更新日:2023/07/05 15:20
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企業存続のために欠かせない中期経営計画!数字目標や計画の立てかたについて解説【経営/経営戦略】
読了まで約4分
目次
そもそも中期経営計画とは?主な目的やメリットについて
概要
中期経営計画とは、企業が現状とやるべき課題について整理し、明確にするための計画を指します。
決まった定義はありませんが、「3~5年程度」の中期間の計画を指すことが多い傾向です。
いわゆる「3カ年計画」や「5カ年計画」と呼ばれるものも、この中期経営計画に含まれます。
企業が生き残るためには、安定的に売上や利益を出す必要があります。その場しのぎの経営では、業績を安定させることは難しいものです。
また、現状のみに目を向けて経営を行うと、時代の変化に気づけず、イレギュラーな事態に対応できない可能性があります。
安定的な経営を行うには、現状だけではなく中期的な目線でしっかりと目標を定めておき、そのゴールに向けて努力を行うのが大切なのです。
中期経営計画を立てて「経営のマップ」を作っておくことで、イレギュラーな事態にも対応しやすく、目標達成のために具体的な活動を行えます。
主な目的
中期経営計画を立てる目的は、今後の活動を明確にするためだけではありません。
企業が今後目指すべき「方向性」を、従業員全体に知らせることも大きな目的です。
いくら会社が目指す方向性が定まっていても、その会社を動かす従業員に情報が伝わっていなければ、目標達成が困難になります。
中期経営計画を立てて具体的な内容を従業員に知らせると、ゴールややるべきことを明確に示せます。
その結果として、今後の方向性がしっかりと定まり、企業の団結力を生みやすくなるのです。
メリット
中期経営計画を立てると、さまざまなメリットを得られます。主なメリットには、以下の3つが挙げられます。
1つ目は「現状や課題の整理に役立つ」という点です。
中期経営計画を立てるにあたり、従業員の人数・年齢・性別など、内部環境について再確認できます。
さらに、市場の伸び率や自社のシェア、ライバル企業の存在など、外部環境について整理するきっかけにもなります。
経営において重要なポイントをしっかりと整理することで、現状の把握に役立てられるのがメリットです。
2つ目は「目標達成のためのアクションがわかりやすくなる」ことです。
中期経営計画で目標を立て、それを達成するためには具体的に何をすればいいのか、アクションプランを立てられます。
また、達成すべき目標をはっきりとさせることで、現場に共有しやすくなるのも大きなメリットです。
3つ目には「従業員の考える力を養える」ことが挙げられます。
中期経営計画を立てるときは、経営者だけではなく、多くの従業員の力を借りるケースも少なくありません。
今後の経営に関わる重要な問題について意見を求めることで、従業員も改めて「会社をより良くしよう」という意識が強まります。
さらに、頭を使って考えさせることで、従業員の思考力を高められるというメリットがあります。
結果として、従業員一人ひとりがよく考えて業務にあたることの重要性に気付き、自然とPDCAサイクルを習慣化させやすくなるのです。
中期経営計画を立てるための具体的なステップ
中期経営計画はどのように立てれば良いのでしょうか。計画の立て方は、大きく以下の5つのステップに分けられます。
経営理念をはっきりとさせる
中期経営計画を立てるうえで、最初に行うべきなのは「経営理念」をはっきりとさせることです。
経営理念について考えるときは、以下の要素を意識することがポイントとなります。
まずは「価値観」です。企業の価値観について整理しましょう。
例えば、「お客様第一主義でサービスを徹底する」「クレームには誠実かつ迅速に対応する」など、
企業の根本的な姿勢や、それにともなう従業員の行動規範を明確にします。
中期経営計画は、ただ企業の指標になるものではなく、従業員に浸透・共有するためのものです。
従業員にしっかりと伝わる中期経営計画でなければ、目標達成が遠のいてしまいます。
したがって、従業員に「企業の価値観や規範」を示すためにも、経営理念の基盤をしっかりと固めておく必要があるのです。
さらに、企業が今後果たすべき「課題」についても明確にするのが重要です。
企業の存在意義や、今後活動を通じてどのようなことで世間に貢献していきたいのか、改めて考えをまとめておきましょう。
