更新日:2024/01/29 15:18
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戦略的思考の鍛え方や特徴とは?おすすめの本も紹介
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急速なグローバル化やITの進歩により、企業を取り巻くビジネス環境が激変する現代において、自社の優位性を発揮するためには「戦略的思考」を持った人材が必要です。とはいえ、戦略的思考の具体的な中身や教育方法については、よく知らない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、戦略的思考の基礎知識に始まり、鍛え方やフレームワーク、知識習得におすすめな書籍を紹介します。
目次
戦略的思考とは
戦略的思考とは、企業を取り巻く課題について、情報収集や分析を行い、データに基づいて論理的に考える思考力のことです。ビジネスシーンにおいては、事業計画の達成に向けて合理的な戦略を立て、チームを率いてプロジェクトを推進するプロセスを指します。
例えば、売り上げ向上に向けた施策のアイデアが複数あったとしても、経営資源は有限であるため、より成果が期待できる施策に注力しなければなりません。この時に、外的・内的な要因を分析し、資源を的確に分配して「売り上げ向上」という目的を達成するための戦略を立案するプロセスが戦略的思考にあたります。
とはいえ、戦略的思考という言葉に明確な定義があるわけではなく、さまざまな解釈が存在します。いずれにしても、目的達成に向けて戦略的に計画を立てるという点が共通認識といえるでしょう。
戦略的思考が必要な理由
グローバル化やITの進歩によって市場を取り巻くビジネス環境が急速に変化する現代では、戦略的思考を持った人材が求められています。
このような市場では、トレンドの変化を瞬時に見極め戦略を立てることで、収益につなげる必要があるからです。戦略的・主体的に行動できる人材でなければ、市場のスピード感に対応して目的を達成することは難しいでしょう。
また、前段でも触れた通り、経営資源には限りがあるため、その中で最大限の成果を生み出さなければなりません。ヒト・モノ・カネといった資源を、どの施策にどのくらい分配するか決定するには、理論的な戦略が必要不可欠です。
このように、企業が業績を向上させ、事業目標を達成するためには、戦略的にプロジェクトを推進できる人材が必要不可欠なのです。
戦略的思考の構成要素
戦略的思考は、マインドとスキルの2つの要素に分けられます。それぞれに詳しく解説します。
戦略的マインド
戦略的マインドとは、業務遂行における意識や姿勢、価値観などです。主に、次の6つの要素に分解できます。
- 大局・将来的な思考:目の前の事象を大局的に俯瞰し、将来を見据えようとする
- 多角的な検証:単一的な視点ではなく、多角的な視点を持って物事を検証する
- ゼロベース志向:過去の経験にとらわれず、ゼロベースで思考しようとする
- 不確実性の受容:現時点で確定している事象だけでなく、将来の不確実性を受容し、対策を立てようとする
- 論理的な仮説構築:論理的に仮説を立てて、その仮設に基づきアクションを起こす
- 危険回避の対策:将来的な危険性を受け入れ、対応策を考えた上で行動する
このような戦略的マインドを持つためには、目の前の事象をポジティブに捉え、積極的にチャレンジする姿勢が必要です。何度もトライ&エラーを繰り返しながら、やり遂げることで戦略的マインドが鍛えられます。
戦略的な思考スキル
戦略的な思考スキルは、戦略的な計画や施策を立案する力のことです。次の6つの要素に大別できます。
- ビジョン思考:達成したい目標や将来のビジョンを自ら考え、周囲に伝えられる
- 多面的検証:物事を多角的に分析し、検証できる
- 非連続的発想:世間の常識や過去の経験にとらわれず、非連続的な発想ができる
- 論理的仮説:未知な事柄についても情報収集を重ね、論理的に仮説を構築できる
- シナリオ設定:目標達成や理想の将来像に向け、必要なシナリオやストーリーを構築できる
- 行動決定:さまざまな施策や方向性の中から、現在とるべき行動を自主的に決定できる
これらのマインドとスキルは、双方を持ち合わせていることが大切です。マインドだけがあっても実行に至らず、スキルだけでも戦略が形にならないため、併せて鍛えることを意識しましょう。
戦略的思考を身につけるメリット
戦略的思考の重要性について触れてきましたが、社員が戦略的思考を身につけると具体的にどのような効果があるのでしょうか。
代表的なメリットを3つ紹介します。
課題解決力が高まる
戦略的思考が身につくと、課題を解決するために根拠のある意思決定ができるようになります。
さまざまな要因が絡み合う企業の経営課題を解決するには、現状を論理的に分析して、得られたデータから根拠のある施策を立てなければなりません。戦略的思考を持った人材は、課題解決に必要なデータを取捨選択して取り入れ、具体的な解決策を提示できます。
目標達成しやすくなる
課題解決力が強まれば、事業目標やチーム目標の達成もスムーズになるでしょう。
戦略的思考が身についていると、経営資源を適切に分配できるようになり、より効率的に事業を推進できます。また、目標達成に向けた合理的な計画を立案できるようになるため、市場での優位性を獲得し、業績を安定させることができるのです。
