更新日:2023/08/22 10:45
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タイムマネジメントはなぜ必要?メリットや成功のコツなど詳しく解説
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国をあげて働き方改革が推進され、長時間労働が是正されている昨今では、タイムマネジメントの重要性が高まっています。
社員がタイムマネジメントスキルを身に付けると業務効率化を図り、組織の生産性を高めることができるのです。
社内でタイムマネジメントの考え方を浸透させ、生産性に対する意識を高めるにはどのような方法があるのでしょうか。
この記事では、タイムマネジメントの基礎知識にはじまり、タイムマネジメントを社内に浸透させる手順や方法について解説します。
目次
タイムマネジメントとは
まずは、タイムマネジメントの概要や注目される背景について紹介します。
タイムマネジメントの意味
タイムマネジメントとは、業務において時間の使い方を改善し、業務効率や生産性を向上させる時間管理のビジネススキルです。
タイムマネジメントスキルを身に付けることで業務時間を計画的に使用でき、よりスピーディに成果をあげられるとされています。
時間管理というものの、1日24時間という時間は皆平等に与えられており、管理できません。
つまりタイムマネジメントとは、行動のマネジメントのことです。
業務時間の管理という意味では、スケジュール管理という言葉もよく耳にするでしょう。
よく似た言葉ですが、これは1日のスケジュールを予定通り進行し、漏れなくタスクを遂行することを目的としています。
一方、タイムマネジメントは、コア業務に注力する時間を増やすことで目標達成までの道のりを短縮することに意義をおいています。
例えば、厳重にスケジュール管理を行っていても「ルーチンワークだけで1日が終了してしまった」という事態はよく起こるものです。
タイムマネジメントによって時間の使い方をコントロールできるようになれば「ルーチンワークにかける時間を短縮し、空いた時間で改善活動を行う」といった働き方ができるようになります。
タイムマネジメントが必要とされる背景
タイムマネジメントが注目されるようになった背景として、少子高齢化による労働力人口の減少により、企業活動における生産性の向上が必要不可欠になったことがあげられます。
日本の労働力人口は1995年をピークに、それ以降は減少の一途を辿っています。
2013年に約8,000万人だった労働力人口は、2060年には4,418万人と約半数となる見込みです。
生産力の低下は避けられないことから、労働市場において生産性向上の重要性が高まっているのです。
その一環として国が推進しているのが、働き方改革です。
過重労働による負担増加は出生率低下にも影響することから、長時間労働の是正などが盛り込まれた『働き方改革関連法案』が2019年に施行され、国をあげて、働きやすい環境づくりが推進されています。
労働時間を適正に保ちながら、今まで以上の生産性を求められる状況になったことから、成果をコントロールするタイムマネジメントの重要性が高まっているのです。
タイムマネジメントの考え方は、これまで時代に合わせて変化してきました。
考え方の変化については、リーダーシップ論の権威、故スティーブン・R・コヴィー博士の著書『7つの習慣』で詳しく書かれております。
タイムマネジメントで得られるメリット
タイムマネジメントを身に付けることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
代表的な3つのメリットを紹介します。
仕事の効率化
タイムマネジメントでは、着手前に必ず持っているタスクの棚卸しを行います。
すべてのタスクに優先順位を設定することで、より重要度の高いタスクに多くの時間を割り振ることができるのです。
単に持っている仕事を順番にこなすのではなく、コア業務に注力できるよう全体を俯瞰して計画を立てることで、業務の効率化を図ります。
全体が俯瞰できるようになるため、先を見通して仕事を進める能力も向上します。
個人だけでなく、チームマネジメントでも役立てられるスキルです。
コストの削減
業務プロセスの効率化が進むと、社員の総労働時間を短縮することも可能です。
残業にかかっていた人件費やオフィスの光熱費などのコストカットになり、結果的に経営全体の効率化にもつながります。
また、残業時間が減ると社員の満足度が向上するため、離職率の低下も期待できるでしょう。
