更新日:2023/12/19 10:20
経営
ミッション ビジョン バリューとは?企業に必要な理由や作り方について解説
読了まで約4分
企業は、経営によって実現したい目標や方向性、社会に対する提供価値などを持っています。
それらを端的に表現し、わかりやすく言葉にしたものがミッション ビジョン バリューです。
ミッション ビジョン バリューが社内に浸透していると、社員のモチベーションアップや採用活動にも役立ち、企業の成長を促進することができます。
本記事では、ミッション ビジョン バリューの意味や必要性、具体的な作り方やポイントについて解説します。
目次
ミッション ビジョン バリューの定義と意味
ミッション ビジョン バリューは、企業における経営方針のひとつです。
基本的には、社員や顧客が直感的に理解できるよう、平易な言葉でわかりやすく表現されます。
ミッション ビジョン バリューを提唱したのは『マネジメント』や『現代経営学』でお馴染みの経済学者、ピーター・F・ドラッカーです。
2003年に発売された著書『Managing in the Next Society(ネクスト・ソサエティ)』の中で、その必要性について言及しています。
ドラッカーは、グローバル化が進む今後のビジネス市場において、事業の正当性や存在意義を示すことが企業の最大の課題になると述べました。
そのための手段として、ミッション ビジョン バリューが必要になるとしています。
ミッションとは
ミッションは、企業が目指す目的や使命、経営理念のことです。
企業の根幹を成すものであり、基本的に途中で変化するものではありません。
ドラッカーは、多くの書籍の中で繰り返しミッションの重要性を説いています。
その中で、組織が最初に取り組むべき仕事として「組織のリーダーがミッションを考え、定義することである」と言及しています。
ビジョンとは
ビジョンは、中長期的な到達目標です。
ミッションを具現化した将来像や数値目標といった形で設定されます。
ミッションを叶えた後の姿を社員に共有し、向かうべき方向性を具体的に提示することで、求心力を強化できるのです。
ミッションと異なり、ビジョンは経済状況や市場変化に応じて変更されることがあります。
リーマンショックやコロナ禍による社会情勢の急激な変化があった際には、多くの企業でビジョンの変更が行われています。
バリューとは
バリューは、ミッションやビジョンを実現するための具体的な行動指針です。
企業によっては社員が日常的に意識し、発揮すべき価値のことでもあります。
ミッションやビジョンは企業の根幹を成す要素ですので、起業直後に取り決めることが一般的です。
また、バリューは途中で見直されることも多く、ミッションやビジョンが変化すれば見直しが必要になるでしょう。
ただし、社員の行動指針として定着している場合、ミッションやビジョンが変化しても、バリューは変わらないというケースもあります。
ミッション ビジョン バリューモデルは、それぞれの企業ニーズに合わせた対応が必要です。
ミッション ビジョン バリューを桃太郎の昔話に例えた場合
具体的な事例として、村の平和を脅かす鬼を退治するために旅に出る昔話『桃太郎』の内容から、ミッション ビジョン バリューを考えてみましょう。
まず、桃太郎が達成すべきミッションはなんでしょうか。
普遍的な目的や旅の意義がミッションとなりますので「村の平和を取り戻すこと」がミッションになるでしょう。
中には「鬼を倒すこと」がミッションと考えた人もいるかもしれません。
しかし、それは鬼を倒したら終了するタスクであり、村の平和を揺るがす別の存在が現れたら変更される目的です。
永続的な指標とはいえないため、ミッションにはなり得ないのです。
「鬼退治をすること」は、「村の平和」というミッションの達成に必要な中長期の目標ですので、ビジョンといえるでしょう。
さらに、このビジョンを達成するための「仲間を集めて力を合わせる」「それぞれの特技を活かす」という具体的な行動指針がバリューに該当します。
ミッション ビジョン バリューが企業に必要な理由
多くの企業がミッション ビジョン バリューを掲げていますが、それにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
続いては、ミッション ビジョン バリューの必要性を考えてみましょう。
会社としての判断基準を明確にできる
ミッション ビジョン バリューを掲げることで経営判断や事業判断の基準が明確になり、スピーディな意思決定が実現するというメリットが挙げられます。
企業の経営とは、意思決定の連続です。
製品開発や市場の選択、採用や人員配置など、組織運営に関する様々な判断を日々繰り返さなければいけません。
しかし、経営者の主観で判断を行うとブレが生じる可能性があります。
ミッション ビジョン バリューが定まっていれば、判断基準が明確になり、一貫した経営活動ができるのです。
