更新日:2023/08/09 11:49
経営
業務効率
PDCAサイクルをうまく回すコツは?4つのステップやメリット・デメリットを解説
読了まで約5分
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったPDCAは、ビジネスをおこなっていくうえでどれも欠かせない要素といえます。
企業が継続的に利益を上げ続けていくためには、成功体験の再現性を高めることが重要です。
商品やサービスの販売において「売れた理由がわからない」「特定の社員が売ったから売れた」では継続的な利益の向上は実現しないでしょう。
そこで重要となるのが、PDCAです。
PDCAは、成功体験の再現性を高め、成果を上げられるフレームワークといえます。
本記事ではPDCAの概要、メリット、デメリットからPDCAサイクルを効果的に回すコツを解説します。
ビジネスの成功確率を上げるためにもぜひ参考にしてください。
目次
PDCAサイクルとは?
PDCAとは計画、実行、評価、改善の順に業務を進め、それを繰り返すことで業務効率化や生産性向上を実現させていこうという業務改善のフレームワークです。
PDCAの概念が初めて世に出たのは今から70年以上前の1950年代に遡ります。
当時、品筆管理研究を専門におこなうアメリカの統計学者、ウィリアム・エドワーズ・デミング博士とウォルター・シューハート博士が提唱し世界中に広がっていったのです。
その後、日本の化学工学者で工学博士の石川馨氏が前述したフレームワークにPDCAという言葉を用いたことから、現在ではあらゆる業種で活用されるようになっています。
現在では、品質管理の国際基準となっている「ISO 9001」「ISO 14001」にもPDCAの手法が取り入れられており、業界や業種を問わず利用されています。
OODAループとの違い
現代のビジネスシーンでは、OODAループと比較される形で認知されている傾向があります。
PDCAサイクルは継続的な業務改善のためのフレームワークなのに対し、OODAループは意思決定と実行のためのフレームワークです。
OODAループについて詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
OODAループとは?PDCAサイクルとの違いや具体例など徹底解説
PDCAサイクルの回し方
PDCAは計画、実行、評価、改善をらせん状のように繰り返しおこなっていく必要がありますが、具体的には何をすべきかについてそれぞれの要素ごとに解説します。
Plan(計画)
Plan(計画)とは、これまでの業務プロセスを踏まえた目標設定、目標達成のためのアクションプランをいかに作成していくか、計画を立てる段階です。
業務改善の土台となる部分のため、しっかりとした計画を立てなければPDCAはうまく回りません。
計画の段階でやるべきステップは次のとおりです。
1:改善すべき業務の現状把握をおこない課題点を抽出する
改善したい業務のプロセスを洗い出し可視化させ、課題点を抽出します。
2:抽出した課題点を改善するための仮説を立てる
業務を滞らせている課題点をどう改善すべきかを検討し、いくつかの仮説の中から最善と思われるものを選択します。
3:数値目標の策定
業務改善の実施により、どの程度業務が改善されるかの定量的目標を策定します。
4:実行計画の立案
仮説を実行し、目標を達成させるための実行計画を立案します。
Do(実行)
Do(実行)とは、立案した計画を実際に実行する段階です。
重要な点はできるだけ計画に忠実に実行する点、実行のプロセスや成果を数値で記録しておく点にあります。
人によって計画とは異なるプロセスで実行したり、実行のプロセスを記録しなかったりすると、成功しても失敗しても次の段階であるCheckが機能しません。
成功すればそれでOKではなく、さらに高い成果を上げられるよう、実行のプロセスは必ず記録しておくことが実行段階でもっとも求められるものといえます。
Check(評価)
Check(評価)では、実行によって得た結果について評価をおこなう段階です。
計画段階で策定した目標数値は達成しているか、アクションプラン通りに進んでいるかを見た上で原因の分析をおこないます。
目標を達成すればそれで終わりではありません。
実行のプロセスにおいて偶発的な事象はなかったか、季節要因はなかったかなど、再現性の高い数値かどうかをしっかりと分析します。
ポイントはいかに次の改善をおこなうための分析ができるかです。
成功した、失敗したで終わるのでなく、改善に向けたヒントを得ることが評価の段階でもっとも重要だといえるでしょう。
Action(改善)
