更新日:2024/05/10 17:00
経営
企業における執行役員とは?立ち位置や設置のメリットを解説
読了まで約4分
企業における役職の一つに「執行役員」というものがあります。
「役員」という名称がついていますが、取締役やCEOとは何が違うのかよくわからないという方も多いでしょう。
本記事では、執行役員の意味や役割、設置するメリット・デメリットなどについて解説します。
目次
執行役員とは?意味・定義を解説
執行役員とは、取締役会で取締役などが決めた会社の経営方針に基づいた業務を執行するポジションです。
通常は管理部や各事業部を統括する者として執行役員が置かれるケースが多く、位置づけとしては「一般従業員の中のトップ」ということになります。
社長が経営に専念できるようにすることを目的として設けられた立場です。経営に関する重要事項や方針に関する決定権限はありません。
「役員」という名前ではありますが役員ではなく、あくまで会社に雇用されている立場の一般従業員ということを覚えておきましょう。
会社法ではどういった扱い?
会社法とは、会社の設立や運営・管理について定めた日本の法律です。
その会社法上では、「取締役」「会計参与」「監査役」の3つの役職が役員と定められています。
また、会社法の細則を定める会社法施行規則では、これら3つの役職に加えて「執行役」「理事」「監事」「その他これらに準ずる者」が役員であるとされています。
「執行役」と「執行役員」は字だけ見るとほとんど同じですが、執行役は指名委員会等設置会社のみに置かれる機関のことを指す言葉です。
取締役会が決定した重要事項や方針を実行するという点では執行役員と役割が似ていますが、執行役員は先述の通りあくまで従業員であり、執行役は機関であることが大きな違いです。
取締役・役員・執行役・CEO それぞれとの違い
執行役員は取締役会の決定に基づいて業務を執行するポジションであり、取締役のように経営に関する決定権や法律上の責任があるわけではありません。
あくまで役員の決定に従って業務を執行するのが執行役員の役割なので、経営に関わる役員会議などには参加することがないのが一般的で、経営には携わりません。
取締役・役員・執行役・CEOそれぞれとの違いを詳しくご紹介します。
取締役
取締役は、会社経営における重要な意思決定と各々の取締役の職務の執行状況などを監督し、運営が適正に行われる体制を整備する役割を担っています。
会社法では、取締役の役割および責任として
・取締役会の構成員としての重要な業務執行の意思決定
・会社の業務を執行する取締役の選定
・他の取締役の業務執行の監督と3ヶ月に1回以上の職務の執行状況の報告
上記のようなことを定めています。
役員
役員は、会社法では株主総会で選任された取締役・監査役・会計参与らを指す名称です。
役員は会社の経営において責任を持ち、経営方針の意思決定や業務執行の監督などを担います。
執行役員は、名称に役員とついていますが、会社法で定められた法定役員ではありませんので、一般的に会社と委任契約を結ぶ役員とは異なり、執行役員が締結するのは従業員と同じ雇用契約です。また、労働の対価として受け取る金銭も役員報酬ではなく、従業員と同じ給与になります。
執行役
執行役は、株式会社のうち「指名委員会等設置会社」に設置される機関のことです。
上場企業には、監査役会設置会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社という3つの会社形態があり、このうち「指名委員会等設置会社」には、会社法によって執行役を設置することが定められています。
執行役は会社法上の役員ではありませんが、取締役からの委任を受けて業務執行の決定などを行います。ただし、経営方針の策定や株主総会の議案の決定など、一部の重要事項に関しては執行役に委任することはできません。
それに対し、執行役員の設置は会社法で定められておらず、各会社の判断に任せられています。執行役員は、会社から委任を受けた機関である執行役とは全く違うものです。
CEO
CEOとは、最高経営責任者(Chief Executive Officer)を指します。会社の経営や今後の方針などを決定し、その責任を負う重要な立場です。
会社の今後の方針を考えるといった点では取締役と似たような立場ですが、CEOは会社ごとに定められた任意の役職名です。
取締役とは違い、法律上の役員ではないので、給与は役員報酬ではありません。
執行役員を設置するメリットとデメリット
では、企業にとって執行役員を設置することにどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
メリット
メリットとして、執行役員を導入することで役員と従業員のギャップを埋めることができます。
執行役員を介することによって役員会議で決められた内容を齟齬なく、円滑に現場に届けることができますし、
反対に現場の声を役員たちに届け、経営に反映してもらうこともできるのです。そうした点で、執行役員を設置することには大きなメリットがあると言えます。
また、執行役員は会社法上の役員ではないため、役員変更登記をせず選定可能です。優秀な人材を執行役員に任命することで、会社にとって有益な存在に育てていくことができます。
執行役員は従業員と同じ立場なので、会社から支払う給与は経費として計上できます。役員に支払う役員報酬は原則経費にはならず、経費にするには一定の要件を満たさなくてはなりません。しかし執行役員の給与にはそのような要件はないため、管理面での負荷が軽減されます。
ただし、執行役員であっても役員と同等の業務に携わる「みなし役員」の場合は、税法上、役員報酬と同じ扱いになるため注意してください。
デメリット
執行役員という従業員の延長線上に置かれたような中間的な立ち位置ゆえに、権限や職務内容があいまいになってしまうことがあるというデメリットもあります。
会社法上の役員ではないため、取締役や部長など、他の役職との違いや指示系統がわかりづらく現場の従業員に混乱を生じさせる場合もあります。
こうしたデメリットを避けるために、会社はしっかりとした規定を作成し、執行役員の役割を明文化する必要があるでしょう。
執行役員制度を導入するために
一般的に、執行役員は会社法上の「重要な使用人」にあたるため、取締役会決議が必要になります。その際、執行役員規定や報酬など、執行役員の詳しい条件も定めなければなりません。
執行役員を選任したら「選任辞令」を交付し、本人の同意も得る必要があります。
執行役員の契約形態としては、雇用型と委任型の2つに分けられます。
雇用型は、会社に雇用されている従業員の中から執行役員にふさわしい人材を選任します。
一方委任型は、取締役と同様に会社と委任関係にあるため、独立性や専門性が求められ、比較的業務の裁量が広いという特徴があります。
執行役員の配置で情報伝達を円滑に
執行役員はあくまで従業員という扱いであり、上層部と従業員の間に立つようなポジションであることがおわかりいただけたかと思います。
執行役員を置くことで、役員と従業員との意思疎通をはかることができます。
そのため、執行役員には上層部の考えをどのような内容であれ齟齬なく、
従業員のモチベーションを保ちながら伝える使命がありますし、現場の声をしっかりと上層部に届けなくては、他の従業員の信頼を勝ち得ることはできません。
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執筆者情報
小山 昇 / 株式会社武蔵野 代表取締役社長
1948年、山梨県に生まれ、東京経済大学卒業。
1977年、株式会社ベリーを設立し社長に就任。
1989年、現職に就任。
1990年、株式会社ダスキンの顧問に就任。
1992年、顧問を退任し現在に至る。
全国の経営者でつくる「経営研究会」主催。
株式会社武蔵野は2000年日本経営品質賞、2010年国内初日本経営品質賞2度目の受賞。
現在パートナー会員750社以上の会員企業をアドバイス。
日本経営品質賞受賞の軌跡、中小企業のIT戦略、実践経営塾、実践幹部塾と、全国で年間1900回以上のセミナーを行っており、訪問社数も年間約120社を超える。
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