詳しく解説
読了まで約3分
自社の商品やサービスの価格設定に課題を抱えている場合、価格弾力性という考え方がヒントになる可能性があります。価格弾力性は業種や規模を問わず、さまざまな業界で採用されていますが、深く内容を理解している人は少ないかもしれません。
そこで本記事では、価格弾力性の概要を説明した後、価格弾力性の活用場面、価格弾力性を基に価格設定をするポイント、経営に役立つ弾力性の一覧表について解説していきます。
目次
価格弾力性とはどんな時に使う言葉?
価格弾力性とは、商品やサービスの価格が変動した際に「需要と供給がどのように変化するのか」を数値化して表した指標です。
ここでは、価格弾力性の概要として以下を解説します。
- 価格弾力性が高い・低いの意味
- 価格弾力性の計算式と基準値
- 価格弾力性の具体例・求め方
価格弾力性が高い・低いの意味
価格弾力性が高い場合、商品やサービスの価格変動が販売量に強く影響します。値上げや値下げに対する需要の増減が大きい状態です。価格弾力性が高ければ、お客様は商品やサービスの購入を控える傾向があります。
逆に価格弾力性が低い場合、商品やサービスの価格が変動しても販売量はあまり変わりません。値上げや値下げに対して需要の増減が小さい状態です。価格弾力性が低ければ、価格を値上げしても、お客様は商品やサービスを購入する傾向があります。
価格弾力性の計算式と基準値については次項で解説します。
価格弾力性の計算式と基準値
価格弾力性の計算式は次の通りです。
- 価格弾力性=需要または供給の変化率(%)÷価格の変化率(%)
次に、需要または供給の変化率を求める計算式は以下です。
- 需要または供給の変化率=(価格を変更した後の売り上げ数-価格を変更する前の売り上げ数)÷価格を変更する前の売り上げ数
価格の変化率の計算式は以下です。
- 価格の変化率=(変更した後の価格-変更する前の価格)÷変更する前の価格
価格弾力性の基準値は1です。1を上回ると価格弾力性が高く、逆に1を下回ると価格弾力性が低いことを表しています。
なお、需要の変化率と価格の変化率がマイナスになる場合もありますが、基本的にプラスの絶対値で表します。
価格弾力性の具体例・求め方
価格弾力性の計算式を利用した具体例を紹介します。
まずはコンビニエンスストアA店が定番商品の値段を10%高くした結果、需要が4%減ったケースを考えてみましょう。
需要の価格弾力性の値はこうなります。
- 4%÷10%=0.4
0.4は基準値の1よりも小さいため、需要の価格弾力性は低い状態です。コンビニエンスストアA店を訪れる消費者は、価格を上げても定番商品を購入する傾向があります。
次に動画配信サービスB社が、月額料金の1,000円を600円に値下げしたところ、月に1万人だった加入者が2万人に増えたケースで考えてみましょう。
この場合、最初に需要の変化率と価格の変化率を求めます。
需要の変化率は以下の通りです。
- (20,000-10,000)÷10,000=1
次に、価格の変化率は以下となります。
- (600-1,000)÷1000=-0.4
価格の変化率はマイナスですが、前述したように絶対値で考えるため、-0.4ではなく0.4となります。需要の変化率1をパーセントで表すと100%、価格の変化率0.4をパーセントで表すと40%です。
したがって、需要の価格弾力性はこうなります。
- 100%÷40%=2.5
2.5という数値は基準値の1を超えているため、需要の価格弾力性が高い状態です。動画配信サービスB社は、価格の変動によって加入者数が増減しやすいと考えられます。
価格弾力性の活用場面とは
価格弾力性の活用場面として以下が挙げられます
- 新商品やサービスの価格設定をする場合
- 既存商品やサービスの価格を見直す場合
- 割引やキャンペーンを実施する場合
- 価格変動による影響を回避する場合
- 小売・メーカーと販売方針を協議する場合
それぞれ解説するので参考にして下さい。
新商品やサービスの価格設定をする場合
商品やサービスの価格は、消費者が購入を判断する際に重要です。したがって新商品・新サービスの価格を決める際は、適切な価格設定が利益最大化のポイントになります。
適切な価格設定をするには、自社の既存商品・サービスだけでなく、競合他社の商品・サービスの価格弾力性も把握することが大切です。自社と競合他社の価格弾力性の比較分析により、値上げによる需要変動や、値下げによる流入の変化を理解できるでしょう。その結果、企業は戦略的に価格を設定できるため、市場における優位性を確保しやすくなります。
既存商品やサービスの価格を見直す場合
