更新日:2023/06/22 15:15
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多能工化とは?意味や導入目的・メリットや正しい手順を解説
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「社員一人あたりの生産性が低く悩んでいる」「人手不足を乗り越えるために個々の知識やスキルを高めたい」など、社員を多能工化すべきか考えている経営者は少なくないでしょう。
多能工化とは、製造業だけでなくサービス業や小売業で注目されている取り組みで、一人の社員が複数の業務をマルチにこなせるため、生産性向上や組織力強化にメリットがある施策です。
本記事では、多能工化の意味や取り組むメリット、デメリットをはじめ、失敗事例もあわせてお伝えします。
自社は多能工化をすべきなのか、どのように取り組むべきか判断する際の参考にしていただけますと幸いです。
目次
多能工化(多能化)とは
多能工化とは、一人の従業員が複数の業務や作業をマルチにこなせるよう社員を教育することです。
多能工化は、マルチスキル・マルチタスクとも言い換えることができます。
もともとは、製造業で生産性を高めるために生まれた概念で、大手自動車メーカーのトヨタ自動車が発祥と言われています。
現在は、製造業だけでなくサービス業や流通業、小売業など、各業界で多能工化への取り組みが広がっています。
人手不足が嘆かれる昨今では、業務が忙しいときに新たな人材を投入することは容易ではありません。
人手が確保できなくても、一人の人材がマルチに複数の業務をこなせれば、臨機応変に作業の遅延が発生しているところへ人材を配置することができ、生産性を保てると考えられているのです。
単能工との違い
多能工化と比較される言葉に、単能工があります。
単能工とは、単一の「単」が名前にある通り、単一の業務のみを専門に行う人を指します。
多能工がマルチタスクと呼ばれるのに対して、単能工はスペシャリストと解釈ができます。
一つの分野に対して、深い知識と技術をもつ人材です。
仮に、企業に単能工しかいなければ、その人が急に休んだり離職したりした場合、ほかの社員がカバーをすることが難しくなります。
単能工は専門性に関して魅力もありますが、急な欠員などで事業の生産ラインをストップさせないためにも、多能工化を必要とする流れが出てきています。
多能工化のメリット
企業が多能工化を進めることで得られる、具体的なメリットを3つ取り上げご紹介します。
業務負荷の平準化
多能工化の最大のメリットは、社員ごとの業務負荷を均一にして平準化できることです。
業務の忙しい部署が出てきたときに、社員が多能工化されていれば、どの社員でも柔軟に忙しい部署に配置することができます。
その結果、部署ごとの業務負荷の差を埋めやすくなり、平準化が図れます。
もし、多能工化ができていなければ、「この業務はxxさんしかできない」「〇〇部署だけいつも人手不足で忙しい」と、偏りができ、不公平感が生まれてしまいます。
多能工化は属人性を排除し、社員ごとの業務量が平等になるよう割り振れるため、残業の抑制や納期遅れを予防する効果も期待できます。
組織のチームワーク向上
多能工化を進めると、一人の社員が多角的な視点をもち、幅広い業務に関わるようになります。
臨機応変に、さまざまな作業工程に関わる中で、社内コミュニケーションが活性化され、チームワーク向上に寄与するでしょう。
また、複数の社員が業務に関わることで、進捗状況が社内共有されるようになり、納期遅れやミスなどにも気付きやすくなります。
その他にも、「自分の担当業務だけをこなせばいい」という意識がなくなり、組織全体で作業に取り掛かるようになれば、連帯感および組織力が強化されるのもメリットです。
一方、多能工化されておらず他部署の業務内容が分からなければ、忙しい部署をフォローできません。
その結果、縦割りの運営となってしまい、組織内のチームワークは強化しづらいでしょう。
業務のリスク管理
特定のポジションを担当している社員が急に休んでしまっても、多能工化できていれば、他の社員でカバーできるためリスク回避できるのはメリットです。
どの社員でも、病気にかかって休んだり、突然の転職となったりする可能性があります。
一部の社員しか対応できない業務が存在すると、最悪の場合、事業が止まってしまうケースもあるでしょう。
誰がいつ業務に穴をあけても、他の社員でカバーできる体制を作るために、多能工化は欠かせないのです。
多能工化のデメリット
多能工化は多くのメリットをもたらすものの、必ずすべての企業に効果があるとは限りません。
多能工化に取り組む前に、導入の際のデメリットについても理解を深めましょう。
ここでは、多能工化の注意すべきポイントを2つご紹介します。
育成コストがかかる
多能工化には、大きな育成コストがかかる点がデメリットといえます。
