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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/04/14 09:54

経営

資金繰り

利益相反とは?意味や効力・会社経営における問題点などわかりやすく解説

読了まで約4分

会社経営における利益相反とは、会社の利益と取締役や社員、株主、顧客などの利益が相反している状況を指すものです。

会社経営では双方が共に利益を得ることが基本であり、どちらか一方だけが利益を得てもう一方が不利益となる状況は避けなければなりません。
なぜなら一時的な利益の追求は、長期的には成長や持続可能性を損ねてしまうリスクがあるからです。

本記事では、利益相反の意味や効力、会社経営における問題点などを解説します。
利益相反に関する問題を抱えている企業経営者や代表者の方はぜひ参考にしてください。

 

利益 相反取引とは

まずは改めて利益相反の意味や会社経営における問題点を解説したうえで、利益相反取引を行う際に承認が必要な事例を紹介します。

利益相反の読み方と意味

利益相反は、「りえきそうはん」と読み、一方の立場では利益になるものの、ほかの立場では不利益になる行為を意味する言葉です。

会社経営のほか、遺産相続においても一部の相続人が自分たちの利益を最大化しようとする場合に、ほかの相続人の利益が損なわれるケースを利益相反と呼びます。

会社経営における利益相反の問題点

会社経営における利益相反の問題点は、取締役が個人的な利益を追求することで会社に不利益が生じる可能性がある点です。

また、利益相反の問題点は社内間だけのものではありません。
たとえば、取締役が自らの利益を優先することによって会社が損失を被った場合、株主や債権者からの損害賠償請求を受けるリスクが生じてしまいます。

そのため、会社法では次に挙げるような状況が起きた場合、取締役は株主総会において承認を受けなければなりません。

  • 取締役が自己又は第三者のために、株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき
  • 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき
  • 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき

利益相反取引承認が必要な事例

利益相反取引の承認を受けるには、取締役会を設置している場合は取締役会、設置していない場合は株主総会での決議が必要です。
取締役会の場合、取締役が取引の内容を開示・説明を行ったうえで、過半数の賛成があれば承認され、株主総会でも同様に出席した株主が持つ議決権の過半数の賛成により承認を受けられます。

たとえば、会社が所有する不動産を取締役に売却する、もしくは取締役が所有する不動産を会社に売却するのは、どちらも取締役だけが利益を得る可能性があるため利益相反行為です。

このような場合、取締役会や株式総会で承認を受けたうえで、利益相反取引が承認された証明となる書類(それぞれの議事録)と参加者の同意書もしくは押印(印鑑証明)を法務局に提出します。

 

利益相反取引で取締役の承認が必要な例

前項で会社法第356条について軽く触れましたが、ここで改めて会社法356条を基に具体的な事例を挙げつつ利益相反取引として取締役の承認が必要な例を解説します。

1.競業避止義務

競業禁止義務とは、取締役が自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引を行ってはならないというものです。

たとえば、飲食店のチェーン展開をしている会社の取締役が、そのチェーン店のある地域で同様の飲食店を開業する場合が挙げられます。
また、仮に現在は店舗がない地域で同様の飲食店を開業したとしても、将来的に店舗展開を検討している地域であれば、競業禁止義務に抵触する可能性が大きいです。

競合である他社の取締役になることも競業禁止義務に該当します。
取締役になるのは取引ではありませんが、会社が持つノウハウや技術を持ち出して利用する可能性が高まるため、承認が必要となるでしょう。

2.直接取引

直接取引とは、取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするものです。

具体例としては、取締役が取締役を務める会社Aに対し、直接、商品やサービスを販売し、代金を受ける場合が挙げられます。
また、本人が取締役を務める別の会社Bと会社Aの間を取り持ち、商品やサービスの販売を行うのも直接取引の一つです。
ほか、取締役が第三者である個人の仲介役となり、個人の商品・サービスを会社Aに販売するのも直接取引となります。

いずれも商品やサービスを販売する側として通常価格を水増しして会社Aに販売する可能性があり、その場合、取締役だけが利益を得られ、会社Aは不当に不利益を課されてしまいます。

このように取締役本人もしくは取締役が関わる第三者のために株式会社として取引を行う際には承認が必要です。

3.間接取引

間接取引とは、株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとすることです。

具体例としては、取締役個人の債務について、取締役を務める会社Aが債務保証をしたり、債務引き受けを行ったりする場合が挙げられます。
この場合、会社Aは債権者と契約を締結するため、取締役は直接的に利益を得ることはありません。

ただし、会社Aは取締役個人の債務のために債務保証や債務引き受けを行うという不利益を生じます。
また、取締役は個人の債務を保証してもらえるもしくは引き受けてもらえるという利益が生じるため、間接取引として利益相反取引の承認を得なければなりません。