また、経営者だけでなく社員にとっても行動や選択がしやすくなります。
日頃の業務で判断に迷った際にもミッション ビジョン バリューを指針にできるからです。
個人に対して公平な人事評価を行える
ミッション ビジョン バリューによって行動基準が明確になると、人事評価の公平性の向上にもつながります。
人事評価の基準を定めるためには、「社員にどのようなミッションを達成してもらいたいのか」「そのために、どのような行動を求めるのか」を明確にする必要があります。
そのため、まずミッション ビジョン バリューが定義されていることが大切です。
人事評価の公平性は社員のモチベーションや組織の関係性に直結します。
したがって、モチベーションが低下したり、社員の関係性に亀裂が入ったりすると生産性の低下につながる可能性があります。
どのような基準で人事評価を行っているのか明示することは、経営にとっても重要事項と言えます。
会社として目指す目標を浸透できる
ミッション ビジョン バリューがあることで社員が目指す方向性を統一し、組織力を強化できるという点もポイントです。
会社の成長には、日々業務を推進する社員の存在が必要不可欠です。
しかし、毎日業務をこなしていると、ただ作業をこなすだけになってしまい、やりがいを感じにくくなってしまうでしょう。
社員が目指すべき目標や指針をわかりやすく表現したミッション ビジョン バリューがあると、日々の業務にどのような意義があるのか、自分がどのようなミッションを背負っているのか意識できるようになります。
また、一人ひとりのモチベーションが向上するだけでなく、組織の連帯感やチームワークも強まり、強い組織作りにつながるでしょう。
リクルートでのミスマッチを防げる
ミッション ビジョン バリューを外部にも提示することで、採用におけるミスマッチを防止できるというメリットがあります。
組織や事業を拡大するためには、優秀な人材を採用し、推進力を強化する取り組みが必要です。
しかし、売り手市場の昨今では自社とマッチする人材の獲得がますます困難になっており、人材の流動性が高まったことから離職率も向上しています。
ミッション ビジョン バリューを提示すると求職者が自社の理解を深められ、価値観がマッチする人材に自社の魅力を訴求できます。
また、企業理解が深まることで入社後のギャップを低減でき、早期離職の防止にもつながるでしょう。
ミッション ビジョン バリューの作り方
ミッション ビジョン バリューはどのように作れば良いのでしょうか。
ミッション ビジョン バリューの具体的な作り方やステップについて以下で解説します。
また、ミッション ビジョン バリューは一度作ったら変えてはいけないものではありません。
企業のニーズに合わせて改良していくことが可能です。
作成するメンバーとタイミング
ミッション ビジョン バリューの決定には、経営陣だけでなく各部署の管理者や人事担当者なども参加するケースがあります。
決定した後から反対意見や不満が出ないよう、作成メンバー全員が揃っている場で検討を進めてください。
また、先述したように通常、ミッションとビジョンは起業直後に作成しますが、バリューは事業の方向性が明確に決まった段階に作成することが良いでしょう。
順番としては、ミッション→ビジョン→バリューの流れで作成することが一般的です。
基盤となるミッションを最初に決定し、そこからビジョン、バリューへ落とし込むことで、一貫性のある内容になり、社員の納得も得られやすいからです。
ミッションを定める
ミッションは、企業の存在価値や使命を言語化したものです。
企業経営の根幹になるものですので、経営を通して何を実現したいのか、社会にどんなインパクトを与えたいのか、メンバーで深く議論する必要があります。
一般的な流れとしては、まず社長が自らの考えを経営陣に共有し、それを基に作成メンバーが議論を重ねます。
社員数の少ない企業や社員の意見を重視する企業では、社員アンケートやブレインストーミングを行って社員から意見を募る方法もあります。
検討を重ねてまとめた意見は社長に提出し、最終的には社長が決定します。
ミッションは、社内外のあらゆるステークホルダーに自社の使命を直感的に共有するためのものです。
そのため、端的でわかりやすい表現を心がけることが大切です。
ビジョンを定める
ビジョンでは、ミッションを達成するために直近の数年間で実現すべき目標や目指すべき姿を設定します。
例えば、ミッションが「テクノロジーの力で労働環境に安全を届ける」と仮定して考えます。
すると、ビジョンは「日本一のテクノロジーカンパニーを目指す」といった企業の目指すべき姿を記載したものや「労働環境における課題をイノベーションで解決する」などミッション達成のために行う活動を記載したものとなるでしょう。
中長期的に目指す方向性だけでなく、自社の持つ競争力や優位性なども考慮して盛り込むようにしてください。
