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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/05/19 15:53

経営

プロダクトライフサイクル(PLC)とは?各段階や戦略例を解説

読了まで約3分

プロダクトライフサイクルとは、製品が市場に登場してから寿命を迎えるまでのプロセスを5つのフェーズに分けて説明した理論です。
各フェーズの特徴を知ることで、自社製品に必要なマーケティング戦略を把握し、売上を最大化する施策の実施が可能になります。

この記事では、プロダクトライフサイクルの基礎知識や重要性、各フェーズにおける具体的なマーケティング戦略について解説します。

プロダクトライフサイクルとは

プロダクトライフサイクルとは、製品やサービスが市場に登場し、売上が拡大して衰退するまでの変化を説明するモデルです。
英語の頭文字をとって「PLC」と呼ばれることもあります。

プロダクトライフサイクルは、1950年に企業財務論の専門家であるジョエル・ディーンによって発表されました。
製品の成長ステージを「導入期・成長期・成熟期・飽和期・衰退期」の5つに分けて説明しており、各ステージに合わせたマーケティング施策、製品需要や顧客ニーズの予想などに活用されています。

それでは、各ステージの特徴について、詳しく解説しましょう。

導入期

導入期は、製品を市場に投入した直後のステージです。
市場そのものが未発達であるため、まだ顧客ニーズや売上が大きくない段階であり、新技術の登場により新たな市場が生み出されるケースもあります。

製品開発費用がかかるだけでなく、広告宣伝費をかけて製品の認知度を高めたり、顧客とコミュニケーションをとったりする必要があります。
そのため、大きな利益は期待できず、赤字になることも多いフェーズです。

成長期

成長期は、製品の認知度が向上して市場が拡大し始める段階です。
製品に関する顧客の知識が高まり、購入手順や使用方法などが浸透するため、売上や利益も急成長します。

また、市場の拡大に伴い、競合や新規参入者が現れます。
さらに、顧客ニーズが多様化し始めるため、製品の改善やブランド力の強化が求められます。
競合との差別化戦略を重視し、ニーズに合わせた改良や細分化といった施策が必要です。

成熟期

市場そのものの成長は鈍化し、売上や利益が最大値を迎える段階です。
競合企業が多数現れ、類似商品が市場に溢れている状態で、顧客は製品やサービスに新しさを感じていません。
価格競争が激しくなるため、自社製品の独自性をアピールして差別化を図ることが重要になります。

また、業界構造が安定して、大きなシェアを獲得する少数の上位企業が固定化されます。
下位の企業は、ニッチな需要を持った特定ターゲットを狙う戦略などを採用し、生き残りを図ることが求められます。

飽和期

飽和期は、成熟期からさらに進んで市場の成長がストップし、需要が停滞して売上が頭打ちになる段階です。
購入意欲のある消費者には製品が行き渡っており、新規顧客の獲得は見込めない状態です。
そのため、製品を定期購入しているリピーターやファンの獲得が重要になります。

また、成熟期よりもさらに価格競争が激しくなります。
低価格商品が登場すると消費者はそちらに流れていくため、ますます利益獲得が困難になるでしょう。

衰退期

衰退期に入ると、製品の需要が低下し、売上や利益が減少し始めます。
多くの企業が新規投資を行わず、販売の効率性向上やリピーターの維持を重視した施策を採用します。

基本的には、資金力のある上位企業のみが事業を継続させ、下位企業は撤退の判断が求められるフェーズです。
事業を継続される企業でも、既存製品のみで売上を維持するのは困難になるため、ブランド価値を活かした新製品の開発や、イノベーションによる新たな価値の創出などが必要になります。

 

プロダクトライフサイクルを理解する重要性

プロダクトライフサイクルのモデルを理解すると、企業を経営する上でどのようなメリットがあるのでしょうか。
マーケティングの基礎知識であるプロダクトライフサイクルの重要性を紹介します。

各フェーズに適したマーケティング戦略を行い利益最大化を目指せる

プロダクトライフサイクルを知ると、自社の新製品がこれからどのような状況を迎えるのか、おおまかな予想を立てることができ、それに合わせたマーケティング戦略の立案が可能になります。

5つのフェーズに応じて、どのくらいの顧客ニーズが見込まれるか、市場がどのくらい拡大するか、逆に撤退を検討すべきかなど、期待値を知るだけでも、自社がとるべき方向性が明らかになります。

「今は導入期のため広告を打って認知を獲得する」「飽和期に入ったので撤退の検討を始める」など、最適なタイミングでの施策提案が可能になり、利益を最大化できるのです。

製品にかけるコストを見極められる

自社の置かれた状況を客観的に把握できれば、製品コストを最適化することも可能です。

顧客ニーズが細分化しており、多種多様な製品が登場している現代では、特定の製品を長く使い続ける消費者が少なく、プロダクトライフサイクルは短いものになりがちです。

事前にプロダクトライフサイクルを知っておけば「製品寿命が短いことが予想されるので開発コストを抑えよう」「成熟期を迎えたので広告への投資は控えよう」といった判断ができ、無駄な投資を抑えてコスト管理がしやすくなります。

 