既存商品やサービスの利益が不十分なケースや、値段を高くつけ過ぎて売れ行きが悪い場合、価格設定に原因があるかもしれません。自社と競合他社の価格弾力性を分析することで需要の変動や顧客流入の変化を理解できます。それにより、既存商品・サービスの価格を再設定しやすくなります。
このように価格弾力性の理解は、既存商品・サービスの収益を最大化する効果的な手段です。
割引やキャンペーンを実施する場合
割引やキャンペーンを実施して販売数や集客数を増やすという目的がある場合、事前に自社の商品・サービスの価格弾力性を把握することが重要です。それにより、割引やキャンペーンの実施が効果的かどうかを適切に判断できます。
例えば、商品・サービスの価格弾力性が高い状態であれば、値下げによって販売数と集客数の増加を見込めます。一方、価格弾力性が低ければ、値下げ戦略よりも商品・サービス自体の内容や、プロモーション方法を見直す方が効果的です。
このように価格弾力性の理解は、販売戦略の立案と実行に役立ちます。
価格変動による影響を回避する場合
商品・サービスの価格変動が起こり得るケースとして、自然災害、気候変動、原材料の高騰などの外部要因が挙げられます。その結果、利益率や需要の低下、過剰在庫などの問題が発生するかもしれません。
価格弾力性の理解と活用により、価格変動の影響を避けやすくなります。外部要因が変化して価格変動が生じても、適切な価格設定によって利益を最大化できるからです。
小売・メーカーと販売方針を協議する場合
小売業とメーカーが商品の販売方針を検討する際も、需要の価格弾力性は重要なポイントになります。
そもそも小売業はキャンペーンに頼る傾向があるため、弾力性が低い商品にもかかわらず、割引販売を行うことがあります。その場合、小売業とメーカーの双方に損失が発生するため、割引販売は決して望ましい方法といえません。
小売業とメーカーが納得できる価格設定を実現するには、双方が丁寧に協議する必要があります。需要の価格弾力性を考慮した売値の提案を行うことにより、お互いが納得できる適正価格に近づけるでしょう。
価格弾力性を基に価格設定をするポイント
展開したい商品・サービスの価格弾力性を算出し、価格設定を行うポイントを以下のケースに分けて解説します。
- 価格弾力性が低い商品・サービスの場合
- 価格弾力性が高い商品・サービスの場合
価格弾力性が低い商品・サービスの場合
価格弾力性が低い商品・サービスには、食品、衣類、燃料などがあります。このような生活必需品に関しては、価格を上げても需要の変化は少ないといえます。数量限定販売の商品や、希少価値が高い商品に関しても、価格弾力性は低い傾向があります。
価格弾力性が低い商品に関しては、可能な限り値下げをしないマーケティング戦略が有効です。価格の変動が需要に与える影響が小さく、利益を維持しやすいためです。
また、売れない商品の対処方法として、競合他社の分析よりも消費者調査が必要になります。商品の内容、価格設定、プロモーション方法を見直し、消費者ニーズに合ったアプローチを検討すると良いでしょう。
価格弾力性が高い商品・サービスの場合
価格弾力性が高い商品・サービスには、車、不動産、嗜好品などがあります。すぐになければ生活に困るものではないため、消費者は値段が下がってから購入を検討する傾向があります。
価格弾力性が高い商品やサービスを売るポイントは、競合他社よりも低い価格設定と、その後の定期的な価格調査です。販売数をアップしたい場合は、セールやキャンペーンの実施も良いでしょう。
ただし必要経費を考慮しない値下げは赤字につながりかねません。従って、利益を損なわない範囲内での値下げを検討して下さい。
経営に役立つ弾力性の一覧表
需要と供給の価格弾力性を含め、経営に役立つ弾力性を一覧表にまとめたので参考にして下さい。
価格弾力性を分析・把握し経営戦略に役立てよう
価格弾力性とは、商品やサービスの価格変動による「需要と供給の変化」を数値化したものです。具体的な活用場面として、新商品やサービスの価格設定をする場合、既存商品やサービスの価格を見直す場合、割引やキャンペーンを実施する場合などがあります。
実際に価格設定を行う際は、価格弾力性が低い商品は値下げを回避する一方、価格弾力性が高い商品に関しては、競合他社よりも低価格に設定すると効果的です。
自社の商品やサービスの価格弾力性を分析・把握したいという場合は、武蔵野のコンサルティングサービスにご相談下さい。無料の資料をご用意しておりますので、まずはぜひご覧ください。
執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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