更新日:2024/01/29 15:45
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SCMとは?注目されている理由やメリット・導入プロセスを簡単に解説
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SCM(サプライチェーンマネジメント)という経営管理手法が注目されています。製造業だけでなく、流通業、アパレル業などさまざまな業界で導入されていますが、SCMのメリットや課題、導入プロセスについて詳しく理解している人はそう多くないかもしれません。
そこで本記事では、SCMの概要を説明した後、企業がSCMを導入するメリット、SCMの課題と問題点、導入プロセスとポイントについて詳しく解説していきます。
SCM(サプライチェーンマネジメント)とは
まずはSCMの概要として以下を解説します。
- 日本語でSCMが表す意味と内容
- SCMが注目されている理由・背景
- SVM(サポートベクターマシン)との違い
日本語でSCMが表す意味と内容
SCMとは、Supply Chain Management(サプライチェーンマネジメント)の略語です。
原材料の調達から製造、生産、物流、流通、販売までを一元管理し、全プロセスを最適化するための経営管理手法で、製造業や流通業、食品業界、アパレル業界など、さまざまな業界で導入されています。
サプライチェーンは日本語で「供給連鎖」を意味する言葉ですが、商品やサービスがエンドユーザーに到達するまでの一連の工程を表しています。
SCMの目的は、リードタイムの短縮、コスト削減、品質向上、環境への配慮などがあります。情報技術を駆使して各プロセスを統合し、スムーズな運営を実現するための方法です。
SCMが注目されている理由・背景
SCMが注目されている背景には、主に3つの理由が挙げられます。
- 企業のグローバル化
- 労働環境の変化
- ビジネスモデルの変化
企業のグローバル化で世界各国に生産・販売拠点が広がったことにより、サプライチェーンの見直しがより重視されるようになりました。グローバルなネットワーク環境で企業が生き残るには、各プロセスの一元管理と全体の最適化が必要です。したがって、サプライチェーン全体を連携して管理できるSCMが注目されています。
また、労働力人口の減少や労働条件の変化により、物流ドライバー不足が深刻化していることもSCMが注目されている理由の一つです。このような変化に対応するには、SCMによって物流の無駄を省きつつ、販売店舗や卸売企業への配送タイミングの最適化がポイントになります。
SCMが注目されている3つ目の理由として、ビジネスモデルの変化による消費者ニーズの多様化が挙げられます。EC(インターネットを活用した通販販売)の普及により、販売と配送が一体化したビジネスモデルが増えているため、SCMによる統合的な管理が注目されている状況です。
SVM(サポートベクターマシン)との違い
SVM(サポートベクターマシン)はデータの分類や回帰に使用される機械学習のアルゴリズムです。主な手法として、2つのクラスに分類する二項分類問題や、多クラス分類問題への拡張、回帰問題への応用が挙げられます。少ないトレーニングデータで効果的なモデルを構築できるため、機械学習の分野で幅広く活用されています。
SCMが物流プロセスの一元管理と最適化を行う手法である一方、SVMは機械学習のアルゴリズムの一種です。したがって、SCMとSVMに直接的な関係性はなく、言葉は似ているものの、全く異なる概念といえるでしょう。
企業がSCMを導入するメリット
企業がSCMを導入するメリットには以下があります。
- 在庫管理の最適化につながる
- リードタイムを短縮できる
- 物流コストを削減できる
- 人的リソースの合理的な活用につながる
- お客様との良好な関係構築につながる
在庫管理の最適化につながる
需要に見合わない生産や、販売時期の認識不足による過剰在庫は売れ残りにつながり、経営を圧迫する可能性があります。逆に在庫不足では需要に対応できず、機会損失や顧客満足度の低下につながりかねません。
SCMを導入してリアルタイムで需要の予測と情報共有を行うことにより、最適な在庫管理が可能です。需要の変動に素早く対応できるため、機会損失を最小限に抑えつつ、売り上げの最大化が期待できます。
リードタイムを短縮できる
調達・製造・在庫管理といった物流のプロセスごとに必要なリードタイム(所要時間)が存在します。
SCMの導入で、営業担当者の受注状況やPOS情報による需要予測を各プロセスに活かせます。その結果、サプライチェーンが最適化して無駄な工程が減るため、リードタイムの短縮が可能です。
また、SCMによって商品の販売状況をリアルに把握できます。メーカーや小売店の商品不足を素早く認識できるため、物流現場における発送準備の時間短縮につながります。
物流コストを削減できる
SCMによる最適な供給プロセスの構築は物流コストの削減につながります。例えば、販売店舗や工場のエリアを考慮し、まとめて配送できる商品を同一の業者に依頼すれば、配送に必要な物流コストを効果的に削減できます。
また、近年は3PL(サードパーティ・ロジスティクス)企業が増加しています。3PL企業とは、第三者として外部からサプライチェーンに関わり、物流プロセスの最適化とコスト削減を目指す企業のことです。
自社でSCMの導入が難しい場合や、特定の物流活動を外部に任せたい場合は、3PL企業への委託も検討してみて下さい。
人的リソースの合理的な活用につながる
SCMの導入は人的リソースの合理的な活用につながります。サプライチェーン全体の流れが可視化されることにより、需要の増減や市場の変動を素早く察知し、必要な人的リソースを適切なタイミングで投入できるからです。