採用費や新人の育成にかかる費用の削減にもなり、さらなるコストカットが見込めます。
従業員の仕事に対するモチベーションの向上
長い時間残業し、身を粉にして働くような、いわゆる『モーレツ社員』が美徳とされた時代とは異なり、現代はプライベートとの両立を重視する社員が増えています。
タイムマネジメントが浸透すれば、適正な労働時間を維持し、家庭や趣味にかける時間や自己研鑽に使う時間を増やすことができます。
プライベートを大事にできる働き方は、社員のエンゲージメントを向上させ、仕事に対するモチベーションアップ向上にもなります。
結果的に、企業の業績向上やイメージアップにつながるでしょう。
タイムマネジメントの方法と手順
企業でタイムマネジメントの考え方を浸透させるにはどうしたらいいのでしょうか。
タイムマネジメント術を自分の業務に落とし込み、身に付けさせる方法と手順を解説します。
1.行動管理をおこなう
タイムマネジメントを行う際、まず最初に取り組むことは、優先度の高いタスクや成果をあげるために重要なタスクに多く時間を割く行動管理です。
計画的にタスクをこなして目標達成までの時間を短縮することを目的としており、タイムマネジメントの前提作業といえます。
具体的には、組織や個人が抱えているタスクや目標達成に必要なtodoをすべて書き出します。
タスクの全容を把握していないと、重要度の低いタスクやすぐにやる必要のないタスクに時間を使ってしまい、非効率になってしまうためです。
すべてのタスクを漏れなく洗い出すことを重視してください。
タスクの洗い出しには、エクセルやtodo管理ツールなどを使用することがおすすめです。
次の工程にスムーズに移れるよう、タスクの分類ができるツールが望ましいといえます。
2.優先順位をつける
つぎに、洗い出したタスクに優先順位を設定します。
優先順位は『重要度』と『緊急度』の2軸で検討するといいでしょう。
縦軸に重要度、横軸に緊急度を配置し、マトリックス表にしてタスクを分類する方法です。
重要度も緊急度も高いタスクを『優先度:高』、重要度は高いが緊急度は低いタスクを『優先度:中』といった形で分類を行います。
優先順位を可視化することで、優先度の高いタスクに集中して時間を使えるようになります。
また、すべてのタスクを自ら処理するのが理想的ですが、現実はなかなかそうもいきません。
優先順位が低い業務や自分がやらなくても良い仕事は、他の人に任せられないか、アウトソーシングできないかを検討するのも一つの手です。
3.目標を設定する
タスクに着手する前にいつまでに、どのくらいの達成度でおこなうのかについて目標を設定することも重要です。
たとえば、単に提案書を仕上げるといった目標を立てるのではなく、「○日AMまでに7割完成させ、一度リーダーへ確認に出す」など具体性のある目標を目指してください。
定量的な数値や期日が設定されていたほうが詳細な行動プランを立てることができます。
目標を設定したら、細分化して行動プランに落とし込みます。
「明日までに15ページの提案書を完成させる」という目標を立てたとすると「5時間は作業時間を確保できる」「期日までに完成するには、1時間で3ページ作成を進める必要がある」といった形です。
4.実践する
目標を行動プランまで落とし込んだら、あとは実践するのみです。
最初は日頃の業務で目標設定をすることが煩わしく感じるかもしれませんが、行動プランへの落とし込みができていれば普段よりスムーズに業務を遂行できるようになります。
想定通りにタスクが進まなかったとしても、すぐに計画を修正するのはおすすめしません。
後の振り返りに活かすために、まずはプラン通りにタスクを進めましょう。
5.振り返る
計画を実行したら、結果を振り返る時間をとるようにしてください。
当初の行動プランと結果の差異を把握し、どこまで実践できたか、そもそも目標設定に無理はなかったか、どこにボトルネックはあったのかといった点を検討します。
振り返りを行うことで、目標達成への手順や方向性を軌道修正することができます。
手順に問題があったとしても、振り返りによって行動を修正し、次回の目標設定をよりブラッシュアップできます。
そのため、振り返りはこまめに実施することがおすすめです。
毎日の終業後に10分、週末に30分など、定期的に振り返りの時間を確保するといいでしょう。
タイムマネジメントのフレームワーク
タイムマネジメントが捗るフレームワークをいくつかご紹介します。
・ロジックツリー
タイムマネジメントを行う際、最初にやる業務フローやプロセスを洗い出すのに便利なのがロジックツリーです。
