更新日:2021/08/05 13:04
経営
アシミレーションとは?効果的なやり方や取り入れる手順を解説
読了まで約3分
社内チームに新しいリーダーを就任させる際には、既存メンバーとの関係性が非常に重要となります。
そこで活用すべきが「アシミレーション」です。アシミレーションを深く理解すれば、社内でより良いチームを構築できるようになるでしょう。
本記事では、アシミレーションの基礎概要、取り入れる手順を解説します。
目次
アシミレーションとは?
アシミレーション(Assimilation)は「融和」や「同化」を指す英語です。
ビジネスにおけるアシミレーションは、組織開発手法のひとつで、チームリーダーとメンバーや上司と部下の相互理解を深め、より良い信頼関係を構築するための仕組みのことを指します。
新しいリーダーがチームに加わったときにアシミレーションを用いることで、新任リーダーとメンバーの融合を図ることができます。
具体的な方法としては、上司抜きで語り合う場を設ける、議論の内容を匿名で上司に報告するなどが挙げられます。
なお、アメリカの多国籍コングロマリット企業であるGE(ゼネラル・エレクトリック)がアシミレーションを実施したことにより、日本で広く認知されるようになりました。
アシミレーション導入のメリット
アシミレーションを導入するメリットとしては、以下のようなものがあります。
・チームの一体感を高める
上司と部下が業務に対して共通の意識を持ち理解を深めることは、チームの一体感に繋がります。
一体感のあるチームは、急なトラブルや課題が発生した際も、個々ではなくチームとして対処し乗り越えることができます。
時代の移り変わりが速い昨今では、変化に対して柔軟に対応するために、チームの一体感の醸成が大切なポイントです。
・相互理解ができる
中立な立場のファシリテーターが存在することで、単に部下たちの意見を上司に伝えるだけでなく適切なアドバイスができ、考え方のミスマッチ解消が期待できます。
また、ファシリテーターからのフィードバックを受けて、上司が自身の行動の意図を改めて伝えたところ、部下たちが納得するケースもあります。
・生産性の向上
相互理解が深まることで、円滑なコミュニケーションを生み出し、チームとしての問題が解決でき、生産性の向上効果も期待できます。
特に新しく着任した上司の場合は、チームメンバーの要望や何を期待されているかを知るのに時間がかかります。チームメンバーも新しい上司がどのような人なのかわからず、上手くコミュニケーションを図れないことも多いでしょう。
早くアシミレーションを実施することにより、相互理解が深まり、効率や生産性を向上させることに繋がります。
・居心地の良い職場環境が作られる
アシミレーションの実施により、部下の意見が尊重され、その結果、チーム全体のモチベーションが向上すると期待できます。
自身の意見が聞き入れられることは、社員にとって大切なポイントとなり、「心理的安全性」が担保された居心地の良い職場環境が作られることでしょう。それにより、離職率の低下にも繋がると考えられます。
アシミレーションの活用シーン2つ
自社のチームに有効活用するためには、アシミレーションの活用シーンを明確にしておくことが大切です。
ここでは、アシミレーションの活用シーンを2つ紹介します。
1. 新しいリーダーが加入したとき
新しいリーダーが加入した際に、アシミレーションを活用します。
新任のリーダー加入時には、メンバーとのコミュニケーションが円滑に進まないこともあります。
リーダーとの関係性が低いことで、メンバー各々の考えをスムーズに共有することができず、チームとして団結するまで時間を要してしまうのです。
そこで、アシミレーションをチームに取り入れることにより、コミュニケーションが円滑になります。リーダーとメンバーの不仲や違和感を取り除き、早い段階で団結することができるでしょう。
2. 経営戦略を社内に浸透させたいとき
アシミレーションは経営戦略を社内に浸透させたいときにも有効です。
企業の経営戦略やビジョンというものは、社長や経営陣が理解していても従業員には伝わりづらいものです。結果として従業員は経営戦略を履き違え、社内全体が誤った方向に進んでしまうケースも少なくありません。
このような経営戦略の形骸化を避けるためにも、アシミレーションを活用して社内全体に共有することが大切です。
まずは、従業員のみで話し合いを十分に行い、経営陣に対してフィードバックします。
そうすることでお互いの意見や疑問点が明確になり、経営戦略が社内により浸透して会社一丸となって取り組めるでしょう。
アシミレーションを取り入れる5つの手順
アシミレーションを有効活用するためには、正確な手順で取り入れなければなりません。
ここでは、アシミレーションを取り入れる5つの手順を紹介します。
手順1. 活用する時期を定める
アシミレーションは時期を選ばず活用できる組織開発手法ではありません。まずは、アシミレーションの活用する時期を定める必要があります。
活用すべき時期は新しいリーダーが就任したときです。就任してから1ヵ月程度を目安に、アシミレーションを取り入れましょう。とはいえ、チームメンバーとの関係性によっては活用時期が異なります。チームの状況を確認しながら柔軟に取り入れましょう。
手順2. アシミレーションを開始する