それに加えて、企業の「展望」も明らかにしておくのが肝心です。展望は、なるべく具体的にイメージしましょう。
例えば、「3年以内に海外展開を目指す」「5年後には売上10億円アップを目指す」といった具合です。
数字目標を定めることで、今後どう動くべきなのかが理解しやすくなります。
自社の現状整理
経営理念がしっかりと固まったら、続いて自社の「現状整理」に移ります。
自社の良い点や悪い点、強みや弱みについて、客観的に分析しましょう。
自社の分析を行う際は、「決算書のデータ」を参考にするのが基本です。
それに加えて、従業員数・各部署の販売力・組織風土なども加味して、多角的に考えるのがポイントです。
さまざまな視点から自社を分析し、どのような強みがあるのか、反対に不足しているものはどのようなものなのか、洗い出していきましょう。
外部環境の情報分析
企業存続のためには、自社以外のことにも、広く目を向ける必要があります。
ライバル企業や市場の状況など、自社を取り巻く「外部環境」について情報を集め、分析するのが肝心です。
ライバル企業の分析を行う際は、「戦略」「技術力」「シェア」などの要素を見逃さないようにしましょう。
中期的戦略を考える
これまで分析・整理した情報をもとに、自社の具体的な「立ち位置」を決めていきます。
どのような事業を展開すべきか、また力を入れるべき商品・サービスは何か、企業を支える軸をはっきりとさせるために、中期的戦略を立てていきます。
このとき、「本業」や「強み」に焦点を当てて考えるのが大切です。
自社の強みを生かせるのはどのようなフィールド・分野なのか分析し、戦略を考えます。
なかには、世間で流行していて儲かりそうだからといって、本業や強みに関係のない事業に乗り出したり、
フランチャイズに加盟したりする企業もみられます。
しかし、行き当たりばったりの考えで経営理念にそぐわない事業に手を出すと、
赤字になったり大きな損失を生んだりするリスクがあるため、注意が必要です。
きちんと本業や強みを洗い出したうえで経営戦略を練ることで、事業選択に失敗するリスクを避けられます。
数字目標や行動計画を考える
最後に、経営理念を実現させるための、具体的な「数字目標」や「行動計画」を決めていきます。
数字目標は、まず経営理念達成のためには「どの程度のリソースが必要になるのか」を計算しましょう。
そのうえで、逆算して具体的な数字目標を定めます。また、数字目標を決めたら、各部署が今後取るべきアクションについても計画を練るのがポイントです。
行動計画は、今後自社の優位性を高めるにはどうすれば良いのかについて考えるのが大切です。
「いつ」「誰が」、「何を」「どのように」実行するのか、行動計画を煮詰めていきます。
このいずれかの要素が抜けてしまうと、目標達成が難しくなるおそれがあるため、注意が必要です。
自社の立ち位置や利益になる要素、従業員に求める行動などを落とし込み、計画の土台を固めましょう。
中期経営計画を立てる際に失敗しないためのポイント
せっかく中期経営計画を立てても、計画倒れしてしまうケースも少なくありません。
せっかくの計画立案を失敗に終わらせないためには、どうすれば良いのでしょうか。失敗しないためのポイントには、以下のようなものが挙げられます。
落とし込みをしっかりと行う
中期経営計画は「作る過程」も大事ですが、その後の「落とし込み」までしっかりと行うのがポイントです。
経営層が中期経営計画を立てて、それを従業員に伝えさえすれば、うまく事態が進むと考えるケースもみられます。
しかし、企業は1人ではなく、組織で成り立つものです。組織で意見を交換し、しっかりと意思の疎通を図らなければ、団結できません。
中期経営計画をもとに、指示だけで組織を動かそうと考えるのは、避けたほうが無難です。
中期経営計画を立てたあとは全従業員に浸透するよう、具体的なビジョンや目標について説明し、理解を得る必要があります。
従業員がどのような情報を知りたがっているのか、また疑問を持っているのか、耳を傾けて質問に答えるのも大切です。
中期経営計画は、従業員一人ひとりが内容を理解し、「どう動けばいいのか」まで理解してこそ、真価を発揮します。
経営層だけが「計画内容を把握できていれば良い」という考えは避け、全従業員に浸透させるように努めましょう。
リーダーやマネージャーに指導を行う
全従業員に正しく中期経営計画の概要や要点を伝えるのは、なかなか骨の折れる作業といえます。
