更新日:2023/12/04 09:30
経営
経営計画とは?メリットや必要性、目標の立て方や計画の策定方法を紹介
読了まで約4分
企業はチームで動くため、進むべき道を明確にしなければなりません。
すべての従業員が同じ方向を見て進んでいくには、リーダーが何をしたいのか、どこへ向かっているのかのビジョンを明確に示すことが重要です。
多くの中小企業では、限られた経営リソースの中で目指すべき方向に会社を進めるために、経営計画を立てて進むことが求められます。
企業の進むべき道を示す手段として効果を発揮するのが経営計画です。
本記事では、経営計画を作成するメリットや経営計画の種類、作り方をお伝えします。
目次
経営計画とは
経営計画とは、自社が果たすべき目標やビジョンを明確にし、それを実現させるための経営戦略や行動計画などを具体的に示したものです。
経営計画は、自社のビジョンや目標を明確にするのはもちろん、それを全従業員が共有できるようにするために策定します。
経営計画を作ることで企業としての進むべき道、すなわちロードマップが明確になり、全従業員の意思統一が図れるようになるでしょう。
経営計画は、目標に向かう際の指針となり、従業員が判断に迷うことなく効率的に業務を進めて行けるようになります。
経営計画と事業計画の違い
経営計画は企業のビジョンや最終的なゴール、目標を明確にするため、全社を念頭に置いて策定する計画のことです。
それに対して、明確になった目標を実際に達成させるために事業別、部門別などに分け、事業部を念頭に置いて具体的な実行計画を策定するものが「事業計画」です。
事業計画があれば経営計画は必要ないのではと考える経営者は少なくありません。
しかし、実際には経営計画がしっかりとしていなければ、事業計画の策定も困難です。
経営計画が土台にあり、それを達成させるために事業計画を作ると考えるとよいでしょう。
経営計画と事業計画の関係性は、経営計画の中の1つの種類が事業計画という位置づけになります。
事業計画について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
事業計画とは?経営目標達成の指標となる効果的な事業計画の立て方や内容
経営計画のメリット
経営計画は、決算で使用する決算報告書、融資を受ける際に必要な事業計画書のように作成義務はありません。
経営者のなかには、多大な時間や工数をかけてまで経営計画を作成するのは面倒だと思っている人もいるのではないでしょうか。
本章では、経営計画を策定するメリットについて改めてお伝えします。
企業の成長につながる
経営計画の策定は、企業の成長につながるメリットが大きいです。
端的に言えば、経営計画の作成は、売上や経常利益を後押しします。
中小企業庁が発表した、「2020年度版小規模企業白書」によると、経営計画の内容が十分であると評価している企業で、
売上が大幅増加もしくは増加していると回答したのは51.6%とのことです。
これに対し、経営計画の内容が十分と評価されていない企業は41.7%となり、約10%もの開きがあります。
また、経常利益についても評価している企業が46.5%なのに対し、33.4%とこちらは約13%も低くなっています。
これらを見ても経営計画をしっかりと策定することのメリットは大きく、企業の成長につながるでしょう。
参考:2020年度版小規模企業白書
進むべき道に迷わなくなる
企業経営を進めていく過程では、大小さまざまな判断が求められます。
経営計画が明確に策定されていれば、間違えた判断をするリスクを最小限に抑えることが可能です。
多くの業種で市場の成熟化、商品やサービスのコモディティ化が進むなかで、競合に勝ち残っていくには事業判断のスピード感が重要になります。
明確な経営計画があれば、現場での意思決定時にその都度、社内確認をする工数を省くことができ、
経営計画の判断軸をもとにスピード感ある事業展開ができるでしょう。
目標共有ができる
従業員と目標を共有できる点も経営計画を作るメリットです。
従業員が進むべき道がわからず、不安な状態のままで業務をしていれば成果を上げるのは困難でしょう。
また、目標が決まっている場合でも、実現までの道筋が共有されていなければ、全員がバラバラに動いてしまい業務スピードは落ちてしまいます。
経営計画を通して経営者の意思や企業ビジョンを明確にすれば、従業員は自分のやるべきことを理解し、