Action(改善)では、前段階での評価を踏まえ、改善策の立案をおこなう段階です。
目標を達成した場合は、さらに高い目標数値を達成させるもしくは成功の再現性を高めるには何をすべきかの仮説を立てます。
目標を達成できなかった場合は、前段階で得たヒントを基に改善できなかった点や新たに見つけた改善点の検証をおこないます。
それぞれ、複数の仮説から最優先に取り組む説を選択し、またPlan(計画)に戻って実行計画の策定を実行し、PDCAサイクルを回していくのです。
PDCAサイクルをうまく回すことで得られるメリット
PDCAサイクルを効果的に回していくことで得られる主なメリットは「目標やタスクが明確になる」「行動に集中できる」「改善すべき要因を見つけやすくなる」の3点です。
それぞれについて簡単に説明します。
目標やタスクが明確になる
PDCAを回すためには、明確な数値目標を達成させるための計画立案が欠かせません。
単純に数値目標だけを掲げるのではなく、実現するための実行計画も立案するため、自分たちが日々何をすべきかのアクションが明確になります。
日々のタスクが明確になれば、モチベーションアップにもつながり、成果を上げられる可能性も高まるでしょう。
また、実行計画を部署やチームで共有するため、全員が同じゴールを目指して進んでいけるようになり、ブレがなくなるのも大きなメリットです。
ゴールを共有しているからこそ、チームがバラバラになることなく、最短距離で目標に向かっていけるため、効率的に業務を進めていけます。
行動に集中できる
PDCAを回すことで、行動に集中ができます。
Plan(計画)の段階で数字目標やアクションプランが決められるため、自分が次に何をしなければならないか、何が足りないのかが明確になり、作業へ集中することができます。
立案した目標や計画に向かって集中力を高めて行動ができれば、生産性の向上も見込め、より効果が出るでしょう。
改善すべき要因を見つけやすい
PDCAの最終段階、Action(改善)では計画に応じておこなった実行を評価することで、明らかになった課題点をいかに改善するかを検討します。
実行だけで検証をせずにいれば、課題点が解決したかどうかもわかりません。
また、解決していないとわかっても何を改善すべきかが見えてこないでしょう。
PDCAでは、実行の結果を分析することで課題点が明らかになり、改善策の検討も可能になります。
たとえ、実行が失敗に終わっても繰り返し失敗するリスクを減らせる上、当初の目標を見失ってしまうこともありません。
PDCAサイクルをビジネスに活用する際の問題点
PDCAサイクルをビジネスに活用していく際、いくつかの問題点もあります。
具体的には「新しいアイデアが生まれにくくなる」「PDCAを回すこと自体が目的となってしまう」の2点です。
それぞれについてなぜ、問題となるかを解説します。
新しいアイデアが生まれにくくなる
PDCAは業務改善をおこなうためのフレームワークですが、既存業務の改善がベースにあります。
これまでの経験を基にいかに既存業務を効率化し、生産性を高められるかが重要なポイントです。
そのため、課題点の改善案を検討する際も既存業務の枠組みから飛び出して検討することが少なく、新たなアイデアが生まれにくい傾向があります。
PDCAが得意とするのは、継続的な改善による価値の創出であり、新規事業の立案や新商品の開発などへの活用は向いていません。
PDCAを回すことが目的となってしまう
PDCAの計画、実行、評価、改善はどれも重要な要素であり、どれか一つでも欠けてしまえば目標達成は難しくなります。
重要な要素であるからこそ、入念に進めていく必要がありますが、結果を急ぐあまりにスケジュール管理が優先になってしまうケースも少なくありません。
スケジュール消化を重視してしまうと、いつの間にかPDCAで成果を上げるのではなく、形としてPDCAをスケジュールに組み込んでいるだけになってしまいます。
PDCAはあくまでも成果を上げるための手段であり、回すことが目的となってしまえば、意味のないものとなってしまうでしょう。
PDCAサイクルをうまく回すコツや方法
PDCAサイクルのメリットを活かし、問題点を克服しながらうまく回していくコツ、方法は「それぞれの段階でのプロセスを明確にする」「進捗状況を記録する」「継続的に実践する」などです。
また、失敗や成功の体験から学び(Learn)を得て改善につなげる「PDCLA」の実践も欠かせません。
ここではそれぞれの項目について簡単に解説します。
5W2Hをはっきりさせておく
5W2Hとは、PDCAを回していくうえで重要となる情報の分類方法です。
