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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/12/14 14:38

経営

オープン・イノベーションの必要性やメリットを簡単に解説

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ITの進歩とグローバル化が進み、製品ライフサイクルが急激に短期化した現代のマーケットにおいて、「オープンイノベーション」を取り入れる企業が増えています。
オープンイノベーションを採用すると、自社が持っていない技術やノウハウを柔軟に取り入れ、自社リソースの限界を超えた革新的なイノベーション創出が期待できるでしょう。

今回は、オープンイノベーションの定義や注目される背景、採用するメリット、実際の企業事例などをわかりやすく解説します。
オープンイノベーションに取り組みたい方は、ぜひ参考にしてください。

オープンイノベーションの定義

オープンイノベーションとは、社外から柔軟に技術やノウハウを取り入れて変革をもたらし、目標達成を目指すことを指します。

オープンイノベーションの提唱者であるハーバード大学教授のヘンリー・チェスブロウは、2006年に発表した著書「オープンビジネスモデル」において、オープンイノベーションを以下のように定義しています。

オープンイノベーションは、企業が自らのビジネスにおいて外部のアイデアや技術をより多 く活用し、自らの未利用のアイデアは他社に活用させるべきであることを意味する

つまり、社外のアイデアや技術を取り入れるのみならず、自社資源を他社に活用してもらうこともオープンイノベーションに含まれるのです。
組織の区別をなくし、アイデアや技術を流出入させることで、参加者がお互いの弱い部分を補い合いながらイノベーション創出を目指す考え方がオープンイノベーションといえます。

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クローズドイノベーションとの違い

クローズドイノベーションとは、社内にある資源のみを用いてイノベーションを起こそうとする考え方です。
新製品提供にいたるまでの企画や技術開発、マーケティング、販路開拓といった全ての行程を非公開で行い、徹底した守秘義務の中でイノベーションを創出します。

一方、オープンイノベーションでは、社内外の区別を取り払って外部組織と資源を共有することでイノベーションを起こそうとする考え方であり、いわば組織の境界線を超えたところにイノベーションが存在すると考えます。
クローズドイノベーションは、技術やノウハウは社内で厳重に管理するものであり、イノベーションは社内で創出すると考える点に違いがあります。

 

オープンイノベーションの重要性

1980年代までの日本では、開発技術を知的財産として徹底的に保護する「ブラックボックス化戦略」が主流でした。
研究開発から製品提供までを自社内で完結させるクローズドイノベーションを元に、大きな成長を遂げてきたのです。

しかし、ITの発展とグローバル化が進んだ現代のマーケットでは、クローズドイノベーションに限界が生じ始めました。
製品ライフサイクルが短期化したため、製品開発に莫大な時間とコストがかかるクローズドイノベーションでは、市場のスピード感に対応できなくなったのです。

このような背景から、外部資源を柔軟に活用することで開発スピードの促進やコスト削減を図れるオープンイノベーションを重視する企業が増えています。

 

オープンイノベーションのメリット

企業がオープンイノベーションを採用すると、どのような効果が得られるのでしょうか。
オープンイノベーションの代表的なメリットを紹介します。

自社が持たない新たな技術・ノウハウを獲得できる

1つ目のメリットとして、自社にはない技術やノウハウ、知識を取り入れられることがあげられます。

オープンイノベーションでは、参加者がお互いの弱い部分を補い、Win-Winの関係を築くというコンセプトのもと、組織の区別なく資源を共有します。
さまざまな専門分野の人員が自由に交流し、技術や知識を交換できるのです。

また、吸収した知見を社内に蓄積できる点もメリットといえるでしょう。
ひとつのプロジェクトで取り入れた知見が組織の成長基盤となり、さらなる開発に活用できます。

開発コストの削減ができる

オープンイノベーションでは、あらゆる専門知識や技術を持った外部人材を活用できるため、開発コストの削減につながります。

深い専門性を持った人材を社内で一から育成しようとすると、コストや時間、手間がかかるものです。
新たに採用するにしても、戦力として通用するレベルまで成長してもらうには、一定の時間がかかることを覚悟しなければなりません。

オープンイノベーションを採用すれば、育成にかかる人件費を削減できるため、より低コストでの開発が可能です。
協業体制の整備などで一時的にコストがかかることはありますが、中長期的に見ればコスト削減になるケースが多いでしょう。

事業推進・開発スピードを加速できる

外部のリソースや技術を活用できるため、開発スピードを加速できることも大きな魅力です。

昨今は少子高齢化の影響から多くの業界で人手不足が加速しており、必要な人員を確保するには労力がかかります。
開発に必要な人的リソースや技術、スキルを社内のみで用意するのが難しく、膨大な時間がかかってしまうでしょう。

