更新日:2023/05/13 09:15
経営
パーパス経営とは?意味や実装するための手順・なぜ注目されるのか解説
読了まで約4分
企業経営においてパーパス(目的・意図・意思)が注目されています。
特に昨今の新型コロナウイルスに伴う環境や、それに伴う経済の変化により、パーパス経営を実装する企業が増えている状況です。
本記事では、パーパス経営の意味や定義、注目されている背景、ミッション・ビジョン・バリューとの違い、実装する手順について紹介するので参考にしてください。
目次
パーパス経営とは
パーパス(Purpose)には「目的・意図・意思」などの意味があり、「存在意義」や「志」として使用される機会が多い言葉です。
また、パーパス経営とは、企業が社会の中で存在する意義を見出し、貢献する方法を掲げ、パーパスを達成するための多種多様な取り組みを図る経営の在り方をいいます。
自社の存在意義を明確にしたうえで社会に貢献する姿勢ともいえるでしょう。
不安定な経済状況や世界情勢などもあり、世界的にSDGsやサステナビリティへの関心が高いこともパーパス経営が注目を集める理由として考えられています。
パーパスとミッション・ビジョン・バリューとの違い
パーパスと似た意味の言葉として、ミッション・ビジョン・バリューがあります。
違いとしては、社会的な関係性やつながりを重視するかどうかです。
パーパス経営が社会における企業の存在意義、価値、社会への貢献を示す一方、ミッションは自社が成し遂げたい内容や達成目標、ビジョンは理想的な未来像、バリューは価値観や行動基準を表すという違いがあります。
ミッション・ビジョン・バリューが「未来に向けた自社の姿(未来志向)」であることに対して、パーパス経営は「現在の社会の中での自社の存在意義(現在志向)」ともいえるでしょう。
企業の経営理念を考える際にミッション・ビジョン・バリューを重視する企業が多くありますが、今後パーパスを軸に経営方針や経営理念を定める企業が増えていくでしょう。
ミッション・ビジョン・バリューについて詳しくはこちらをご覧ください。
ミッション ビジョン バリューとは?企業に必要な理由や作り方について解説
なぜパーパス経営が企業に注目されるのか
パーパス経営が企業に注目される理由は次のとおりです。
- SDGsへの関心の高まり
- DXを推進する企業の増加
- VUCAの時代の到来による変化
- 新型コロナウイルスの感染拡大によるシステムの変化
SDGsへの関心の高まり
SDGsとは、2030年までに持続可能(サステナビリティ)な世界の実現を目指す17の国際目標です。
2015年の国連サミットで採択されたことにより、パーパス経営に注目が集まりました。
SDGsの目標には経済・環境・社会などのテーマや課題が含まれており、個人に限らず、国単位、企業単位で取り組む必要があるからです。
SDGsは若い世代からの注目も高いため、パーパス経営をSDGsと関連付けることで積極的な支持を得られるかもしれません。
売上増進や採用力強化につながる可能性もあります。
DXを推進する企業の増加
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を活用した企業風土やビジネスモデルの変革です。
DXによって企業を変革するには、社会的な視点が不可欠です。
現在の社会情勢や顧客が求めているものを再検討する必要があります。
そのためにはさまざまな意思決定と、それに伴う存在意義が大切になるため、パーパス経営に注目する企業が増えている状況です。
VUCAの時代の到来による変化
VUCA(ブーカ)とは、Volatlity(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Conplexity(複雑さ)、Ambuguity(曖昧さ)の頭文字を取った言葉であり、将来の見通しが難しい状態をいいます。
VUCAの時代が到来したことにより、従来の価値観では対応できないケースも増えています。
変化が激しいVUCAに必要なのは企業の存在意義です。
「どのような理由で自社が存在しているのか」「どのような戦略が必要なのか」などを社内共有することにより、明確な判断軸が築かれるため、パーパス経営が重視されています。
新型コロナウイルスの感染拡大によるシステムの変化
新型コロナウイルスの感染拡大によって社会情勢は大きく変化しました。
リモートワーク(テレワーク)が普及したことにより、消費者の考え方や行動が変容した結果、経営ビジョンや事業戦略の見直しを行う企業が増えています。
その一環として、さまざまな企業がパーパス経営へのシフトチェンジを図っています。
従来は社員同士がオフィスで顔を合わせてスムーズに進んでいた業務も、リモートワークによって停滞するリスクがあります。
例えば、他の社員にチャットで質問しづらかったり、質問してもタイムラグがあったりといったケースです。
その場合に自主的に判断して行動するには共通の指針が必要になるため、パーパス経営が有効と考えられています。
パーパス経営が企業に与えるメリット
パーパス経営が企業に与えるメリットには以下があります。
- ステークホルダーからの信頼
- 社員のエンゲージメントの向上
- 革新や変化の創出
それぞれ解説していきます。
ステークホルダーからの信頼を得られる
パーパス経営で自社の存在意義を明確にし、社会貢献に積極的に取り組むことにより、株主や金融機関などのステークホルダーから信頼を得られます。
その結果、株主から出資を受けたり、金融機関から融資を受けやすくなったりといった効果が期待できます。
また、パーパス経営はブランディングの向上にもつながります。
多数の人が共感できる概念を示すことにより、自社のファンが増える可能性があるからです。
例えば環境問題に配慮して簡易包装やリサイクル素材を取り入れている企業は、多くの消費者に支持されやすいといえます。
社員のエンゲージメントが向上する