現場の隅々までしっかりと計画の意図や目標について情報を広めるには、各部署の「リーダー」や「マネージャー」の協力を得ることが欠かせません。
部署の責任者となるリーダーやマネージャーの口から中期経営計画の説明をしてもらうことで、すべての現場に情報が行きわたりやすくなります。
リーダーやマネージャーの協力を仰ぐことで、手間や労力の短縮につなげられるだけではなく、情報漏れを避けられるのも大きなメリットです。
そのためには、リーダーやマネージャーに対して計画の意図を説明し、情報共有のやり方についてきちんと教育を行う必要があります。
各部署に求められるのはどのようなことなのか、また目標や行動計画に合わせて動くにはどうすれば良いのか、しっかりとすり合わせを行いましょう。
きちんと現場レベルに合わせて指導することで、従業員の意欲を引き出し、無理なく行動に移しやすい状況を作れます。
せっかく立てた中期経営計画を無駄にしないためにも、部署ごとの責任者の力を借りて、現場に浸透させるための工夫を行うのが大切です。
予材管理を意識する
予材管理とは、目標の2倍の材料をあらかじめ仕込んでおき、事業目標を達成させるマネジメント手法のことです。
予材管理によって、経営課題を具体化することができ、継続的かつ安定的に事業目標を達成していく環境が整備できます。
また、目標未達成によるリスクを回避することもできるでしょう。
予材管理を正しく実施するために、人材面、新規事業と既存事業の3つの経営課題に対する対策が必要です。
具体的に人材面においては、「計画を実行するために、どのような人材をどの程度採用するべきか」、
「採用した人材や社内の人材をどう育成するべきか」などの計画を立て、積極的な採用活動・人材育成に取り組む必要があります。
新規事業を展開する際は、外部環境分析も踏まえ、現在の商材だけで仕込みが出来ない場合は、
新規事業や新商品の開発、商品構成の洗い直しを行っていきます。
また、新規事業の展開には大幅な費用がかかるため、既存事業で予材を増やし、利益を出す必要があります。
既存事業をさらに成長させるためにも、営業戦略やマーケティング戦略の見直しをしていきます。
中期経営計画を見直すべきタイミング
中期経営計画を策定後、見直しが必要となるタイミングとして、計画の達成時期に大きなズレが発生したときが挙げられます。
達成見込みのない目標や、達成してしまった目標を継続して掲げていることは、従業員にとっても、会社の業績にとっても意味がなくなってしまうためです。
また社内・社外環境に変化があったときも、中期経営計画を見直すべきタイミングです。
例えば代表取締役を含む上位役員の交代など、社内の変化をきっかけに中期経営計画を見直すことで、
役員、従業員間で社内状況を共有でき、社内一丸となって新たな計画達成を目指す一歩になるでしょう。
社外環境については、新型コロナウイルスの感染拡大や自然災害の発生により、事業の縮小や休業を余儀なくされた場合は、
中期経営計画の見直しは不可欠といえます。
ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変わる現代においては、このような社外の変化を見極めて、中期経営計画の見直しを検討することが重要です。
中期経営計画見直しの方法
中期経営計画の見直すことが決まったら、「一から作り直す」か「微修正を行う」のどちらかの方法で進めていきます。
中期経営計画に大幅な修正項目があるといった場合には、ゼロベースでの策定が望ましいでしょう。
一から全てを作り直す大きな変更となるため、策定の段階から全社員に説明をして、社内の混乱を招かないようにします。
特に社外の大きな変化に対応しなければならないときには、新たな方針を立てて、逆算した計画を再策定することが求められます。
微修正を行う場合には、新たに見込まれる顧客層のニーズに応えるためや、
これから不要になるであろう項目を削除する場合などに、計画の部分的な修正を行っていきます。
中期経営計画を立てて現状の課題を明確にしよう
中期経営計画を立てることで現状の課題を明確にすることができ、またイレギュラーな事態にも対応しやすく、
目標達成のために具体的な活動を行うことができます。
また策定した後に、全社員に共有して今後の方向性を定めたり、定期的に中期経営計画を見直しすることが大切です。
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