更新日:2023/10/26 13:20
経営
リブランディングとは?意味や方法、事例を紹介【業績アップ/顧客満足度】
読了まで約4分
企業が既に保有しているブランド資産を、トレンドに合わせて再構築することをリブランディングといいます。
ブランドは一度構築すればそれで終わりというわけではありません。
顧客から長年にわたって親しまれるブランドを作っていくには、適切な時期にリブランディングを行うことが大切です。
今回は、リブランディングを行うタイミングとその方法、行うことで企業が得るメリットについて詳しく解説します。
目次
リブランディングとは
これまで培ってきたブランドイメージを変え、ブランドを再開発することをリブランディング(Rebranding)といいます。
まったく新たなブランドを立ち上げるのではなく、無形の経営資産ともいえるブランド資産を有効活用する点がリブランディングの大きな特徴です。
時代・文化の変遷や顧客の嗜好の変化に合わせてブランドを定義し直すことで、新たな顧客層の獲得が期待できます。
どれほど優れたブランドであっても、顧客に対する訴求方法に変化がなければ、やがて社会・世間から飽きられてしまいます。
時代のニーズに合わせて柔軟にブランドイメージを変化させていくことが、長く愛されるブランドを作る上では大事です。
実際、ロングセラーブランドの多くは、当初から少しずつリブランディングを行い、トレンドに寄り添う商品開発を行っています。
リブランディングのポイントとタイミング
商品やサービス自体に何ら問題が無くても、ブランド表現の方法がずっと同じだと、顧客に対して新しさを強調できません。
これまで培ってきたブランドイメージを活かしつつ、新しい要素を加えた表現を適時行う必要があります。
例えば営業活動をしていても顧客・得意先からの反応がイマイチである場合、あるいはブランドの知名度自体はそれなりにあるものの、商品・サービスの売り上げが低迷しているという場合は、リブランディングのタイミングです。
リブランディング施策は、ロゴやウェブサイトの変更から経営理念の変更まで、多岐にわたる取り組みであるため、失敗しないよう慎重に進める必要があります。
またリブランディングは、ある程度の期間を設けて効果を考えなければなりません。
なぜなら、新たなブランドの発表直後には一時的な売上の上下や賛否両論がありえるからです。
リブランディングをする際は、新たにブランドを構築する場合と異なり、今までのブランドの成果を評価する必要があります。
この評価を誤ってしまうと、適切な対応ができず失敗につながってしまいます。
リブランディングは新市場に参入するときにも有効
それまで企業が活動を行っていた市場とは異なる市場に新規参入する場合、進出先の先行企業・競合企業と差別化を図ることが必要です。
その際、企業が持つ既存ブランドを見直し、新市場でも受け入れられるようにブランドイメージを再構築することが新市場での成功につながります。
企業としての将来的な方向性を、ブランドを通して示したいとき
リブランディングは、既存ブランドが低迷している場合だけでなく、成長途上において行われることもあります。
ブランドが社会的に受け入れられると、将来的にどのようなブランドにしていくのか、という理想像を改めて問い直し、それに近づけるようにブランドを捉え直すのです。
ブランドの成長が止まる=顧客に飽きがみられる前に効果的なリブランディングを行うことで、売上減少の予防効果を期待できます。
経営者が代わったとき
経営者が代わったタイミングは、リブランディングを始めやすい時期です。
経営者によってビジョンが異なるため、先代の経営者と全く同じ考え方でブランディングを行うのは難しい場合があります。
新たな取り組みを始めることは、先進的なチャレンジをしている企業というイメージにもつながります。
ブランド表現が時代に合っていないとき
トレンドや時代の移り変わりによって、ブランド表現が現代と合わなくなることがあります。
パッケージや広告のデザインを変更するだけでも十分な効果を得られることがあります。変化に応じてこまめな修正を加えれば、常に新鮮なブランドイメージを保つことができるでしょう。
顧客の声とビジョンがずれているとき
商品・サービスを広く届けるためには、顧客との信頼関係が重要です。顧客アンケートの結果や売上の推移などから、ブランドイメージが合っていない場合、リブランディングを行うべきタイミングと言えます。
ブランドの提供している価値を見直し、より効果的に伝わるよう、ターゲットやメッセージを設計し直しましょう。
ビジネス環境が変わったとき
時代の変化により、ビジネス環境が変わったときも、リブランディングを検討すべきタイミングです。新しい技術が登場したり、勢いのある競合が現れたりすると、ブランド価値が相対的に下がるケースがあります。
環境の変化に合わせて細かなブラッシュアップを続けながら、明確な変化が見られたときに本格的なリブランディングに取り組むと良いでしょう。
リブランディングの方法と進め方
リブランディングを行うに当たっては、ブランドのロゴや表現方法を変える前に、既存ブランドの現状把握を第一に行う必要があります。
