更新日:2023/12/26 09:30
経営
みなし残業(固定残業)が違法となるポイントとは?企業にメリットはある?
読了まで約2分
みなし残業とは、賃金の中にあらかじめ一定時間分の残業代が含まれていることを指します。
このみなし残業制度を導入している企業は、特にベンチャー企業に多いです。
過重労働や違法な残業などネガティブなイメージを抱かれてしまうこともありますが、本記事では正しく運用するコツや違法となる場合のポイントなどをお伝えします。
目次
みなし残業(固定残業)とは?
みなし残業(固定残業)とは、賃金の中にあらかじめ一定時間分の残業代(時間外手当)が含まれていることを指します。
例えば「月20時間の残業代を含む」などと雇用契約書に記載されている場合、月20時間までの残業代は固定給として支払われます。賃金とは別に残業代として支給はされません。
しかし、決められた残業時間を超えて残業をした場合には、超過分の残業代が別途支払われます。
また、みなし残業代は実際の残業時間の有無にかかわらず支払われるため、残業をしていなくても決められた分の残業代が支払われます。
こうして事実を記載すると違法性があるように感じますが、条件を満たしていれば違法ではありません。
労働基準法の要件を満たしていれば、どの企業でもみなし残業時間制を導入でき、会社独自の就業規則も設定することが可能です。
企業がみなし残業を取り入れるメリット
みなし残業制度の導入によって、企業にはどんなメリットがあるのか解説します。
残業代を計算する手間が省ける
定めた時間内であれば、残業時間が何時間でも別途の残業代が発生しないため、社員個々の毎月の残業代計算をする必要がありません。
それにより、業務の効率化を図ることができます。
人件費の見通しが立ちやすい
残業代が毎月固定となるため、給与額の大幅な変動を抑えることができます。
企業にとって大きな支出となる人件費を把握でき、年単位の人件費の見通しが立てやすくなります。
従業員の業務効率が上がる
残業をしなくても残業代が受け取れるので、お金を稼ぐために長時間残って残業をしようと考える従業員が減ります。
定時に上がれるよう仕事を効率的に進めるなど、社員の意欲向上につながります。
みなし残業が違法となるパターンとは?
企業にとってメリットのあるみなし残業制度ですが、一般的には違法ではありません。
しかし状況によっては違法となりうる制度です。
一つひとつ確認していきましょう。
実労働時間がみなし残業分とかけ離れている
残業時間がみなし残業で設定されている時間内に収まっているのであれば問題ありませんが、
みなし残業分と比較して明らかに残業時間が多い場合、違法となる場合があります。
みなし残業時間と労働時間がかけ離れている場合、会社は労働者に対して残業代を支給しなければなりません。
ただし、超過分がしっかりと支払われていれば問題ありません。
基本給にみなし残業代を含めている
悪質な企業は、求人票や給与明細などでみなし残業代を基本給に含めて記載します。
厚生労働省では、固定残業代制度(みなし残業代制度)を採用する場合は、募集要項や求人票などに、
以下の①~③の内容をすべて明示するように定めています。
①固定残業代を除いた基本給の額
②固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
③固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
上記が明文化されていない求人には注意が必要です。
各種手当を残業代だと偽っている
「残業手当」「役職手当」「業務手当」「職務手当」など、給与明細に上記のような項目がある場合は要注意です。
これらのことを一般的に「固定手当」と言い、毎月の給与に含まれている様々な手当です。
もしこれらについて会社から「残業代の代わりだ」と言われているようであれば、違法になるケースが多いようです。
上記のような手当を残業代という扱いにして、一律の金額で手当として支払うのは、グレーとなります。
みなし残業時間が異常に長い
三六協定で許されている45時間までの残業を超える残業を常に想定しているみなし残業制度は、違法になる可能性があります。
特に月80時間を超えるようなみなし残業制度は、過労死との関連性が強いとされて違法になる可能性が非常に高いです。
みなし残業が違法なものだった場合の対処法
上でご説明した中で、「自分の会社があてはまる!」といった方もいらっしゃったのではないでしょうか。
あてはまる場合には、あなたの会社のみなし残業制度は、違法になっている可能性が高いです。
そうした場合、どういった対処を取ればいいのでしょうか。現実的に行える方法をご紹介します。
賃金の支払われない労働はしない
みなし残業分を明らかに超過して働いたのに残業代が支払われなければ、残業を拒否することができます。
「賃金が支払われない労働はしない」という姿勢を取ることは、労働者の権利です。
仕事はボランティアではありません。メリハリをしっかりつけ、賃金の発生しない残業は行わないようにしましょう。
残業代を請求する
みなし残業で残業代が支払われていない場合は、未払いの分を会社に請求することができます。
ただし、2年で時効となってしまうので、請求する場合は早めに行動してください。
また、未払いの残業代を請求する場合は証拠を残しておくことをおすすめします。
①タイムカード
②会社のパソコンの利用履歴
③業務日報
④運転日報
⑤FAX送信記録
⑥シフト表
上記のようなものが証拠として有効です。
悪質な履歴を会社は消してしまう場合があるので、自分の身を守るためにも、半月分でも構わないのでコピーをしたり
写真に撮って記録を残したりしておくようにしましょう。
弁護士に相談する
例えば自分一人で会社に立ち向かったとしても、会社には社労士や弁護士がついているため、とり合ってくれないことも多々あります。
そんな時は、弁護士に相談するのも手です。みなし残業代制について違法性を主張し、本来の残業代を支払ってもらうために有効な手段です。
ただし、弁護士に依頼した場合、可能性はあまり高くありませんが、長期戦になりあなたの負担が増してしまう場合も考えられます。
弁護士に相談するのは大げさでちょっと気が引ける……という方は、まず企業の環境整備を請け負っているコンサルティング会社に相談するのもいいかもしれません。
解決が難しい場合はプロに相談しよう
先述した通り、会社には社労士や弁護士がついているため、自分で会社に申し立てし、
会社と一人で戦うことはかなり労力を使いますし、そもそも軽くあしらわれてしまうことがほとんどです。
「弁護士に相談するのは大げさな感じがするし、お金もすごくかかりそう……」という心配が拭えないのもわかります。
そんな時は、会社の経営や環境を正しい方向へ導いてくれるコンサルティング会社に相談するのもひとつの手です。
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