更新日:2023/04/28 14:30
経営
企業の社会的責任(CSR)とは?CSR活動に積極的に取り組むことが企業価値の向上につながる【組織力強化】
読了まで約3分
企業が目指すべき最大の目的は、利益の追求にあることは間違いありません。
しかし現在では、企業は自社の利益だけを考えるのではなく、事業活動が社会に与える影響について十分に考慮すべきである、
という企業の社会的責任(CSR)を問う価値観が一般的となっています。
今回は、企業の社会的責任について取り上げ、どのような概念なのか、取り組むことにどのようなメリットがあるのか、について詳しく解説しましょう。
目次
企業の社会的責任(CDR)とは?ステークホルダーとの関係を重視した経営のあり方
企業は事業を行う以上、商品・サービスを販売して利益を上げなければ、存続することはできません。
株式会社であれば、投資を行った株主に対して、株価の上昇や配当金などを通して利益を還元する必要があるわけです。
いわば、株主は企業にとってのステークホルダー(利害関係者)であるわけです。
しかし、企業のステークホルダーは株主だけではありません。
企業で働いている従業員もまた、労働を提供して対価である給与をもらっているのでステークホルダーに含まれます。
また、その企業が提供する商品・サービスを購入する消費者、企業の取引先、さらには企業が立地する地域住民も、その企業と深く関わっているという点でステークホルダーの一員です。
企業の社会的責任(CSR)とは、これらあらゆるステークホルダーとの間に信頼関係を築くことをいいます。
例えば、地域住民との信頼関係を築くには、地域の環境を破壊するような企業活動を行うことはできません。
もし事業活動で何らかの有害物質が生じるのであれば、企業内で完全に無害化したのち、排出することが求められるでしょう。
こうした社会的な責任を果たすことが、企業には求められるわけです。
社会的責任投資(SRI)という投資判断基準の普及
近年では、投資家の間において、その企業がどのくらいCSRに配慮した経営を行っているかを投資の判断基準とする社会的責任投資(SRI)という考え方が広まりつつあります。
投資家としても、自社の利益しか追求せず、従業員や地域社会、消費者のことを顧みないような企業には、投資したくないわけです。
そもそも、そのような無神経な企業はやがて社会に受け入れられず、市場から淘汰されるリスクも高いでしょう。
長期的視野に立ち、SRIという投資方法を取る投資家は増えているのです。
ボランティア活動やサステナビリティの違い
CSRと似たような用語・考え方に、ボランティア活動やサステナビリティがあります。
CSR活動はあくまでも企業価値の向上を目的に行われるもので、純粋な奉仕活動であるボランティアとは異なります。
またサステナビリティとは、環境や経済、社会のバランスを考え、世の中全体を持続可能な状態にしていく考え方のことで、「持続可能性」という意味を持ちます。
企業だけでなく政府や自治体や個人、社会全体が対象となるため、企業や事業活動に限られるCSRとは対象の範囲が異なります。
企業の社会的責任(CSR)を果たすことのメリットとは?
各企業にとってCSRに取り組むことは、本業とは別のコストを生じさせることを意味します。
例えば、家電メーカーがCSRの一環として地域スポーツの振興に協力するという活動を行った場合、
実際のところ、地域スポーツが盛んになっても家電の売上増には直接つながりません。
では、企業にとってCSRに力を入れることには、どのようなメリットが考えられるでしょうか。
以下では、企業価値の向上、優秀な人材確保、ブランド力アップについて説明します。
企業のブランド力を高め、企業価値を向上させる
CSRに力を入れている企業は、間接的に企業の価値を高めることができ、結果として売り上げ増、利益増につながりやすいです。
現在、スーパーやコンビニには物があふれて、同類の消費でも複数の企業が売り上げ増を目指してしのぎを削っています。
そんなとき、CSRに力を入れ、社会的評価が高いということは、他社にはない価値を顧客に訴求できるのです。
実際、水資源保護と植林というCSRに取り組んでいる飲料メーカーは、その活動が企業のイメージアップ・ブランド力アップにもつながっています。
優秀な人材を確保できる
さらに社会貢献に力を入れている企業は、社会的な評価が向上し、従業員のモチベーションアップが期待できます。
やはり従業員としては、同じ働くなら自分の仕事が社会貢献につながっていると感じることができれば、働き甲斐があるでしょう。
また、学生が就職試験を受ける際も、CSRに熱心に取り組んでいる企業の方が、若い世代にとっては魅力的に映ることも多いです。
それにより、優秀な学生・人材を確保しやすくもなるでしょう。