モチベーション高く自身のやるべきことに集中できるようになります。
また、従業員のみならず、顧客や取引先など企業を取り巻くさまざまな人と経営計画を共有すれば、
それぞれとの関係性強化にも大きな効果を発揮するでしょう。
自社の課題や現状を把握できる
経営計画を策定する際は、現在の業務フローや強みや弱みを明確にし、目標達成までの計画を立てていきます。
経営計画の策定過程で仮説と検証を繰り返し、さまざまな成功・失敗データから客観的に課題抽出できる点もメリットといえます。
漠然と将来の道筋を考えても目標達成は難しいものです。
経営計画にて自社の過去・現在・未来のすべてを洗い出し、整理することで現状の課題把握も可能になります。
信用力が上がる
経営計画を策定することで、金融機関からの信用を得られやすくなるメリットもあります。
金融機関から融資を受ける際には、企業の内部環境や競合、市場分析を行ったうえで作成された経営計画書が必要となります。
根拠ある分析結果やビジョンを経営計画によって示すことで、融資担当者からの評価も高まるのです。
経営計画に必要な4つの要素
経営計画は一般的には下記の4つの要素から構成されます。
1.経営理念
経営理念とは、この会社がなぜ存在しているのか?という自社の存在意義や、企業が最終的に目指す理想像のことです。
ミッションと呼ばれることもあり、自社のミッション(経営理念)を設定することにより、自社の存在意義を掲げることができます。
2.経営戦略
経営戦略とは、企業が目標を達成するための方針や計画のことです。
経営戦略を立ててどのような優先順位を付けて実行していくかを明確に打ち出していくことで、競合と差別化を図り、自社の強みを把握・活用していくことができます。
経営戦略について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
経営戦略とは?3つの種類とそれぞれの手法、企業事例をご紹介
3.事業戦略
事業戦略とは、経営戦略に基づいて立てた事業目標を達成するための行動と意思決定のことです。
他社に勝つために、各事業部がどのような方法で戦うかを定めたものです。
4.数値計画
経営計画では、いつまでにどれくらいの利益を目指すのか具体的な数字を決めます。
来期の利益目標はどれくらいにするのかを決め、そこから逆算して実現するための手段を考えていきます。
経営計画の3つの種類
経営計画は「長期経営計画」「中期経営計画」「短期経営計画」の3種類に分けられます。
それぞれをどのようにして決めるのか、内容について見ていきましょう。
長期経営計画
一般的に5年〜10年先までを見越して決めるのが長期経営計画です。
将来的に自社がどうなっていたいのか、生き残っていくために何が必要かを考えます。
企業を取り巻く状況は刻一刻と変わるため、10年先を見越して具体的な計画を策定するのは簡単ではありません。
長期経営計画では、どのような状況であったとしても変わらないビジョンを明確にすることが重要です。
ビジョンが明確になっていれば、ぶれることなく、中期・短期での経営計画も策定しやすくなるでしょう。
中期経営計画
長期経営計画を実現させるための、具体的な施策の方向性を決めるのが中期経営計画です。
一般的には3〜5年程度の経営計画を指します。
中期経営計画では、1年単位では達成が難しい、3〜5年かけて手掛けていくべき中期的な目標や行動計画を立てます。
長期経営計画とは異なり、ROEや売上、経常利益など具体的な数値を用いながら計画をしていく点が特徴です。
中期経営計画の作り方についてはこれらの記事を参照ください。
中期経営計画の作り方・手帳型経営計画書ノウハウの無料サンプル付企業存続のために欠かせない中期経営計画!数字目標や計画の立てかたについて解説
短期経営計画
短期経営計画は、中期経営計画の数値目標に基づき、1年ごとに策定する具体的な行動計画を指します。
長期や中期のような外枠だけではなく事業所別、部門別などでそれぞれの計画をより詳細にわたって策定します。
短期経営計画は単なる予算案の作成ではなく、社員の行動計画まで決定するものです。
予算案を達成させるためには個々人が何をするかまでを考えるのが短期経営計画です。
経営計画の作り方
経営計画の作り方を4つのステップに分けて紹介します。
1.目的を定める
1つめのステップは目的の明確化です。
自社のミッション(経営理念)=自社の存在意義を掲げることです。
