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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2020/11/13 21:48

経営

リテンションとは【人事戦略/働き方】

読了まで約2分

少子高齢化の進行による生産年齢人口の減少により、人材不足や人手不足に悩む企業が増えています。
「中途採用状況調査(2017年)」によると、人材の不足感のある企業は全体の64.3%に達しています。[注1]

人材不足・人手不足の解消は、新規採用や中途採用だけが答えではありません。
人材獲得競争が激化しつつある昨今、既存人材のリテンション(引き止め)に努めることが、人事戦略の要です。

本記事では、人事戦略におけるリテンションの必要性や、具体的な施策例を解説します。

[注1] マイナビ転職:中途採用状況調査(2017年)

リテンションとは?既存人材を維持・保持する人事戦略

人事用語のリテンションとは、優秀な人材を維持・保持(retention)するための施策の総称です。
少子高齢社会の進行により、生産年齢人口が減少する中、優秀な従業員を競合他社と奪い合う人材獲得競争が激化しています。

また、年功序列制度や終身雇用制度といった日本型雇用システムの崩壊により雇用の流動性が高まりつつあります。
従来の「従業員を採用したらそれで終わり」といった人事戦略では、通用しなくなってきているでしょう。

社員の待遇改善や職場環境の向上により、従業員満足度やエンゲージメントを高め、既存人材を社内にとどめるリテンション戦略が求められています。

リテンションはとくに中小企業で有効

既存人材のリテンションは、とくに人手不足・人材不足が深刻化している中小企業に必要な人事戦略です。

中小企業庁の「2019年版 中小企業白書」によると、事業所の従業員数と新規求人数は相関がみられます。
もっとも新規求人数が多いのが、従業員数1~29人の企業で、求人数は2009年以降19年連続で増加しており、2018年には日本全国で700万人を超える求人がありました。

次いで、従業者規模が30~99人の事業所も、2018年度の新規求人数が200万人を突破しています。
一方、従業員500人以上の大企業の新規求人数はもっとも少なく、1996年以降ずっと横ばいの状況であり、ほとんど増加していません。[注2]

このように従業員が少ない事業所ほど人手不足に陥っており、中長期的に事業戦略を遂行するためには、新規採用だけでなく既存人材のリテンションが必要です。

[注2] 中小企業庁:2019年版 中小企業白書

 

リテンションを行う2つのメリット

リテンションを行うことで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。
既存人材を引き止め、ナレッジやノウハウの流出を避けられるだけでなく、採用コストや育成コストの削減にもつながります。

1.ナレッジやノウハウの流出を防ぐ

優秀な人材の引き止めに失敗すると、社内のナレッジやノウハウが外部に流出し、企業競争力が弱体化します。
人材のリテンションにより、中核人材を社内にとどめれば、これまで蓄積してきた知識・スキルの水準を維持できます。

とくに従業員数が少ない中小企業では、事業の中核を担う人材が1人退職しただけで、事業継続が死活問題となるケースもあるため、優秀な人材のリテンションは急務です。

2.採用コスト・育成コストの削減

従業員が退職してしまうと、新たに採用や人材育成のためのコストが発生します。

たとえば、中途採用で人材の穴埋めを行う場合、人材紹介サービスを利用する場合は1社あたり平均で466.6万円です。
求人広告代理店を利用する場合は平均で294.2万円の採用コストがかかります。[注1]

優れた人材の引き止めに成功すれば、中途採用コストを始めとした多額の出費を抑制できます。

[注1] マイナビ転職:中途採用状況調査(2017年)

 

リテンションにつながる2つの施策例

それでは、具体的にどのような施策がリテンションにつながるのでしょうか。2つの施策例を紹介します。

1.ストックオプション制度を導入する

最初に、引き止めたい従業員に対し、金銭的報酬やインセンティブを与える方法があります。
給与の引き上げや、各種手当を始めとしたインセンティブのほか、近年注目を集めているのがストックオプション制度です。

ストックオプション制度とは、自社株の取得権を従業員に与えるインセンティブ制度です。
株式の取得価額(権利行使価格)は、ストックオプション付与時点で固定されるため、将来値上がりした時に金銭的な儲けを得られます。

会社の業績の向上が、ストックオプション制度での利益につながるため、従業員のワークモチベーションにも寄与する仕組みです。

2.ワークライフバランスの改善

ワークライフバランスとは、従業員が仕事とプライベートのメリハリをつけて働けるよう、職場環境を改善する施策を意味します。
とくに出産・育児を控えた女性社員や、家族の介護が必要な社員に対し、
仕事と家庭を無理なく両立できる働き方を提供することで、人材の引き止めにつながるケースがあります。

代表的な施策としては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としても注目を集めた
テレワーク・リモートワークや、残業・時間外労働の削減、年次有給休暇の取得促進を始めとした休暇制度の充実などが挙げられます。

 

中小企業は優秀な人材の「リテンション」を

中小企業を中心として、深刻な人材不足・人手不足がみられます。
既存の人材のリテンションに努めることで、社内のノウハウ・ナレッジの流出を防ぎ、さらには採用コストや人材育成コストを削減できます。
長期的な事業継続のためにも、ストックオプション制度のような金銭的報酬や、ワークライフバランスの改善を始めとした快適な職場づくりが必要です。

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