更新日:2022/10/18 14:10
働き方
キャリア・アンカーとは?自己分析のやり方や活用方法などをご紹介【価値観/働き方/自己分析】
読了まで約4分
昨今、終身雇用制度が崩壊し、転職が当たり前になったことで、若いうちからキャリア形成をしっかりと考えておくことが求められるようになりました。
キャリア形成をより正確なものにするために使える考え方が「キャリア・アンカー」です。
キャリア・アンカーとは、譲ることができない価値観のことで、個人のキャリア形成においてもっとも重要なものになります。
今回はキャリア形成について真剣に考え始めた方に向けて、キャリア・アンカーの詳細や、キャリア・アンカーを調べる方法などをご紹介します。
目次
キャリア・アンカーとは
キャリア・アンカーとは、アメリカの心理学者エドガー・シャイン氏が提唱した自分のキャリアを考える上で譲れない軸となる価値観のことです。
キャリア形成は結婚や出産などによって変化するものと思われがちですが、キャリア・アンカーはその人の根底にある価値観であるため、
年齢を重ねてライフスタイルが変化しても変わりにくいといわれています。
キャリア・アンカーを構成する3つの要素
キャリア・アンカーを提唱しているエドガー・シャイン氏は、個人が持っているキャリア・アンカーは3つの要素によって構成されていると定義しています。
キャリア・アンカーを構成する3つの要素には一体どのようなものがあるのでしょうか。
コンピタンス
コンピタンスとは、専門的な能力のことで、単純に「〇〇ができる」「〇△ができない」ということではなく、
自分にとって不利な状況下においても目標達成に向けてタスクを処理し、順応することができるという意味で使われます。
動機
動機とは、自分のやりたいことを望むことのきっかけとなるものです。
動機には、他者から影響を受けて動機づけられる「外発的動機付け」と、自分の内側から湧いてくる「内発的動機付け」の2種類があります。
どちらも思考を行動に移すために欠かせない要素ですが、内発的動機付けが原動力となる行動には、高い集中力や質を保った業務を安定して続けることができ、
本人がやりがいを感じやすいといったメリットがあります。
そのため、キャリア・アンカーを明確にするためには「内発的動機付け」がより大切です。
価値観
価値観とは、さまざまな場面で自分の行動や意思決定における判断軸となる抽象的な概念のことです。
自分の価値観を明確にすることで、自分の選択に対する納得感が増し、目標達成への意欲が高まる傾向があります。
キャリアアンカーと似ている用語
キャリアアンカーと似た意味を持つ、以下2つの用語について解説します。
キャリアサバイバル
個人が働くうえで譲れない価値観と、環境や組織のニーズを調和させる考え方のことをキャリアサバイバルといいます。
キャリアサバイバルでは、キャリアアンカーだけでなく、企業の成長にどう貢献できるかなども大切になります。
プランドハップンスタンス
「キャリアは偶然に左右される場合が多い。偶然の出来事や出会いをポジティブ・シンキングにてキャリアアップにつなげられる」理論のことをプラントハップンスタンスといいます。
日本語では、「計画された偶然」「計画的偶発性理論」などと訳されます。
8種類に分けられるキャリア・アンカーのカテゴリー
キャリア・アンカーでは、個人の特性を8つに分類することができます。
ここでは、キャリア・アンカーのカテゴリーの特徴についてそれぞれご紹介します。
専門・職能別
専門・職能別タイプは、ある特定の分野において能力を発揮し、自分の専門性が高まることで幸福感を得るタイプです。
「特定の分野で成功し、賞賛されたい」「特定の分野での専門知識は誰にも負けたくない」という思いが強く、一つの分野において高い生産性を発揮しながら業務を進めることができるといった特徴があります。
全般管理
全般管理タイプは、組織全体を引っ張っていくことを好む経営者視点を持つタイプです。
承認欲求が強く、「このプロジェクトを絶対に成功させる」「競合会社には負けたくない」と熱心に業務を進めていく特徴があります。
自立・独立
自立・独立タイプは、組織のルールや固定概念を嫌い、自分の道を歩んでいくタイプです。
そのため、「他者からの力を借りずに仕事をしたい」「自分が納得できるやり方で物事を進めたい」と自分のペースを崩さずに業務を進める特徴があります。
独創性
独創性タイプは、自分の手で新しい組織やプロダクトを創り上げることに興味を持つタイプです。
リスクを恐れずに果敢に新しいことに挑戦していく精神を持ち合わせているため、会社の新規事業やプロダクト開発などの業務において高いパフォーマンスを発揮する特徴があります。
保証・安定
保証・安定タイプは、一つの組織に尽くして挑戦よりも安定を望むタイプです。
そのため、不確定要素が強い傾向があるスタートアップ企業よりも給与や福利厚生が安定している大企業や公務員を目指す人が多いといわれることも。
何事にも継続性や安定性を重視するため、業務においても安定したパフォーマンスを発揮し続ける傾向があります。
奉仕・社会貢献
奉仕・社会貢献タイプは、自分の昇進や昇給よりも仕事を通して社会や人の役に立ちたいと考えるタイプです。
私利私欲よりも「社会に貢献したい」「人の役に立ちたい」という思いが強いことから、常に結果を求められる一般企業よりも医療機関や福祉施設などで働き甲斐を感じる傾向があります。
ライフスタイル
