更新日:2024/03/04 09:57
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ランニングコストとは?意味や削減方法を分かりやすく解説
読了まで約3分
「事業のコストを適正化したい」「ランニングコストの例や削減方法を知りたい」といった悩みを抱えている経営者も多いのではないでしょうか。
本記事では、ランニングコストとイニシャルコストの違いやランニングコストの例、ランニングコストの削減に必要な損益分岐点について詳しく解説していきます。
各用語の意味を正しく理解し、ランニングコストを適切に管理する方法を知りたい人の参考になれば幸いです。
目次
ランニングコストとイニシャルコストは何が違う?
ランニングコストとは、事業の継続的な運営で発生する定期的な費用の総称です。会社や店舗の家賃、人件費、毎月発生するシステム使用料、毎年かかる保険料などを指します。
一方イニシャルコストとは、事業を始める際やサービスの導入時に支払う費用の総称です。会社や店舗を借りる際の礼金や仲介手数料、人材採用費、設備購入費などが挙げられます。
ランニングコストとイニシャルコストでは、支払いが必要なタイミングと回数が異なります。ランニングコストは継続的に複数回の支払いが必要である一方、イニシャルコストは事業のスタート時やサービスの導入時に一度だけ支払う費用という違いです。
事業開始後に支払う費用は、イニシャルコスト(初回支払い)とランニングコスト(継続的な支払い)の合計となります。例えば、自社のホームページを公開するためにレンタルサーバーに申し込んだ場合、最初にかかる初期費用がイニシャルコスト、その後の月額料金がランニングコストになります。
ランニングコストの例
ここでは、より詳しいランニングコストの事例として以下を解説します。
- 地代家賃
- 水道光熱費
- 通信費
- 人件費
- 広告宣伝費
- リース費
- 車両費用
- 仕入原価
- 消耗品費
具体例と共に説明するので参考にして下さい。
地代家賃
地代家賃とは、建物や土地の賃料などを指します。例えば、オフィス・店舗の家賃、管理費、共益費、月極の駐車場代、倉庫の賃借料などが該当します。また、少額の場合のオフィス・店舗の更新料や、同じく少額の敷金(変換不要なもの)、礼金に関しても地代家賃に含まれます。
上記のうち、変換不要の敷金と礼金はランニングコストではなく、イニシャルコストとなります。継続的な支払いに該当しないためです。
水道光熱費
水道光熱費は会社で使用する水道代、ガス代、電気代など、熱供給に必要なエネルギーの費用を指します。例えば、オフィスや店舗で使用する水道代、ガスストーブ、エアコンの費用、商品ディスプレイ用のライトや広告パネルの電気代などが含まれます。
水道光熱費は継続的な支払いが必要なため、ランニングコストに該当します。です。ただし金額は季節や時期によって変動するため、効率的な管理が求められるでしょう。
通信費
通信費とは、業務で使用する電話代やインターネット代など、通信手段に必要な費用を指します。例えば、オフィスや店舗の電話通話料、業務用携帯の電話通話料、FAXの通信料、取引先への請求書・納品書の郵送料などが該当します。
他にも店舗やオフィスで流している有線放送の費用や、業務で使用するネット回線のプロバイダ使用料、クラウドサービスの費用も通信費の範囲内です。
継続的な支払いが必要な通信費はランニングコストに含まれます。
人件費
人件費とは、取締役や監査役への報酬、正社員やアルバイトなどの従業員に支払う経費の総称です。月々の給与や通勤定期代、各種手当、定期的に支払う賞与(ボーナス)、社会保険料、社宅の費用などが含まれます。
給与や各種手当などの人件費は、継続的な支払いが必要でランニングコストに分類されます。
広告宣伝費
広告宣伝費とは、企業が商品・サービスを広く宣伝する際に発生する費用です。集客アップが目的の広告やキャンペーン、割引・セールなどが広告宣伝費に該当します。具体的には、Webや紙媒体の広告費、テレビCMの費用、新聞広告の掲載料、求人広告などが含まれます。
スポット的な広告宣伝費はランニングコストに該当しないものの、継続的に発生する費用は広告宣伝費です。
リース費
リース会社のような貸し手から機械や設備などを借りるための費用がリース費です。
一般的にレンタルとリースは違います。レンタルは「貸し手の所有物を不特定多数に賃貸借する」という意味がある一方、リースには「貸し手が借り手が望むものを購入後、借り手に賃貸借する」という意味があります。具体例として、コピー機、プリンター、FAXなどをリースする場合の費用が該当します。
車両費用
車やバイクで商品を配達する際にかかる費用が車両費です。ガソリン代、車検代、修理費、自動車保険料、自動車税や軽自動車税のような税金も該当します。ただし車やバイクの購入費用は含まれません。一般的に車両運搬具という勘定科目で仕訳を行います。
ガソリン代のような費用には継続性があるため、ランニングコストに含まれます。
仕入原価
販売を目的として、他社から購入した商品や原材料の金額が仕入原価です。ただし原価の概念は業種によって多少の違いがあります。
例えば小売業では、仕入原価が売上原価に相当します。製造原価に関しては、製品をつくるために必要な材料や労務費を指します。また、特定の建設工事の完成を目的とした仕入材料は工事原価です。
継続的な仕入はランニングコストになります。
消耗品費