特に、商品・サービスの売上が低迷している場合、購入者数が足りないのか、購入単価が落ちているのか、購入頻度が減少しているのかをしっかりと分析することが大切です。
購入者数や購入頻度が減っているときは、顧客に訴求できるブランドイメージ構築を目指す必要があり、購入単価が落ちているなら、既存ブランドの高級感・クオリティをアップさせるリブランディングが有効となるでしょう。
また、リブランディングを行う際、商品のキャッチコピーやパッケージ、あるいは商品の使い方などを「シンプル」にすることが成功につながりやすいといわれています。
シンプルさには使いやすさ、簡単というイメージがある一方で、洗練度やおしゃれという感覚的なイメージも与えるので、ブランドイメージアップにつながりやすいのです。
さらに、リブランディングによって訴求する顧客のターゲット層を絞ることも大事です。
あまりにターゲットの幅を広げてしまうと、リブランディングによる商品・サービスの魅力が深く伝わらない恐れがあります。
広いターゲット層の一部の人を引き付けるよりも、狭いターゲット層の大部分の人を引き付けることを目指した方が、ブランドが顧客に浸透しやすいです。
リブランディングのメリット
リブランディングによって企業側が享受できる最大のメリットは、ブランドを一から構築しなくても良い、という点にあります。
既存のブランドを改良するだけで済むので、一からブランドを立ち上げるよりも、市場に訴求するのにかかるコストが安いです。
また、ヒト、カネ、モノ、情報といった経営資源の配分においても、既存のブランド展開で得たノウハウ・設備を生かせるので、その点でもコストを抑えられるでしょう。
リブランディングの成功事例
ここからは、リブランディングの成功事例を紹介します。
マツダ
バブル経済後の不況期、販売不振を挽回しようと大胆な値引きを行っていました。
しかしその結果、ブランド価値の低下を招き下取り価格も大きく下がり、「マツダ地獄」と呼ばれていました。
そこでターゲットを大胆に絞り込むリブランディングを行い、「ナンバーワンブランドではなく、オンリーワンブランドになる」と掲げ、他社とは差別化を図ることで強いブランドを確立しました。
レッドブル
過密を極めていた清涼飲料市場へ1987年に参入したのがレッドブルです。
エナジードリンクとしての効果ではなく、スポーツイベントの開催を通じ愛好家を顧客として創り出すことで、どこかおじさん臭いイメージだったエナジードリンクのイメージを一新し、若者から人気のドリンクへとリブランディングしました。
多くの支持を得て、独自のブランドポジショニングを築き上げています。
祇園辻利
1860年の開業以来、宇治茶一筋を通してきた老舗の茶屋「祇園辻利」は、ペットボトルのお茶の普及によって、お茶のイメージが変わったことで、急須で入れるお茶の良さを伝えたいという思い、商品パッケージをリニューアルしました。
折り紙をモチーフとしたパッケージは和の心を伝えつつ、過剰包装を回避するデザインで、2011年のグッドデザイン賞を受賞しています。
ヤンマー
老舗の機械メーカー「ヤンマーホールディングス株式会社」は、グローバル市場にさらに打って出るため、ブランドイメージの統一に着手しました。
2013年にロゴをスタイリッシュで力強いデザインに変更、さらに、一流デザイナーにトラクターや農作業ウエアなどのデザインを依頼し、斬新でスマートな新商品を次々と発表したことで、ヤンマーが機能性と高いデザイン性を兼ね備えたブランドであることを強烈にアピールしました。
湖池屋
ポテトチップスやカラムーチョなど人気のお菓子を展開してきた湖池屋は、新社長の就任をきっかけに「妥協なく一番おいしいポテトチップスをつくる」という原点に立ち返りました。
これまでのデザインと一線を画す「KOIKEYA PRIDE POTATO」を発売。CMもインパクトのある内容としました。リブランディングに成功し、商品がヒットしたほか、社内の活性化にもつながっています。
リブランディングにより業績アップを目指す
「ブランディングのし直し」という意味を持つリブランディングとは、企業が持つ既存ブランドを再構築することで、その魅力や訴求力を復活させることです。
企業の売上が低迷している要因の1つは、既存ブランドの戦略と消費者の間でミスマッチが起こっているという点にあります。
市場に合うようにブランドのあり方を再検討し、再活性化させることが、企業の再浮上につながるでしょう。
リブランディングを行う際、成果を図るのは難しく、何を成功とし何を失敗とするか、答えはひとつではありません。
リブランディングを成功させるには、ブランドが低迷している要因をきちんと分析した上で、シンプルなイメージの構築、顧客ターゲット層を絞ることが重要です。
単にブランドのロゴや表示方法を変えるだけでなく、客観的な分析と、顧客に魅力を訴えかける努力が求められます。
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執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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