5W2Hを明確にすると、誰がいつ何をどのような方法でいつまでにやるかが可視化され、滞りなくPDCAを回していけるようになります。具体的には次のとおりです。
- WHEN(いつ)
いつやるか、いつまでにやるかなど、時間や期限を明確にすることを指します。 - WHERE(どこで)
どこ(場所)を指すもので、オフィスでおこなうのか、工場でおこなうのか、オンラインか、オフラインかなどを決めるものです。 - WHO(誰が)
業務の役割分担を指します。誰が担当しているのか、誰と一緒にやる業務なのかを決めるものです。 - WHAT(何を)
業務を分類し、具体的に何をやるべきかを決めるものです。 - WHY(なぜ)
業務改善をおこなうのに、なぜその業務が必要なのかを明確にするものです。 - HOW(どうやって)
システムを導入するのか、外部へ依頼するのかなど、業務をおこなう方法や手段を決めるものです。 - HOW MUCH(いくら)
業務改善をするためにどれぐらいの費用、コストをかけるのかを決めるものです。
目標や達成すべきことを明確にする
PDCAはどの段階も欠かせない重要な要素ですが、その中でも、最初におこなうPlan(計画)はもっとも重要な要素です。
目標が曖昧な状態では、次の段階でどう動けばよいかがわからず、自ずと評価、改善もできなくなってしまいます。
たとえば、営業の受注件数120%増を目標にするとしましょう。
このとき、訪問件数を単純に20%増やせば達成できるかといえばそうではありません。
これまでの営業活動のプロセスを洗い出したうえで、受注できたときとできなかったときで何が違うのかを見つけ出し、そこから仮説の立案をする必要があります。
時間別の受注件数を出してみる、訪問するまでのメールのやりとりを振り返ってみるなどさまざまな角度から成功要因と思われる要素を見つけ出し仮説を立ててみましょう。
自ずとどう動けばよいかが見えてきます。
進捗状況を確認しながらレポートにまとめる
実行したことを評価し、改善をしていくためには具体的にどのような行動をしたのか、進捗状況の可視化が欠かせません。
定期的に進捗状況をレポートにまとめておきましょう。
記憶に頼った曖昧なレポートでは正しい評価もおこなえません。
職種にもよりますが、日報、週報など一定の期間で、改善による変化や業務への影響を記録することが重要です。
適正な評価、改善案の立案はもちろん、成功の再現性を高められたり、失敗の繰り返しを防げたりするようにもなります。
継続的に実践する
PDCAサイクルは目標を達成したら終わりではありません。
次はさらなる高い目標の実現に向けてPDCAを回し、中長期的な取り組みによって継続的に実践をしていきましょう。
PDCAの継続的な実践は、企業としての成長はもちろん、社員の成長にもつながります。
そこで重要となるのがPDCAのCとAの間にLearn(学び)を加えたPDCLAサイクルです。
実行に対する評価から学びを得て計画に対する意識を高めると同時に、失敗や成功の体験からも学び、改善につなげていきます。
PDCA改善の企業事例
PDCAに取り組み成功した企業の事例として、トヨタをご紹介します。
トヨタ自動車の生み出した効率的生産は「トヨタ生産方式」と呼ばれ、日本国内や自動車産業のみならず、世界中の企業で導入されています。
ムリ・ムダ・ムラを排除したことで生産効率を高め、最短時間で車を製造するシステムを構築しました。
トヨタの生産現場における品質管理では、以下のようなPDCAサイクルが行われています。
P:生産ラインの品質目標を設定し、品質向上の計画を立て、不良品の削減や生産効率の向上などの目標を設定します。
D:計画に基づいて実際に生産を行います。生産ラインでの作業は、品質基準や手順に従って行われます。
C:生産された製品の品質を検査し、基準に合致しているかどうかを評価します。不良品の数や不具合の内容を確認します。
A:評価結果を元に必要な改善策を検討し実施。不良品の原因を特定して修正したり、作業手順を改善したりします。
このように、トヨタではPDCAサイクルを継続的に繰り返すことで品質向上を実現しています。
PDCAの考え方は、トヨタだけでなく多くの組織や企業においても品質管理やプロセス改善に活用されています。
PDCAサイクルをうまく回して業績アップにつなげよう
PDCAは、既存業務の課題点を可視化させ、仮説を立て評価、改善をすることで効率化や生産性向上につなげるためのフレームワークです。
計画、実行、評価、改善のどの段階においても部署やチームで進捗状況を共有しながら目標に向かって日々のタスクをおこなっていくことが成果を上げる鍵といえるでしょう。
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