更新日:2022/11/30 17:14
人材育成
タレントマネジメントとは?定義やメリット・デメリット、導入注意点を解説
読了まで約3分
社員の才能・能力(タレント)に関する情報を一元で管理し、戦略的人事や人材開発に活かすことを意味するタレントマネジメント。
近年、大手を中心に導入する企業が増加しています。
日本情報システム・ユーザー協会が発表した「企業IT動向調査報告書2018」でも、企業全体の導入率は6.9%ですが、従業員数1万人以上の企業では21.7%。試験導入中も含めると3割を超える34.7%です(全体では10.7%)。
参照:日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2018
本記事では、タレントマネジメントの概要、目的、導入メリットについてお伝えします。
これから導入を検討する企業担当者はぜひ、参考にしてください。
目次
タレントマネジメントの定義
タレントマネジメントとは、社員が持っている才能・能力・資質などのタレントや培ってきたスキル、経験を一元管理し、戦略的かつ効率的な人材配置を可能にするものです。
また、一元で管理を行うシステム自体をタレントマネジメントとも呼びます。
タレントマネジメントの概念が生まれたのは、1990年代、アメリカの大手コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニーが掲げたキーワード、「War for talent(人材育成競争)」に端を発します。
当初は競合との争いのなかでいかに優秀な人材を獲得できるかといったものでした。
しかし、日本で注目を集め始めた2011年以降は、外部からの新たなタレントの獲得に加え、自社にいる人材の中からタレント性を見つけ出せるかといった観点が加わっています。
タレントマネジメントと人事管理との違い
人事管理に関しては、タレントマネジメント登場以前より当たり前に行ってきたという企業がほとんどでしょう。
ただ、人事管理とは人事評価や教育・研修以外に勤怠状況、給与、福利厚生、入社・退社など労務管理も含まれます。
これに対し、タレントマネジメントは目標・評価、資格、経歴、受講歴などいわゆるタレントに関する情報に絞って管理する点が大きな違いです。
もちろん、人事管理にも人事評価や教育・研修などタレントマネジメントで扱う項目も含まれています。
しかし、タレントマネジメントは、経営戦略を基に適切な人材配置を主眼とし、特に新製品の開発、新規事業の創出時などに効果を見込んで行われる管理手法です。
タレントマネジメントの目的
タレントマネジメントを実施、導入する目的として挙げられる代表的なものは次の3点です。
- 売上の拡大
- 人材開発・人材育成
- 人材発掘・採用
1.売上の拡大
タレントマネジメントを行う最大の目的は売上の拡大です。
売上拡大を実現させるには業務効率化や生産性拡大が欠かせません。
顧客にとって魅力ある商品やサービスの開発に加え、効率的に業務を行えるプロセスの改善、各部署への適切な人材配置が必須といえるでしょう。
タレントマネジメントを実施すれば、開発業務を得意とするもの、マネジメントを得意とするものなど、社員それぞれのタレント性を可視化させられます。
その結果、売上拡大を実現させるための戦略が立てやすくなるでしょう。
2.人材開発・人材育成
売上拡大を可能にするには、前段階としていくつかの目標を立て一つずつクリアしていく必要があります。
その一つが人材開発・育成です。
たとえば、新商品の開発を行う場合、企画、デザイン、製造などさまざまなスキルが求められます。
しかし、開発部門で誰がどのようなタレントを持っているかがわからなければ、適切なチーム作成はできません。
タレントマネジメントを実施していれば、それぞれのタレントが可視化されているため、迅速なチーム編成が可能です。
また、現状で足りない部分も明確になることから、誰にどのような教育が必要かもわかり、的確な人材開発・育成が行えるでしょう。
3.人材発掘・採用
タレントマネジメントで社内にいるすべての社員が持つタレント性を一元管理すれば、埋もれた才能発掘の可能性も高まります。
たとえば、営業部にいるがデザインセンスが高い、総務部にいるが企画力が優れているといった社員を見つけ出すのにも効果を発揮するでしょう。
また、自社が継続的に成長していくために必要なタレントも明確になるため、新たに人材採用計画も立てやすく、採用のミスマッチを避けられます。
タレントマネジメントの導入メリット
タレントマネジメントを導入することで得られる主なメリットは、以下の3点です。
- 適材適所
- 人材の定着
- 採用活動の効率化
それぞれについて解説します。
適材適所
タレントマネジメント導入により、社員の労務だけではなく、タレント性の一元管理が可能になるため、適材適所な人事配置が行えます。
社員の能力やスキル、経験、これまでの研修歴などから業務に対する能力以外に個性や性格といったパーソナル情報の把握もでき、人間関係も含めた人事配置が可能です。
人材の定着
タレントマネジメントによって社員が得意とすることや隠されていた能力を基に人事配置を行えるため、社員満足度向上が期待できます。
自身が得意とすることで会社に貢献できていると実感できれば、エンゲージメントもアップするようになり、結果として離職率が低減し、人材の定着が実現するでしょう。
採用活動の効率化
たとえば、経理部社員の退職に伴い新たに人材を採用する際、タレントマネジメントを導入していれば効率的な採用活動が実現します。
単純に経験者を採用しても、退職した社員のスキルを補う社員なのかどうかはわかりません。
