中小企業の業績を最短距離で伸ばすなら株式会社武蔵野の経営コンサルティング

株式会社武蔵野経営サポート事業部

MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/08/25 14:24

人材育成

働き方

ドイツ発祥のマイスター制度とは?日本で広がる背景・制度の特長を紹介

読了まで約3分

少子高齢化に伴い、若手人材の確保がますます困難になる日本では、社内人材の教育や技術力向上を課題とする企業も多いでしょう。
そんな中、専門技術やノウハウの伝承を目的として日本でもスタートした制度が「マイスター制度」です。

この記事では、ドイツ発祥のマイスター制度の概要やメリット・デメリット、日本版マイスター制度の特徴や導入事例などを紹介します。

ドイツのマイスター制度とは

マイスター制度とは、高い専門技術を持った人材に資格を与え、支援・育成するための制度です。

そもそも、マイスターとはドイツ語で「名人」「巨匠」を指す言葉で、専門的な技能や知識、豊富な経験を持った人物のことを「マイスター」と呼びます。
ドイツ発祥のマイスター制度では、一定の技術や知識を持ち、国家試験に合格した人物をマイスターとして認定し、手当の支給や優遇措置を図ります。
また、自身の技術研鑽だけでなく後輩の指導にあたることで技術の継承を目指します。

日本と同様にものづくり大国であるドイツにおいて、後継者不足や伝統技術の断絶といった課題の解決を目指して開始された制度です。

ゲゼレとは

ドイツのマイスター制度では、「ゲゼレ(Geselle)」という国家資格の取得が必須です。
ゲゼレは「職人」の意味を持つ言葉で、見習い期間を経て国の試験に合格すると、特定分野のスペシャリストとして認定されます。

ゲゼレを取得するには、義務教育を終えた後に3年~3年半の間「デュアルシステム」という教育システムの中で、職業訓練を受ける必要があります。
デュアルシステムは座学と実習を組み合わせた制度で、例えば週1~2日学校へ通い、3~4日は職人のもとへ通って実習を重ねるといったプログラムを受けながら技能の習得を目指します。

職業訓練中は雇用主と職業訓練契約を結びますので、その間も労働費として毎月手当を受給できるのが特徴です。

ドイツと日本の教育制度の違い

マイスター制度の背景には、本人の特技や好きな分野を伸ばそうというドイツの教育制度があります。

ドイツの教育制度は各州によって異なりますが、基本的には6歳から4年間基礎学校に通い、その後は本人の進みたい道に合わせて、職業訓練を受ける「ハウプトシューレ」、上級専門学校の「レアルシューレ」、大学進学希望者が進む「ギムナジウム」へと進路が分かれます。

画一的な義務教育を受ける日本と大きく異なるのは、9歳の時点で大学に進学するのか、職業訓練を受けるのか決定する点です。
本人の志向や特性に合わせて、早期から「手に職を付ける」という視点での教育が可能になっています。

マイスターの対象業種

ドイツのマイスター制度で取得できる資格は「手工業マイスター」と「工業マイスター」の2種類に分けられます。

「手工業マイスター」には、製パンや酒造、木工家具など94種類の資格が含まれます。
そのうち41種類は開業にマイスター資格が必要であり、自営業や工房などで勤務する人が多いのが特徴です。

「工業マイスター」には情報技術者や自動車整備士、電気設備士といった300種類以上の職種が含まれます。
比較的新しいジャンルが多く、資格取得後は企業に勤める人が多いです。

 

マイスター制度が注目される背景

少子高齢化が進む日本では、多くの企業や工房で後継者不足問題を抱えています。
若手労働者の確保が困難になっており、特にものづくりや伝統工芸分野において技術や文化を受け継ぐ人が不足しているのです。

後継者が不足すると日本の伝統技術の断絶に繋がりかねず、文化の衰退などが懸念されています。
そこで、ドイツ発祥のマイスター制度を日本でも取り入れ、技術を継承しようとする動きが加速しています。

 

日本のものづくりマイスター制度とは

前述した背景から、日本でも若者のものづくりや技術者の育成を目的として「ものづくりマイスター制度」がスタートしています。

「ものづくりマイスター制度」は、厚生労働省が制定した制度で、中小企業や学校などで若手人材に実践的な指導を行い、技能や知識を得た人材を「ものづくりマイスター」として認定します。
認定されたマイスターは企業や工業高校などに派遣され、従業員や学生に対して技術指導を行って後進を育成します。

2022年には、ものづくりマイスターに「ITマスター」「テックマイスター」が統合され、ものづくりを広くとらえた新しい制度がスタートしました。

 

マイスター制度のメリット

日本でも推進されているマイスター制度には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
企業が導入する3つのメリットを紹介します。

