更新日:2024/01/29 15:21
経営
中小企業が取り組む第二創業とは?メリットや事例を解説
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第二創業とは、新規事業の立ち上げや新市場への参入によって、現在の事業構造を大胆に改革し、経営状況の打開を図る取り組みです。大企業が行うイメージがありますが、実は後継者不足に悩む中小企業こそメリットの大きい手法といえます。
今回は、第二創業の意味やメリット、注意点、第二創業に取り組む方法などについて解説します。
目次
第二創業とは
第二創業とは、主力事業とは異なる分野の新規事業を立ち上げ、創業期と同様に一から経営刷新を図ることを指します。
規模の小さい中小企業では、後継者へのバトンタッチと同じタイミングで第二創業が行われるケースが多く、他にも、創業から順調な成長を続けてきたものの、市場の変化などにより成長に陰りが見え始めたことから、次の成長ステージに進むために事業編成を再構築するケースがあります。
いずれも、既存事業だけでは成長を模索することが難しく、大胆な経営改革によって成長を促進させたい場合に第二創業を行うことが一般的です。
事業承継と第二創業の関係性
少子高齢化による急速な労働力人口の減少が続く日本では、多くの企業で後継者不足が問題視されています。特に中小企業では6割以上の企業が後継者不足に陥っており、経営者の高齢化が進んでいるという調査結果があるほどです。
企業の成長が停滞する原因のひとつに、経営者の高齢化によって時代の変化に対応できず、ビジネスチャンスを逃してしまうことがあげられます。そこで、後継者への事業承継と同時に経営の刷新を図り、打開を図る企業が多いのです。
経営刷新には資金調達や既存社員の反発といった懸念はあるものの、廃業を回避する手段として、事業承継時に第二創業を迎え、企業の生まれ変わりを図ります。
第二創業のメリット
第二創業に取り組むメリットとしては、次の3つがあげられます。
- 経営状況を改善できる
- 既存の経営資源を活用できる
- 資金調達を行いやすい
それぞれ、詳しく解説していきます。
経営状況を改善できる
既存事業が既に衰退期にある場合、回復を図るよりも成長が見込める新たな市場にチャレンジし、心機一転、第二創業を迎えた方が経営状況が改善する可能性があります。特に、昨今は少子高齢化により業界や市場全体が衰退しているケースが珍しくなく、その場合には業界や市場を転換した方が状況の打開が見込めるでしょう。
また、現経営者が一代で事業を築き上げてきたケースだと、既存事業や体制に固執してしまい、経営状況が悪化してしまうことも少なくありません。新しい経営者と共に第二創業期を迎えた方が、ビジネスチャンスを捉えられる可能性が高まります。
既存の経営資源を活用できる
第二創業で新規事業を始める場合、既存事業のお客様のリストを活用したり、外注先や協力会社などの基盤を生かしたりするなど、経営資源を活用できる点も大きなメリットです。
新会社を設立する場合、これらの基盤を一から作っていく必要がありますが、事業を軌道に乗せるまでには多大な時間や労力がかかり、失敗した際の危険性も伴います。
第二創業で新規事業を立ち上げる場合は、お客様や取引先の他にも、既存事業で得たノウハウや技術を転用できるので事業の見通しを立てやすく、スムーズに新市場へ参入できるでしょう。
資金調達を行いやすい
第二創業では、資金調達を行いやすいという点も強みです。
新規事業を立ち上げる場合、製品開発や市場開拓に使用する資金の調達が必要不可欠ですが、設立間もない新企業は社会的な信用が低く、資金調達に苦労することも珍しくありません。
既存企業の資金繰りに返済遅延などの大きな問題がなければ、金融機関から一定の信頼を得られているため、新会社に比べてスムーズに資金調達ができるでしょう。資金調達がスムーズに進めば、その分事業のスタートも早くなり、収益化までのスピード促進も期待できます。
第二創業のデメリット
既存事業をうまく活かせば大きく飛躍できる可能性がある一方で、既存事業のノウハウや古い社員の存在が新事業の推進を阻害してしまう場合もあります。続く章では、第二創業におけるデメリットや注意点を紹介します。
既存社員の理解と協力が必要不可欠
第二創業では、新企業を立ち上げる場合とは異なり、事業の推進は既存社員がそのまま担います。そのため、第二創業に対する既存社員の理解と協力が必要不可欠です。
しかし、全社員が新事業へのチャレンジや新たな経営方針に賛同してくれるわけではありません。事業の内容に抵抗を感じたり、新しい経営者に懐疑的であったりなど、なかなか理解を得られないケースも多いです。第二創業に十分な理解を得られないまま、組織内での衝突やベテラン社員の離職につながることもあるでしょう。
経営者は、意見の合わない社員を排除するのではなく、第二創業の必要性や意義を根気強く説明する姿勢が必要です。既存事業で技術やノウハウを身につけた社員は第二創業後も力強い戦力となります。時間がかかっても理解を得られるよう努力しましょう。
