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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2022/08/08 15:30

経営

資金繰り

経常利益とは?【経営/財務】

読了まで約3分

経常利益は損益計算書で使われる勘定科目の1つです。
企業が得た利益額を表す科目であるため、業績判断の上で重要となる数値といえます。

しかし、企業の利益を表す勘定科目は経常利益だけではありません。
売上総利益や営業利益、税引前当期純利益、当期純利益などもあります。

これらの勘定科目と経常利益はどこが異なるのでしょうか。
今回は、損益計算書における経常利益とはどのような勘定科目なのか、詳しく解説しましょう。

経常利益とは・・・本業以外の活動で得た利益も含めて計算

企業が本業+財務力によって稼いだ利益が、経常利益に該当します。
計算式で表すと、「営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益」です。
本業で稼いだ利益である営業利益に、受取利息や雑収入、株式の受取配当金など本業以外で得た収益をプラスし、
そこから手形の割引や借入金の支払利息など本業以外で発生した費用をマイナスすることで計算されます。

しかし、受取利息や雑収入などは、本業の分野ではないものの、企業の事業活動の中で得た収益ではあります。

同様に借入金の支払利息などは、製造原価や人件費のような本業の中で発生する費用ではないものの、
事業活動を行う中で発生するコストです。
そのため、経常利益は企業が行う事業活動全般で得た利益を表す勘定科目であるといえます。

ただし、経常利益には自然災害により被った損失や会社が保有する土地を売却して得た収益など、
事業活動とは関係なく発生した損益は加味されていません。

つまり、損益計算書に記載されている経常利益は、
その企業が1年間の事業活動でどれくらい稼いだのかを端的に示す指標といえます。

企業の「稼ぐ力」を知りたければ、経常利益に注目すればよいわけです。

 

経常利益は売上総利益、営業利益、税引き前当期純利益、当期純利益との違いを説明

損益計算書の利益を計上する勘定科目は経常利益以外にもあります。
ここでは、経常利益の特徴を理解しやすくするために、それら各利益科目の内容について説明しましょう。

売上総利益、営業利益

売上総利益は、売上高から製造原価を差し引いた額です。製品1個作るには、材料費がかかります。
その額を売上から引くことで、提供する製品そのものが生み出す利益額を計算できるわけです。
サービス業の場合は、サービス提供に直接かかった外注費などが含まれます。

営業利益は、売上総利益から「販売費および一般管理費」を差し引いて求められる利益額です。

販売費は商品・サービスを販売するための広告費など、一般管理費には事務所の家賃、人件費、通信費、交際費などが含まれます。
本業での活動を行っていくのに必要な費用全般が、販売費および一般管理費として差し引かれるわけです。
これをマイナスしても営業利益がきちんと発生しているなら、本業の分野が好調であることを意味します。

しかしいくら本業自体が好調でも、支払利息・割引料や社債利息、雑支出など
事業展開の上で発生するコストの額が大きいと、経常利益としての利益額は小さくなってしまうでしょう。

税引前当期純利益、当期純利益

税引き前当期純利益は、経常利益に固定資産売却益などの特別利益をプラスし、
固定資産売却損や災害・盗難などの特別損失をマイナスして計算される利益です。

事業活動とは関係のないところで発生した損益ですので、
その年度に突発的に発生したものが含まれるケースが多いといえます。

当期純利益は、税引前当期純利益から法人税・法人住民税・法人事業税を差し引いた額です。

これら3つの税科目はまとめて「法人税等」と呼ばれています。

この当期純利益が、その企業がその期に得た最終的な利益額です。
株主総会ではこの当期純利益に基づいて、株主への配当金の額や、次期への繰越額などが決定されます。

 

経常利益活用のメリット・デメリット

経常利益を分析・活用することで得られるメリットとデメリットについても解説します。

メリット

経常利益は、当期に偶発的に発生した利益や損失を含まないので、次年度の当期純利益の予測の基礎として活用することができます。
また、企業活動を行った成果として見ることができるので、社外アピールや社員のモチベーションアップに活用できるメリットがあります。