本来ロジックツリーは課題を解決したり問題を分析したりするために利用することが多いですが、業務の見える化にも活用できます。
・アイゼンハワーマトリクス
アメリカ第 34 代大統領であるドワイト・D・アイゼンハワーが時間管理をする際に行っていたことで有名なフレームワークで、緊急度と重要度で4象限に分類するマトリクスです。
・緊急度・重要度ともに高い業務
・緊急度が低いが重要度が高い業務
・緊急度が高いが重要度が低い業務
・緊急度・重要度ともに低い業務
という4つに分類し、「緊急度・重要度が高い業務」を優先的に処理します。
・SMARTの法則
業務の目標や締切を具体的に設定する際にSMARTの法則が役立ちます。
SMARTの法則を活用することで、具体的に各業務の目標を定めていけるでしょう。
1981年にジョージ・T・ドランが発表した目標設定法で、目標達成を実現させるために欠かすことのできない以下の5つの成功因子で構成されています。
・S(Specific=具体性):漠然とした内容ではなく、具体的な内容にする
・M(Measurable=計量性):数値化して計測できるようにする
・A(Achievable=達成可能性):理想を高くしすぎず、達成可能な範囲で設定する
・R(Relevant=関連性):目標達成の要素などの関連する内容を把握する
・T(Time-bound=期限):期日を明確に定める
・HIROEN
SMARTの法則によってそれぞれのタスクを決めたら、次にHIROENのフレームワークでタスクを分解します。
HIROENによって分解することで、どのくらいの工数がかかるのか、関連する人や業務はないかなどを理解でき、抜け漏れが生じないようにできます。
・H(Hear=聞く):誰かに聞くべきことはないか
・I(Inform=知らせる):誰かに報連相をする必要はないか
・R(Request=頼む):誰かに依頼することはないか
・O(Operate=作業する):作業しなければいけないことはないか
・E(Examine=調査する、検討する):調査や検討の必要はないか
・N(Negotiate=交渉する):誰かに交渉すべきことはないか
タイムマネジメントのスキルアップには研修がおすすめ
タイムマネジメントの手順を全社へ浸透させるには、研修の実施が効果的です。
慣れるまでは少し面倒に感じる部分もあるかもしれませんが、獲得できればあらゆる業務に応用できるスキルです。
業務プロセスの効率化や生産性の向上を課題に感じている企業は、研修の実施を検討してみてください。
研修で得られる効果
社員がタイムマネジメントを習得すると、達成感や自己肯定感を持ち、より前向きに仕事に打ち込むことが期待できます。
タイムマネジメントの実践によって、より効率的に業務目標を達成できるようになるため、成功体験を積みやすくなるのです。
その結果、仕事に対する自信が生まれ、やりがいや意義を見出せるようになります。
また、ワークエンゲージメントの向上も期待できます。
ワークエンゲージメントとは、仕事にやりがいを感じて、いきいきと働いている状態のことです。
社員のパフォーマンスが最大化するため、組織全体の生産性や業績の向上にもつながるでしょう。
研修の方法とポイント
研修では、まず社員に現状のタイムスケジュールを書き出してもらい、どのタスクにどのくらいの時間をかけているのか可視化するところから始めてください。
現状のタイムマネジメントに問題があることを社員が自覚しなければ、そもそも研修に意義を感じてもらえません。
課題を共有した上で手順や方法を示したほうが、研修の効果を高めることができるのです。
また、研修にグループワークを導入しても効果的です。
一方的に講義を受ける形では社員が受け身になってしまい、実行に移さないまま終わってしまう可能性もあります。
グループワークでタスクの分類作業を行ったり、発表したりする時間をとると、主体性が生まれ、よりスキルが定着しやすくなります。
タイムマネジメントスキルは企業の生産性の向上につながる
働き方改革により長時間労働が是正され、生産性向上が急務となっている現代においてタイムマネジメントは重要なビジネススキルのひとつです。
社員がタイムマネジメントを身に付けることで、個人が成果を出せるようになるだけでなく、業績向上や経営全体の効率化を期待できます。
まずは経営層がタイムマネジメントについて学び、社内に浸透させる方法を検討することが大切です。
生産性や経営コストに課題を感じているなら、経営計画の見直しを図る必要があるかもしれません。
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