必要なスキル・経験をもった人材確保が困難
既存社員は戦力として期待できる一方で、既存事業の技術やノウハウがそのまま活用できるとは限りません。全く新しい市場や分野に挑戦する場合、新たな人材を採用する必要がありますが、採用における売り手市場が続く昨今では、専門性の高い人材ほど確保が困難です。
また、新たな人材を採用できたとしても、既存社員との間に溝が生じる懸念もあります。歴史の長い企業ほど従来の慣習に縛られてしまい、新入社員が会社に馴染めないケースも少なくありません。せっかく採用した人材が早期離職しないよう、組織内の人間関係にも気を配る必要があります。
ステークホルダーの理解が必要
第二創業を迎えた企業からは、既存社員だけでなく仕入れ先や外注先、金融機関などのステークホルダーから理解を得られず苦労したという声も多く耳にします。新たな市場への参入は経営状況を打開する可能性がある一方で、資金繰りのさらなる悪化という危険性も伴います。継続的な取引に懸念を示す取引先が出てくるのは仕方のないことでしょう。
本格的に第二創業や事業継承を開始する前に、既存社員と協力しながら、ステークホルダーへの根気強い説明が必要となります。特に、資金調達先である金融機関との調整は重要事項ですので、綿密な事業計画書を策定して理解促進に臨んで下さい。
第二創業に取り組む方法
第二創業を行う具体的な方法としては、後継者への事業承継とM&Aの2種類があげられます。それぞれの手法を詳しく解説します。
後継者に引き継ぐ事業承継
事業承継とは、後継者に事業を引き継ぐことで、「役員・社員承継」と「親族内承継」の2種類に分けられます。
役員・社員承継は、既存の役員や社員の中から後継者を選ぶことです。これまでの事業で実績を収めてきた人物を選定するため、従来の理念や社風を維持しやすいメリットがあります。また、既存社員からの理解を得やすいため、人材の流出を防止しやすい点も特徴です。
一方、親族内承継は経営者の配偶者や子ども、親族の中から後継者を選ぶ方法です。経営者の理念を深く理解している親族に事業を承継するため、先代の意思を引き継ぎやすいのがメリットでしょう。
ただし、実績のない親族を突然経営者に据えては、社内からの反発が強まります。親族内承継を選ぶ場合は、早めに教育を開始し、社内での実績を積ませるよう配慮が必要です。
M&A
既存の社員や親族の中に後継者を任せられる人材がいない場合、M&Aによって第三者へ事業を譲渡する方法もあります。後継者不足を解消でき、既存社員の雇用も維持できる点がメリットです。
M&Aの具体的なスキームとしては、以下の6つがあげられます。
- 株式譲渡:企業オーナーが株式を企業または個人に譲渡し、経営権を譲渡する手法
- 株式交換:会社法で定められた企業再編の手続きにより、発行済株式の全部を他企業に取得させる方法
- 事業譲渡:既存事業の一部や全事業に関する資産などを第三者に譲渡し、事業の支配権を移行させる方法
- 合併:複数の会社が一つの法人格になること
- 会社分割:事業の一部または全部を他企業へ継承すること
- 第三者割当増資:新たに株式を発行し、第三者に購入してもらうことで資金調達を行う手法
それぞれの特徴や利点が異なるため、自社の状況や第二創業の目的によって適した方法を選ぶことが大切です。
第二創業に取り組んだ会社の事例
関西にあるインテリア関連の資材製作会社では、1990年代から売り上げが伸び悩み、2000年代の初頭には数十人いた社員が1桁まで減ってしまった背景から、第二創業に取り組みました。
旧経営者の子息がアメリカ滞在を経て同社に入社し、予算月15万円という小規模な範囲で新規事業を開始したといいます。その結果、商材や商圏の拡大に成功し、大手ハウスメーカーとのコラボレーションや物件そのもののプロデュースなどにも着手しました。売り上げ回復はもちろんのこと、1桁まで減少した従業員数も90人近くまで回復し、経営のV字回復を成し遂げています。
第二創業で経営刷新を図ろう
多くの中小企業が後継者不足に悩む現代において、第二創業はこれまでの基盤を活かしつつ経営の回復が期待できる手法です。ただし、新事業へのリソース投下は既存社員の理解を得られないケースもあり、慎重な判断や丁寧な説明が求められます。
既存社員を取り残してしまわないよう配慮しつつ、現状の打開策として前向きに第二創業を検討してみましょう。
経営方針にお悩みの場合には、外部のコンサルティングサービスを利用するのも一手です。
武蔵野では、750社以上の支援実績をもとに、企業にとって最適な支援プランを提案いたします。無料でダウンロードできる資料も用意しておりますので、お気軽にご相談下さい。
執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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