デメリット

経常利益は、本業と本業以外の事業を合わせた全体の利益を示すものであり、不動産投資や資金運用などの財務活動も含みます。
そのため債務返済などが多いと、事業の調子がよくても数値が低くなります。

結果、内情を良く知る社員以外にとっては、納得し難い数値となる恐れがあります。

 

 

経常利益を分析するときのポイント

経常利益を分析するポイントとして、3つの視点でご紹介します。

自社分析

経常利益を含めた損益計算書を見ることで自社の現状を分析することが可能です。
自社分析では、まずは細かい分析をするよりも、経常利益の数値から会社の大局的な分析を心がけましょう。
貸借対照表とキャッシュフロー計算書を合わせた財務三表(決算書)を見ると、
儲かっているのか損をしているのか、売上が伸びているのか落ちているのか大まかに分析することができます。

他者と比較する

経常利益から業界内での自社の立ち位置を分析するには、他社との比較が欠かせないです。
比較分析することで自社の経営状況を客観的な視点で把握できるようになり、
株主や従業員にとって納得してもらえる成長目標の設定ができるようになります。

同業他社の経常利益は、上場企業であれば有価証券報告書や決算説明会資料などのIR資料を、投資家向けのページなどから確認でき、
非上場企業であれば、帝国データバンクや東京商工リサーチのサービスで確認することが可能です。

適正水準は業種によって大きく変わってくるため、競合する同業他社に絞って比較すれば業界としての指標が見えてきます。

複数年で比較する

経営状況は複数年で比較しないと正しい判断が下せない場合もあります。
会社を取り巻く環境は日々刻々と変化しており、その影響が反映されるのが経常利益の数値です。
複数年でこの数値を比較することで変動要素を捉えることができ、自社の経営状況の適切な分析に繋がります。

 

経常利益と営業利益、税引前当期純利益との比較から読み取れる経営状況

企業の当期純利益が黒字であったとしても、本当に経営が安定しているかどうかを判断するには、
途中の利益段階の状況を読み解く必要があります。

以下で、いくつかのパターンについて取り上げ、各々の経営状況について考えてみましょう。

営業利益が赤字、経常利益が黒字の場合

例えば、営業利益は赤字なのに経常利益が黒字である企業を考えてみましょう。

この場合、本業が不振であるものの、受取利息や受取配当金など本業以外の部分で発生している利益額が大きく、それで本業の赤字を補っている状況を表しています。
しかしこの企業は本業では稼げていないので、将来的に不安が残るといえるでしょう。

経常利益は赤字、税引前当期純利益は黒字の場合

次に、経常利益が赤字で、税引前当期純利益が黒字である企業を考えてみます。

この場合、経常利益が赤字であるため、事業活動全体がうまくいっていません。
その期に発生した特別利益によって赤字の補填が行われているだけです。
特別利益を生み出す固定資産の売却などは、毎年定期的に行われることはないので、
経常利益をプラスに転じる策を講じない限り、来期以降は税引前当期純利益も赤字に転落する恐れがあります。

 

経常利益は、企業の営業外活動によって得た収益を含めた利益額

営業利益に営業外収益をプラスし、営業外費用をマイナスして導き出される利益が経常利益です。
経常利益は、本業以外の企業活動によって得られた利益を含めて計算する利益額であり、企業全体としての収益力・稼ぐ力を示す指標といえます。

しかし経常利益が黒字であっても、営業利益が赤字であったら本業の調子が悪いことを示しており、
今後の事業活動に不安が残る状況といえるでしょう。

また、経常利益が赤字だったら、税引前当期純利益は今期黒字であっても来期に赤字となる危険性が高いといえます。
固定資産売却益などは二期続けて発生するとは限らないからです。

このように経常利益と他の利益勘定科目とを比較検討することで、経営状況の実情が見えてきます。

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