例えば、需要が少ない時期に無駄な人員が配置されたり、逆に繁忙期に人手不足が生じたりというアンバランスな状態を効果的に回避できます。
お客様との良好な関係構築につながる
企業が利益を生むには、顧客満足度の向上が重要です。例えば、商品を希望日時に配送するために、お客様視点を重視したサプライチェーンの見直しが必要になるかもしれません。
SCMの導入によってサプライチェーン全体がスムーズになり、お客様のニーズに速やかに対応しやすくなるため、お客様との良好な関係の構築につながります。
また、仕入れ先から製品やサービスを購入する場合も、SCMによる物流プロセスの最適化によってスムーズに対応できるため、仕入れ先の満足度向上につながるでしょう。
SCMの課題と問題点
SCMの課題と問題点には以下が挙げられます。
- 導入コストが必要
- 従業員の負担が増えることがある
- 中小企業では選択肢が少ない可能性がある
導入コストが必要
SCMを導入する際は、新システムやデジタル技術の初期コストが発生します。他社開発の需要予測システムを導入する場合、数百万円の費用がかかることも少なくありません。
自社でシステム開発する場合も採用コストや人件費が発生します。プランの策定段階から専門家に相談するとさらに多額の費用がかかるでしょう。
導入コストを抑える対策として「現段階でどのような費用がかかっているのか」というキャッシュフローの状況に注意を払うことが大切です。SCMは効果検証しながら長期的に取り組むという意識を重視して下さい。
従業員の負担が増えることがある
一般的にSCMの導入には大規模な施策が必要です。たとえ労働環境の改善に直結する施策でも、一時的に従業員の労働量が増える可能性があります。
また、企業規模が大きければ大きいほど、SCMの根本的な見直しが必要になる点にも注意が必要です。企業文化や社風によっては、従業員がSCMの導入に反対するかもしれません。そのため、事前に経営幹部と従業員が情報共有し、意識統一を済ませておくことが大切です。
中小企業では選択肢が少ない可能性がある
SCMは初期コストが発生するため、資金が限られている中小企業は選択肢が少ない可能性があります。特に地方企業の場合、仕入れ先や提携先などのパートナー企業が限られているケースが考えられ、その場合は調達や物流プロセスの見直しが困難でしょう。
SCMはあくまでも手段であり、企業にとってのゴールではないという点に注意して下さい。強引にSCMを進めるのではなく、場合によっては新たなパートナー企業を見つける工夫も行いつつ、効果的な施策を検討することが大切です。
SCMの導入プロセスとポイント
SCMの導入プロセスは次の通りです。
- ステップ1.解決するべき課題を明確にする
- ステップ2.SCM導入プロジェクトのメンバーを決める
- ステップ3.必要なサービスの比較・検討をする
- ステップ4.導入によって得られた効果を測定する
各ステップのポイントと共に概要を紹介します。
ステップ1.解決するべき課題を明確にする
まずは社内関係者の間でSCMの導入目的や解決課題を洗い出して共有します。その後、課題を解決するためにSCMの導入が効果的かどうかを検討しましょう。
SCMで解決できる課題を明確にするには、今回のSCMプロジェクトのゴール(目標)を設定した後、詳細かつ具体的にSCMの導入計画を立てることが重要です。
ステップ2.SCM導入プロジェクトのメンバーを決める
次にSCMを導入するためのプロジェクトメンバー、もしくは主導する部署を選定します。同時にプロジェクトを率いるリーダーも指名しましょう。
プロジェクトの人員を選定した後、ステップ1で定めた導入目的とプロジェクトのゴールを各プロジェクトのメンバーと共有します。メンバーそれぞれの担当範囲や役割分担も必要です。
ステップ3.必要なサービスの比較・検討をする
ステップ3として、SCMの導入に必要なサービスを決定します。その際はしっかりとサービスの内容を比較・検討することが大切です。主なサービスの種類は次の通りです。
- 需要予測や販売計画などに基づき、リードタイムの削減と需要予測の向上を図るサービス
- 基幹系システムとの連携で業務データの自動化を促進するサービス
- クラウド上で物流の流れを一元管理するITサービス
実際にSCMサービスを選定する際は、「業務上の課題解決に最適かどうか」や「物流プロセスがスムーズに進行するかどうか」などの視点を大切にして下さい。
ステップ4.導入によって得られた効果を測定する
最後のステップは効果測定です。SCMを導入した後、調達、製造、生産といった物流プロセスに起こった効果を分析します。その際はSCM導入前と導入後を比較しましょう。
SCMで効果を得るには継続的な取り組みが必要です。物流プロセスの改善点を次回の実行計画に反映させながら、少しずつ効果を高めることを意識して下さい。
SCM戦略を立案し企業の持続可能な成長につなげよう
SCMとは、物流プロセスの一元管理と最適化を図る管理手法です。注目されている背景として、企業のグローバル化、労働環境の変化、ビジネスモデルの変化が挙げられます。
また、企業がSCMを導入するメリットには、在庫管理の最適化、リードタイムの短縮、物流コストの削減などがあります。一方課題と問題点は、導入コスト、従業員の負担増などです。
SCMを実際に導入する場合は、必要な課題を明確にした後、導入プロジェクトのメンバー決定、サービスの比較・検討、効果測定の順に進めてみて下さい。
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執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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