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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/02/27 16:35

経営

資金繰り

経営指標とは?中小企業の経営者がおさえるべき重要指標を説明

読了まで約4分

財務諸表の数値を用いて会社の経営状況を分析できる経営指標。
自社を分析して経営戦略や目標の策定に利用できるだけでなく、競合他社の分析や融資判断などの参考資料としても使われています。
経営者の方には、ぜひ基本を身に付けてほしい知識です。

本記事では代表的な経営指標の意味や算出方法、活用の仕方などを説明します。
最後には、経営者が利用できる無料サービスの紹介もありますので、ぜひ参考にしてください。

 

経営指標とは?使い方の紹介

経営指標とは、会社の経営状況を表す指標のことです。
経営指標を用いることで、自社の経営や財務の状況を客観的に分析することができます。

例えば、新製品を販売して昨年より売上が向上したとしても、単に売上が増えただけでは経営状況が良好であるとは判断できません。
売上を出すためにどのくらいの費用投資があったのか、時間や人的リソースはどのくらいかけたのか、継続的に売上を伸ばすことはできるのかなど売上にまつわる様々な状況を分析しなければ評価できないからです。

その分析のために経営指標が利用されます。
経営指標の算出には、基本的に決算書に記載されている数値を使用します。

売上高や利益、経費、負債といった各項目を組み合わせて比率を求めることで、様々な角度から経営状況を分析できるのです。

 

経営指標で分析できる4種類の項目

算出の際に使用する数値によって、様々な意味合いの経営指標を求めることができます。

経営指標で分析できる項目は、大きく「収益性」「安全性」「生産性」「成長性」の4つに分類できます。
経営のどの部分を分析したいのか、競合とどこを比較したいのかによって、数値を的確に使い分けることが重要です。

「収益性分析」で収益力を確認

収益性とは「利益をあげるのにどのくらいの資本を利用しているか」「資本を有効活用できているか」「資本を無駄に投下していないか」がわかる指標です。
つまり、利益をあげるための経営効率が把握できます。

逆に、自社の弱みやボトルネックを洗い出すことも可能です。
「業務プロセスにおいて無駄なポイントはないか」「事業のどこを伸ばすべきなのか」といった視点の検討材料になります。

収益性の分析で利用できる指標は「売上高営業利益率」「売上高経常利益率」「総資本回転率」「総資本経常利益率(ROA)」の4つです。
それぞれの意味や算出方法を解説します。

売上高営業利益率

売上高営業利益率は、売上高を占める営業利益の割合を示した指標です。

売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100

営業利益とは、売上総利益から原料費や販売費、管理費といった経費を差し引いて残った利益のことを指します。
つまり、売上高営業利益率を算出することによって、どれだけコストをかけず、適切に製造管理を行って、効率的に利益をあげているかがわかるのです。

基本的には高いほど利益効率がいいといえますが、業種によって適正値が異なるため、一概に高ければいいとはいえません。
事業コストの高い製造業や小売業では低く、反対にサービス業や不動産業などで高い傾向があります。

売上高経常利益率

経常利益とは、本業で得た営業収益に、営業外収益を加えた総利益のことです。
営業外収益には、不動産運用や投資活動で得た利益が該当します。

経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100

売上高に占める経常利益の割合を算出することで、本業以外の財務状況を把握することができます。
本業以外にどのような資金調達先があるのか、資金運用が順調なのか推察でき、資金面における経営の安定性を知ることができるのです。

こちらも数値が高いほど利益率がいいといえますが、重要なのは営業・営業外の収益バランスです。
本業を主軸にできているか、営業外収益の増加による一過性の増益ではないかなど、総合的な判断が必要になります。

総資本回転率

総資本回転率とは、資本に対してどれだけ効率的に売上高を生み出したかを表す指標です。

総資本回転率(回転)=売上高÷総資本

総資本の単位は「%」ではなく「回転」であるところに注意してください。
回転とは、投資した資本が1年間でお金となって戻ってくるまでの1サイクルのことです。

例えば、20万円の資本を投下して商品を作り、販売して40万円の売上が得られた場合「40万円÷20万円=2回転」となりますので、1年間で2回転の回転率ということになります。

総資本経常利益率(ROA)

総資本経常利益率は総資本を占める利益の割合を算出することで、投下した資本に対してどれだけ効率的に収益をあげられているか分析する指標です。
「Return on Assets」の頭文字をとって「ROA」ともいわれます。