オープンイノベーションでは開発に必要な資源やノウハウを外部から調達できるため、社内リソースの枠にとらわれず、開発期間の短縮が期待できます。

 

オープンイノベーションのデメリット

多くのメリットが期待できるオープンイノベーションですが、一定のデメリットがあることにも留意すべきです。
オープンイノベーションのデメリットを3つ紹介します。

利益率や自社開発力が低下する

外部リソースに頼ることでコスト削減や開発スピードの加速が見込まれる一方、社外の技術やノウハウに依存してしまい、開発力が低下する可能性は否めません。
開発力が低下すると、自社製品の独自性や優位性が失われてしまい、減益も懸念されます。

また、オープンイノベーションによって新製品を開発した場合、参加企業と利益を分配しなければなりません。
自社開発に比べて利益率が低下するため、事前に提携先と分配の割合を協議し、赤字にならない程度の利益を確保しておくことが大切です。

独自のアイデア・技術や知識の流出リスクがある

オープンイノベーションは、提携企業とのライセンスアウト・ライセンスインを積極的に行うモデルであるため、アイデアの模倣や情報漏洩につながるリスクがあります。
自社の開発情報が流出すると、市場における優位性が失われてしまうかもしれません。

これらのリスクを回避するためには、社内で公開・非公開にする情報の範囲を定めるだけでなく、提携企業と情報共有に関するルールを制定することが重要です。
情報の管理方法やアクセス権限などを協業開始前に明確にしておくと、後のトラブルを防止できます。

コミュニケーションコストがかかる

価値観や立場の異なる相手とのコミュニケーションは新たな気づきを得られる可能性がある一方、意思疎通に行き違いが発生することもあります。
社内で普段行っている業務手順が異なるため、都度細かな確認が必要であり、コミュニケーションコストの増加から社員が負担を感じることもあるでしょう。

オープンイノベーションを導入する場合には、提携企業ごとに担当者を決めると連絡がスムーズです。
頻繁に担当者を変更するとかえって非効率ですので、担当者はできるだけ固定化して進めるとより円滑に進みます。

 

オープンイノベーションの成功事例

国内でも、オープンイノベーションを導入して成功を収めている企業が増えています。
代表的な事例を3つ紹介します。

ソニー株式会社

ソニーは、2014年にスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラム「Sony Startup Acceleration Program(SSAP)」を開始しました。
外部企業と提携してCDフォーマット技術を開発するなど、ソニーには古くから共創の思想があったといいます。

SSAPの前進となったプログラムでは、これまで実現に至らなかった社内の事業アイデアの育成を行ってきましたが、社外からも新規事業の相談を受けることが増えたため、オープンイノベーションを活性化させる社外向けプログラムとしてSSAPがスタートしました。

SSAPの活動により、京セラとライオンとの3社協業を通じて、仕上げ磨き用の歯ブラシ「Possi」が誕生するといった実績につながっています。

富士通株式会社

「富士通アクセラレータプログラム」を実施している富士通は、海外スタートアップとの協業を強化しています。
富士通では、グローバルに目を向けた方が量的・質的にも有望なスタートアップとマッチできると考え、他社に先駆けて海外スタートアップと社内事業のマッチングを図ってきました。

このプログラムを通じて、日本に進出したシリコンバレー発のスタートアップ「Quantstamp」と、クロスボーダーでの協業が実現しました。
Quantstampはブロックチェーンのセキュリティ会社です。
2社は、近い将来にブロックチェーンが実ビジネスに使える段階に移行するものと予想し、それを支えるセキュリティや監査に関わるテクノロジーの創出を目指しています。

株式会社日立製作所

日立製作所では、官民学の垣根なく、多様な組織や研究機関、コミュニティとの「協創」によるイノベーション創出を目指しています。

その一環として、2019年には開発研究拠点「協創の森」を東京都国分寺に開設しました。
QoLの高い豊かで持続可能な社会の実現に向けて、日立製作所が長年にわたり蓄積してきたITと多数の参加者をつなぎ、よりオープンで多角的な協創アプローチを目指しています。

例えば、東急電鉄との協業では、日立製作所のオープンイノベーション手法である「NEXPERIENCE」を活用し、駅の混雑状況をスマホで簡単に把握できる「駅視-vision」を開発しました。

 

オープンイノベーションで事業を加速させよう

オープンイノベーションは、自社資源のみで実現できる範囲を超えて、イノベーションの可能性を広げられる開発手法です。
人手不足が深刻化する昨今では、オープンイノベーションを重要視する企業が増えています。

一方で、複数の提携企業と技術や知識を共有するため、知的財産や機密情報の取り扱いには注意が必要です。
後のトラブルを防止するためにも、協業を開始する前に情報の管理ルールを厳密に取り決めましょう。

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