社員が自社のパーパスに共感することにより、「社会に貢献している」という感情を持ちながら働けるため、日々の担当業務に意義を見出せます。
仕事に誇りを持つことで社員のモチベーションアップにつながり、自社への「愛着心」や「思い入れ」を意味する社員エンゲージメントの向上も期待できるでしょう。
社員エンゲージメントが向上すれば、自主的に判断できる社員が育つだけではなく、離職率の低下も見込めます。
革新や変化を生み出せる
自社にパーパスがあることで、社員は仕事の目標を明確にできます。
「目標を達成するには何が必要なのか」と日頃から考えることで技術革新や変化を生み出せるため、さらなる企業の成長が期待できます。
また、パーパス経営によって社員の一体感が生まれ、アイディア交換が活発になることもイノベーションの創出につながります。
さらにパーパス経営を進めるうえで、業務効率化やスピードアップに関するツールを導入することにより、技術革新の頻度が増える可能性もあります。
パーパス経営を実装する手順
パーパス経営を実装する手順は次のとおりです。
- ステークホルダーや自社を分析する
- パーパスの理念を社内に周知し浸透させる
- 経営計画に反映させる
- 日常の業務に落とし込む
1.ステークホルダーや自社を分析する
最初にステークホルダーの分析を行い、続いて自社の分析を行います。
ステークホルダーの分析項目には以下があります。
- 顧客やエンドユーザー
- 仕入れ先やパートナー
- ブランド調査やPR
- IR
- CSRやSR
- 社員(正社員、契約社員、派遣を含む)
主な分析方法はアンケート、ヒアリング、オブザベーション、産業皮革、他社比較です。
組み合わせながら調査を行いましょう。
次に自社分析を行います。
主な方法は以下です。
- 3C分析
- SWOT分析
- コンピテンシー分析
- ケイパビリティ分析
3C分析は顧客、自社、競合を分析する手法であり、SWOT分析は自社の強みと弱み、機会と脅威を分析する方法です。
コンピテンシー分析は自社の中核的な能力の分析です。
ケイパビリティ分析は自社とステークホルダーとの結合による価値の創造を分析します。
2.パーパスの理念を社内に周知し浸透させる
ステークホルダーや自社への理解を深めた後にパーパスを言語化します。
その際は自社の理念体系に沿った一貫性や社史の見直しが大切です。
例えば自社が起業した目的や、どのような歴史を経てきたのか(ヒストリカルレビュー)に注目することにより、存在意義につながる最適な言葉が見つかる可能性があります。
また、パーパスはただ作るだけではなく、社内に深く浸透させることが大切です。
経営層の表面的な共有にとどまらず、社員全員の納得を得ることにより、はじめて全社的に機能するからです。
3.経営計画に反映させる
策定したパーパスは経営計画に反映させます。
その際は現状の経営計画をひとつずつ検証しながら、パーパスに沿っているかどうかを考えることが大切です。
仮にパーパスの趣旨から外れている場合は修正し、修正が難しい経営計画は破棄も検討します。
ゼロから経営計画を立てる場合もパーパスを軸にしながら考えることがポイントです。
4.日常の業務に落とし込む
パーパスに基づいた戦略を検討し、日々の業務に落とし込みます。
社員が日々の業務をとおして自然にパーパスを意識できる状態が理想です。
経営層からの一方的な押し付けでは定着しないため、定期的にパーパスを深く考える時間を確保することが重要といえます。
そのためには、自社のパーパスだけではなく、社員一人ひとりのパーパスが必要です。
「なぜ自分はこの会社で働いているのか」を明確にし、元々の価値観とすり合わせることにより、日常業務が円滑に進む可能性が高くなります。
パーパス経営の注意点
パーパス経営を実践する際の注意点やデメリットをご紹介します。
企業が掲げたパーパスと実態が伴っていない状態のことを「パーパス・ウォッシュ」と呼びます。
パーパス・ウォッシュになった場合には、顧客や投資家からの評価が下がるのはもちろん、従業員もパーパスと実態との違和感を抱き、モチベーションが低下する可能性があります。
パーパスがただの飾りにならないよう、具体的な行動に落とし込んで取り組むことを意識しましょう。
その他にも、パーパスが曖昧であったり、従業員や顧客と共有されていない場合にはパーパス経営は成立しません。
明確なパーパスを設定し、組織全体で共有することが必要です。
パーパス経営を取り入れている企業の事例
ソニーグループ
ソニーグループは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスを掲げています。
代表自ら呼びかけ浸透を促すことで、コロナ禍においても組織が団結し、2020年度は最高収益を達成し、パーパス経営の重要性を世に示しています。
富士通
富士通は、「わたしたちのパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし世界をより持続可能にしていくことです」と掲げています。
パーパスを実現するためも新しい評価制度を導入し、パーパスを起点に描いたビジョンに向けてどれだけのインパクトを与えたかが評価されるようになりました。
パーパスを従業員に浸透させるための仕組みが構築されています。
パーパス経営は企業の存在意義を高める
パーパス経営とは、自社の存在意義を明確にし、社会に貢献する経営の在り方をいいます。
注目される理由として、SDGsへの関心やDXの推進、VUCA時代の到来、新型コロナウイルスの影響によるシステムの変化が挙げられます。
また、主なメリットにはステークホルダーからの信頼、社員のエンゲージメントの向上、技術革新や変化の創出があります。
パーパス経営を導入している企業の事例も多いため、参考にしてみるとよいでしょう。
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