効率的・合理的な判断ができるようになる
戦略が明確化されていると、戦略に沿った一貫性のある行動ができるようになります。部署内・チーム内でも同じ方向性を目指して業務を推進できるため、より合理的な行動が可能になるのです。
また、判断の基準が明確になっていると、スピーディな意思決定につながります。変化の激しいビジネス環境にも柔軟に対応し、効率的な事業推進が実現するでしょう。
戦略的思考を身につける方法
自社のビジネスを拡大させるため、社員に戦略的思考を獲得してほしいと考える経営者も多いでしょう。ここでは、戦略的思考を身につける方法を紹介します。
アセスメント(自己分析)を実施する
最初のステップでは、自己分析によって自身の現状を俯瞰し、現状の課題や強み・弱みなどを正確に把握することが大切です。このような自己分析のことを、アセスメントと呼びます。
戦略的思考を身につけるには、どのような思考やスキルを身につけるべきなのか、どのような課題を解決すればいいのかを、自分自身で正確に認識しなければなりません。自己分析によって習得すべき思考やスキルが明確になると、具体的な行動プランにつながります。
また、自身の弱みが明確になれば、学習の必要性を認識できます。学習に向けた意欲が高まり、自主的な行動につながるでしょう。
知識やフレームワークを学習する
戦略的思考を身につけるには、戦略立案に関する基礎的な知識が必要不可欠です。戦略立案に活用できるフレームワークや思考法、リーダーシップなどの方法論を学ぶことで、戦略的思考の基礎が作られます。
ただし、これらの知識をインプットしただけで戦略的思考が身につくわけではありません。ビジネスにおける多様な事象を想定してトレーニングと実践を繰り返し、経験を積むことで実地的な戦略的思考が磨かれます。
実践の場で応用力を磨く
前段で触れた通り、実践を繰り返して経験を積まなければ戦略的思考は身につきません。ビジネスの場では想定外の事態が発生することは日常茶飯事です。課題や困難を自分の力で乗り越える経験を積まなければ、現場で戦力となる人材を育成することは難しいでしょう。
また、知識習得や実践は一度実施して終わりではなく、再びアセスメントを行って行動を振り返ることが大切です。アセスメント・知識習得・トレーニング・実践というPDCAサイクルを確立して、戦略的思考のブラッシュアップを繰り返せる体制を築きましょう。
まとめ 戦略的思考を鍛える代表的なフレームワークの例
自社のビジネス環境を論理的に分析し、戦略的思考による施策を立案する上では、フレームワークを活用するのが効果的です。代表的なフレームワークのひとつとして「STP分析」があげられます。
STP分析とは「Segmentation:セグメント化」「Targeting:ターゲットの選定」「Positioning:ポジションの確立」の3つの観点から自社の立ち位置を決定するマーケティング手法です。市場における現状の立ち位置を明らかにした上で、自社が優位性を発揮できる立ち位置を見つけ出し、業績の安定につなげます。
また、中小企業向けのフレームワークとしては「ランチェスター戦略」が有名です。ランチェスター戦略は、イギリスのエンジニアであるフレデリック・ランチェスターが提唱した数理モデルを企業経営に応用したもので、経営資源の少ない中小企業が大企業に勝つための戦略思考として知られています。
大企業がシェアを独占している市場ではなく、ニッチな消費者や商品ジャンル、地域などに特化して市場の独占を図る「差別化戦略」を基本としています。
STP分析とランチェスター戦略については、こちらの記事で詳しく解説しています。
STP分析とは?マーケティングで活用できるフレームワークを紹介
ランチェスター戦略とは?弱者が強者にビジネスで勝つポイントをわかりやすく解説
戦略的思考を学ぶおすすめの書籍
より詳しく戦略的思考のヒントを得たい場合は「小山昇の“実践”ランチェスター戦略〜成果を確実に出し続ける科学的な方法」がおすすめです。
本書は、ランチェスター戦略の実践法を解説しており、ランチェスター戦略を体系的に学ぶことができます。
26社の実例をもとに実践的な戦略立案を体験できるため、戦略的思考のトレーニングにも活用できるでしょう。経営者や営業だけでなく、マーケティングや販売職などでも参考になる事例が掲載されており、社員教育に幅広く活用できる書籍です。
戦略的な思考力を鍛えて組織力を向上しよう
戦略的思考は、経営計画や事業目標を達成する上で、重要な思考スキルのひとつです。
とはいえ、一朝一夕で身につくものではなく、自己分析と知識習得、実践を繰り返し、経験を積むことによって戦略的思考が磨かれます。経営者はトレーニングを繰り返せる環境を構築し、戦略的思考を持った社員の育成に取り組みましょう。
武蔵野のコンサルティングでは、戦略的思考の基礎習得を重視しており、社員研修や教育についてもサポートが可能です。豊富な支援実績をもとに、各企業に合った包括的なサポートプランを提案いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。
具体的なサポートの詳細はこちらをご覧ください。
執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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