タレントマネジメントを導入していて、退職する社員のスキルが明確になっていれば、書類選考の時点で必要な人材の選択が可能になり、無駄な手間を省けるでしょう。
タレントマネジメントの導入デメリット
多くのメリットを持つタレントマネジメントですが、デメリットも存在します。
具体的には次のとおりです。
運用コストがかかる
タレントマネジメント導入に際し、専門の担当者を置く必要があります。
全社員のタレント情報を一元管理するとなれば相応の手間がかかるため、企業規模にもよりますがほかの業務の片手間では困難です。
また、タレントマネジメントを行うには、専用のツールを導入します。
そのため、ツール導入・管理コストもかかります。
社内に浸透しにくい
近年、注目を集めているタレントマネジメントですが、大手企業が中心であり、中小企業ではまだ完全な認知を得ているとは限りません。
そのため、導入に際して社内の理解を得にくい可能性もあるでしょう。
社員の才能や能力の管理は短期間で行えるものではありません。
そのため、中長期的な視点が求められますが、経営層に早急な結果を求められたり、社員からの理解が得られず情報入力がされなかったりといったこともありえます。
タレントマネジメントツール・クラウドシステムとは
タレントマネジメントツール・クラウドシステムとは、クラウド上でタレントマネジメントを行えるシステムです。
一般的なビジネスシステムと同じように自社のサーバーにインストールして利用するタイプに比べ、比較的低コストで導入できるメリットがあります。
また、クラウド上での管理が可能なため、テレワークの社員でも自宅から情報入力したり、担当者が外出先から管理したりすることも可能です。
タレントマネジメントはエクセルを使っての管理も行えます。
ただし、データが増えるほどに重くなる、専用の機能もないなど手間や負担も大きくなるため、タレントマネジメントを行うのであればシステムの導入がおすすめです。
管理項目の例
タレントマネジメントを実施するうえで必要になる主な項目は次のとおりです。
- 基本情報
社員の名前、社員番号、性別、年齢、所属部署、役職などの基本情報です。
社員のキャリアやスキルなどはすべて基本情報に紐づけられ、一元で管理されます。
- キャリア情報
入社してから現在までのキャリアに加え、入社以前の職歴や学歴などのほか、これまでの職務内容、表彰経験、教育・研修経験なども入力します。
- タレント情報
才能、能力などタレントマネジメントでもっとも重要な情報です。
資格や技術のほか、マネジメントスキル、コミュニケーション能力といった個人の個性、資質も入力します。
- 行動情報
月の残業時間、遅刻や早退、欠勤といった労務情報のほか、勤務態度や会議での発言、資料作成時間といった業務中のさまざまな行動を入力します。
- 思考情報
どのような考え、価値観を持って仕事をしているかの情報です。
仕事の何に喜びを感じ、何を大切に仕事をしているのかを入力します。
タレントマネジメントの成功事例
実際にタレントマネジメントを導入し、成功した事例を紹介します。
主に飲料用品の製造販売を行っているサントリーホールディングス株式会社(以下同社)。
同社では、「全社員型タレントマネジメント」と題し、会社内で必要なスキルや経験を明示したキャリア情報を積極的に社内に開示し、社員が自律的にキャリアについて考えられるよう促しています。
また、「先輩社員のキャリアシート」として、幅広い社員のキャリアシートもインターネット上に公開しています。
タレントマネジメントの周知を行い、キャリアデザインの重要性を説いています。
ほかにも、人事との1対1の面談、キャリア情報を基にした適所適材を実現する仕組みの整備などを行うことで、タレントマネジメントに対し、積極的に向き合う環境構築に成功しています。
タレントマネジメントの注意点
タレントマネジメントを導入・運用する際の注意点は、デメリットでお伝えしたとおり、運用コストがかかることやタレントマネジメントの概念理解が得られにくい点です。
タレントマネジメントは、システムの運用コスト以外に専門の担当者が必要になるため、場合によっては人材を新たに採用しなくてはなりません。
また、タレントマネジメントに取り組んだ後すぐに成果が出るわけではないため、経営層とともに、目的や目標までの道筋を描いて根気よく取り組むスタンスが必要という点にも注意しましょう。
また、社員側も導入の目的を明確にしないと協力は得られないでしょう。
タレントマネジメントの実施が初めての場合は、外部の経営コンサルタントや、タレントマネジメントシステムの販売会社など外部機関と協業しながら、戦略的に取り組む必要があります。
あらかじめ、外部委託の費用も含めて多めに見積もっておくよう注意が必要です。
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タレントマネジメントとは、利益の拡大を目的とし、社員の才能・能力(タレント)に関する情報を一元で管理することで戦略的な人材活用を実現させる施策の一つです。
少子高齢化の影響もあり、多くの業種で人材不足が慢性化している今、限られた人材の能力を発掘、育成し、最大限に活用するために欠かせない施策といえるでしょう。
ただし、人事制度や人材開発のトレンドは変化が激しいうえに新たな制度を導入するのは簡単ではありません。
そこでおすすめなのが社外の専門知識を持った業者の活用です。
株式会社武蔵野では、これまで多くの採用コンサルティングや経営サポートをしてきた経験から、タレントマネジメントの実施においてもしっかりと企業様のサポートを行います。
タレントマネジメント導入を検討されている際は、是非、お気軽にご相談ください。
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