後継者を育成できる

最も大きなメリットは、後継者の育成を促進できることです。

高い技術を持った熟練者は、普段の業務が忙しく後継者の採用や育成に十分な時間を割けないケースが少なくありません。
マイスター制度では、資格を取得した技術者は後進を指導する仕組みになっています。
国の支援を受けながら、中小企業や学校に技術指導を行い、組織的に後継者育成を行えるのです。

属人的な技術を伝承できる

マイスター制度を導入すると、マニュアル化されていない伝統的な技術を効率的に承継できるというメリットもあります。

特に伝統工芸などの職人の世界では「師匠の背中を見て技術を盗む」という価値観が強く、技術や技能が属人化しがちです。
伝統工芸以外にも、建築業や製造業など繊細な技術が必要な業界では、マニュアル化していないノウハウが多く存在します。
マイスター制度を導入すると、組織的な技術承継が可能になるため、これらの技術をわかりやすく正確に承継することができます。

技術力の高い人材育成ができる

マイスター制度を活用して高い技術力を持った人材が増えれば、組織内の生産性アップや業績の向上が期待できます。

マイスター制度では、資格を取得した熟練の職人から技能やノウハウを承継できます。
特定のスキルや経験がなければ依頼できなかった仕事でも担当できる人員が増え、生産量やクオリティの向上を目指すことが可能です。

 

マイスター制度のデメリット

メリットの一方、マイスター制度には一定のデメリットがあることも理解しておきましょう。

技能・職種の種類選別が必要になる

マイスター制度は多様な技術や技能に適用できますが、制度を効果的に活用するには適用する職種の選別が必要です。
マイスター制度は専門的な技術やノウハウの承継に適した制度であり、マッチしない職種に適用しても費用やコストが無駄になってしまいます。

社内にある全ての職種に対して闇雲に制度を適用するのではなく、各職種の特性を見極めて総合的に判断する姿勢が大切です。

イノベーションを阻害する

伝統的な技術を正しく承継することは重要ですが、昔と全く同じ手法にこだわりすぎると新しい技術が生まれなくなってしまうという側面にも注意が必要です。

マイスター制度はすでにある技術やノウハウの承継を目的とした制度ですので、新しい技術の創出は前提としていません。
既存技術を承継しつつ、新しい情報を常に取り入れながらイノベーションを起こす働きかけも同時に行うようにしましょう。

モチベーション低下につながる

マイスター制度を利用して資格を得るためには、膨大な時間やコストがかかります。
技術習得のための実習だけでなく、知識を身に付けるための座学や試験勉強など、本人の高い意欲が必要です。

時間をかけたにもかかわらず、認定制度に落ちてしまったり、後継者候補として選ばれなかったりすると、モチベーションの低下を招く可能性があります。
制度利用者への手当や資格取得後の昇給・昇格など、資格取得に対する動機付けがあるといいでしょう。

 

ものづくりマイスター制度の導入事例

ここでは、「ものづくりマイスター制度」を利用して実際に技術者の育成に成功した企業事例を紹介します。

髙島電機 株式会社|機械・プラント業

電気機器とその周辺の製品を提供する髙島電機では、機械設計の専門家を育成するために「ものづくりマイスター制度」を導入しました。
主軸である電気部品だけでなく、機械に関しても一定の技能と知識を持ったエンジニアを育てることで、取引先のさらなる信頼と満足を得ることを目指しました。

派遣されたマイスターは、初歩的な内容から実際の仕事に活かせる知識まで、受講者1人ひとりの力量に合わせて指導をしてくれたといいます。
その結果、以前は、機械設計に対して苦手意識のあった従業員でも、素材や加工、CAD操作など一定の知識と技能を身につけることができています。

株式会社 Kei’s 堺営業所|造園業

造園会社であるKei’sの堺営業所では、技術指導体制の整備も含めた社内全体のレベルアップを目指して「ものづくりマイスター制度」を取り入れました。

造園の世界では先輩が後輩に教えるOJT型の指導が中心ですが、マイスター制度ではOff -JT型の指導を取り入れて社内教育の幅を広げたといいます。
未経験者の技能訓練だけでなく、社内教育を担当する指導人材の育成も視野に入れたことで、技能教育の多様化につながっているそうです。

 

後継者育成にマイスター制度を活用しよう

後継者不足が課題となる日本では、ドイツのマイスター制度を手本とした「ものづくりマイスター制度」がスタートしています。
マイスター制度を活用すると、若手技術者の育成だけでなく、社内全体の技術力アップや生産性向上が期待できます。
社内に対象となる業務がある場合には、活用を検討してみましょう。

マイスター制度に限らず、社内の育成制度や人事制度などの改革を検討している場合には、武蔵野の経営計画書がおすすめです。
経営計画書は経営者の理念や経営方針を社員に浸透させるツールで、制度設計のヒントが数多く散りばめられています。
今なら無料でダウンロードできますので、ぜひあわせてご確認ください。

武蔵野のサービスに
ご興味が出てきた方

CONTACT