更新日:2022/03/07 11:38
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中小企業の働き方改革~『残業削減VS人手不足』問題、経営者は何をすべきか【経営/働き方改革】
読了まで約3分
目次
企業の働き方改革を実現してきた経営者の考え
サイボウズ:青野慶久社長
サイボウズの青野慶久社長は、中小企業の働き方改革についてこのようなコメントをしています。
「社員一人ひとりと向き合わない経営者に働き方改革はできない」
働き方改革により、労働時間の見直しや有給の取りやすい環境の整備などが必要となっています。
サイボウズでは社員の多様なニーズに応えるため、勤務時間や勤務地を社員が選べる制度を導入しました。
これにより多様な働き方ができるようになり、社員のモチベーションやロイヤリティといった生産性が上がっています。
同社が主戦場としているクラウド分野では、グローバルな環境の中激しい競争が行われています。
そんな中、サイボウズは、
「社員の幸福度を上げることにコミットしよう、そうすれば生産性も長期的な業績も上がる」という青野社長の考えのもと、
働き方改革を行い、効率や業績を伸ばしていきました。
一人ひとりの社員と向き合うことが働き方改革に対して大切だと述べています。
トリンプ・インターナショナル・ジャパン:吉越 浩一郎社長
10年以上前から働き方改革を取り入れていた経営者のひとり。
吉越社長は「働き方改革は、組織としての戦闘力を高める行為、下に丸投げしていては成功しない、題目で終わる」と言い、
経営トップが積極的に働き方改革に関与することが大切だと述べています。
また、組織としての生産性を高めるために、
「小さな仕事でも、いつまでに誰が何をやるかを明確に決める、デッドラインを必ず設ける、滅私奉公はさせないし、しない」とも言います。
これは誰が何をいつまでにやるかを明確することで無駄が排除され、仕事のスピードが増すことを期待しています。
守らないと中小企業も罰則対象、「働き方改革関連法案」とは?
「働き方改革関連法」は中小企業ももちろん対象となり、守らなければ罰則対象になります。
働き方改革関連法案のポイントは以下の3つです。
1.長時間労働の是正
2.多様で柔軟な働き方の実現
3.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
具体的には以下のような決まりとなっています。
1)労働時間法制の見直しについて
・残業時間の上限の規制
・年5日間の年次有給休暇付与の義務づけ
・高度プロフェッショナル制度の創設
・フレックスタイム制の拡充
・勤務間インターバル制度の導入(努力義務)
・労働時間の客観的な把握の義務づけ
・産業医・産業保健機能の強化
・月60時間超の残業の割増賃金率の引上げ
例えば残業時間の上限の規制では、
「月45時間、年360時間を原則として、臨時的で特別な事情がある場合でも年720時間、月100時間未満(休日労働含む)、
複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定する必要がある」
年5日間の年次有給休暇付与の義務づけでは、
「使用者は、年次有給休暇が10日以上付与される全ての労働者に対し、毎年5日、時期を指定して有給休暇を与える」となっています。
2)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
「働き方改革関連法案」ではパートタイム・有期雇用・派遣社員などの雇用形態に関わらない公正な待遇の確保が見直されました。
その中に「行政による助言・指導等や行政ADRの規定の整備」があります。
行政ADRとは、事業主と労働者の間に紛争が起きた時に、行政が間に入り、裁判をせずに紛争を解決する方法のこと。
今回の改定により、行政による助言・指導等や行政ADRの規制が、パートタイム・有期雇用・派遣社員に対して整備されました。
「働き方改革関連法案」の何が経営に支障があると考えているか
中小企業の経営者にとって「働き方改革関連法案」により経営にどのような支障があるのかが気になるところです。
実際に今回の関連法案による具体的な経営について、どのような支障が考えられるかを、
「エン・ジャパン」の「経営に支障が出そうな法案はどれ?」という企業アンケートを元にご紹介します。
1位:残業の上限規制
「終わらない業務を、サービス残業の増加で補う結果になってしまう」という回答が多数、寄せられています。
2位:有給取得の義務化
「そもそも人手不足であることが多い中小企業で、有給を取る人が増えると、一人当たりの労働時間が増え、賃金の上昇に繋がる。
結果、経営を圧迫する」といった意見もあります。
3位:同一労働、同一賃金
「労働費の上昇が起きてその結果、経営を圧迫する」といった懸念の声が上がっています。
以上のアンケート結果から読み取れることは、
働き方改革を導入するにしても、会社自体の体制が整っていないということです。
そして、改革の本質を見ないで取り組みを開始しても、会社は上手くいきません。
まず残業の上限規制です。「働き方改革=労働時間削減」という発想で、「残業NG」「18時には退社」と号令を発してしまうとします。
こういった取り組みが招く結果は目に見えています。
残業を削減したところで、社員が抱えている仕事量は変りません。
よって、定時に退社したとしても、自宅に仕事を持ち帰ることになります。
あるいは帰宅途中の喫茶店でパソコンを叩いたりしているかもしれません。
だから単に退社時間を早めさせるだけでは、裏側で社員はサービス残業を行っているという状況になりかねません。
有給取得の義務化についても同様です。
いくら社長が「有給を取得しなさい」と言っても、社員は「私がやらないと終わらないんだから」といって、休んだことにしながら、
実際は出社して仕事をするでしょう。
また、そもそも忙しくて有給取得どころではない環境では導入したところで何も変わりません。
これが「働き方改革」を導入しても上手くいかない会社の典型的な例です。
「うちの会社は残業の禁止、有休取得を社員に徹底させてています」なんていう会社ほど、裏で社員が帳尻合わせをさせられている。
これでは無意味どころか害悪です。
そこで必要になってくるのが、「働き方改革」の本質を考えることです。
つまり、“生産性の向上”です。
どうしてかと言うと、改革をいくら進めようと取り組んでも、仕事量もそれに合わせて減ってはくれません。
同じ仕事量を今までよりも短時間でこなす為にも、社員一人ひとりの能力を高めなければならないからです。
中小企業の働き方改革、経営者は社員に目を向ける良い機会
「働き方改革関連法」は会社の規模に関わらず、働く人々が、それぞれの事情に応じたて多様な働き方を実現する社会のための法案になります。
中小企業の経営者は、この先、多様な働き方や、今まで目を向けてこなかった問題・課題の解決について、
社員一人ひとりと向き合うことが求められるでしょう。
今回施行される働き方改革により、一人ひとりの働き方が変わることで、経営者はより社員と向き合いながら意思決定を行っていく必要があります。
労働者にとって働きやすい労働環境になることには、生産性やモチベーションの向上など、様々なメリットが考えられます。
その為にも、職場の問題解決が必要となってくるのです。
中小企業にとって課題である人員不足の解消に職場の環境や雰囲気を整え、職場を良くすることで社員の離職率改善も期待できるでしょう。
また、先程も述べたように、中小企業の課題は人員不足です。社員を増やすことよりも、社員が辞めないようにすることが大切です。
辞めずに働き続けてくれれば社員のスキルも上がってきます。そういった社員の為にも、社員教育にも力を入れることが必要なのです。
さらに働き方改革により、多様な働き方が可能になることで、経営の多様化も始まります。
今回の「働き方改革関連法」は、社長と社員の両社がこの先のより働きやすい社会の実現のため、改めて中小企業の経営者と社員が向き合う良い機会なのです。
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