一人の社員に多くの知識、スキルを身に付けてもらうためには、複数の業務経験をさせたり研修を受けさせたりする必要があります。
製品・サービスの製造や販売に関わる全工程を理解して一人前になるには、数年かかるケースもあるはずです。
長期間にわたり多能工化に取り組んでいくには、社員の理解も必要不可欠ですし、育成中は先行投資でコストがかかる点にも目を向けなくてはなりません。
多大なコストを投じてまで多能工化すべきかどうか、中長期的な経営計画をふまえて判断しなければなりません。
マネジメントの難しさ
多能工な人材は、マネジメントが難しくなる点もデメリットとして挙げられます。
多能工化した社員を適切に配置できないと、担当業務が被ってしまい無駄な人件費がかかってしまいます。
また、多能工化している発展途上の社員に、どこまで仕事を配分すべきか決めるのが難しく、マネジメントの力量次第でかえって業務効率が下がる可能性もあるでしょう。
多能工化できたとしても、社員個々の経験や特性もふまえて、適切に管理していかなくてはならない点は注意すべきポイントです。
多能工化の進め方
多能工化の進め方を簡単にまとめると、次の4ステップとなります。
- 業務を洗い出す
- スキルマップで業務を可視化する
- マニュアルと育成プログラムを準備する
- 教育を進めて定期的に振り返る
はじめに、自社の業務を洗い出して整理をします。
どの業務が属人化しているのか、どの業務の人手が足りていないのかを見極めて、特に業務効率化したい業務の優先順位をつけていきましょう。
次に、多能工化すべき業務を明確にするため、必要に応じてスキルマップを作成しながら可視化を進めます。
スキルマップとは、各社員の担当業務に対して、どのようなスキル・能力が必要かをまとめたものです。
スキルマップを作成しながら、どこの工程で何のスキルが足りていないのか、どのような能力の人材が不足しているかなど可視化を行います。
続いて、誰でも同じレベルで作業を行えるよう、マニュアル化を行ないつつ育成準備を進めます。
育成計画の際は、閑散期に効率良く教育ができないか検討しつつ、「いつ・誰が・誰に対して・何を・どのように」教育すべきか、教育後にどのくらいのレベルに達してほしいかなどを明確にしていきましょう。
その後、育成プログラムを企画して、多能工化の教育を実施し、定期的に振り返りながら業務平準化に向けて進捗を確認します。
多能工化の失敗事例
多能工化のメリットやデメリットについて取り上げてきましたが、多能工化の施策に失敗してしまった事例も確認してみましょう。
失敗した理由を学ぶことで、自社が取り組む際のヒントになるはずです。
適切な人事評価をしていない
多能工に合わせた人事評価制度を作り直さず、評価に対する不満が溜まった社員が離職してしまう事例です。
せっかく努力して幅広い知識を身につけたにもかかわらず、評価が何も変わらなかったり、給料が上がらなかったりすれば、不満に感じる可能性は高いでしょう。
多能工化した結果、与えられるタスクが多くなり、業務負荷が増えたと感じる人もいるかもしれません。
会社都合で一方的に教育や業務をおしつけるのではなく、社員と定期的に面談しながら、評価制度の見直しをしていくべきでしょう。
教育期間が不足している
多能工化には教育時間が長くかかるにも関わらず、十分な時間をかけずに失敗してしまう事例です。
育成、教育が足りないまま、多能工化の組織に移行してしまうと、社員は与えられた業務をこなしきれず疲弊し、ストレスがたまります。
高い専門性や技術が求められる現場ほど、十分な教育期間を事前に計画して取り組まなくてはなりません。
教育期間を長めに設定するだけでなく、業務の閑散期に研修機会を設けたり、OJTをうまく取り入れたりしながら効率的に教育を進めてください。
【製造業】トヨタの事例
多能工化は、大手自動車メーカーのトヨタが提唱する「トヨタ生産方式」から生まれた概念と言われています。
トヨタ自動車の大野副社長が、一人の社員が1つの機械しか操作していない点に着目し、一人の社員が複数の工程や作業に関われるように教育を実施。
トヨタ生産方式という、独自のメソッドを体系化する仮定で、多能工化を進めました。
多能工化を進めた結果、製造ラインでの仕事量の差をなくし、全社の業務を平準化することで生産性を高めたと言われています。
目的をもって計画的に多能工化を推進しよう
多能工化とは一人の社員に複数のスキル、知識、経験を身につけさせてマルチタスクにする取り組みです。
多能工化ができれば、業務の平準化を図って社員ごとの業務負荷の差をなくすことができ、事業の生産が止まるリスクを回避しながら生産性を高められます。
どんな企業でも多能工化をすべきというわけではなく、事業の特徴や課題を見極めて、多能工化するかどうか判断が必要です。
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