従業員間の価値観の共有化を促進し、組織力強化できる
CSRで掲げられた目標は、経営理念として従業員の中に浸透させることができ、従業員が現場で行う意思決定における判断基準にできます。
これにより従業員が意思決定を容易にし、企業のガバナンス(統治)にもプラスの影響を期待できるでしょう。
例えば、先に述べた通り、従業員も企業にとって重要なステークホルダーです。
出産・育児・介護などと両立しやすい就労環境を整えるというCSRに力を入れている企業は、こうした価値観が従業員の間で共有され、実際に働きやすい職場の形成が期待できます。
環境保護に力を入れている企業であれば、従業員が何らかの意思決定を行う際に、環境への負荷を考慮した判断を行うようになるでしょう。
こうしたCSRによる経営理念の提示は、それによる従業員の意識改革をもたらし、組織力を高める効果が期待できます。
企業がCSR活動に取り組むデメリット
CSR活動は長期的には企業イメージを高め、優秀な人材の採用や利益に貢献しますが、成果が出るまでにある程度の時間が必要です。
従来の業務に加え、人員を割く必要があったり、コストがかかることをデメリットと取る企業も多いとされています。
経営難の企業や人手の足りない中小企業では、CSRに取り組みたくても思うように進まないという企業も目立ちます。
CSRを経営戦略の一貫としてとらえ、社会貢献が自社の利益にもつながる体制をできるだけ早期につくっていくことが重要です。
CSR活動を戦略的に推進する方法
企業がCSR活動の効果を高めるには、戦略的に推進していくことが大切です。
実際にCSRをどのように社内で進めていけばよいのか、1つずつ解説していきます。
自社の目標と社会のニーズを考慮して活動内容を検討する
CSR活動は、企業評価やブランドイメージの向上に繋がります。
現在、社会的にどのような動きが求められているのか、どんなことに注目が集まっているのかなど、自社のCSR活動の目標とすり合わせていくことが必要です。
運用体制を検討する
次に、実際にCSRに結びつく企画を立案し、プレスリリースで発表するまでの運用体制を決めていきます。
各部門よりメンバーを選出し、CSRに関するあらゆる情報を管理・発信し、活動を推進していきます。
また、イベントなど人手が必要な企画の場合、実現するために必要なコストや業務フローをまとめていきましょう。
活動内容をステークホルダーに周知する
CSR活動の内容や成果を報告することも大切な業務です。
CSRレポートとしてHP上で発信したり、プレスリリースの配信など、それぞれの媒体の特徴を生かして情報を発信していきましょう。
活動状況を定期的に伝えたり、開示したりすることで、その企業が大切にしていることや活動の内容が広まっていきます。
効果を検証する
CSR活動を実施した結果、どのような反響があったかなど、指摘や意見を踏まえて効果検証をしましょう。
CSR活動を継続して向上させるためにも、PDCA サイクルを回しながら見直すことが大切です。
CSR活動の事例
CSR活動の事例として、3社をご紹介します。
富士フイルム
精密化学メーカーである「富士フイルム」では、環境保全を前提にCSRに取り組まれています。
具体的なCSRの内容としては、きれいな水と空気や緑に代表される「自然保護」を対象に10億円の資金を拠出し、
1983年に日本で最初の自然保護をテーマとした民間企業による公益信託として「公益信託富士フイルム・グリーンファンド(FGF)」を設立しました。
武田薬品工業
製薬会社「武田薬品工業」では、「国際社会と連携し、疾患予防に注力することで、患者さんと医療の未来に貢献し続ける」と掲げています。
途上国・新興国の人々にとって切実な問題である保健医療アクセスの改善を進めるべく取り組みを行い、数百万人の人々の健康に貢献しています。
ブリヂストン
タイヤメーカーの「ブリヂストン」では、「責任ある企業として持続可能な社会の実現や社会課題の解決に向けて取り組む」ことを掲げています。
具体的には、自社の強みや特性を活かした人々の快適な移動、生活をサポートするためバス乗車時のバリアフリー化に貢献しています。
企業の社会的責任を果たすことは、企業にとって利益につながる
企業の社会的責任(CSR)を果たすとは、業績を上げることに集中するだけでなく、
地域社会や従業員、消費者など多様なステークホルダーとの関係を重視した企業経営を行うことです。
企業がCSR活動を行うことにはコストがかかりますが、その分、企業価値の向上や人材確保、組織力強化につながります。
CSRに配慮した経営を行うことは、企業が競争力を高め、成長していく上でも重要といえるでしょう。
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