活用する時期を定めたあとは、アシミレーションを開始します。
メンバーと新任したリーダーに活用する旨を伝え、アシミレーションについての理解を深めます。そうすることにより、アシミレーションによるトラブルを事前に防止できます。
なお、ここでキーポイントとなるのが、メンバーの話し合いを進行する「第三者」の存在です。
中立な立場のファシリテーターを設置し、メンバーから意見を聞くことが大切です。ファシリテーターとは、人々の活動がスムーズになるよう支援し、舵取りをする人を示します。
第三者が担うことで、公正かつ公平な進行をしやすくなります。意見を聞き出す際に、リーダーは退室し、メンバーの意見が聞こえることがないように配慮します。
人事担当者や経営陣が率先して話し合いに参加し、話し合いの公平さを保ちましょう。
手順3. メンバーから意見を引き出す
チームメンバー各々から意見を引き出していきます。
ここでリーダーに対する本音を引き出しておくことで、今後の関係性に大きく影響を与えます。
引き出す内容としては、リーダーの評価、やってほしいこと、知りたいこと、仕事に関する要望などが挙げられるでしょう。また、コメントは誰が言ったものかをリーダーには知られないことを伝えておくことが大切です。
聞き出す際には、平等に意見を聞きつつ、自由かつ話しやすい雰囲気で進められるよう心掛けます。いかにメンバーの本音を引き出せるかが、アシミレーションの成果を高めるために重要なポイントです。
手順4. リーダーに意見を伝える
メンバーから意見を引き出したあとは、リーダーにその内容を伝えます。ここでは意見の匿名性を重視するため、メンバーには退席してもらいましょう。
アシミレーションを進めている第三者がメンバーの意見を伝えます。ただし、誰がコメントしたのかは伝えてはいけません。また、リーダーに対してアドバイスをするのも良いとされます。
手順5. リーダーがフィードバックする
メンバーは再度入室して、リーダーからメンバーに対してフィードバックします。
リーダーから直接伝えることにより相互理解が深まると同時に、チーム内の信頼性の構築にもつながります。
アシミレーション実施のポイント
アシミレーションはうまく機能すれば、チームメンバーの関係性改善に役立ちますが、やり方を間違えると、思うような効果を発揮できません。ここでは、アシミレーションを実施する際に、どのような点に気をつけるべきか、解説します。
導入のタイミングを見極める
アシミレーションはチームメンバーが決まってからすぐではなく、少し期間をあけてから実施することがポイントです。
チームを結成してすぐは、関係性がまだできておらず、チームメンバーから必要な意見や本音を聞き出せない可能性があります。
ある程度期間をあけてからアシミレーションを実施することで、チーム内でのメンバーやリーダー、業務内容に関する理解が進みます。その際に、理解しきれていない部分や不満などを調整する手法として導入することが効果的です。
愚痴や不満だけにならないようにする
メンバーがリーダーに対して不満を抱えている場合や、アシミレーションの意味をよく理解していない場合に、愚痴や不満ばかりが飛び交ってしまう可能性があります。
不満が出た場合には「なぜ不満なのか」「どのように改善してほしいのか」など、必要な情報を聞き出すことではじめて建設的な議論ができます。ネガティブな意見だけでなく、「よかったこと」や「期待していること」など、ポジティブな情報を集めることも意識しましょう。
ファシリテーターは、その点を踏まえて舵取りをしていくことが大切です。
心理的安全性の担保
発言者の名前は匿名として伏せておくことで、心理的安全性が確保でき、メンバーは本音で意見を言える環境になります。
上司は誰がこの意見を述べたのか気になるかもしれませんが、リーダーとメンバー個人間の関係性が悪化する可能性をなくし、安心して意見できるようにするためです。マイナスの意見をしっかりと言える環境づくりのためには、欠かせない要素といえるでしょう。
この心理的安全性を確保することが、ファシリテーターに求められます。
ファシリテーターの選出
アシミレーションを成功させられるかの重要な役割を担うのがファシリテーターです。
チーム内で中立の立場にある人物を選ぶ必要があり、部下たちの本音を引き出すスキルが求められます。
また、メンバーだけでなく上司に対してアドバイスをすることもあるので、アドバイザーとしてのスキルも必要とされます。
アシミレーションを活用してチームを団結させよう
アシミレーションの基礎概要や取り入れる手順を解説しました。
アシミレーションは、リーダーとメンバーの相互理解を深め、より良い関係性を構築するための組織開発手法です。新しいリーダーが就任したときや、経営戦略を社内に浸透したいときなどに有効です。
本記事で紹介した5つの手順を参考にして、ぜひアシミレーションを活用してチーム内の団結を図りましょう。
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執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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