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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2024/01/09 12:53

経営

資金繰り

成長性分析とは?重要となる指標の活用ポイント・注意点を詳しく解説

読了まで約3分

成長性の高い企業は将来的に業績の向上が見込めますが、単純に「成長性」という言葉だけでは具体性がなく曖昧です。
そのため、企業の成長性を見るには指標を設定したうえで具体的な数値に落とし込まなくてはなりません。

本記事では、企業の成長性を適正に判断するために欠かせない成長性分析について、重要となる10の指標と算出方法や活用のポイントについてお伝えします。
自社の成長性が分からず悩まれている企業の経営者や代表者の方はぜひ参考にしてください。

成長性とは

成長分析のやり方や活用方法を知るには、成長分析とはどのようなものなのかを理解する必要があります。
そこで成長性・成長分析の概要や成長性分析を行う目的、成長性の分析に必要な財務諸表について解説します。

成長性・成長分析の概要

成長性とは、企業が将来的に業績を伸ばし、どの程度の経営拡大が可能なのか、その度合いや可能性を指すものです。

成長性は株式投資の世界でよく使われる言葉ですが、企業投資を行う際のポイントとしても成長性があるかどうかは重要な選択肢の一つです。
また、金融機関から融資を受ける際にも成長性は必須の要素となるため、経営者として常に意識しておかなくてはなりません。

成長性を把握する際は、単純に売上や利益だけではなく、借入金はどの程度あるのか、積極的な設備投資や採用人事は行われているのかなど総合的な判断が必要です。

そのため、成長性があるかどうかを見るには、多くの情報を活用して多角的に判断する成長分析が欠かせません。
成長分析の具体的な方法は後述しますが、多様な指標を用いて毎年比較していくことが重要です。

成長性分析を行う企業の目的

企業が成長性分析を行う目的は、「成長性」という曖昧なものを多くの情報や多様なデータを駆使することで数値化し、市場における自社のポテンシャルを把握することにあります。
また、売上とコストのバランスを考慮した経営を行うための基準としても欠かせません。

例えば自社が前年比で25%の成長をしていたとしても市場規模が前年比50%増であれば、自社の成長性はむしろ低いといえます。
成長分析を実施することで、市場のなかでの成長性を把握し、次のアクションを具体的にすることが可能です。

成長性分析に必要な貸借対照表と損益計算書

成長性分析を行うには多くの情報が必要ですが、そのなかでも欠かせないのが貸借対照表と損益計算書です。

貸借対照表とは、一般的に年度末や決算日の時点での企業が持つ資産と負債、純資産の金額と内訳を示した表で、企業の財政状況や資金調達の方法を知るためのものです。

損益計算書とは、一定の期間(一般的には1年間)の経営成績を示した表で、収益と費用、利益の金額を記載したものです。
一定期間の売上や費用の使途、利益額などを知るために作成します。

 

成長性分析に重要な10の指標と計算式

ここでは、成長分析を行う際に必要な10の指標を紹介します。
正しく成長性分析を行うには10の指標を活用し、さまざまな視点から分析を行うことが重要です。

1.売上高増加率

売上高増加率とは、前年と比較して今年の売上がどれだけ増加しているかを見るための指標です。
売上高増加率は損益計算書を基に算出します。計算式は次のとおりです。

売上高増加率(%)=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100

売上高増加率の数値は最低でも3年以上の推移で見る必要があります。
また、同業種の平均や市場での増加率も併せて見ることで自社の現状把握が可能です。

2.経常利益増加率

経常利益増加率とは、営業利益に営業外利益(受取利息や受取配当金など)を加え、営業外費用を引いた後に残る利益です。
経常利益増加率がプラスであれば企業の収益力が高いといえます。計算式は次のとおりです。

経常利益増加率(%)=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100

なお、営業外費用とは、支払利息・手形売却損・社債利息など本業以外の活動から経常的に発生する費用を指します。

3.営業利益増加率

営業利益増加率とは、当期と前期との比較により営業活動で得た利益が増加しているかどうかを見る指標です。
展示会やセミナー、ウェビナー、取引先周りなどの営業活動がどれだけ利益に結びついているか把握できます。計算式は次のとおりです。

営業利益増加率(%)=(当期営業利益-前期営業利益)÷前期営業利益×100

営業利益増加率が低下している場合は、顧客情報の共有や営業活動プロセスの見直しなどの改善が必要となるでしょう。

4.総資本増加率

総資本増加率とは、前期との比較で当期の総資本がどれだけ増加しているのかを見る指標です。
総資本には返済する必要のない自己資本だけではなく、借入金や未払金など返済義務のある他人資本も含まれます。計算式は次のとおりです。

総資本増加率(%)=(当期総資本-前期総資本)÷前期総資本×100

なお、総資本増加率を活用して成長性分析を行う際は、次に解説する純資産増加率と合わせて行います。

5.純資産増加率

純資産増加率とは、前述した総資産増加率と対になる指標で、総資本から借入金や未払金などの負債を引いて残った資本が増加しているかどうかを見ます。
計算式は次のとおりです。