なぜ経営計画を作るのか、その目的を明確にせずに漠然と作っても途中で投げ出してしまうリスクがあります。
経営計画は企業全体の目標、ビジョンを決める重要なものであるため、簡単に作れるものではありません。
なぜ経営計画を作るのか、その目的となる経営方針を明確にしましょう。
経営方針について詳しくはこちらをご参照ください。
経営方針とは?経営理念との違いや作り方をわかりやすく説明
目標の例としては、「10年先も企業を存続させるため」「新たな事業を立ち上げ世界進出を果たすため」「企業のビジョンを公開し、ステークホルダーやクライアントと価値を共有するため」などが考えられます。
企業における経営方針として、自社の存在意義であるミッションだけでなく、ミッション・ビジョン・バリューの3つを掲げている企業も多いです。
ミッション・ビジョン・バリューについて詳しくはこちらをご覧ください。
ミッション ビジョン バリューとは?企業に必要な理由や作り方について解説
2.現状把握(内部環境分析)
2つめのステップは現状把握、特に内部環境の把握を行うための分析です。
社内のヒト・モノ・カネといったリソースを中心に分析を進めていきましょう。
具体的な手法としては、自社のヒト・モノ・カネなどのリソースが、競合のなかでどれだけ優位か分析する
VRIO(Value:経済価値、Rarity:希少性、Inimitability:模倣困難性、Oraganaization:組織)分析や、原材料調達から顧客の手に渡るまでの流れを、自社の活動やリソースなどの内部環境を基に行うバリューチェーン分析などが挙げられます。
VRIO分析について詳しくはこちらをご覧ください。
VRIO分析とは?メリットや問題点・やり方や事例をわかりやすく解説
3.市場・競合分析
企業経営は常に競合の力量を勘案しながら行っていく必要があります。
そこで、内部環境分析を行い自社の現状把握が済んだら、自社が属する市場や競合の分析を行いましょう。
具体的な方法としては、自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)、自社が置かれた現状から販売拡大のチャンスを探る機会(Opportunity)、そして競合の存在や原材料の値上げといった、脅威(Threat)の4要素から分析するSWOT分析というフレームワークがおすすめです。
SWOT分析について詳しくはこちらをご覧ください。
SWOT分析とは?分析例・意味や方法・活用目的などを紹介
4.目標を定め達成方法を決める
長期経営計画の目標を定め、それを達成させるための中期経営計画を策定します。
3年、または5年先を目途に具体的な数値目標を立て、その実現に向け具体的に何をすべきかを決めていきましょう。
最終的には、年間の短期経営計画として従業員ごとの行動計画に落とし込み、それぞれの役割を果たしていきます。
経営計画の活用方法
経営計画は「作ったら終わり」ではなく、作ってからがスタートです。
立てた経営計画をしっかり実行していきましょう。
・定期的な進捗確認
定期的に経営計画の進捗を確認することが大事です。
経営計画を作る過程で立てた様々な仮説がしっかりと進んでいるかどうか、定期的に確認して仮説を検証しましょう。
進捗や結果報告をするようなルールや仕組みづくりがあると良いです。
・経営計画の見直し
次に経営計画の見直しです。
経営状況環境の変化によって、経営計画の見直しが必要になることがあります。
また、思うように目標通りに進まない場合には、経営計画の仮説や目標が間違っている可能性があるので見直しが必要です。
最短で3ヶ月に1度、最長で1年に1度実施するのが良いでしょう。
まとめ
経営計画の策定は、自社の利益向上やステークホルダーからの信頼獲得、社内の団結力強化などさまざまなメリットを生み出します。
ただし、企業全体の目標やビジョンを10年先まで見越して策定する必要があるため、決して簡単にできるものではありません。
実際、中小企業庁の調査でも経営計画を策定していない理由には、「策定する時間がない(小規模事業者32.2%、中規模企業:31.8%)」
「策定する人員やノウハウがない(小規模事業者14.7%、中規模企業:12.5%)」といった声が見られます。
そこで、経営計画を策定する際は外部パートナーに頼るのもおすすめです。
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