消耗品費は取得価額10万円未満、または使用可能期間1年未満の物品の購入費です。例えば、コピー用紙やボールペンなどの文房具、掃除用品やトイレットペーパー、ティッシュペーパーなどの日用品などが該当します。他にも、オフィスのロッカーやデスクなどの什器も消耗品費に含まれます。
文房具代やコピー用紙のような消耗品費は定期的な補充が必要なので、ランニングコストに含まれます。
ランニングコスト削減に必要な損益分岐点とは
ランニングコスト削減や費用の適正化を実施する際は、損益分岐点を意識することが大切です。
損益分岐点とは、売り上げと総費用が同額になる売上高を指します。言い換えると、企業の利益が0になる点を意味しており、計算式に表すと「利益=売上高ー費用」となります。つまり、損益分岐点を上回れば黒字となり、下回れば赤字となるのです。
また、総費用は固定費と変動費に分かれます。固定費は売り上げに左右されず発生する費用、変動費は売り上げに伴って増加する費用です。一般的にイニシャルコストは固定費、ランニングコストは変動費に分類されます。
損益分岐点を求める計算式は下記です。
- 損益分岐点=固定費÷1個当たりの限界利益
限界利益とは、売上高から変動費を差し引いたものです。
例えば、仕入価格(変動費)1個60円、販売額(売り上げ高)1個100円、固定費60万円というケースで考えてみましょう。この場合の限界利益は下記です。
100円-60円=40円
よって損益分岐点はこうなります。
- 損益分岐点=60万円÷40円=15,000個
なお、利益がゼロになる損益分岐点売り上げ高は、15,000個×100円=150万円です。
損益分岐点比率とは
損益分岐点比率とは、実際の売り上げ高に占める損益分岐点売り上げ高の割合を示したものです。計算式は次の通りです。
- 損益分岐点比率=損益分岐点売り上げ高÷実際の売り上げ高×100
損益分岐点比率が低い場合、企業は外部の変動に強く、赤字への影響が少ないと考えられます。理想的な数値は業種によって異なるものの、一般的には80%以下が望ましいでしょう。逆に100%を超えると赤字企業と判断されます。
損益分岐点比率を下げるには、「売上高の増加」と「変動費と固定費の削減」が重要です。売り上げ高が増え続けるとは限らないため、変動費だけでなく、継続的な支払いが必要な固定費(ランニングコスト)の削減を検討することが大切です。
ランニングコストを抑える方法
ランニングコストを抑える方法には以下の2つがあります。
- 会計ソフトや経費精算システムの活用
- 外部コンサルタントの支援を受ける
それぞれ解説するので参考にして下さい。
会計ソフトや経費精算システムの活用
ランニングコストの管理では、正しい数値をリアルタイムで把握し、自社のコスト管理が適正かどうかを確認することが大切です。その方法として、経費精算システムと会計ソフトの活用が挙げられます。
経費精算システムの導入により、経理部は出費額をスムーズに理解できます。キャッシュレス化と組み合わせれば、さらに作業効率がアップするでしょう。素早いランニングコストの把握に効果的です。
また、会計ソフトによって作業効率向上や情報の一元管理が期待できます。会計ソフトがダッシュボード機能を備えていれば、損益分岐点比率の計算結果を表示できるため、課題の可視化につながります。
外部コンサルタントの支援を受ける
業種や企業の状態によって削減が必要なランニングコストは変動します。
例えば、小売店や飲食店が地代家賃を惜しんで立地の悪い物件で展開すれば、売り上げ拡大にネガティブな影響を及ぼす可能性があります。水道光熱費や広告宣伝費の強引な節約も同じです。
また、IT企業が通信費を削減して必要なシステムに積極投資しない場合や、事業の要となる人件費の削減を過剰に行うのも本末転倒でしょう。
企業は客観的な判断が求められるため、経験豊富な外部コンサルタントへの相談を検討して下さい。各企業の特性や業種に応じたランニングコスト削減策が期待できます。
損益分岐点を把握してランニングコストを適正化しよう
ランニングコストとは、会社・店舗などで発生する定期的な費用の総称です。一般的に地代家賃、水道光熱費、通信費、人件費などが含まれます。
ランニングコストの削減を検討する場合は、損益分岐点比率の理解が大切です。損益分岐点比率が低ければ低いほど、赤字への影響は少ないと考えられます。また、ランニングコストの削減によって損益分岐点比率は低下します。
他にもランニングコストを抑える方法として、外部コンサルタントによる支援が効果的です。株式会社武蔵野では、中小企業の経営コンサルティングを行っています。事業にかかるコストの適切な管理に悩んでいる場合は、ぜひご相談下さい。
執筆者情報
小山 昇 / 株式会社武蔵野 代表取締役社長
1948年、山梨県に生まれ、東京経済大学卒業。
1977年、株式会社ベリーを設立し社長に就任。
1989年、現職に就任。
1990年、株式会社ダスキンの顧問に就任。
1992年、顧問を退任し現在に至る。
全国の経営者でつくる「経営研究会」主催。
株式会社武蔵野は2000年日本経営品質賞、2010年国内初日本経営品質賞2度目の受賞。
現在パートナー会員750社以上の会員企業をアドバイス。
日本経営品質賞受賞の軌跡、中小企業のIT戦略、実践経営塾、実践幹部塾と、全国で年間1900回以上のセミナーを行っており、訪問社数も年間約120社を超える。
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