総資本経常利益率(%)=経常利益÷総資本×100

分子となる利益は、営業利益や当期純利益が用いられることもありますが、経常利益を用いると営業外利益を含めた総合的な財務状況を把握することができます。

「安全性分析」で企業の健全性を確認

安全性とは、会社の財務状況に問題が無く、健全な経営ができているかを示す項目です。
安全性に関する指標を確認することで、企業の短期的・長期的な経営状況を把握することができます。

安全性分析では「債務を返済できるだけの資本があるのか」「融資に頼りすぎていないか」「事業範囲を広げすぎていないか」など企業の返済能力を確認します。

財務状況を客観的に分析することで、経営難や倒産のリスクを早期に把握し、経営の見直しをはかることができるのです。
短期的な安全性を示す指標としては「流動比率」、長期的な安全性を示す指標は「固定比率」、財務の健全性を見る指標として「自己資本比率」があります。

流動比率

流動比率は、企業の短期的な返済能力を示す指標で、高ければ高いほど返済能力が高いことになります。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

流動資産とは1年以内に現金化が予定されている資産のことで、流動負債とは1年以内に支払わなければならない負債のことです。

つまり、1年以内の支払額に対して、どれだけ資本が多いかがわかります。
適正値は業種によって異なりますが、一般的には150~200%が理想的とされています。

流動比率の詳細はこちらの記事をご参照ください。
流動比率とは?計算方法や業種別の目安・財務状況を判断するポイント

固定比率

固定比率は、自己資本に対する固定資産の割合を求めたもので、固定資産がどのくらい自己資本でまかなわれているかを分析する指標です。

固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100

不動産や工場設備などの固定資産は長期的に使用することが多く、返済の必要がない自己資本で調達することが望ましいとされています。
そのため、固定比率が高い=固定資産が自己資本でまかなわれているほど経営の安全性が高いといえます。

自己資本比率

自己資本比率とは、総資本のうち純資産が占める割合を表す指標で、自己資本を中心に経営ができているかどうかを分析できます。

自己資本比率(%)=(純資産-新株予約権)÷総資本×100

自己資本比率が高いということは、資産のうち返済の必要がある他人資本の割合が低いということ、つまり借金が少ないということです。
自己資本比率が高い企業は、財務状況が健全であると判断できます。

「生産性分析」で経営資源の活用状況を確認

生産性とは、資金や人件費といった会社が持つリソースを投下することでどれだけの利益を得られたか、またはリソースをどのくらい効率的に活用できているかを指します。
資金の無駄遣いや業務効率のボトルネックを発見することができ、経営改善の参考にすることができます。

ここでは、人的リソースを投下した場合の指標である「労働生産性」「労働分配率」について解説します。

労働生産性

労働生産性とは、従業員1人当たりが生み出す付加価値額のことです。
付加価値とは、事業活動によって生み出された製品やサービスに付随する価値のことですが、経営指標を算出する際は売上から原価を差し引いた金額が用いられ、利益とほぼ同じ意味で扱われます。

労働生産性(円)=付加価値額÷従業員数×100

労働生産性が高いほど、事業における業務効率がよいと考えられます。

労働分配率

労働分配率は、付加価値のうち人件費が占める割合を表す指標です。
事業によって生み出された利益は、人件費を含めた支払いや内部留保など様々な用途に振り分けられますが、そのうち人件費にどれだけ分配されたかを示しています。

労働分配率(%)=人件費÷付加価値額×100

労働分配率は「高い方がよい」「低い方がよい」というものではなく、ビジネスモデルによって適正な水準に保つことが重要です。
人件費を抑えればコストカットになりますが、むやみに給与を削減しては従業員のモチベーション低下につながります。

業種別の平均値を参考に、自社がそれより高いのか低いのか判断することがおすすめです。

労働分配率の詳細はこちらの記事をご参照ください。
【労働分配率について解説】利益と人件費のバランスを知ろう【経営/財務】

人件費の出し方の詳細はこちらの記事をご参照ください。
人件費率の計算方法は?労働分配率との違いや適切な算出方法など詳しく解説

「成長性分析」で増収増益か確認

成長性分析では、会社の売上や利益の成長率が好調を保っているかどうかを分析します。
ここで重要なのは、売上高だけでなく利益も成長しているかどうかです。

製品やサービスの売上が良くても、経費を使いすぎており、利益に結びついていない可能性もあるためです。
成長性を確認する指標としては「売上高伸び率」があります。

売上高伸び率(%)=売上高(当期)÷売上高(前期)×100

前期と比べた売上高の伸び率がわかる指標ですが、前述の通り利益との比較が重要です。
営業利益の伸び率もあわせて算出し「増収増益」できているかどうか確認しましょう。

 