純資産増加率(%)=(当期末純資本残高-前期末純資本残高)÷前期末自己資本残高×100

純資産増加率が高ければ、自己資本が十分に蓄えられているということであり、安全性の高い企業だといえます。
借入金や未払金も含む総資本増加率と合わせて分析すれば、企業の安全性や成長性の把握が可能です。

6.従業員増加率

従業員増加率とは、従業員の増減から企業の成長性を見るための指標です。
一般的には売上高が向上すれば事業規模が増加し、それに併せて従業員数も増加します。計算式は次のとおりです。

従業員増加率(%)=(当期従業員数-前期従業員数)÷前期従業員数×100

ただし、季節需要の高い商品やサービスを扱う企業の場合、計測する時期によって数値が大きく動く場合があるので、計測時期の選択には注意が必要になります。

7.一株当たり当期純利益(EPS)

Earnings Per Shareの略称でEPSとも呼ばれる一株当たり当期純利益とは、一株当たりの利益額を表す指標となります。計算式は次のとおりです。

一株当たり当期純利益(円)=当期純利益÷普通株式の期中平均発行済み株式数

一株当たりの当期純利益が高いということは投資家からの評価が高い、つまり自社の成長性を見込まれている可能性があるともいえます。

8.新規顧客増加率

新規顧客増加率とは、前期との比較で新規顧客数が増加しているかどうかを見る指標です。計算式は次のとおりです。

新規顧客増加率(%)=(当期新規顧客数-前期新規顧客数)÷前期新規顧客数×100

仮に売上や利益が増加していない場合でも新規顧客が増加していれば、将来的には売上や利益増加につながる可能性が高まるため、重要な指標といえます。

9.顧客単価

顧客単価の増減も成長性を見るうえで欠かせない指標といえます。
顧客単価が増加しているということは、顧客一人ひとりが新製品やこれまで触手を伸ばさなかった商品を購入するようになったことの表れといえます。
計算式は次のとおりです。

顧客単価(円)=当期総売上高÷総顧客数

BtoB企業の場合であれば、顧客単価の増加はクロスセルやアップセルの成功を意味するもののため、営業利益増加率の向上にもつながります。

10.有形固定資産伸び率

有形固定資産伸び率とは、前期の有形固定資産と比較して当期の有形固定資産が増加しているかどうかを見る指標です。計算式は次のとおりです。

有形固定資産伸び率(%)=(当期有形固定資産ー前期有形固定資産)÷前期有形固定資産×100

特に製造業にとっては、機械装置や工具器具備品、車両運搬具など設備投資が利益に結びついているかどうかを見るうえで重要な指標といえます。

 

成長性分析の活用ポイント・注意点

成長性分析で出た結果を活用するには、いくつかの注意点があります。そのなかでも主なポイントは次の2点です。

  • 成長性分析の指標は同業他社との比較が必要
  • 成長性分析指標は高ければ良いわけではない

ここでは、それぞれについて解説します。

成長性分析の指標は同業他社との比較が必要

成長性分析を行う際の指標は企業によってさまざまであり、どの指標を用いても同業他社や市場平均との比較が必要です。
自社がどれだけ成長しても、それ以上に同業他社が成長していれば自社の成長率は低いということになります。

なお、同業他社との比較は特定の1社や2社ではなく、同業種の市場平均と比較してください。
自社の成長率以上に市場平均が高まっていれば、自社のシェアが減少していることになるため、早急な対応が必要です。

上昇傾向にあるのか、下降傾向にあるのかにより対応策も異なります。
また、年によって指標の数値にばらつきがある場合は自社としての経営方針が現場に浸透していない可能性もあるため、もう一度基本に立ち返って見直す必要があるといえるでしょう。

成長性分析指標は高ければ良いわけではない

成長性分析指標は必ずしも高ければ良いわけではありません。
例えば急激な売上高の向上により設備投資や人材雇用のために借入金が増加してしまい、経営的な安全性が低下する危険性が生まれる場合もあるでしょう。
そのため、成長性分析指標を見る場合、売上と費用のコストバランスが取れているかどうかを注視する必要があります。

 

成長性分析の指標を正しく用いて経営戦略に活かそう

企業の成長性とは、将来的に業績を伸ばしどの程度の経営拡大が可能なのか、その度合いや可能性を指すものです。
成長性が高ければ積極的な設備・人材投資が可能ですが、成長性が見込めない場合は早急な改善や事業転換が求められます。

成長性を知るには成長性分析が必須です。
ただし分析結果の数値だけで判断するのではなく、同業他社や市場との比較も欠かせません。
同業他社や市場の成長性と比べて自社がどれだけの成長性があるかを知ることで、自社の課題発見や早急な改善も可能になります。

成長性を見るうえで重要なポイントとして挙げられるのが経営計画の明確化です。
自社の方針やビジョンが明確でなければ、適正に成長しているのかどうかを把握できません。
まずは自社の方向性やビジョンを明確にすることで成長性を分析することが企業の成長につながります。そのために必要なのが経営計画書です。

株式会社武蔵野では、経営計画書の資料をプレゼントしています。
成長性を的確に分析するためにぜひご活用ください。

執筆者情報

執筆者の写真

佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役

1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。

経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。

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