 

利益相反取引行為の対応方法

会社法では、仮に利益相反行為があった場合でも、会社の承認を得れば違反行為に該当しないというルールを採用しています。
ただし、承認方法については、取締役会を設置する会社と設置しない会社では異なります。
ここでは、それぞれの会社での対応方法の違いについて解説します。

取締役会が設置されている企業の場合

取締役会が設置されている会社の場合、自身の行動が利益相反に当たる行為であると考えられる取締役は、事前に取締役会で事実を開示し、承認を得る必要があります。

当該の会社もしくは個人などと締結する予定の契約書のほか、なぜ契約をするに至ったのか、利益相反取引を避ける策はなかったのかなどの説明や開示が必要です。

なお、承認を受ける取締役会において、当事者である取締役は当然ながら議決権を行使することはできません。
そして、実際に利益相反取引を行った場合は、改めて取締役会において遅滞することなく、その事実を報告する義務があります。

取締役会が設置されていない企業の場合

取締役会が設置されていない会社の場合は、株主総会において取締役会と同様、事前に事実開示を行ったうえで承認を受ける必要があります。

ただし、取締役会とは異なる点があります。
それは、利益相反行為を行おうとする取締役が同時に株主で合った場合、取締役会では持てなかった議決権が持てる点です。
そして実際に利益相反行為を行った後で、改めて株主総会を開催し、報告する必要もありません。

承認を必要としない場合

利益相反行為は基本的には承認を受けない限り、その効力は無効です。
ただし、取締役が会社とのすべての取引で承認が必要かといえばそうではありません。
具体的には次のような場合では、承認を受けなくても取引が可能です。

  • 取締役が会社に対して無利息・無担保で貸し付けを行う場合
    取締役は利息や担保といった利益が生じないため、承認の必要はありません。
  • 取締役が100%の株主である場合の取引
    取締役が自身の100%株主である会社に対し、商品・サービスを利益水増しで販売しても損失を得るのも取締役であるため、承認は不要です。
  • 親会社と完全子会社間で行われる取引
    実質的に同一経営体であり、自己と自己との間での取引であるため、利益相反行為に該当しないことから承認を受けなくても取引が可能です。

 

利益相反が認められたら取締役が損害賠償責任を負うことになる

取締役会や株主総会で利益相反行為が承認されれば問題ありませんが、承認されず、利益相反であると認められた場合、当然ながらその取引は無効です。

また、単純に取引が無効になるだけではなく、取引の当事者である取締役は会社に対して損害賠償責任を負うことになります。

さらに、取締役会で無効となった場合、損害賠償責任を負うのは当事者である取締役だけではありません。
承認決議において賛成の意思を示した取締役も関係したとされ、損害賠償責任を負うことになります。

 

会社経営以外で起きる利益相反とは

最後に会社経営以外でも起きる可能性がある利益相反について、ここでは2つの例を紹介します。

遺産相続におけるケース

遺産相続において利益相反が起きるのは、相続人が親と未成年の子どもであるケースが考えられます。
未成年の子どもは自身で法律上の行為を行うことができないため、法定代理人である親が代わって対応するのが一般的です。

この際、相続人が親と子どもだけであれば、親が勝手に相続の内容を決めてしまうこともありえます。
場合によっては自身に都合の良い遺産分配をする可能性もあり、親と子の間で利益相反が生まれてしまうのです。

この状況を避けるには、家庭裁判所に申し立てを行い親ではなく特別代理人を選任してもらうことで公平が保たれ、利益相反を防げます。

金融機関におけるケース

金融機関における利益相反の具体例としては、顧客に自社が販売する商品を勧め、その利益をインセンティブとして受け取る場合。
顧客から得た情報を悪用して自己や自社利益を優先した取引を行う場合などが挙げられます。

金融機関はそれぞれで独自の利益相反を防ぐためのコンプライアンスプログラムを導入していますが、顧客側としても対策が欠かせません。
たとえば、複数の金融機関からの情報収集や専門家からのアドバイス、金融機関に対する苦情の提出などが考えられます。

 

利益相反行為を理解し慎重な判断が重要

利益相反とは、一方の立場では利益になるものの、ほかの立場では不利益になる行為を意味するものです。
会社経営においては会社と取締役との取引において、取締役が一方的に利益を得る際に起こります。

利益相反行為とみなされる場合は、事前に取締役会もしくは株主総会において承認を受けなければなりません。
もし承認されず不当となれば、当事者である取締役や取締役会で賛成をした取締役にも損害賠償責任が発生するため、法律をしっかりと把握しておく必要があります。

利益相反を防ぐには、法律の把握はもちろん、会社としてのルール策定も重要です。
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