プロダクトライフサイクルのマネジメント例

プロダクトライフサイクルマネジメントとは、プロダクトライフサイクルのモデルをもとに、製品開発からアフターサポートまで一連の製品プロセスをマネジメントするマーケティング手法です。
導入期から衰退期までの各段階において、具体的なマネジメント戦略を解説します。

導入期

製品やサービスの認知度を高め、市場成長をはかる導入期では、広告出稿や街頭サンプリング、展示会出展といった認知獲得に向けた施策が重要です。

導入期は、製品の認知度が低く、顧客の教育が進んでいないため、大きな利益が期待できません。
まずは製品の独自性や優位性をアピールし、使い方や購入方法などを市場に浸透させる必要があります。
具体的な施策としては、以下のものが考えられます。

  • Web媒体や雑誌への広告掲載
  • CM
  • チラシ配布
  • サンプル配布
  • 製品発表会の開催
  • 展示会への出店

ほぼ利益が発生しない状態で上記のような広報活動にコストを割く必要があり、赤字が続くことを覚悟しなければなりません。
それでも、製品の認知度が向上しなければ売上にはつながらないため、根気強い広報活動が求められます。
特に、新しい製品やテクノロジーに敏感な「イノベーター」に向けたアピールが効果的です。

成長期

成長期では、自社製品の認知度が向上し、売上や利益が増大する反面、競合も多く参入してきます。
そのため、自社製品の独自性を強くアピールするプロモーション活動が重要になります。
また、独自機能の追加や顧客ニーズに合わせて製品バリエーションを拡充するなど、差別化施策も必要です。

  • 自社独自の機能追加や機能改善
  • 製品バリエーションの拡充
  • SNSによるインフルエンサーマーケティング
  • 販路の拡大

また、成長期において重要なターゲットとなるのが、流行に敏感で自ら情報収集をして購入を判断する「アーリーアダプター」と呼ばれる存在です。
アーリーアダプターは目新しい製品を早期に取り入れ、消費者動向に影響を与える存在であるため、積極的なプロモーションでアーリーアダプターの興味を引く戦略が必要になります。

成熟期

成熟期では市場が安定し始め、製品の目新しさが減少してきます。
競合が増えて製品が多様化し、価格競争が激しくなるため売上や利益が停滞し始めるフェーズです。
そのため、製品の信頼性を獲得するプロモーション活動に力を入れ、ブランド化や差別化をはかる施策が重要になります。

メディア露出によって信頼性や安全性をアピールし、消費者に「この製品ならぜひ使ってみたい」と思ってもらう施策が効果的です。

  • メディア露出
  • シェアトップ企業によるミート戦略
  • シェア下位企業によるニッチ戦略
  • 顧客ニーズに合わせたリブランディング

ミート戦略とは、下位企業がとる差別化戦略と同じ方向性の施策を実施し、資金力や人的リソースで勝る上位企業が優位になる戦略です。
ニッチ戦略は、上位企業が気付いていないニッチな需要を持った特定ターゲットに狙いを定め、一点集中でシェアを奪う方法を指します。
また、リブランディング戦略では、時代の価値観に合わせて自社のブランドイメージを一新し、製品に新たな価値を付加して市場にアピールします。

飽和期

飽和期に入ると、市場に類似製品が溢れて顧客ニーズが減少し、プロモーション活動だけでは製品が売れなくなってきます。
新規顧客の獲得が難しくなるため、広告費にコストをかけるのは得策ではありません。
飽和期では、不要な機能の見直しや製品のスリム化を行い、リピーターの確保に重点を置く施策が必要です。

  • 不要な機能を削ぎ落した製品の改良
  • 特定ニーズのみを満たした製品の改良

また、飽和期においては「レイトマジョリティ」や「ラガード」がメインターゲットになります。
レイトマジョリティとは、新技術を採用した製品に懐疑的で、大多数の消費者が製品を使用している状況を確認してから購入を決める層で、ラガードは流行に関心が薄く、製品が普及しきってから採用を決める層を指します。

衰退期

衰退期では、消費者の関心が別の製品やテクノロジーに移っていき、市場そのものが縮小するため、売上が減少します。
利益が期待できなくなるため、上位企業を除く多くの企業が撤退を選択せざるを得ません。
事業を継続させる場合には、以下のような施策が必要です。

  • リピーターへのアフターサービスの充実
  • 製品コンセプトの刷新
  • 専門性の高い製品へのモデルチェンジ

既存製品の販売をそのまま続けるのではなく、リピーターの維持を徹底したり、大幅な製品改善を行い、別の市場を狙う戦略をとる方が得策でしょう。

 

プロダクトライフサイクルをおさえてマーケティング戦略を見直そう

プロダクトライフサイクルの5つのフェーズを理解することで、製品の置かれた状況や市場動向などを客観的に把握し、各フェーズに応じた効果的なマーケティング施策を策定できるようになります。

また、有効な施策のタイミングを見極め、無駄な投資を減らすことができるため、コスト削減や販売の効率化といったメリットも得られます。

もちろん、プロダクトライフサイクルはあくまでも理論値ですので、実際の売上と比較しながら施策を検討することが重要です。
マーケティングの方向性を決定する要素のひとつとして、自社の利益を最大化させるために活用しましょう。

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