ライフスタイルタイプは、仕事とプライベートを完全に切り分けて考えるタイプのことです。
「仕事と家庭を両立させたい」「休む時はしっかり休みたい」と考えるため、業務中は熱心に業務に取り組み、業務時間後は自宅でしっかりと家事を行うといったように両立を重視する傾向があります。
純粋な挑戦
純粋な挑戦タイプは、困難な状況を乗り越えたいと考えるタイプです。
今までに誰も出来なかったことに挑戦すること自体がモチベーションになっています。
ほとんどの人がある程度は挑戦を求めているといえますが、純粋な挑戦のタイプの人にとっては、挑戦こそが唯一の人生テーマであるのが特徴です。
キャリア・アンカーが注目されている理由
キャリア・アンカーは、自分のキャリア形成の根底にある考え方として注目されていますが、そもそも一体なぜキャリア形成が重視されるようになったのでしょうか。
働き方が多様化したため
政府による「働き方改革」の推進や、新型コロナウィルス(covid-19)の流行によるテレワークの普及など近年働き方は大きく変化しています。
正社員のほかにもフリーランスや個人事業主などさまざまな働き方がありますが、自分にとって正しい選択をするためにはあらかじめキャリア形成をしっかり考えておくことが求められるようになったのです。
従業員の離職を防止するため
人材の流動が活発化している現在、企業にとって従業員の離職防止は急務です。
そこで、従業員のキャリア・アンカーがどのタイプに属するのか調査することで従業員を適材適所に配置し、マネジメントの参考にしたり、組織開発に役立てたりすることができます。
キャリア・アンカーを調べる方法
キャリア・アンカーを調べる方法には、「有料の専門分析ツールを利用する」「自己分析を行う」ことの2つが挙げられます。
今回は手軽にできる後者のやり方、そして診断結果の活用方法についてご紹介します。
自己分析のやり方
キャリア・アンカーを調べるためには先述した「キャリア・アンカーを構成する3つの要素」について考える必要があります。
「コンピタンス」「動機」「価値観」について自分は「何を重視し、何が受け入れられないのか」ということを過去の出来事を振り返りながら考えましょう。
自問自答を繰り返してもなかなか結果が出ない場合は、家族や親しい友人に聞くのも一つの手です。
診断結果の活用方法
分析ツールや自己分析によって自分がどのキャリア・アンカーに該当するのか把握できたら、現在の働き方で満足しているのか、自分が目指す姿を実現するためには何をするべきなのか明確にすることができます。
そして、今後転職活動をする時が来た場合は、キャリア・アンカーを参考に、自分自身に最もマッチする企業を選ぶことができるでしょう。
例えば、キャリア・アンカーの分析結果によって「ライフスタイル」の傾向が強いということがわかったとします。
先述した通り、ライフスタイル型は仕事とプライベートを両立させたいと考える人が多いため、もし現職が激務でなかなかプライベートの時間が確保できないという場合は相当なストレスがかかっていることも。
現職の環境を自分ではどうすることもできないと判断した場合は、仕事とプライベートが両立できるような業界・職種へ転職することで、
ワークライフバランスが保たれ、自分の価値観に沿った働き方ができるでしょう。
企業におけるキャリアアンカーの活用方法
企業で組織運営を行う上でのキャリアアンカーの活用法を3つご紹介いたします。
異動の際のアドバイス
組織運営をしていく上で、異動は欠かせないものですが、異動時に心理的ストレスを感じる社員もいます。
キャリアアンカーの視点で「どのように働きたいか」を考えさせると、新しい配属先でどのように能力を発揮していけばよいか、自分が活躍できるポイントを見出します。
それにより離職や転職も防げるでしょう。
新入社員の研修ガイダンス
キャリアアンカーが形成されるのは、一般的に30歳前後と言われています。
新卒の頃は「したい仕事」に対して視点が行きがちです。
そこで今後どのようにして働くかというキャリアアンカーの概念を教えます。
「仕事をする上で譲れないポイント」や「大切だと思った事」を振り返り、自分が持つ価値観を確立させていきます。
そうする事で今後の職務経験や自分のキャリアアンカーに合わせたキャリア形成、組織のニーズなどを擦り合わせていく事が可能となっていきます。
育成研修に活用
中堅以降の社員には育成研修の場でキャリアアンカーの考え方を学ぶと、適性や仕事観を把握できます。
特に部下を管理・育成していく立場になる社員がキャリアアンカーの重要性を理解する事で、個人が持つ価値観のギャップから起こるトラブルを回避したり、チーム内を円滑にする事ができます。
また、社員がそれぞれお互いのキャリアアンカーを確認・理解しあう事により、うまく役割分担ができるようになれば、組織運営もスムーズになり、より強固なチームとなるのです。
自分のキャリア・アンカーを把握してキャリア形成に役立てよう
今回はキャリア・アンカーの概要や、7つのカテゴリーなどについてご紹介しました。
さまざまな要因から社会の変化が著しい現在、若いうちから自分のキャリア形成を考えることが求められており、自分のキャリア・アンカーは何であるのか把握しておくことが大切です。
キャリア・アンカーを参考に、自分が目指すべき方向や理想の実現に必要なことは何であるのか明確にして、キャリア形成に役立てましょう。
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