経営指標を活用するメリット

経営指標を用いることで、自社の経営や財務の状況を客観的に分析することができます。
ここではメリットをご紹介します。

それぞれの項目のメリット

収益性分析
収益がプラスだから良い、マイナスだからダメということでなく、その理由を知ることが効率的な経営改善に繋がります。
経営指標で収益性を確認することで、どのくらい儲かっているのか、資本を無駄なく使えているか、利益を生み出しやすい商品が扱えているかなど、自社の強みと弱みを理解することができます。

安全性分析
財務面の安全性がわかると、倒産のリスクがどれくらいか、借入金を返せる返済能力があるか、などがわかります。

生産性分析
人件費が適正かなど、ヒト・モノ・カネの割り振りが正しいかを調べて改善することができます。

成長性分析
会社の売上高だけでなく、利益の成長率が好調を保っているかどうか分析することができます。

 

経営指標を活用する際の注意点

軸を持って分析をする

まず最初に注意したい点が、どのような観点で分析するのか「軸を持つ」ということです。
ご紹介した経営指標は、どれも元の数字があればすぐに計算できるものばかりです。

しかし、ただ計算をしてその数値を眺めているだけではうまく活用することはできません。
会社をどのような方向に持っていきたいのか、目的を考えながら経営指標を活用することが重要です。

会社によって注目すべき経営指標は異なります。
自社のやりたい事業や実現したい状態を明確にして、それを達成するためのツールとして経営指標を活用するようにしましょう。

結果だけでなく原因が重要

経営指標を計算したら、結果が良いか悪いかだけを見るのではなくなぜそのような数値になったのかの原因を把握することが重要です。

例えば「損益分岐点」は低いほうが、多少売り上げが下がっても赤字になりにくいので良いと考えられます。
ただし、将来の販売数増加を見込んで大型設備投資をしていた場合は固定費の上昇により損益分岐点はどうしても高くなってしまいます。

この場合、高いのでダメだという判断にはならないと思います。
会社が成長していく過程では将来の利益のために一時的に赤字に耐えなくてはならない時期もありますし、あえて研究費や設備・広告費に先行投資することもあるでしょう。

結果だけに一喜一憂するのではなく、悪い数値だったときは必ずその原因を考慮するようにしましょう。

ただし目的をもって実施した施策の結果だとしても、許容できるリスクの範囲に収まっていない場合は新たに対策を講じる必要があるので注意しましょう。

現状分析だけでなく問題解決や戦略立案に役立てる

経営指標は会社の現状を分析するために非常に有効なツールです。
しかし「前年もしくは他社の数値と比較して良かったから合格・低いから残念」という風に考えるのではなく、その結果をもとに次に何をするのか解決策考案や戦略立案のために使うことが大切です。

例えば、労働生産性が低いという場合は、その現状を受けてどのように改善するのかを考えましょう。
数値が低くなる原因は会社によって異なりますので、自社の場合何が原因なのか以下のように可能性を上げて検討します。

原因が明らかになればその対策として「1人あたりの業務時間が長くなり過ぎないように人員を強化する」「マニュアルを見直す」「製造スケジュールの工夫で余計な待ち時間を減らす」などの方法を考えることができるでしょう。

結果を眺めるだけでなく、経営改善に役立つように上手に活用するようにしていきましょう。
しかし自分たちだけで分析していると「この指標の捉え方はこれで合っているのか?」「他社がどのように活用しているのか知りたい」など、様々な疑問が生まれてくると思います。

 

会社の目標達成のために経営指標を使いこなそう

ビジネスにおける目標達成のための各プロセスにおける評価指標の一つにKPIがあります。
KPIマネジメントとは?設定・運用方法やメリット・事例を紹介

多くの会社でKGIは無意識に管理している一方、KPIは管理されておらず経営層から見えないことが多い。現場の頑張りがKGIの向上に結び付ける必要があるにもかかわらず、現場のみが頑張ってもKGIが好転しません。
多くの会社でKPIを導入し、可視化の実現を目指していますが、経営者1人だけで管理会計を行うには難しいこともあるでしょう。

経営指標とは、会社の経営状態を可視化し、客観的に分析するための指標です。

指標の算出に利用する数値によって、様々な角度から自社や他社を分析することができます。
目的にあわえて指標を活用し、経営戦略や事業計画の立案に活用しましょう。

しかし、財務諸表の数値を自ら読み解き、指標を用いて企業分析をするのは容易なことではありません。

自社の経営状況に不安があり、見直しを図りたいときは外部機関に頼ることもおすすめです。
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