ビジョンを作成する際は、社員が働く上での合言葉にできるような、端的でわかりやすい言葉を選ぶこともポイントです。
バリューを定める
バリューでは、ミッションやビジョンを実現するために必要な、具体的な行動指針や社員のあるべき姿を定義します。
先ほどの例でいえば「労働環境の安全」や「テクノロジーカンパニー」を実現するために、「常に新しい技術を探求する」「他社だけでなく自社の働きやすさも大切にする」といったバリューが考えられます。
ミッションやビジョンは経営陣や特定のメンバーで作成されることが多いですが、バリューは社員を交えてディスカッションし、ミッションやビジョンを実現するのにどのような行動が必要かというテーマで議論する方法がおすすめです。
ディスカッションによって出たキーワードをバリューとして整理してください。
バリューは1つだけでなく複数個設しても問題ありませんが、多くても10個未満程度(社員が覚えやすい数)にまとめることがポイントです。
ミッションビジョンバリューを浸透させるためのポイント
ミッションビジョンバリューを作成した後、社内に浸透させるためのポイントをご紹介します。
人事評価に組み込むなどして社員が意識するよう仕向ける
人事評価の対象項目にしたり、表彰制度を導入したりすることで、社員が意識するように仕向けます。
ミッションビジョンバリューが、身近な存在であると感じてもらうきっかけにもなります。
継続的に発信する
社内に周知したあと、ミッションビジョンバリューの効果はすぐに表れません。中長期的に実現するものとして、継続的に発信していくことが大切です。
社内ワークショップなどで理解を深める場を設ける
発信の機会を増やすだけでなく、理解を深める場を設けることも重要です。
社内ワークショップなどで、社員同士がミッションビジョンバリューについて考え、語り合い、より深い共通認識の醸成が期待できます。
ミッションビジョンバリューの事例
ミッションビジョンバリューを掲げている下記5社の事例をご紹介します。
ファーストリテイリング
「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングでは、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」をミッションに掲げ、アパレルブランドとして世界をリードする想いがビジョンとバリューに込められています。
ソフトバンクグループ
携帯事業をはじめとしたIT関連事業を行うソフトバンクグループでは、「情報革命で人々を幸せに」というミッションを掲げています。
「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」を目指し、世界ナンバーワンかつオンリーワンの存在を目指していく姿勢がはっきりと示されています。
デジタル庁
日本のIT化・DX化推進を目的に2021年に設置されたデジタル庁では、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」をミッションに、国の行政機関として、リーダーシップを感じさせる力強さと、国民に広く遍く目的や存在価値を伝えるためのわかりやすさが表現された理念を掲げています。
サントリーホールディングス
ビール、清涼飲料水の製造・販売等を行うサントリーホールディングスは、ミッションとして「人と自然が響きあう」を掲げています。
自然との共生が企業の存在目的であることがよくわかるとともに、志や価値観といった内面的な文化を大切にしている企業であることがわかります。
博報堂
日本を代表する広告代理店の博報堂では、「未来を発明する会社へ。」というミッションの実現を目指して、発想の原点として「生活者発想」、ビジネスの原点として「パートナー主義」という言葉を置いています。
ミッション ビジョン バリューは浸透させることが大切
ミッション ビジョン バリューによって、企業が目指している方向性や提供価値を社内外にわかりやすく伝えることができます。
社員のモチベーションや連帯感がアップするだけでなく、求職者の企業理解が深まるなど採用面でのメリットも考えられます。
ミッション ビジョン バリューは、定義して終わりではありません。普段の業務で意識すべき指針として社内に浸透させることが重要です。
経営陣だけの満足に終わらせないよう、オフィスに掲示したり、口に出す機会を作るなどして周知していくことが大切です。
ミッション ビジョン バリューが社内に浸透しておらず、自社の組織力に課題を感じている経営者の方には、武蔵野の『経営計画書』がおすすめです。
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執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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